やじうまミニレビュー
ZoomとTeamsで検証。Web会議のノイズ抑制機能はどれだけ効果あるのか
2021年3月27日 09:50
オンライン会議で、自分の声が相手にどんな風に聞こえているのかは普通は気付けないものだ。もしかしたらキーボードを叩いている音がガンガン声に混じっているかもしれないし、自分では全く気にならなかったバックグラウンドノイズが、相手には不快に感じる音になって聞こえているかもしれない。
そういうこともあって、Microsoft TeamsやZoomなどのオンライン会議ツールでは、ソフトウェア的にノイズ抑制機能を用意している。これにより自分の声が相手にとって聞きやすい音になって届けられている、はずだ。「はず」というのは、本当にどれだけノイズが抑制されるものなのか、きちんと確かめる機会がなかなかないから、である。
そこで、ノイズ抑制機能がどれだけノイズを消してくれるのか、実際にMicrosoft TeamsとZoomでオンライン会議を開いて確かめてみることにした。なお、Google Meetもノイズ抑制機能は実装済みのようだが、今回のテストを行なった2021年3月時点で、日本国内では同機能がまだ無効になっているため使用できない。早く使えるようになることを期待したいところだ。
さて、今回テストに利用したPCは、グリーンバックの画質検証でも利用した14型ノートPC「mouse X4-R5」だ。CPUはAMD Ryzen 5 4600H、内蔵GPUにAMD Radeonを搭載している。Web会議の検証ということで、ビジネス向け製品を選択した。
TeamsとZoomでノイズ抑制をオンオフして検証
検証内容は、内蔵のデュアルアレイマイクを使って、太宰治の「人間失格」を朗読しながら、「声のみの場合」「しゃべりながらキーボードを叩いた場合」「しゃべりながら紙をペラペラした場合」の各シチュエーションでどう聞こえるかをチェックしてみた。
まずはMicrosoft Teamsから。こちらはノイズ抑制「低」「高」の2段階と無効の「オフ」から選べるようになっているので、それら3パターンで確認している。ノイズ抑制の程度だけでなく、参考までに各パターンでオンライン会議しているときのPC負荷も調べてみた。
「オフ」では、この時近くで動作させていたデスクトップPCのファンノイズと、エアコンのノイズが入りまくっている。しゃべっている本人としては全く気になっていなかったのだが、録音したものを聞くと「嫌だなあ」という感じ。わずかでもデスクに指が当たったりしただけでも盛大にノイズが発生する。もちろん、タイプ音、紙の音はかなり不快だ。
「低」にすると、しゃべっているときに限ってはファンノイズが消えるようになった。ただ、その名残のように歪んだノイズがかすかに聞こえる。そしてタイプ音も紙のペラペラも騒がしい。このあたりのノイズはほとんど消えていないが、それでもしゃべっている内容はよくわかるので、痛し痒しという感じだろうか。
「高」は、しゃべっている間のファンノイズは完全に消えていて、他のノイズも特に聞こえずクリアだ。タイプ音はほとんど消えているが、その代わり声もところどころ消えかかっている。紙のペラペラ音も同様にほとんど聞こえず、声も若干聞こえにくくなっているけれど、何をしゃべっているかはある程度理解できる。
低と高でこのような差が出る理由だが、Microsoftの資料によると、低では「コンピューターファンやエアコンなど、低レベルの永続的なバックグラウンドノイズを抑制します。この設定は、音楽の再生に使用します」とされ、高では「音声ではないすべてのバックグラウンドサウンドを抑制します」となっている。
つまり、低では、話していないときのファンノイズだけを消すため、しゃべってるときはそれらの音が聞こえるようになり、高では、しゃべっているときのバックグラウンドノイズも消してくれるが、それに伴い、音声にも多少影響がでるわけだ。
PC負荷については、理由はわからないが「高」にした場合にCPU負荷が5%前後と、最も低くなっている。とはいえ、「オフ」と「低」のときは8%程度とせいぜい3%の違いなので、どちらにしても気になるような負荷ではない。
続いてZoomだ。Zoomのノイズ抑制機能は「自動」、「低」、「中程度」、「高」の4段階から選べるようになっており、明確にオフにすることはできない。逆に言うと、ユーザーが何も意識しなくても、ノイズ抑制が働いているということだ。今回は「低」「中程度」「高」の3パターンを試している。それでは、先ほどと同じように人間失格の朗読を聞いていただこう。
最初の「低」の時点で、すでに背景のファンノイズはほとんど聞こえない。しゃべっていないときも聞こえないし、しゃべり始めても声の聞こえ方に不自然さはないようだ。しかし、やはりタイプ音と紙の音は消されず、そのまま残っている感じ。とにかく耳障りである。
「中程度」も、ファンノイズはもちろん聞こえない。タイプ音と紙の音は、なぜか聞こえるときと、聞こえないときが交互にやってくる。そして、聞こえないときは同時に声もかき消されてしまっている。
「高」になると、タイプ音などのノイズを出していないときでも、普段のしゃべっている言葉の一部がノイズ判定されてしまうのか、聞こえにくくなっているところがある。タイプ音と紙の音はほとんど聞こえないものの、やはり同時に声も消され、ディティールが削られて何を言っているかわからないところがある。
ZoomのPC負荷は、「低」と「中」ではほぼ同じ。「高」になると負荷が高まり+2%ほどになるが、それでも軽い処理と言える範囲だ。Microsoft Teamsと比較してもさほど有意な差は見当たらず、ノイズ抑制機能の有無によるパフォーマンスへの影響はあまり考えなくても良さそうに感じる。
ノイズ抑制は低あたりがお勧めか
ノイズ抑制機能はたしかに効果はある。が、明らかにメリットがあるのは背景のファンノイズまで。しゃべりながらのタイプ音などは消えなかったり、消えても声まで聞こえなくなってしまったりするため、いずれにしろ「できるだけノイズは出さない」ことに越したことはないだろう。
ユーザーごとにノイズ環境は異なるので、唯一の正解はないのだが、ひとまず低設定にしておけば、会話をしていないときの永続的なファンノイズが消され、話している時は聞こえてしまうが、ノイズ抑制が音声に影響を与えることはないので、無難なお勧め設定になると感じた。
今回、自分の声を第三者の立場になって聞くまでは、ここまでノイズが多いとは考えておらず、普段からもっと気を使わなければならないな、と思った次第。オンライン会議ツールのソフトウェア処理だけでは難しい部分に対しては、マイクを指向性の高いものに変える、ノイズ抑制専用のツールを使う、ノートPCの場合は、外付けの静音キーボードを使うといった工夫で、可能な限りノイズを減らす取り組みを考えていきたいところだ。