やじうまミニレビュー
4万円超えの60%ゲーミングキーボードは使用感も機能も最高級。「Apex Pro Mini Wireless」を試す
2022年9月26日 06:37
SteelSeriesから、ゲーミングキーボード「Apex Pro Mini Wireless」が発売された。OmniPointメカニカルスイッチという独自のキースイッチを採用し、ワイヤレス接続にも対応した、コンパクトな60%キーボードとなっている。
本機の価格は4万3,090円前後。昨今の急激な円安や半導体不足の影響も受けているだろうが、高級ゲーミングキーボードの中でも相当高価な部類に入る。となれば、その価格なりの何かが本機にはあるはずだ。実機をお借りしたので早速見ていきたい。
1億回の耐久性を誇る特殊スイッチを採用
まずは主なスペックの確認から。
【表】Apex Pro Mini Wirelessの主なスペック | |
---|---|
キースイッチ | OmniPoint 2.0スイッチ |
押下圧 | 非公開 |
押下耐久性 | 1億回 |
キーストローク | 非公開 |
バックライト | RGB(キーごと) |
バッテリ | 内蔵充電池 |
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 293×103×40.3mm |
インターフェイス | USB(充電/有線接続兼用)、2.4GHzワイヤレスアダプタ、Bluetooth |
重量 | 543g |
価格 | 4万3,090円前後 |
キースイッチはOmniPointメカニカルスイッチで、押下耐久性は1億回とする。毎秒1回入力して3年強かかる数字で、経年劣化など別の理由で故障する可能性はあるので、一生ものと断言はできないものの、耐久性としては申し分ない。
キーストロークや押下圧のデータは非公開だが、ほかの製品でも採用実績のあるOmniPointメカニカルスイッチなので、それらと同等と考えていいだろう。キーストロークに関しては、アクチュエーションポイントが0.2~3.8mmの間で調整できるとしているので、おそらく4mm程度ではないかと思われる。実際の感触でも一般的なキーボードと同等だ。
接続方法は、USB Type-C接続の2.4GHzワイヤレスアダプタとBluetoothに対応。またUSBケーブルによる有線接続にも対応する。USBケーブルは本体側がType-C、PC側がType-Aとなる。ケーブル長は実測で約2.3m。
またUSB Type-C(メス) to Type-C(メス)の延長ケーブルアダプタも付属し、これにワイヤレスアダプタとUSBケーブルを接続することで、PC側はType-Aで接続して2.4GHzワイヤレス接続ができる。Type-CポートがないPCでもワイヤレスで使用できるとともに、ワイヤレスアダプタをPCから離れた位置に持ってこられる。
バッテリは内蔵の充電池を使用。連続使用時間は、2.4GHzワイヤレスで30時間、Bluetoothで40時間。いずれもキーボードバックライトを標準設定で使用した場合としており、バックライトを調節すればより長時間使用できるだろう。
リニアで軽めのキータッチ
次に実機を見ていく。キー配列はテンキーレスなだけでなく、ファンクションキーやカーソルキーも省かれた60%レイアウトを採用。右下の方にあるSteelSeriesロゴのキーがファンクションキー的な役割になっており、キーの前面に白文字で書かれた機能に対応する。
このロゴキーを使うことでファンクションキーや半角/全角キー、カーソルキーやDelキーなども一応は使える。ただ実用性は落ちるので、それらのキーを使わないゲームに適した超コンパクトキーボードと考えるべきだろう。なおキートップの印刷はアルファベットのみだが、配列は日本語キーボードになっている(英語配列モデルも選択可)。
キーの機能は専用ソフトウェア「SteelSeries GG」をインストールし、これに含まれる「SteelSeries Engine」でカスタマイズできる。各キーの機能を自由に入れ替えられるほか、マクロ機能やOSのショートカット機能、マウスボタン機能など、非常に幅広い設定変更ができる。
キータッチは押し始めから底打ちまで引っかかりのないリニアタイプ。内部にバネが入っており、無接触のキーストローク動作を謳う。説明からすると、東プレの「REALFORCE」シリーズに使われている無接点静電容量方式に似ている。
筆者は普段、REALFORCEシリーズでも押下圧が軽い30gタイプを使用しているが、本機のタッチはとてもよく似ている。さすがに押下圧は30gタイプよりいくぶん重くなるが、キーボードを入れ替えて使った際のタッチの違和感はかなり少ない。スペースキーのような大型のキーの端を押しても、ブレなくスムーズに押下される。キータッチは最上級の部類と言っていい。
騒音に関しては、一般的なメカニカルキーボードに比べれば比較的小さい。ややカチャカチャという高めの音は出るが、特に静音にこだわる人でない限りは問題にならないだろう。
バックライトはロゴキー+CまたはVで、明るさの調整が可能。SteelSeries Engineの中にある「PrismSync」を使うことで、光り方や色、バックライトが消えるまでの時間などを設定できる。PrismSyncに対応した他製品と光の演出を合わせることもできるようだ。
外装はプラスチックだが、トッププレートだけは「ジェット機と同じアルミニウムを使用」しているという。サイズが小さいこともあり見た目は軽そうだが、実際に手に取ると底面の辺りにかなり重みがある。滑り止めも裏面に4点あり、使用中にズレ動くような心配はない。
気になる点としては、一般的なキーボードに比べて、キーの位置がやや高い。特に手前側が高めで、ホームポジションに手を置いた時に、スペースキーが妙に高く感じる。60%レイアウトのコンパクトな筐体なので、高さがあるのが余計に気になる。慣れの範疇ではあるが、高めのリストレストと合わせると使い勝手がよくなりそうだ。
裏面の脚部(チルトレッグ)は、大小2段階に引き出せるようになっている。角度に関しては比較的自由度が高い。
接続性については、2.4GHzワイヤレス接続でも入力落ちや遅延などの不具合は感じられず、有線との違いは分からない。有線ケーブルは網組でやや太いが、それなりに柔軟性もあるので、接続に不都合はない。
自宅では有線接続で使用しつつ、外出時には2.4GHzワイヤレスやBluetooth接続で使用する、という使い方も考えられる。接続方式が3つもあるので、組み合わせの自由度が高いのも魅力だ。
0.2mmのアクチュエーションポイントも良好な使用感
気になるアクチュエーションポイントの変更機能についても見ておこう。SteelSeries Engineを使用して変更でき、調整幅は0.2~3.8mmの0.1mm単位、標準は1.8mmに設定されている。キー1つずつ個別に設定可能だ。
試しに最短の0.2mmに設定してみると、ホームポジションに指を添えた程度では反応しないものの、少しでも押してキーが動くと即座に入力される。これでも文字入力に不都合が出るという感じはなく、普通に文字入力はできるし、誤入力が発生するわけでもない。
逆に最も深い3.8mmにしてみたところ、軽めの入力だと文字が抜けてしまうことがある。きちんと底打ちする気持ちで入力しなければならず、0.2mmの設定とは使用感が大きく異なる。
ゲームでの高速応答性に期待して使うのであれば、まずは最短の0.2mmを試してみるのがよさそうだ。もしそれでキーを押してしまう誤入力があるなら、少し深く調整していくのがいい。筆者が個人的に使うなら0.2mmでも不都合はない印象だ。
また本機にはデュアルアクチュエーション機能も用意されている。これはアクチュエーションポイントを1つのキーに対して2つ持たせることで、浅い入力と深い入力で異なる入力判定をさせるというもの。
例えば0.2mmにAキー、3.8mmにBキーを設定すれば、軽く入力した時にはAと入力され、底打ちすればBと入力される。ただしこの場合、底打ちすると「ABA」という入力で認識されるようで、文字入力には適さない。
使用法はまさにゲームで、浅く押せばゆっくり歩く、底打ちすれば速く走る、といった挙動の違いに使い分けられる。アナログチックな挙動ができ、重宝するゲームも多そうだ。
設定方法は、SteelSeries Engineの本機の設定で、「アクチュエーション」で浅い方のアクチュエーションポイントを設定した後、「Dual Actuation」で深い方のアクチュエーションポイントを設定。その後「Dual Bindings」で深い方の入力を指定する。通常のキー設定と同様、マクロやマウスボタンなどの割り当ても可能だ。
60%キーボードとして最高の使用感
4万3,090円前後という、高級キーボードの中でもまた特別に高価な本機。しかもキー数が少なくコンパクトな60%キーボードでの価格なので、率直に言って尋常ではない。
しかしながら、OmniPoint 2.0スイッチは確かに強力だ。スムーズで軽めのリニアタッチは一般的なキースイッチとして見ても実に良質。さらに極めて幅広いアクチュエーションポイントの設定が可能で、ゲーミング向けのキーボードとしては機能面でも使用感でも最高級であることは間違いない。
接続も2.4GHzワイヤレスとBluetooth、有線を選べて自由度が高い。またこの手のハイエンドゲーミングキーボードでは英語配列の製品しかないものもあるが、きちんと日本語配列になっているのも素晴らしい。
60%レイアウトというカテゴリ自体で好みが分かれるものの、製品自体はなかなかケチの付け所がない。強いて言えば、キーの位置がやや高いことと、ノイズ対策をもう一声がんばって静音仕様にしてほしかったことくらい。その点に納得できれば、まさに一生もののキーボードになりそうだ。