やじうまミニレビュー

初めてのマイクはこれでいい、これがいい。2年前のマイクでも買いなおすワケ

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。
Seiren Mini

 動画投稿を始めようとして必要な周辺機器を購入する際、何を選べばよいのか最も分からないのはマイクだと思っている。仕事や趣味で音楽に関わっていたりしない限り、自分の声を録音するような機会はなかなかない。となれば、録音した自分の声をちゃんと聴く機会もなかなかないわけで、そのような状況で自分に合うマイクを見つけるのは非常に難しいからだ。

 運よく最初に手に取ったマイクが相性の良いものであればよいが、そうでなかった場合、動画に声を入れるのを諦めてしまったり、逆にさまざまなマイクに手を出してマイク沼にはまってしまったりしてしまう。ちなみに筆者は沼にはまった人で、ゲーミングPCを購入できるくらいの金額をかれこれマイクに使ってしまっている。

 マイク沼はそれはそれで楽しい世界なのだが、動画投稿目的であることを考えるとほかの周辺機器にお金を使ったほうが健全だ。ということで今回は「マイクのことは何も知らないが、動画配信者っぽいマイクが欲しい」という方が盛大に散財するのを防ぐべく、初めてのマイクとしておすすめのRazer「Seiren Mini」を紹介する。

Seiren Miniについて

パッケージ

 Seiren Miniは、14mmのコンデンサカプセルを搭載し、本体サイズが約90×80×161.1mm(幅×奥行き×高さ、スタンド装着時)で重量が約280gの小型軽量USBコンデンサマイクだ。記事作成時点での価格は、Amazonで6,272円。

 主な仕様は、サンプリングレートが44.1kHz~48kHzで、ビットレートが16bit、周波数特性が20Hz~20kHz、THDが1%未満(1kHz)である。とはいえ、マイク初心者だと何を言っているのかさっぱり分からないと思うので、「マイクのスペック的にはYouTubeに投稿する動画に使用してもまったく問題ない」とだけ理解していただければ十分である。

同梱品

 Seiren Miniの特筆すべき特徴は、どの向きから集音するかという「指向性」にある。本製品の指向性は単一指向性、具体的には「スーパーカーディオイド」という集音パターンを採用している。

 簡単に説明すると、集音範囲が前面に集中している単一指向性の一般的なパターンである「カーディオイド」よりもさらに集音範囲を狭めて、マイク前面の声のみをより集音するようにしたものがこのスーパーカーディオイドである。

 次の画像はSeiren Miniの製品ページにある、スーパーカーディオイドとカーディオイドの集音範囲を表わした図である。カーディオイドよりも前面の集音角度が狭いことがお分かりになるだろう。ただ一方で、スーパーカーディオイドではマイク背面も多少集音するようになっているが、これについては後ほど言及する。

RazerのSeiren Mini製品ページより。

 ちなみに、Seiren Miniが発売されたのは2020年11月末。およそ2年前の製品で、筆者は当初友人からこのマイクを借りて使わせてもらっていたのだが、返却の際に実家用マイクとして自分でも購入し、本記事を執筆する数日前に自宅用マイクとして再購入している。

 なぜ買いなおすほどにSeiren Miniが好きなのか、ここからは筆者が思うSeiren Miniの魅力をいくつか紹介する。

Seiren Miniの魅力

 Seiren Miniの魅力としてまず挙げたいのは小型軽量である点だ。設置場所に困ったり周辺機器の操作を邪魔したりすることはなく、携帯性にも優れている。筆者の友人がSeiren Miniを貸してくれたのも、服のポケットに入るサイズと重量(スタンドとケーブル未装着時のサイズ/重量は実測で約55×55×106mm(同)/約116g)で“布教”しやすかったからという理由なあたり、その携帯性の良さを感じ取っていただきたい。

スタンドとケーブル未装着時のサイズ/重量は実測で約55×55×106mm(同)/約116gだ

 携帯性の良さは、他人におすすめしやすいだけでなく、いつでも同じマイクを使えるため自宅と同様の音質を外出先でも保持できるという利点もある。動画用としてもWeb会議用としても、とりあえずSeiren Miniを持っておけば最低限の音質は担保されるという点は大きなメリットだ。

 そしてこのマイクはただ軽くて小さいだけでなく、声だけを必要十分なレベルで綺麗に集音してくれる。スーパーカーディオイドによりノイズが入りにくいことも含めて、(これは主観的な意見ではあるが)ほかのマイクよりも声を聞き取りやすく集音するので、声の集音という性能だけみてもバランスのよいマイクだと思う。

 動画投稿用という視点から見ると、ノイズが入りにくいのは録音後の音声編集作業が減るという利点もあり、これは単純に編集作業が減って楽ができるというだけでなく、ノイズ除去などの音声加工による声がこもって聴こえるといった音質の低下をある程度防ぐことにもなる。

 また、安価であることも魅力だ。筆者が気軽にSeiren Miniを買う最大の理由はなんだかんだこの点で、6,000円台で購入できてしまうものだから「持ち運びで普通によいのだけれど、いつも持っていくし買い足してその場所に置いておこう」という考えに至ってしまう。この使い勝手の良さでこの値段はお得を通り越して少し危険ですらある。

Seiren Miniの性能をフルに使うために

 ここまで魅力を述べてきたが、Seiren Miniを使う上で1点だけ注意したいことがある。それは「使用時はなるべく顔を近づける」ということだ。

 Seiren Miniに限ったことではないが、いくら単一指向性のマイクとはいえ環境音をまったく拾わないというわけではなく、声自体が小さいと相対的にノイズが大きく拾われてあまりよくない録音になってしまうこともある。

 特に本製品はその小ささ故に、普通に設置するとキーボードやマウスといったノイズ発生源から近い位置になってしまいがちで、顔から遠くなりやすいので注意が必要だ。

 また、スーパーカーディオイドの特性上、マイク背面の音をカーディオイドに比べて拾いやすいという面もあるので、次の画像のようにキーボードの前にスタンドで設置すると(顔の位置やタイピング音の大きさにもよるが)タイピング音をかなり拾ってしまう。

スーパーカーディオイドはマイク背面の音を多少拾う性質がある。スタンドを使って設置する際はノイズが発生しそうな物の斜め前あたりに設置すると多少はノイズが入りにくくなる
このように設置してしまうと、キーボードのタイピング音が結構入ってしまう

 ということで、顔に近づける工夫が必要なのだが、ここでおすすめしたいのはマイクアームの使用だ。公式の製品ページにも記載の通り、本製品はネジ径5/8インチのマイクアームに対応している。マイクアームを使うことで容易に顔に近づけるので、Seiren Miniの性能をフルに発揮したノイズの少ない集音ができる。

マイクアームを使った状態。撮影の都合上キーボードからそこまで離れておらず、キーボード操作の邪魔になりそうな設置になってしまっているが、これでもタイピング音はかなり軽減される

 なお、マイクアームは別途購入になるため安価であるという利点は多少失われてしまうが、マイクアームはAmazonで「Seiren Mini マイクアーム」などと検索すると2,000円前後から売っているので、それを買ってたとしても十分安く録音環境を構築できるだろう。

初めてのマイクはこれでいい、これがいい

 Seiren Miniは、ミュートボタンも音量調節ボタンもない非常にシンプルなコンデンサマイクだ。機能が最低限であるゆえか小型軽量で、さらには専用ソフトでの設定も不要でUSB接続すれば即使用できるため、ピンマイクのような使い勝手の良さがある。細かい調節をしなくても必要十分なレベルで声を集音してくれる本製品は、初めてのマイクとして好適だ。

 筆者にとってSeiren Miniは、使うことで自分の声を把握したり用途的に欲しい機能が見えてきたりする、いわば基準となるマイクだと思っている。動画作成や生配信、Web会議などで使っていく中で、ミュートボタンや音量調節ボタンが必要であれば上位モデルを考えてもよいし、逆にちゃんとしたマイクが必要なさそうだと分かったとしても安価なので懐も痛めない。そういったマイク探しの基準としてもマイク初心者には本製品をおすすめしたい。

 もちろん、初心者以外にもSeiren Miniはおすすめだ。実際筆者は、無人島に1つだけマイクを持っていくなら、このマイクを選ぶくらいには好きである(接続機器がないと使えないが)。何度も言うが手に取りやすい価格なので、ぜひ気軽に購入してみて使ってみてはいかがだろうか。