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Microsoft、Buildで開発者向けの「HoloLens 2 Development Edition」発表

~Azureには音声認識、応答、翻訳、意味づけに加え、"判断"の機能拡張

開発者向け版が追加される「HoloLens 2」(2月末のMWC19で撮影)

 Microsoftのフラグシッププライベートカンファレンスとなる「Build」が5月6日~8日(現地時間)に、アメリカ合衆国ワシントン州シアトルで開催される。それに先だって同社は、「Azure」の新サービスなどを発表した。

 発表されたのはAzure Cognitive ServicesというAIサービスの機能強化、クラウドベースの機械学習サービスとなるAzure Machine Learningの機能拡張、さらには同社がIntelligent Edgeと呼ぶエッジデバイス向けの各種サービス、HoloLens 2の開発者向け版となる 「HoloLens 2 Development Edition」の追加、また、Azureの新しいサービスとしてブロックチェーンをクラウド経由で提供する「Azure Blockchain Service」などだ。

これまでのWindows中心から、Intelligent Cloud/Edge中心に

 Microsoftが例年春に開催しているBuildは、同社が複数開催するプライベートカンファレンスの中でもフラッグシップに位置づけられているもので、新しい方針などが発表される場としても活用されている。

 このため、このBuildではかつてはWindowsが話題の中心だった。言うまでもなく、Microsoftの主力製品がWindowsだったからだ。タッチインターフェイスが導入され、モダンなOSと生まれ変わったWindows 8、半年に一度大規模な機能アップデートを行なうことで機能が随時新しくなるWindows 10などは、いずれもBuildで発表、あるいは詳細が明らかにされたりしている。多くの開発者にとってはBuildでWindowsの未来が把握できていた。

 だが、一昨年ぐらいからその方針は大きく変わり、主役になっているのはAzureなどのクラウドサービスだ。そして、そのAzureにつながるデバイスとして初代HoloLensが発表されたのもBuildで、Windowsはそうしたクラウドサービスを利用するエッジデバイスのOS、そしてHoloLensのOSとしてという扱いになっている。

 ITはいま新たな転換期を迎えており、従来はクラウドはクラウド、エッジはエッジとして取り扱われてきた世界から、クラウドとエッジを1つに融合してサービスとして提供する時代へと転換している。

 その鍵となっているのが、機械学習や深層学習により実現されるAIだ。クラウド上にあるAIがエッジに対してサービスを提供し、あるいはクラウド、エッジ双方にAIサービスが展開され、データを媒介にして新しいサービスを提供していく。それがIntelligent Cloud/Edge時代の世界観だ。Intelligent Cloud/Edgeを活用することで、企業は生産性を向上させ、個人は豊かな生活ができるようにする、というのがMicrosoftが目指している方向性だ。

 逆説的だが、そう考えていくと、実は「Microsoftのフラッグシップのイベント」というBuildの役割は10年前と何も変わっていない。変わったのは、Microsoftが重要視している製品であり、それがWindowsからIntelligent Cloud/Edgeになったということだ。

Intelligent Cloud/Intelligent Edgeを支えるAzureのAIサービスに機能を追加

 今回発表されたのは、クラウド側のAIサービスの機能拡張、エッジ側の機能拡張、ブロックチェーンの新しいサービスとなる「Azure Blockchain Service」だ。

 クラウド側の拡張ではAIサービスの拡張が発表された。従来からクラウドベースのAIを提供するサービスとして活用されてきた「Azure Cognitive Services」には、新たな機能が追加された。Azure Cognitive Servicesでは音声認識、応答、翻訳、意味づけなどのアプリケーションを作る際の基盤として活用されてきたが、今回は「Decision」(判断)が追加される。

 これは深層学習(深層学習)の推論機能を利用した判断機能を付与し、リコメンデーション機能やパーソナライズ化機能などを実現することができる。もう1つの機能はAzure Search機能で従来はベータとして提供されてきたAIを利用した検索機能が一般提供となる。

 クラウドベースの機械学習(機械学習)サービスとなる「Azure Machine Learning」には、「MLOps」、「Automated ML」の進化版が追加され、さらに「Visual machine learning interface」ではコードを書かず、ドラッグ&ドロップするだけで機械学習のモデルを作成可能になる。

 AzureでONNX Runtimeを利用して機械学習や深層学習の推論モデルを作成する場合は、NVIDIAのTensor RT、IntelのnGraphという開発キットを利用し、NVIDIAのGPU、IntelのCPUやFPGAに最適化可能になった。

HoloLens 2 Development Editionを提供

2月のMWC19で行なわれたHoloLens 2のデモ

 Intelligent Edge向けには、「Azure SQL Database Edge」、「IoT Plug and Play」の2つが発表された。Azure SQL Database Edgeはエッジデバイス上で動作するSQLデータベースで、CPUやメモリ、ストレージなどに制限があるエッジデバイスでも動作するような小さなプログラムコードになっている。Azureサーバー上で動作している「Azure SQL Database」と同じプログラミングモデルで作られており、エッジ側に保存していたデータを容易にAzureサーバー上のSQLデータベースに格納してデータを処理することが可能になる。

 IoT Plug and PlayはIoTとクラウドを簡単に通信できるようにする標準的な手順。従来はこうした仕組みがなかったため、ソフトウェアそれぞれがIoTとクラウドが通信する手順を定めていた。IoTがこのIoT Plug and Playに対応していると、サーバー側のソフトウェアはその手順に従ってエッジデバイスと通信してデータを受け取ったり、渡したりできるので、ソフトウェア開発の負荷が減る。

 また、2月末にバルセロナで行なわれたMWC19で発表されたHoloLens 2の追加SKUとして、HoloLens 2 Development Editionを提供することを明らかにした。同製品には、デバイスのみ版とDynamics 365 Remote Assist 搭載版という2つの形態がある。前者は買い切り、後者はサブスクリプション型。今回発表されたHoloLens 2 Development Editionは開発者向けの追加形態となる。

 HoloLens 2 Development Editionにはデバイス単体、500ドルのAzureクレジット(Azureで使えるポイント)、Unity ProとCADデータ用Unity PiXYZプラグインの体験版3カ月利用権が含まれ、価格は3,500ドルないしは月額99ドル。販売はMRの開発プログラムである「Mixed Reality Developer Program」を経由して行なわれる。

 MWC19で言及されたHoloLens 2でのUnreal Engine 4サポートは、今月末から開発者向けに提供開始されることが明らかにされた。

メインの基調講演は現地時間5月6日

 MicrosoftはBuildで新しいAzureのサービスを提供する、それが「Azure Blockchain Service」だ。その名前からも明らかなように、Azure Blockchain Serviceは、Azure上でブロックチェーンを利用したアプリケーションなどを提供する場合の基盤となる。J.P. MorganがEthereumプラットフォームというAzure Blockchain Serviceを利用したブロックチェーンネットワークをクラウド上で顧客に提供するさいに利用されることが決まっている。

 Buildには6千人の開発者とコンテンツクリエイターが参加する見通しで、5月6日午前8時30分(現地時間、日本時間5月7日午前0時30分)には、Vision Keynoteと呼ばれる全体を俯瞰した基調講演が行なわれ、さらなる発表が行なわれる予定だ。