Windows 8ユーザーズ・ワークベンチ
Windows 8にとってのデバイス
(2013/4/17 00:00)
PCは、周辺機器を接続し、意のままに機能を拡張していける点が強みだ。それが汎用性ということであり、過去において、PCのアイデンティティのようなものと考えられてきた。今回は、デバイスの接続によるWindows 8の拡張について見ていくことにしよう。
あちこちのデバイス、それぞれのデバイス
Windows 8では「デバイス」という考え方は、以前のWindowsと変わらないように見えて、ちょっとややこしくなっている。もちろん、何らかのインターフェイス、例えばUSBやBluetooth、ネットワークといった手段で接続された機器という点では同じだ。
ところが、「デバイス」という言葉が登場する場面が複数あり、それぞれでできることや意味合いが異なっている。
まず、メインとも言える「PC設定」には「デバイス」という独立した項目が用意されている。ここですべてのデバイスを集中的にコントロールできればいいのだが、ここでできるのは「デバイスの追加」と削除だけだ。プラグ&プレイデバイスは、そもそも明示的に追加を指示しなくても、装着するだけでいいので、実質的にここでの操作が必要になるのはBluetoothデバイスだけだといってもいい。
ただ、そのPCが、Windows標準のBluetoothスタックを使っていない場合もある。たとえば、東芝製のスタックを使っている機器も少なくなく、その場合は、そのユーティリティを使ってデバイスを追加することになる。その場合は、このデバイス項目とは、異なる管理下に置かれたデバイスとして機能するわけだ。
また、Windowsロゴを取得しているデバイスであれば、接続後、自動的にストアからデバイスアプリと呼ばれる、いわばドライバと設定ユーティリティなどがダウンロードされるようになっている。Windows 7の時代からではあるが、今後は、各種デバイスに特別なユーティリティが添付されることはなくなってしまうかもしれない。
「PC設定」の「デバイス」には、過去に接続されたさまざまなデバイスが一覧表示されるのだが、それらのデバイスに対してできるのは、その削除だけだ。削除は、一覧中の任意のデバイスを選択すると、マイナス状のアイコンが表示されるので、それをタップすればいい。たとえば、USBメモリを端子に接続すると、ここにそのデバイスとして「USB Flash Disk」が表示される。そして、そのストレージ内容にもよるが、デスクトップが開き、エクスプローラーがウィンドウを開いて、ファイル一覧を表示する。
デバイス一覧から「USB Flash Disk」を削除すると、開いていたウィンドウは閉じられ、安全にUSBメモリを取り外すことができる。
もちろん、以前と同じように、デスクトップのタスクバー右端の通知領域には、ハードウェアの安全な取り外しのためのアイコンが用意され、これを使って取り外すこともできる。
プリンタと同義のように見える現時点のデバイス
Windows 8で頻繁に見かけるもう1つの「デバイス」は、チャームで表示されるものだ。たとえば標準アプリの「フォト」で任意の写真を表示中に、チャームから「デバイス」をタップすると、その写真を印刷できるデバイスが一覧表示され、任意のもので印刷できる。普通に考えると、その写真をUSBメモリにコピーしたいときも、同様の方法でできてよさそうなものなのだが、それはできないようで、ここでは「デバイス」の概念が曖昧なものになってしまっている。Windows 8では、写真など、ある種のデータオブジェクトを別のアプリに送りたい場合は「共有」、印刷したい場合は「デバイス」を選ばなければならなくなっている。
これらの機能は、以前のWindowsで知られている「送る」に似ている。デスクトップでは、エクスプローラでファイルを右クリックしたときに表示される「送る」が健在で、こちらは、ストレージやBluetooth、アプリなどが一覧でき、任意のものに送ることができるが、ここにはプリンタは登録されていない。また、すべてのアプリが表示されるわけではなく、メニューには別項目として「プログラムで開く」が用意されている。
また、Windows 8にとっては、スクリーンが「デバイス」の一種として考えられている。プリンタとして登録されているアプリを含め、プリンタが並ぶ一覧の中に「セカンドスクリーン」という項目が用意されている。これをタップすると、現在の画面に表示されている内容を別のスクリーンに送ることができるようになっている。だが、早い話がここは、Windows + Pで表示されるものと変わらず、今の段階ではマルチディスプレイの挙動設定ができるにすぎない。
つまり、今のところ、「デバイス」は「プリンター」とほとんど同義であるかのように見える。だが、標準のメールアプリや、最近アップデートされたAdobe Reader touchには、アプリケーションメニューの中に「印刷」が存在する。ここで一覧できるのは、チャームの「デバイス」で表示される一覧と同じだ。ただ、先の「セカンドスクリーン」は見当たらない。
本来、各アプリのチャームからアクセスできる「デバイス」は、もっと広範囲に使うことができるものになるはずで、ネットワーク越しのリモート再生や、携帯電話とのコンテンツ同期など、まさに、理想的な「送る」を実現することが想定されているのだが、それがまったく間に合っていない状況だ。
デバイスアプリのゴールはタイルとしてのストアアプリ
結局のところ、Windows 8の「デバイス」は、過去のWindowsでスタートメニューにあった「デバイスとプリンター」が目指したものと同じゴールを模索しているようだ。
Windows 7の「デバイスとプリンター」では、接続されている各種のデバイスが統合され、それぞれのデバイスは、ここから専用のユーティリティを起動できるようにして、各種デバイスをコントロールするためのスタート画面になるはずだった。
単純なUSBメモリでも、その製品をかたどったアイコンとして表示されるようなデバイスがあったことを思い出しほしい。これは、各デバイスがデバイスメタデータを持ち、それがインターネット経由でダウンロードされた結果だ。残念ながら、統一されたUIですべてのデバイスをコントロールできるというところまではいかず、いかにも中途半端な状態のまま、Windows 8へと推移した。
Windows 8では、このデバイスメタデータが拡張され、ストアアプリとの連携を定義することができるようになっている。規定されたデバイスカテゴリとしては、プリンター、モバイルブロードバンド、カメラ、ネットワーク接続型のエンターテイメントデバイス、その他の特殊なデバイスに分類されている。最終的には、チャームの「共有」は純粋なソフトウェア、「デバイス」は純粋なハードウェアに送ることを指すようになり、必要に応じて独自のストアアプリが開くというユーザー体験が提供されるようになるのだろう。
Windows 7の「デバイスとプリンター」は、スタートメニューの中央という目立つ位置に置かれながら、あまり活用されてはいなかった。本当なら、そこでベーシックな基盤を作りたかったはずなのだが、うまくいっているとはいえなかった。
Microsoftとしては、各種のデバイスのコントロールを特別なものにするのではなく、一般的なアプリと同様に、ストアアプリを使ってコントロールできるようにすることを目指しているようだ。だが現時点では、プリンタの設定1つとっても、ストアアプリではできず、コントロールパネルから「デバイスとプリンター」を開き、接続されたプリンタを探す必要がある。
でも、これからは違う。ハードウェアであろうがソフトウェアであろうが、スタートスクリーンに並ぶタイルをタップするだけという単一の操作ですべてを成立させることがWindows 8のゴールであるということだ。