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Microsoft、音声認識とAIを組み合わせたインテリジェントエージェントのビジョンをBuildで公開

~ChromiumなMicrosoft EdgeにはIE互換のタブを実現するIEモードを追加

Microsoft Edge Insider経由で提供されているChromiumベースのMicrosoft Edge

 Microsoftはプライベートイベント「Build」を、5月6日(現地時間)よりアメリカ合衆国ワシントン州シアトルにあるワシントン州立コンベンションセンターで開催している。Vision Keynoteと名付けられた基調講演では、同社CEOのサティヤ・ナデラ氏が登壇し、製品の方向性などについて説明を行なった。

Microsoft Bot FrameworkやAzure Bot ServiceとAIを活用したインテリジェントエージェント

 今回Microsofは、「インテリジェントエージェント」と呼ぶ、自然言語で対話型の音声UIを利用しながら、アポイントを入れて予定を組んだり、メールを出したりということを実現するフレームワークのビジョンを公開した。

 従来もこうしたインテリジェントエージェントのような考え方は存在しており、1990年代にもMagicCapやAppleのNewtonなどが同等の機能の実現を目指していた。しかし、それらのエージェントは、ユーザーがある程度情報を指定しないとダメだったり、音声認識機能が発達していないなど技術が追いついておらず、あまり普及せずに収束した。

 しかし、近年のマシンラーニング(機械学習)/ディープラーニング(深層学習)ベースのAIが実用的になってきたことでその状況は大きく変わりつつあり、CPU、GPUやFPGAといったAI向けの半導体ソリューションが活用できるクラウドで実現されるAIを活用することで、そうしたことも実用に近づいている。

 Microsoftは、Botサービス提供の基盤となるMicrosoft Bot FrameworkやAzure Bot Serviceなどを提供しており、それらに同社研究開発部門が開発した自然言語でやりとりが可能な「会話型AI」を組み合わせることで実用的なインテリジェントエージェントの実現に成功した。会話の複数のやりとりの前後関係を理解して、ユーザーの希望をくみ取って、バックエンドでMicrosoftのサービスの内外外ともやりとりを行ない、柔軟な行動できるようになる。

 講演では、ユーザーがスマートフォンに話しかけるだけで、アポイントメントを取りたい相手のエージェントと通信し、互いの空いている時間や会議室などを見つけてアポイントメントを作成し、お互いのカレンダーに予定を入れるという動画が示された。

 現時点ではそうした技術を開発したという開発意向表明にとどまるが、将来的にはこうした機能がMicrosoft 365/Office 365に導入されることは間違いないだろう。

ChromiumなMicrosoft EdgeにIEモード、プライバシーツールなどを追加

新しいMicrosoft Edge、レンダリングエンジンがChromeと共通のChromiumに変更されている

 Microsoftは今年に入ってMicrosoft Edgeのエンジンを従来のEdgeHTMLからChromiumに変更した、新しいMicrosoft Edgeのインサイダー版を提供開始している。ChromiumベースのMicrosoft Edgeは、WebサイトレンダリングはChromeと同等になり、互換性が増し、そこにMicrosoft独自の機能であるMicrosoftアカウントへの対応や、それを利用したブックマークやパスワードの同期機能などが搭載されている(パスワードの同期は現在のDEV版などでは未実装)。

 今回のBuildではそのChromiumベースのMicrosoft Edgeに、IEモード、プライバシーツール、コレクションズという3つの新機能が追加される計画が明らかにされた。

 IEモードは、企業のWebサービスなどで今でも一般的に活用されているInternet Explorerの互換モード。IEモードでは、ChromiumベースのMicrosoft EdgeのタブをIE互換にできる。これによりたとえば、これまでChromeブラウザを利用していたユーザーが、IEのみをサポートしているイントラのタブと、インターネットのタブをMicrosoft Edgeのみで利用可能となる。

 プライバシーツールはユーザーが簡単にプライバシーの強度を変更できる機能。Unrestricted(制限なし)、Balanced(バランス)、Strict(強固)という3つの強度が用意されている。従来も設定の詳細などで詳しく設定できたが、そのお薦め設定をユーザーが簡単に選べるようになる。コレクションズは、OfficeとEdgeの機能統合の1つで、EdgeからOfficeへデータの管理、共有、エクスポートなどが容易になる。

 これらの機能は、まもなく広く配布される予定の次期バージョンのMicrosoft Edgeで採用される予定。

 このほか、MicrosoftはMicrosoft 365の機能拡張として、Microsoft Graph data connect、Fluid Framework、Microsoft 365 for Campaignsなどを発表した。

AzureとGitHubのアカウントを共通化、Azure ADのアカウントでGitHubのサービスを利用可能に

 MicrosoftはBuild開催に先駆けてAzureの機能拡張について明らかにしている(Microsoft、Buildで開発者向けの「HoloLens 2 Development Edition」発表参照)が、さらに、AzureのKubernetesであるAzure Kubernetes Service (AKS の拡張についても発表した。

 Kubernetesとはサーバー上で動かすサーバーアプリのコンテナモデルで、プラットフォームに依存せずアプリケーションを動かせる。そのKubernetesをAzure上で動かすAKSの新機能としてKubernetes Event-driven Autoscaling、Azure Policy for AKSが追加。また、量子コンピュータ向けのハイレベルプログラミング言語のQ#向けのコンパイラーとシミュレータをオープンソースで提供することも明らかにされた。

 このほか、Microsoftは買収したGitHubとの新しい施策として、エンタープライズカスタマー向けに、Azure ADの認証でサービスにログインできるようにすると発表した。Azure ADのアカウントを持っているユーザーであれば、Azure ADのアカウントを利用してGitHubにログインできるようになる。そしてその逆にGitHubのアカウントを利用してAzureのサービスにサインインすることも可能になる。