やじうまミニレビュー

Uプロセッサ搭載ノートを約1時間で満充電できるUSB PD対応モバイルバッテリ「世界超速」を試してみた

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。
フォースメディアの「世界超速」のパッケージ、すでに販売が開始されており、大手量販店などで14,800円(税込)などの価格で販売されている(価格はオープンプライス)

 株式会社フォースメディアの「世界超速」は、スマートフォン/タブレット/ノートPCなどを充電できるモバイルバッテリだ。最大の特徴は、USBの拡張給電規格であるUSB Power Delivery(USB PD)に対応しており、最大60Wの出力をサポートできることだ。

 機器によって供給できる電力量に違いがあるUSB PDは、とても複雑な規格になっており、これまで日本で販売されてきたUSB PD対応モバイルバッテリは30Wの出力という製品が多かった。そのため、たいていのCoreプロセッサ・Uシリーズ(TDP 15W)を搭載したメインストリームのモバイルノートPCでは給電量が十分ではないという課題を抱えていた。

 今回紹介する「世界超速」は60Wという容量の大きなACアダプタに匹敵する出力が可能になっており、ノートPCを高速に充電することが可能になっている。

USB PD/USB Type-Cが変えるノートPCの充電環境

 「世界超速」は、USB Type-C/USB Standard-AのUSB端子を備えるモバイルバッテリで、スマートフォンやタブレット、そしてUSB PDに対応しているUSB Type-C端子を備えるノートPCを充電することができる。

 今や、多くのユーザーがモバイルバッテリを持ち歩き、バッテリの残量が心もとないときにはスマートフォンを充電しながら使っているというのは日常的な風景だ。スマートフォンやタブレットをUSB経由で充電できるなら、ノートPCもできたらいいのにと思ったことはないだろうか?

 それを可能にする規格としてUSB PDと、USB Type-Cの2つの規格が用意されている。これらの規格はUSBの拡張仕様として規定されているため、現状ではすべてのPCが対応しているわけではないが、今後時間をかけて多くのPCに搭載される技術となる。

 USB PDとUSB Type-Cの仕様についてはここでは多くは語らないが(興味がある方は山口真弘氏の記事『ケーブル選びに失敗しないための「USB Type-C」基礎知識』をご覧いただきたい)、簡単に言えばUSB PDはUSBケーブル上に流すことができる電力量を増やすための規格で、USB Type-Cは上下どちらの方向でもさせるようにした新しいUSB端子である。

 USB PD/USB Type-Cを利用すると、従来はメーカー独自の端子/規格だったノートPCのACアダプタが標準化され、Apple用のUSB PD/USBType-C対応ACアダプタを東芝のdynabookシリーズに使ったり、あるいはその逆という使い方が可能になる。

 ノートPCでUSB PDに対応したUSB Type-Cをいち早く搭載したのは、AppleのMacBookシリーズで、その後AppleのMacBook Proシリーズにも搭載されるようになっている。今年(2017年)販売されたノートPCの多くにもUSB PDに対応したUSB Type-C端子が搭載されはじめており、同規格に対応したノートPCを持っているというユーザーもそれなりにいることだろう。

システムが必要とする以上の電力を供給できなければバッテリには充電できない

 ノートPCのUSB PD/USB Type-CのACアダプタは、ACアダプタの出力がノートPCが必要とする出力を上回っていないと充電できないか、充電できてもゆっくりとしか充電されないということがある。というのも、ノートPCはサスペンド時や電源オフ時でなければ、ACアダプタから供給された電力をシステムが動くのに必要な電力に回して(CPU/GPU/メモリ/ストレージ/ディスプレイなどが動くのに必要)、余った電力でバッテリに充電するからだ。

 このため、ノートPCのベンダーは、システムが必要とする電力量+バッテリを充電するのに必要な電力量を供給できるACアダプタを付属させている。

 たとえば、45WのACアダプタがバンドルされているシステムであれば、25Wでシステムを動かし、残りの20Wでバッテリを充電するといった具合だ。仮に30WのACアダプタであれば、25Wをシステムで使ってしまうと、バッテリの充電に回す分は5Wしかないので、たとえば48Whの容量を備えたバッテリを内蔵したシステムならバッテリの充電に10時間近くかかる計算になる。

 Coreプロセッサ・Yシリーズ(TDP 4.5W)を搭載しているノートPC(AppleのMacBook、DellのXPS13 2in1など)では、30W程度のACアダプタがバンドルされていることが多い。CPUの消費電力が大きくないので30Wでも十分にシステムの電力とバッテリ充電分を確保できるからだ。

 これに対して、Coreプロセッサ・Uシリーズ(TDP 15W)を搭載しているノートPCの場合(AppleのMacBook Pro、LenovoのThinkPad、DellのXPS 13など)では、45W~65WのACアダプタがバンドルされている。

 また、LenovoのThinkPadシリーズの場合には、45WのACアダプタ、65WのACアダプタという2つの製品が用意されており、65WのACアダプタのほうがより高速に充電することができる。USB PD/USB Type-CのACアダプタは、接続後にシステムとやりとりを行なって、どれだけの電力を流していいか決定する仕組みになっており、45WのACアダプタを接続した場合には45Wまで、65WのACアダプタであれば65Wまでの電力をシステムに供給する仕組みになっている。

 モバイルバッテリを充電器として使う場合も同様で、USB PDで充電するときに、モバイルバッテリからの出力が何Wなのかで、動作が変わってくる。そもそも、出力の電力量が足りないと、充電できないこともあるので、少なくともバンドルされているACアダプタと同じか、より多い電力量を供給できるモバイルバッテリを選ぶことが重要だ。

容量46Whの内蔵バッテリ約90%を約1時間で充電することができた

 今回取り上げる「世界超速」は、USB PDの出力が最大で60Wになっていることが1つの特徴となっている。つまり、Coreプロセッサ・Uシリーズを搭載しているノートPCでも、ACアダプタとほぼ同じ速度、さらに言えば45WのACアダプタがバンドルされている製品ではACアダプタよりも速く充電することが可能になる(ただし、製品によっては付属しているACアダプタより容量が大きな充電器が来ても、付属のACアダプタと同じ速度でしか充電できない設計になっている場合がある)。

世界超速
前面にのみポートやスイッチ、LEDなどがある。左からスイッチはLEDをつけて残り容量を確認するためのスイッチ、LEDは4つあり大まかな残り容量を示している。USB Standard-A端子(出力のみ)が2つ、USB Type-C(入出力兼用)が1つとなっている
出力や定格表記。USB Type-Cの入力が5V/2A、9V/2A、12V/2A、20V/1.5Aで最大30W。USB Type-Cの出力は5V/3A、9V/3A、12V/3A、15V/3A、20V/3Aで最大60W、USB Standard-Aは5V/3A(それぞれのポートは2.4Aが最大)。バッテリの容量は96.28Wh

 筆者が現在メインマシンとして使っているThinkPad X1 Yoga (Gen2)は、ACアダプタが45Wと65Wの2つから選ぶことができる。このため、システム側が65Wの入力まで対応できるように設計されており、世界超速の60Wの出力にも対応可能だ。

 実際、USB PDの動作モードを調べるチェッカーを間に入れてみると、19.8V/2.8Aという表示が出た。計算してみればわかるように、55Wと60Wに近い給電ができていることがわかる。

ThinkPad X1 Yoga Gen2に充電しているところ、USB Type-Cの電圧と電流の情報をチェックするチェッカーを間に挟むと19.8V/2.8Aと表示された

 世界超速を利用して筆者のThinkPad X1 Yoga Gen2(設計容量:56Wh、現在の実容量45.9Wh)をサスペンド状態で充電すると、30分時点では59%、50分経過時点で80%、1時間2分で満充電になり、充電ランプが満充電を示すグリーンになるまで(実際には91%まで)充電ができた。

 30分や1時間でこれだけ充電できていれば、たとえば食事時にカバンのなかで充電しておき、食事が終わった段階で再びフル充電から使えるという便利さを感じた。完全に充電が終わった状態で、バッテリのゲージは75から50%が残っている状態を示していたため、容量(96.48Wh)の半分を残していることになる(なおLEDは目安なので厳密な残量ではない)。

 もちろん電源をオンにして使いながら充電することも可能だが、その場合はシステム側で利用する電力を割り引く必要があるので、充電にはもう少し時間がかかるだろう。

ノートPCの充電完了したところ。バッテリのLEDは75-50%のところを示しており、半分も使っていないことがわかる

 世界超速自体の充電もUSB PDのACアダプタを利用して充電できる。ただし、入力は30W(20V/1.5A)までしか対応していないため、60WのACアダプタを利用して充電しても30Wでしか充電できない。本製品の場合は、容量が約97Whなので、理論上は3時間強かかる計算になる。実際、バッテリのゲージが半分からテストしたところ、2時間11分で満充電となった。残量が半分だったと仮定すれば空から満充電までだいたい4時間強ぐらいだと考えておけばいいだろう。

充電しているところ、20.6V/1.52A(約30W)の設定で充電していることがわかる

 出力端子は、USB Type-Cだけでなく、USB Standard-A端子も2つ用意されている。この2つの端子を利用して同時にスマートフォンやタブレットなどを充電することができる。こちらの出力は2つ合わせて5V/3A(つまり15W)までとなっており、その場合USB Type-Cへの給電はその分だけ減ることになるので、PCを充電する時間はよりかかる計算になる。

最大の課題は630gという重量、容量は半分でいいのでより軽量なモデル展開に期待

 このようにいいことずくめに見える「世界超速」だが、1つだけ大きな課題もある。それが重量だ。製品を実測してみたところ、630gと正直毎日もって歩くとなるとしんどいなというのが筆者の偽らざる感想だ。

 約97Whと(理論値で)筆者のThinkPad X1 Yogaを2回近く充電できる容量は確かにうれしいのだが、630gはカバンに入れるにはずっしりとくる重さだ。正直容量は半分ないしは3分の2ぐらいでいいので、重量も半分ぐらいになればいいのにと感じたことを付け加えておきたい。

重量は630gとやや重い……

 なお、約97Whという容量はじつは絶妙な容量で、国際線の飛行機内に持ち込むにはこれがギリギリの容量だ。日本のエアラインの場合は160Wh以下という条件になっているので余裕なのだが、中国の空港では機内に持ち込めるモバイルバッテリの容量は100Wh以下とされており、それを超えたものは機内に持ち込めず、空港で没収扱いになる(なお、モバイルバッテリは預け入れ手荷物に入れることは不可な国が多い、国によって異なるが中国や米国、日本のエアラインは不可と明示している)。

 ノートPCの多くの製品はバッテリで駆動できる実時間は6~8時間という製品が多い。たとえば、朝8時からカンファレンスに参加して、夕方の6時までびっちりセッションがあって、その間ずっとPCでメモを取っていたい、あるいは東京から新幹線で出張だけど、往復ともにACアダプタが使えない席になってしまって、東京に帰り着く前にバッテリがなくなってしまった、そういう経験をしたことがあるビジネスパーソンは少なくないと思う。

 そうしたときに、今回紹介した「世界超速」のような製品と組み合わせて利用すれば、スマートフォンも充電できるし、バッテリが切れる心配もなく、PCとスマートフォンを使えるのではないだろうか。