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Kirin 970によるAIが切り開く新たなスマホの可能性

Kirin 970によるAIが切り開く新たなスマホの可能性 Mate 10とMate 10 Proを披露するリチャード・ユー氏
Mate 10とMate 10 Proを披露するリチャード・ユー氏

 Huaweiがドイツ・ミュンヘンでグローバルイベントを開催し、同社フラグシップスマートフォンMateシリーズの刷新を発表、Mate 10、Mate 10 Pro、そして、Mate 10 ProをベースにしたMate 10 PORSCHE Designを発表した。世界各国の報道関係者やHuaweiのファンなどが、会場となったミュンヘン市内のオリンピックパークにある2,000人規模を収容するホールを埋め尽くした。

 基調講演でステージに立ったリチャード・ユー氏(同社コンシューマー・ビジネス・グループCEO)は、スマートフォンのこの10年を振り返り、社会生活、オフィスワーク、読書、買い物、旅行、娯楽、学習、スポーツといった、暮らしのあらゆるシーンに変革を起こし、今、人々にとってますます大事な存在になりつつあると切り出した。そして、今回発表するMateシリーズはその暮らしをますます豊かなものにするという。

Kirin 970によるAIが切り開く新たなスマホの可能性 発表会イベントはミュンヘン市内のオリンピックパークのオリンピックタワーふもとにあるホールで開催された
発表会イベントはミュンヘン市内のオリンピックパークのオリンピックタワーふもとにあるホールで開催された

 Mate 10とMate 10 Proをポケットから取り出し、意気揚々と観衆に見せるユー氏。そしてそのハードウェアの斬新さを、随所でiPhone 8やGalaxy 8と比較しながら、1つ1つ説明していった。

 Mate 10 Proは一言で言えば、持ちやすく見やすい6型ディスプレイを5.5型デバイスのサイズに詰め込んだスマートフォンだ。前面はフルビューディスプレイに覆われ、背面には指紋センサーとシグネチャーストライプと呼ばれるデザインでライカとの協業によるデュアルカメラが装備されている。背面側は丸みを帯びた3Dカーブドデザインとなっている。また、筐体はIP67防塵防水に対応している。

 カラーバリエーションは、4色で、チタニウムグレー、モカブラウン、ミッドナイトブルー、ピンクゴールドが用意される。

 RGBWディスプレイとされるOLEDは、明るくくっきりとしたコントラストをもちながらバックライトを使った液晶より14%も電力消費を抑制することができるという。

 ユー氏はここでも、iPhone 8 Plusを例に出し、その優位性を訴える。画面が筐体前面に占める割合の高さなど、逐一、iPhone、Galaxyなどが引き合いに出される。とくに、背面の指紋センサーの位置は、Galaxyのようにカメラレンズをさわらない位置にあることを強調すると、会場は笑いに包まれた。

Kirin 970によるAIが切り開く新たなスマホの可能性 大きいのにコンパクトで手のひらにおさまる持ちやすさを強調
大きいのにコンパクトで手のひらにおさまる持ちやすさを強調
Kirin 970によるAIが切り開く新たなスマホの可能性 あらゆる場面で他社機と比較された
Kirin 970によるAIが切り開く新たなスマホの可能性 あらゆる場面で他社機と比較された
あらゆる場面で他社機と比較された
Kirin 970によるAIが切り開く新たなスマホの可能性 性能が強調される
性能が強調される
Kirin 970によるAIが切り開く新たなスマホの可能性 IP67防塵防水対応
IP67防塵防水対応

 ユー氏はMate 10をそのデザイン、性能、写真処理、ユーザー体験の面から次々にその優位性を説いていく。近年のスマートフォン新製品発表では、コンセプトやクラウド連携などが強調されることが多いのだが、今回は、あくまでもハードウェア面にフォーカスがあてられていた。

 Kirin 970のAI対応だが、スマートフォンとしての性能に大きな貢献を果たしているという。ユー氏はHuaweiAIエンジン=Kirin 970プロセッサ+同社独自ユーザーインターフェイス「EMUI 8.0」であるとし、10nmプロセスによる高速化、8コアCPU、12コアGPUによる高速省電力化、そして、ニューロネットワーク処理が得意なNPUを使い、100枚の写真を認識するのにiPhone 8 Plusと比べて20倍速く、Galaxy Note 8とは比べものにならないと溜飲を下げる。

 また、AIによる最適化では、ユーザーの使い方を学習して処理性能を向上させるという。典型的なユーザーモデルを検出し、初期の使い心地が18カ月たっても維持され遅くならないような最適化がなされる。ユーザーの振る舞い予測、リソース配置、状況認識などが学習されるAI活用ができてこその機能だ。

 通信機としてはどうか。4.5G LTEに対応とユー氏はいう。世界初の1.2Gbps Cat.18でデュアルVoLTEデュアル4Gもこれまた世界初だ。

 GEOエンハンスドGPSの優れたトラッキングもデモで紹介された。こちらは、インテリジェントナビゲーションにおいて、トンネルや複雑なインターチェンジ、2階建て道路などでも自位置を見失うことなく正確にトラッキングできる。上海の道路での状況がビデオで紹介され、トンネル内でもロケーションを見失わず、見失ってもすぐに復帰するなど、他社機を圧倒していることが紹介されていた。

 一方、4,000mAhのバッテリは、Mate9よりも3割長い利用時間を実現する。ヘビーユーザーでも1日以上、一般的なユーザーなら3日程度は使えるという。充電はHuawei独自のSuperChargeをサポートし、iPhone 8 Plusよりも50%高速に充電可能、30分間で58%を充電する。SuperChargeは電圧を5Vから4.5Vに下げて電流を増やして急速充電を実現する機構だが、その安全性はきわめて高いという。

 カメラはどうか。ライカとの協業によるカメラモジュールは、そのレスポンス、合焦の速さ、動体予測、暗所撮影などをHuawei独自のISP(イメージシグナルプロセッサ)が支援することで圧倒的に優れた体験をもたらすとユー氏。ここでも細かい数字のオンパレードだ。

 AIはカメラが捉えた被写体が何であるかを認識することができる。文字、食べ物、青空、雪、海、犬、ネコ、夕暮れ、花、人物といった13種類の被写体を識別し、最適な色合い、コントラストでシーンを記録する。アーティスティックな写真のために学習済みの知識データを実装、ほぼ1億シーンのイメージを学習済みだ。料理の写真ならサーモンの赤を強調、花の写真ではひまわりの黄色の彩度を上げ、猫の写真なら毛のふさふさ感をシャープネスで表現する。これらのデモはわざわざ本体を機内モードにして披露する念の入れようだった。

 PC Modeの実装も大きなトピックスだ。ポケットに入るデスクトップとして、マルチタスク、マルチウィンドウをサポート、キーボードとマウスを使って操作ができる。このモード時には本体はスマートフォンのままであると同時に、タッチパッドとして使うこともできる。デモでは大型ディスプレイにケーブル1本で接続し、まるでPCを操作しているような環境が得られる様子が披露された。

 AIについては、オープンAIエコシステムの確立のために、サードパーティアプリがHuaweiのAIプラットフォームを活用できるようにしていくという。各アプリがAndorodのAI APIを利用できるのと同時にHiAI APIがランタイム等で提供されることになる。

 Mate 10 Proの価格は6GB+128GBモデルで799ユーロ、11月に発売され、日本も第1次発売国に含まれるとして、ユー氏はハードウェアに始まりハードウェアに終わる基調講演の幕を閉じた。

 世界初のAI対応プロセッサKirin 970搭載スマートフォンだが、そのAIが本領を発揮するのはまだまだこれからであり、その可能性は未知数だ。そういう意味では成長するスマートフォンといってもいいだろう。スマートフォンの進化形態の一面を見せてくれた製品だと言えそうだ。

Kirin 970によるAIが切り開く新たなスマホの可能性 Kirin 970とHiAIが性能を徹底支援
Kirin 970とHiAIが性能を徹底支援
Kirin 970によるAIが切り開く新たなスマホの可能性 PCモードではMate 10をPCのようにデスクトップで使える。
PCモードではMate 10をPCのようにデスクトップで使える。
Kirin 970によるAIが切り開く新たなスマホの可能性 AI活用のためのプラットフォームをサードパーティに開放し、新たなエコシステムの確立を企む
AI活用のためのプラットフォームをサードパーティに開放し、新たなエコシステムの確立を企む