ニュース
Smartisan、“欠点を利点に変えた”エントリー向けスマホ
2018年4月10日 13:43
中国Smartisanは9日(現地時間)北京で発表会を開催し、エントリー向けのスマートフォン「堅果 3」を発表した。中国での価格は1,299人民元(約21,980円)から。
中国においてこのクラスは「千元機」と呼ばれ、もっとも広い層をターゲットにしている。初代の「堅果」は2015年に投入されたが、2016~2017年初頭はSmartisanにとって財力的に苦しかった年で、「堅果 2」は難産となり、最終的にリリースされることがなかった。堅果 2はSmartisanが苦難を乗り越えた証として社内に飾られたため、今回の製品は堅果 3となった。
堅果 2は特徴は、表面の画面占有率を高めた設計にある。業界のトレンド的に、4辺狭額縁、3辺狭額縁、そしてiPhone Xが代表するような“ノッチつきディスプレイ”のデザイン案があるが、Smartisanの羅永浩CEOは“某大手(紛れもなくApple)が採用したことで、業界全体がノッチつきディスプレイのトレンドに乗る風潮があるが、そのデザインに我々は賛同しない”と一蹴。3辺狭額縁の案を採用するとした。
3辺狭額縁設計は、シャープが2013年に投入した「EDGEST」シリーズが有名。しかし当初は3辺狭額縁を合理的に実現するための技術が優れているとは言えず、通話用スピーカーの音が隣に漏れたり、ホールセンサーの省略に苦心したりしたという。
堅果 3は、隠しスピーカーに加え、スピーカーから超音波を発し、マイクでその超音波を拾い、ユーザーの顔の位置などをソフトウェア演算によって検出するElliptic Labsの「INNER BEAUTY」技術を採用し、この問題を解決したという。
また、3辺狭額縁設計のもう1つの欠点として、前面カメラを下部に移動せざる得ない点が挙げられる。近年、自撮り=いわゆるセルフィーが流行しているが、画面下部にカメラを装着してしまうと見上げたような視点になりやすく、首やあごの肉づきが気になる女性ユーザーも少なくない。スマートフォンを逆さまにして持てばこの問題は解決するが、一般的なスマートフォンでは、カメラのUIが回転しなかったりして使いにくい。
そこで堅果 3では、“画面がオンの状態であれば、スマートフォンを逆さまにすればセルフィーカメラ撮影モードに入る”機能を実装した。たとえアプリを起動している状態でも、ロック画面を表示している状態でも、逆さまにするだけでセルフィーカメラが起動するわけだ。“カメラが下部にある本体を逆さまにするのはセルフィーのときだけ”ということを逆手にとった実装なわけだが、これにより堅果 3は「“おそらく”市場でもっとも優れたセルフィー体験を提供するスマートフォン」となった。
このほかソフトウェア技術として、ArcSoftが開発した写真の被写界深度効果や、Elevoc Technologyが開発した、AIを利用した通話時の環境ノイズリダクション機能を備える。
おもな仕様は価格帯なりのものとなっており、SoCにはSnapdragon 625(最大2GHz、Adreno 506 GPU)、メモリ4GB、2,160×1,080ドット表示対応5.99型液晶ディスプレイ、OSに独自のSmartisan OS 4.xを搭載。ストレージは32GB、64GB、128GBの3種類を用意する。
インターフェイスはIEEE 802.11ac対応無線LAN、Bluetooth 4.2、指紋センサー、1,300万画素デュアルレンズ(カラー+モノクロ)背面カメラ+800万画素前面カメラ、ジャイロ、重力、地磁気、環境光、GPS、GLONASS、Beidouなどを搭載する。
SIMはデュアルNano SIMで、対応バンドは4Gがバンド1/3/5/7/8/34/38/39/40/41、3Gがバンド1/2/5/8/34/39/BC0、2Gがバンド2/3/5/8/BC0。本体サイズは74.3×154×7.16mm(幅×奥行き×高さ)、重量は154g。バッテリは4,000mAhで、バッテリ駆動時間を計測するユーザーにとって“絶望的な長時間駆動”を実現するという。
なお、発表会の冒頭では、iPhone 7/8に似たカメラデザインのフェイクの製品背面写真を見せたが、Smartisanの発表会ではかねてより冒頭から本物の写真を見せた“実績”がないため、会場の観客から「偽物だ!」と野次を飛ばされるシーンがあった。羅氏は「そんなフェイク写真作る暇なんてないよ」と笑ったが、価格発表時に本物の写真を見せ、「狭額縁でデュアルレンズ背面カメラを収めるのは簡単ではない。エンジニアリングで苦労して、このような(美しい)外観に仕上げることができた」と本音を語った。
また、いつもならSmartisanの発表会ではSmartisan OSの新機能について語られることが多いのだが、今回はハードウェアの発表だけにとどまった。次期OSの大規模アップデートは5月15日(中国時間)を予定しており、発表会は北京国家体育場(愛称:鳥の巣)で行なわれる。
羅氏は「私は幼稚なので、新機能のあまりのすごさに失禁してしまう参加者のために、紙おむつを配布する予定だったが、それではうちの開発者が紙おむつの開発に注力してしまうので、冗談にとどめておこう。でも入場チケット(筆者注:Smartisanの発表会はチケット制で、一般のユーザーも入場可能)には紙おむつのマークを印刷しておくよ」とのことだった。