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東北大、量子速度限界がマクロな物理法則にも存在することを発見

 東北大学大学院 情報科学研究科は、「量子速度限界」が、マクロなスケールの集団現象においても、普遍的に存在する不等式であることを明らかにしたと発表した。

 人間に身近な物理現象を記述するニュートン力学に対し、原子や分子など、ミクロなスケールにおいては、量子力学と呼ばれる異なる原理が成立している。その量子力学に従うミクロスケールでの運動においては、「量子速度限界」と呼ばれる、運動に関する不等式の存在が知られている。

 量子力学では、量子系の状態を表す波動関数の時間的変化を記述する方程式をシュレーディンガー方程式と呼び、その方程式に従い、ある初期状態から、その状態ともっとも異なる状態までに変化する時間を見積もると、これ以上は短くはできないという限界が見つかる。この運動に関する不等式が「量子速度限界」と呼ばれている。

 これまで、量子速度限界は量子力学特有の現象で、そのような運動の制限は、ミクロなスケールでのみ存在するものと考えられてきた。

 研究では、量子力学の基本から見直すことで、量子速度限界の根本的起源が、量子力学特有の現象を引き起こす不確定性原理にはなく、さまざまな現象を記述する運動方程式に広く成立するものであることを明らかにしたという。

 その結果、マクロなスケールにおける集団現象の振る舞いを記述する多種の方程式において、さまざまな速度限界を発見した。

 まず、量子力学の形成には、「不確定性原理」と呼ばれるミクロなスケールにおいて発現する特性が関わっている。

 不確定性原理は、「ミクロなスケールにおける、原子や分子の位置に関する測定結果のバラツキと、運動量の測定結果のバラツキの両者の積を、ある普遍的な数値よりも小さくすることができない」という原理で、似たような関係式を持つものに、「原子や分子の持つエネルギーのバラツキ度合いと、異なる状態へと変化する際にかかる時間の積が、普遍的な数値よりも小さくすることができない」というエネルギーと時間の不確定性関係と呼ばれるものがある。

 その関係から量子速度限界が導かれるが、東北大によれば、注意深く考察をすると、量子力学の根本的な原理である不確定性原理とはまったく別個に示される性質であることがわかり、研究成果でも、その点に注目することで活動が展開されたという。

 同大学では、本研究をきっかけに、さまざまな運動に関係した普遍的な原理の解明が進むことを期待しているとする。研究成果は、アメリカ物理学会が発行する「Physical Review Letters誌」2月9日号で公開される予定。