Windows 8ユーザーズ・ワークベンチ

Twitter公式ストアアプリはWindows 8アプリのお手本となるか

 Twitterの公式クライアントがストアアプリとして公開されたり、People、メール、カレンダーといった標準アプリがアップデートされるなど、Windows 8周辺が騒がしい。また、ハードウェア要件にも若干の変更があった。今回は、ストアアプリとデスクトップアプリ、そのタッチ操作について見ていくことにしよう。

Twitterの公式クライアント、ついに登場

 Twitterの公式クライアントは、随分と多くのユーザーが待ち望んでいたものだと思うが、出てきたものは実にシンプルな作りのものだった。できることは限定的で、Webで使うのとほとんど変わらない。

 サイドには「ホーム」、「つながり」、「見つける」、「アカウント」というタブが用意され、そのクリックでメインペインの内容が変わる。メインペインの横幅は、スクリーンの横幅にかかわらず一定で、一般的なワイドスクリーンの場合、両脇にグレーのスペースができてしまう。このアプリを没頭型としてフルスクリーンで使うのはもったいない感じがする。だからといって、ピンチによるズームイン、アウトもできないので、この表示を受け入れるしかない。

ランドスケープでTwitterアプリを使ったときのタイムライン。タイムラインの両脇にかなりのスペースができて、ちょっともったいない印象だ

 ただし、スクリーンをポートレート、つまり縦方向に使った場合、左側のタブ切り替えにはテキストラベルが省略され、右側の新規ツイートボタンも左ペインに移動する。タイムライン表示もちょうどいい感じに収まっている。

スクリーンを縦位置にして使ったときのTwitterアプリ。ほぼ無駄なくスクリーン全体が使えている

 タイムラインは自動更新されるのだが、かなり長い間隔が空く。ただし、いわばスタンダードともいえる「引っ張って更新」ができるようになっている。ただ、この操作をマウスで行なうことはできず、マウスを使う場合は、スクリーンを右クリックして、アプリケーションメニューから「リフレッシュ」を実行する必要がある。

 新しいツイートの作成時には、写真と現在位置の添付ができる。また、タイムライン中のツイートに関しては返信、リツイート、お気に入り登録ができるようになっている。これらのコマンドのボタンは大きく配置され太い指でもタップしやすいのはうれしい。

新しいツイートの入力では、画像と現在位置を添付できる。常に上部で入力できるため、仮想キーボードを表示したときにも邪魔にならない

 結局のところ、Twitterを没頭型のアプリケーションで使うというのには、やはり無理がある。となれば、スクリーンの左右どちらかにスナップして使うことを考えたい。

 MicrosoftはWindows 8のハードウェアロゴ要件において、スクリーン解像度を従来の1,366×768ドットから1,024×768ドットに緩和するとしている。横幅が342ドット分狭くてもよくなるわけだ。これはアプリを左右どちらかにスナップしたときに確保される横幅で、緩和の結果、スナップの仕様がどのようになるのかの詳細はまだわからない。一説には、スクリーンを2等分割できるようにするという予測もある。

 つまり、アプリを没頭型で使うには少なくとも1,024×768ドットのスクリーンが必要で、スナップさせるためには余分の342ドットが必要というのが、これまでのロゴ要件だったわけだが、その方針に変更が加えられたわけだ。仮に、1,024ドットを2等分割した場合、横幅は512ドットとなる。スナップアプリを2つというにはちょっと広い。数値的には3等分して、スナップアプリを3つというのもありかもしれない。

スクリーンの状態によって変わるUI

 ストアアプリのTwitterを画面のどちらかにスナップさせると、今度はタブ切り替えのアイコンが上部に、新規ツイートのアイコンは下部に移動する。

 このように、フルスクリーン時、ポートレート時、スナップ時という状態に合わせて、ストアアプリのTwitterは、その見かけを変える。ただ、どのような場合でも、新しいツイートを書く場合は、入力欄がスクリーン上部に表示され、仮想キーボードができるだけ邪魔にならないような状態でつぶやきを入力できる。

左側にスナップさせるとUIが変わる。左右のボタンが上下に配置される

 Twitterの公式ストアアプリ登場までには、随分と時間がかかってしまったが、考えようによってはストアアプリのGUIはこうあるべきというお手本のような仕上がりになっているといえなくもない。できることは限られているが、トーストやロック画面での各種通知機能など、今後、Windows 8がConnected Standbyで使われるようになったときに、こうしたアプリがどのように振る舞えばいいのかといったことまで考えて機能が実装されているように見える。

 個人的にはAndroidの公式アプリのように、せめて文字サイズくらいは好きなものに設定できるようにしてほしかったところだが、iOSではそれができないように、スクリーン全体から醸し出されるデザインイメージに影響を与えてしまうため、今回は見送られたのかもしれない。

オプションでは各種通知について設定できる。今後、Connected Standbyが一般的になったときに重宝しそうだ

ブラウザUIはどうあるべきか

 Twitterストアアプリがリリースされるまでは、ブラウザを使ってTwitterを使ってきた。できることという点ではストアアプリと違いはないのだが、こちらは、ズームインやズームアウトができる分、それなりに使いやすかった。だが、スナップしたときの使い勝手はストアアプリの方が上だ。これは、そのときの状況に応じて使い分けるのがよさそうだ。

 Windowsのデスクトップアプリのウィンドウは、タッチのフリック操作の扱いが、アプリごとに異なる。フリックは、スクリーン上の任意の一点をタップして、そのまま指を離さないで別の地点まで指を移動させる操作だ。

 つまり、これはドラッグ操作と同じだということがわかる。

 あるアプリは、これをフリックとして理解し、別のアプリはこれをドラッグとして理解する。フリックならスクロールが期待できるが、ドラッグとして理解されると、多くの場合は文字列や画像、範囲の選択になってしまうわけだ。

 このあたりの振る舞いは、Internet Explorerがやはりよくできている。普通にフリックすればフリックと理解されてスクロールができるのだが、最初に任意の地点を長タップすると、選択のためのアンカーが表示され、そのアンカーのドラッグでオブジェクトを選択できる。もし、最初にタップした地点に選択するものがなければ何も起こらず、そのままフリックとして解釈される。

 ピンチやダブルタップの操作についても、アプリごとに挙動が異なる。スマートフォンでタッチ操作に慣れたユーザーは、双方の操作ともにズームイン、ズームアウトを期待するだろう。Internet Explorerはおおよそ期待通りに機能してくれる。

 一方、GoogleのChromeは一筋縄ではいかない。まず、ピンチ操作ではズームイン、ズームアウトができないし、ダブルタップしてもズーム倍率は変わらない。また、文字列のダブルタップ時も自動的に選択された部分を伸縮することはできないため、使い勝手は悪い。AndroidのChromeは、このようにはなっていないので、強い意図があるようにも思えない。このあたりは、今後変わっていく可能性がありそうだ。

望みたいアプリタッチの標準化

 Windows 8の出荷開始から、約半年が経過した。6月には開発者向けのイベント「//build/」も予定され、次のWindowsの噂さえ出てきている。ストアアプリの標準的なインターフェイスが、まだまだ混沌としている中で、そこをうまく交通整理していかないと、ちょっと大変なことになりそうにも思う。そのような状況を回避するためにも、Twitterのようなビッグネームが、お手本となるようなGUIを実現していくのは悪くないと思う。画期的で、今まで見たこともないような使いやすいインターフェイスというのは、その先でもいいんじゃないだろうか。

(山田 祥平)