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東京大学、皮膚に合わせて伸縮する「スキンディスプレイ」

 東京大学大学院工学系研究科 教授の染谷隆夫博士および大日本印刷株式会社の研究チームは17日、薄型で伸縮自在、皮膚に貼り付けて伸縮する「スキンディスプレイ」を開発したと発表した。

 独自の伸縮性ハイブリッド電子実装技術により、16×24個のマイクロ発光ダイオードと、伸縮性配線をゴムシートに実装。皮膚にフィットするように装着した状態で、スキンセンサーで計測した心電波形の動画表示に成功した。

 伸縮可能なディスプレイを皮膚の形状に合わせてフィットさせ、かつ人の動きに追従させた状態で、1画素の故障もなく動画を表示できたのは今回が世界初。

 今回開発されたシートの全体の厚みは約1mmで、繰り返し45%伸縮させても電気的/機械的特性が損なわれないため、皮膚に貼り付けても人の動きを妨げない。もっとも伸ばした状態と、もっとも縮めた状態の解像度はそれぞれ4mmと2.4mm、実効表示面積はそれぞれ64×96mmと38×58mm。

 実装されたマイクロLEDの大きさは1×0.5mm、発光波長は赤色となる630nm、駆動電圧は2V。パッシブマトリクス方式で駆動し、リフレッシュレートは60Hz、最大消費電力は13.8mWだった。

 従来の方法では、硬い電子素材と柔らかい電子素材が混載されたゴムシートを伸ばすと、硬い素材と柔らかい素材の接合部分に応力が集中するため壊れるが、応力の集中を避ける構造を採用することで機械的な耐久性を格段に向上させられたという。

 加えて、伸縮性の配線にスクリーン印刷法による銀配線、マイクロLEDの実装には一般的なマウンタとはんだペーストという、産業界で実績のある量産性に優れる実装方法を採用しているため、早期の実用化と将来の低コスト化が期待できるとしている。

 同研究グループでは2009年5月に世界初の伸縮性の16×16個の有機エレクトロルミネセンス(EL)ディスプレイを発表。2016年8月にも1μmの極薄有機EL素子による7セグメントディスプレイを発表しているが、今回は発光素子として無機半導体を採用することにより、従来よりも高い大気安定性と機械的耐久性を実現させた。

 ウェアラブルデバイスやスマートデバイスによる医療の近代化が進む一方で、スマートデバイスにある情報にアクセスするのは、入院中の高齢者や幼児にとっては難しく、計測から情報表示までの一連の流れを自然にしてアクセシビリティを高める技術として期待される。