やじうまミニレビュー

PC負荷低減にも効果アリ。Web会議の見栄えが向上する、お手軽グリーンバックを検証

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。
エレコムの「折りたたみ式クロマキー背景スクリーン」を試してみた

 Web会議などで部屋の様子を見せたくないときにバーチャル背景を表示するときに便利なのが、いわゆるグリーンバック。それを手軽に使えるようにしたのが、エレコムが2021年1月に発売した「折りたたみ式クロマキー背景スクリーン」(価格4,862円)だ。椅子の背もたれに簡単に取りつけられ、使わないときはコンパクトに折りたたんでしまっておけるという、なかなかのスグレモノである。

 ただ、主要なWeb会議ツールは、今やグリーンバックなしでも背景に別の画像を合成したり、ぼかしたりできるようになってきている。Zoomのように低スペックPC向けにグリーンバックを併用する機能を用意しているツールもまだあるとはいえ、徐々に必要性が薄れているように感じるなか、それでもあえてグリーンバックを使うメリットはあるのだろうか。

 1つ確実なのは、グリーンバックを使った方が、人物の切り抜きがより自然になること。Web会議ソフト任せだと、とくに髪の毛の周辺などがぼやけたり、変に切り取られることがあり、見ていて気が散ることもある。

 もう1つ思いつくのは、グリーンバックを使うことでより自然な合成処理ができ、PCの負荷軽減につながるのでは、といったところだが、実際はどうなのだろう。

 そこで、「Zoom」、「Google Meet」、「Microsoft Teams」の3つのツールで、「合成しない場合」、「ツール独自の画像合成機能を使った場合」、「折りたたみ式クロマキー背景スクリーンを使った場合」の3パターンを試し、それぞれの画質とPCの負荷をチェックしてみた。

折りたたんだ状態はこのサイズ
広げるとかなり大きい
あとはオフィスチェアの背もたれに差し込むようなかたちで固定するだけ

 テストに利用したPCは、CPUにAMD Ryzen 5 4600H、内蔵GPUとしてAMD Radeonを搭載するマウスコンピューター製14型ノートPC「mouse X4-R5」(税別価格7万8,000円より)で、100万画素のWebカメラを備える。業務用PCとして中間的な性能のものということで利用してみた。

テストにはマウスコンピューター製14型ノートPC「mouse X4-R5」を使用した

 なお、筆者の頭は丸坊主というある意味”Web会議時代に最適化”されたヘアスタイルのため、そのままではどのパターンでもきれいに合成されてしまう可能性がある。そこで、より複雑な合成処理で違いがわかりやすくなるよう、アフロヘアーのカツラを装着した状態でテストしている。あくまでもテスト用にアフロヘアーにしているだけであり、筆者本来の姿ではないことにご注意いただきたい。

グリーンバックはCPU負荷低減にも効果あり

 では、各テスト映像とCPU・GPU負荷のキャプチャーをまとめてご覧いただこう。ただし、今回取り上げるなかで唯一グリーンバックを使った画像合成が可能なのはZoomのみ。ほかのGoogle MeetとMicrosoft Teamsはグリーンバックを使った機能が用意されていない。そのため、Zoom以外については参考までにOBS Studioのフィルターでクロマキーを使ったうえで仮想カメラとして出力し、各ツールで表示させている。

 この場合はWeb会議ツールの負荷というよりOBS Studioの負荷になるため、グリーンバック使用時の処理負荷はZoomのみ計測した。また、当然ながらグリーンバック使用時の映像の見栄えも基本的にはOBS Studioの出力に左右されるため、Google MeetとMicrosoft Teamsのグリーンバック映像は単純に圧縮映像における画質の違いを確認するものだけになる点もご了承いただきたい。

Zoomの場合
Zoom 画像合成なし
Zoom 独自画像合成
Zoom グリーンバック使用時
Google Meet(OBS併用)の場合
Google Meet 画像合成なし
Google Meet 独自画像合成
Google Meet グリーンバック使用時
Microsoft Teams(OBS併用)の場合
Microsoft Teams 画像合成なし
Microsoft Teams 独自画像合成
Microsoft Teams グリーンバック使用時

 きれいに合成されているかどうか、一番わかりやすいポイントは、やはりアフロヘアーと、あとは手の指の間だろう。グリーンバックを使うと、アフロヘアーと背景の境目が溶け込むように自然な感じで合成されている。が、各ツールの合成機能を使ったパターンだと髪の毛の隙間から背景の襖が見えてしまっている。指の間も同様で、グリーンバック以外のパターンでは処理しきれずに残っているものが目立つ。

 ツール独自の合成機能のなかでは、Google Meetが最もアフロヘアーまわりの処理がきれいに見える。が、他が輪郭をある程度ざっくり切り取るかたちで処理しているのに対して、Google Meetは境界周辺をぼかして自然に見せようとしている雰囲気があり、その影響が指のぼんやりした表現に出てしまっているようだ。

 Google MeetはPC負荷も大きい。画像合成を有効にするとCPU・GPUともに20%前後まで負荷が跳ね上がり、合成なしに対して10%アップとなる。ZoomとMicrosoft Teamsは、画像合成時でも通常時とはだいたい2~3%ほどの差しかない。今回のような性能が少し高めのPCであれば、負荷は高い代わりにそこそこ自然な見栄えになるGoogle Meetでもいいが、低スペックなPCではできればZoomやMicrosoft Teamsを使いたくなる。

 画像合成時に最も処理負荷が少なかったのは、グリーンバックを使ったZoomだった。CPU負荷は5~6%、GPU負荷は7~8%で、画像合成なしとほぼ変わらない結果に。これであれば低スペックのPCでもWeb会議中にプレゼン資料を画面共有したり、他の作業を並行して進める場合でも動作がぎこちなくなることはなさそう。映像の見栄えも一番自然だ。

 とはいえ、グリーンバックにも弱点はある。OBS Studioを使ったGoogle MeetとMicrosoft Teamsでは、輪郭部分が若干緑色になっていることがおわかりいただけるだろうか。Zoomはさほど目立たないので、もしかすると独自になんらかの色調調整を行なってグリーンバックに最適化しているのかもしれない。

 緑色の反射は照明のセッティング次第で抑えられるはずだが、言い換えると、照明を適切に当てなければ輪郭がかえって不自然になってしまう可能性もあるということ。それと、折りたたみ式クロマキー背景スクリーンはそれなりにサイズは大きいのだが、欲を言えば四隅がもう少し広いと良かったかな、と思う。円状のため、視野角の広いWebカメラでは四隅をカバーしきれないことがあるのだ。

OBS Studioでクロマキー設定しているところ。カメラの視野角をそのまま活かそうとすると、このサイズのグリーンバックではカバーしきれないため、トリミングが必要なことも

 それぞれに一長一短はあれど、一定以上の見栄えやPC負荷の少なさを考えると、使えるツールは限定されるとはいえ、特にスペックが低めのPCではグリーンバックを使うという選択肢はまだまだアリ、ということが言えるようだ。