ニュース
本格的な“フェイク着信”機能を備えたスマホ「堅果 Pro」
2017年5月10日 18:23
中国Smartisanは9日(現地時間)、ミドルレンジ向けスマートフォン「堅果 Pro」(堅果はナッツの意味)を発表した。価格は32GB版が1,499元(約25,000円)、64GB版が1,799元(約3万円)、128GB版が2,299元(約38,000円)となっている。
今やiPhone 6/7に似せたようなカーブを描くスマートフォンの方が市場に多いのだが、iPhone 5/5s/SEを彷彿とさせるシャープなフォルムが特徴。OSにはAndroidをベースとした独自の「Smartisan 3.6」を採用している。
主な仕様は、CPUがSnapdragon 625(32GB版)または626(64GB/128GB版)、メモリ4GB、1,920×1,080ドット表示対応5.5型インセル液晶ディスプレイ、Corningのゴリラガラス3などを搭載する。
また、ミドルレンジとしてはめずらしく、背面に1,300万画素のデュアルカメラを搭載。F2.0の大口径レンズによる背景ボケも楽しめるとしている。インターフェイスはIEEE 802.11ac、Bluetooth 4.2、GPS、指紋センサーなどを搭載。128GB版にはNFC機能も備える。
対応通信およびバンドは、FDD-LTEが1/2/3/5/8、TD-LTEが38/39/40/41、WCDMAが1/2/5/8、TD-SCDMAが34/39、EVDOがC0/C1、GSMが2/3/5/8、CDMA 1XがC0/C1となっている。
バッテリは3,500mAhで、QuickCharge 3.0をサポート。プロセッサの低消費電力最適化により、1回の充電で丸一日利用できるという。
本格的なフェイク着信
さて、堅果 Proをハードウェア的に見ると、なんら変哲のないごくごく普通のスマートフォンといった感想であり、日本で使えるわけでもないため、PC Watchでわざわざ紹介するなとおっしゃるだろう。しかし本製品の肝はソフトウェア面で、ほかのスマートフォンメーカーも見習うべきユニークな機能が多数実装されている。
その1つがフェイク着信機能の「模擬来電」だ。たとえば話したくない人と仕方なく話している場合や、会議が長引いている場合、フェイク着信はその場を抜け出す口実になる。「仕方なく合コンに付き合わされている場合、30分後に上司からの着信をセットしておこう。気の合わない相手なら応答してその場を抜け出せばいいし、気の合う相手なら大胆に拒否して話し続ければいい」。同社の製品発表会でこんな使い方を提案してみせた。
この模擬来電のユニークなところは、ちゃんと“相手”が喋ってくれる点だ。このスマートフォンから漏れ出た声によって、周りにあたかも本当に電話に出ているように見せかけることができるわけだ。
しかも“相手”が何を喋るかをユーザーが事前にテキスト入力しておけば、合成音声によって読み上げてくれる。2秒単位で空白を入れておけるので、一方的に“相手”が喋るといったことが避けられる。さらに、北京語のみならず、広東語や四川語といった方言、そして英語の読み上げにも対応するので、住む地方に特化したフェイク着信を実現できる。
日本国内ではすでにフェイク着信機能を搭載した携帯電話があるし、スマートフォンアプリでもいくつかあるようだが、ここまで真面目に本格的な実装をしたのは本機が初だろう。
実はこの機能は、4月1日のエイプリルフールのときに考案されたものだそうだ。しかし社内で実際の製品に載せようというプロジェクトが走ろうとしたとき、賛成派と反対派に分かれた。反対派の意見はもちろん「そんな気まずいシーンに出会ったことは今までにないから」だ。そこで、社内でこの実装に関して会議で討論することとなった。同社の会議には1つルールがあり、それが「機能の実装をするかしないか決まるまで、会議を解散させない」である。そしてこの会議は話が平行線のまま、時間だけが過ぎていった。ついに誰も発言しなくなってから10分、反対派のグループリーダーが「今、この機能の必要性を知った」と発言、実装に至った--という逸話も発表会で語られた。
ユニークな文字編集機能やメモ機能も
フェイク着信の機能でこそアプリで実現できるかもしれないが、Smartisan OSにはそのほかの多くのユニークな機能も多数実装されている。たとえば、中国語や英語を単語単位または文字で区切り、コピー&ペースト、挿入といった編集作業をしやすくするための「大爆発(Big Bang 2.0)」(この機能はSmartisanの原点でもある)、撮った写真から文字をOCRする機能も標準で搭載している。
また、画面上の任意の単語を1タップで意味を調べたり、Big Bangで区切って適当に切り貼りした言葉や、撮った写真または共有された画像を、画面右端に出てくるアプリケーションのバーにドラッグすることで、すぐに共有したり検索したりできる「One Step 1.5」もユニークだ。
これまでのOne Step 1.0では、テキストの中に住所、日付、食品名といった複数のキーワードが含まれていた場合、ユーザーが自らBig Bangで単語を切って、その単語で検索しなければならなかったが、One Step 1.5では自動的に文章を理解し、地図にドラッグしたのであれば住所だけを抜き出して検索、カレンダーならば日付だけを抜き出して登録、レシピアプリであれば食品名だけを抜き出して検索できるようになった。また、キーワードが複数含まれる場合は、どちらを選ぶか提示するようになった。
思いついたアイデアをすぐに音声で保存する「Idea Pills」も特徴。ホームボタン長押しで起動するこの機能に、声を吹き込んで、タグ付きのメモとして残せる。声は自動的に内蔵の音声認識機能を使って文字に変換される。ネットワーク環境が良い場合、自動的にクラウドを使った精度の高い音声認識技術を使って変換される。しかし、オリジナルの音声も残されるので、間違っている場合はそれを聞いて、後からBig Bangを使って編集することも可能だ。
ちなみにSmartisanはソフトウェアオリエンテッドの会社であり、Smartisan OSはXiaomiの「Mi 3」と「Mi 4」、OnePlusの「1」、Samsungの「Galaxy S5」、そしてGoogleの「Nexus 5」向けのROMが提供されているため、Smartisanのスマートフォンがないと使えないわけではないようだ。
余談だが、堅果 Proの発表会は中国時間の9日19時30分よりストリーミング中継がなされ、実際には約20分の遅れを持って開始されたのだが、OS部分の説明で約2時間、スマートフォンの説明で約1時間が割かれ、合計でなんと23時まで、説明会が3時間超にもおよんだ。発表会はメディアのみならず、多くのファンが詰めかけていた。発表会の大半は羅永浩CEO自らプレゼンテーションを行なっていたのだが、難しい単語をできるだけ用いず、冗談や俗語混じりで非常にわかりやすく噛み砕いた説明が印象的だった。