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富士通がコンピュータの今後を語る
2019年11月22日 06:00
富士通クライアントコンピューティング(FCCL)が、島根県出雲市の島根富士通においてDay567出雲プレス向け説明会を開催、発足から567日目となる11月20日を記念し、これからの同社のあり方を語った。
富士通株式会社と中国Lenovoグループ、株式会社日本政策投資銀行(DBJ)がグローバル市場に向けたPCおよび関連製品の研究開発・設計・製造・販売を行なう合弁会社を設立する戦略的提携について、正式に合意したと発表したのが2017年11月2日だった。
富士通は、2016年から100%出資でPC事業を富士通クライアントコンピューティング株式会社(FCCL)へと分社化していたが、新生合弁会社FCCLを設立、このタイミングで出資額の割合はLenovoが51%、富士通が44%、DBJが5%となり、富士通のPC事業は事実上、Lenovo傘下に入った。
今回のプレス向け説明会は、当初の区切りであるDay1000の半分を超えたところで、切りがよく将来を感じさせる語呂のよい日付が選ばれた。そして、フルスクペクトラムで、あらゆるフォームファクタのPCを作ってきた同社の本質として、コンピューティングを社会に適用、実装、浸透させることを改めて確認するという趣旨のものだ。
同社代表取締役社長齋藤邦彰氏は、Day1000まで半分を超えた今、PC自体が9割を超えるビジネスとして確立されている現状の中で、FCCLが今までやっていない領域に乗り出すことをアピールしながらも、そこにあるのはものづくりの原点であると強調する。
実際、今年の9月には、1990年に開設された島根工場の歴史のなかで、もっとも多い月間30万台近い台数を作り、その最大月間製造数を更新した。工場での生産はBTOが97%を占め、複雑化する工程の中で、来年初のWindows 7サポート終了と、消費増税前の駆け込み需要を見事に乗り切った。まさにものづくりにこだわる同工場の手柄だ。
齋藤氏はFCCLのミッションを「パソコンを作るのが得意なメーカーがフルスクペクトラムで、あらゆるフォームファクタのPCを作ってきたが、本質は、コンピューティングエッジの会社」と語る。コンピューティングを社会に適用、実装、浸透させることをミッションとし、顧客の生活をコンピューティングでよりよくすることをめざしてきたという。
かねてより同社がめざすと公言してきたように、Society 5.0に向けて事業領域を拡大しようとしていることを改めて表明し、現在のFCCLの製品は、その高付加価値戦略が功を奏していることを示した。売上げの伸びとして、台数は111%伸びているが、金額ベースではもっと伸びが大きいことをアピールした。
FCCLのPCにはAIアシスタントとしてふくまろが搭載されているが、齋藤氏がいうには、最終的なパーソナルコンピューターはふくまろだという。いったいそれはどういう意味なのか。同社執行役員常務の仁川進氏は、齋藤氏の話を受けて、新領域への取り組みを具体的に説明した。
クラウド依存だけでは、実はユーザーの利便性が低下することや、外部要因の影響を受けることを懸念し、FCCLのアプローチはもっと身近なところで解決することだと仁川氏はいう。それこそがクライアントコンピューティングだというのだ。
そこで、同社は、ICCP Inter-connected computing platformの考え方を示す。世の中的にはエッジといわれているものだが、FCCLはそうはいわない。たとえば、MIBと呼ばれる製品が紹介され、ネットワーク負荷を分散するような仕組みがデモされた。いってみれば、学習教室でWi-Fiルータとして振る舞いつつ、外部とのやりとりをキャッシュし、学校と外部をつなぐ回線のトラフィックを最小限に抑えることができるという。何百人もが一度に教材をダウンロードするような負荷を1本の光回線でまかなうことに無理がある以上、こうしたインテリジェントな仕組みが必要だという。
また、Infini Brainと呼ばれる製品も披露された。PCプラットフォームとAIプロセッサ(Linux)をFCCLの独自アーキテクチャでつなぐ装置で、それぞれのプラットフォームが得意な面を活かすことができる。こちらのデモでは、コンビニ内に設置されたカメラがとらえた客の映像をAIが解析し、人相や服装、万引きなどにつながる行動などを検知した場合、超指向性スピーカーを使って「いらっしゃいませ」と呼びかける実証実験が披露された。こうした設備によって、化粧品など高額商品を扱うエリアでの万引き被害額が激減したという事例もあるという。