Windows 8.1ユーザーズ・ワークベンチ
SkyDriveを使って複数のWindows環境を同一に保つ
(2013/11/20 06:00)
Windows 8.1では、MicrosoftのクラウドストレージサービスであるSkyDriveがOSに統合された。単体でOSとしてのWindowsを提供するだけでなく、デバイス&サービスカンパニーとしての姿勢を強く打ち出したMicrosoftとしては当然のことであるともいえる。それによって、マルチデバイスでのWindowsの使い勝手が飛躍的に高まった。今回は、そのSkyDriveについて詳しく見ていくことにしよう。
Windowsとの統合でシステムフォルダに昇格したSkyDrive
複数のWindows PCではクラウド上にあるSkyDriveストレージを介して、任意のフォルダ以下の内容を同期させ、同一の状態に保つことができる。以前からサービスとして提供されていたが、Windows 8.1からは、OSに統合される形となった。
Windows 8.1をインストールして、エクスプローラを開くと、ウィンドウ左側にあるナビゲーションペインに SkyDrive が見つかる。PC、ネットワークと同列の扱いで、これが独立したシステムフォルダであることがわかる。
ただし、デフォルトでは、個人用フォルダ内のSkyDriveというフォルダがその実体となっている。右クリックしてプロパティを確認すると、その場所を確認できるが、さらにここで格納位置を別のドライブやフォルダ、ネットワークドライブなどに変更できる。なお、ファイルシステム内で分散している任意のフォルダを指定することはできず、特定フォルダ下にまとめておく必要がある。
SkyDriveは、Microsoftアカウントを持っていれば誰でも使えるサービスだ。Windows 8.1でも、ローカルアカウントでは利用できず、Microsoftアカウントを取得して関連付ける必要がある。新規にアカウントを取得した場合は、7GBを無料で使えるようになる。既存のアカウントで、以前のSkyDriveサービスを利用していた場合は増量されて25GBが無料となっている。
もし、追加の容量が必要であれば、
- 50GB 2,000円/年
- 100GB 4,000円/年
- 200GB 8,000円/年
という価格体系で増量することができる。価格はリニアに設定されているので、1TBが欲しい場合は200GBを5つといった買い方ができる。その場合、40,000円/年という計算になる。ちなみに同様のストレージサービスであるGoogleドライブの場合、月払いのみとなり、仮に200GBを確保すると、9.99ドル/月で、約12,000円/年となるので、それよりもかかるコストは多少低いといえる。
ファイルだけでなくPC設定も同期
SkyDriveに対する設定は、Windows 8.1のいろいろなところに分散しているので、ちょっとわかりにくい。
まず、PC設定を開くと、クラウドストレージとしてのSkyDriveを有効にするかどうかを尋ねてくる。ここで特に指定しない限りは有効になる。
PC設定の項目の中からSkyDriveを開くと、
- ファイルの保存
- カメラロール
- 同期の設定
- 従量制課金接続
という4つのサブ項目が設定できる。
まず「ファイルの保存」では、使える容量の確認と追加購入が設定でき、また、ドキュメントを既定でSkyDriveに保存するかどうかのオン/オフを設定できる。
ここで、ドキュメントを既定でSkyDriveに保存するようにしておくと、アプリケーションから保存しようとしたファイルが、SkyDrive下に存在する場合、保存=アップロードが行なわれるようになる。
また、この画面から、標準ストアアプリのSkyDriveを呼び出すことができるが、それについては後述しよう。
カメラロールについては、デバイスにカメラが装備されている場合、撮影した写真は個人用フォルダの「カメラロール」というフォルダに保存されるのだが、このフォルダはSkyDrive下にはない。だが、この設定をオンにしておくことで、SkyDrive直下の「画像」というフォルダの中に「カメラロール」というフォルダが作成され、そこに画像がコピーされ、結果としてSkyDrive同期の対象となる仕組みだ。
この仕様に至るまでには、いろいろ紆余曲折があったようで、手元の環境には、カメラロールフォルダ、Camera Rollフォルダ、SkyDrive Cameraなど、さまざまなフォルダの残骸が未だに残っている。個人用フォルダにドキュメント、ピクチャ、ビデオなど、種類別のフォルダを作ってしまった過去のWindowsに振り回されている印象だ。データの種類に応じたフォルダ分類がいかにばかげたことであるかを今反省しているに違いない。
一方「同期の設定」では、複数のデバイスにおけるPC設定の同期のオン/オフを指定する。前回説明したように「言語設定」だけは要注意だ。デバイスごとにIMEやキーボードレイアウトが日本語、英語などと異なる場合、同期でおかしくなることがある。ここだけは個別に自分で設定するようにしておいた方が無難だ。
また、「従量制課金接続」では、LTE接続など、データの使用量で料金が決まる接続の場合に、SkyDriveがどのように振る舞うかを決めておける。
オフラインとオンラインを使い分ける
さて、設定画面からの遷移、あるいは、スタート画面からSkyDriveアプリを起動すると、SkyDriveをすでに利用している場合は、ローカルのPCにそれらのファイルがあろうがなかろうが、クラウド上にあるファイル名の一覧を得ることができる。
このアプリのオプションでは、「すべてのファイルにオフラインでアクセスする」かどうかを指定できるだけだ。このオプションをオンにしておくことで、SkyDrive上のフォルダ、ファイルは、ローカルストレージのSkyDriveにすべて同期保存されるようになる。
つまり、SkyDriveはクラウド上のストレージ内にあるフォルダでもあり、ローカルのコンピュータ内にあるフォルダでもある。ローカルコンピュータのストレージ容量、自分が使えるSkyDriveの容量を照らし合わせ、どのフォルダ、ファイルを同期させるかを決めておく必要がある。
もちろん、すべてを同期させるのは簡単で前述の「すべてのファイルにオフラインでアクセスする」をオンにしておけばいい。
SkyDriveでは、オフライン、オンラインという考え方でフォルダやファイルを扱う。オフラインで使うように設定しておけば、コンピュータをインターネットに接続していなくても、それらのファイルを使うことができる。逆に、オンラインでのみ使うように設定してあれば、インターネットに接続されていれば、ファイルを開こうとしたり、コピーや移動などをしようとしたときに対象のファイルがダウンロードされ、オフラインでも使えるようになる。
たとえ、オフラインであっても、オンラインでしか使えないファイルの一覧は参照できるところがミソだ。写真などであればサムネールも確認できるので、本当に必要なファイルやフォルダだけをダウンロードして、オフラインで使えるようにしておける。
ちなみに、Windows 8以前の環境が残っている場合は、別途SkyDriveのデスクトップアプリをダウンロードしてインストールすることで、PC設定の同期はできないが、ファイルの同期はできるようになる。
一方、過去にデスクトップアプリを使っていた環境を、Windows 8.1にアップグレードした場合、デスクトップアプリは無効となり、既存のSkyDriveフォルダがシステムフォルダ扱いになる。
クラウド前提で、ローコストデバイスが実用になる
エクスプローラで、SkyDriveフォルダを詳細表示で見てみると、「利用可能性」というカラムが追加されていて、そのファイルがどのような状態にあるのかがわかる。
一般的には、今までデータを保存するために使っていたフォルダ、例えば、ドキュメントフォルダなどをSkyDriveフォルダに移動するか、逆に、SkyDriveフォルダの場所をドキュメントに変更するといったことになるだろう。
すでに、他のコンピュータから同期させ、一定量のフォルダ、ファイルがSkyDriveフォルダに格納されている場合、別のコンピュータで「すべてのファイルにオフラインでアクセスする」ように設定すると、すべてのファイルがクラウドからローカルにコピーされるが、その経過状況がわかりにくのには閉口する。標準ストアアプリのSkyDriveで、××個のファイルをダウンロードしているというところまではわかるのだが、その詳細がわかりにくい。容量にもよるが数十GBのダウンロードには数日間を要するため、最初にコンピュータを使い始めて、完全にSkyDrive内ファイルのコピーがローカルに保存されるまでには、それがいつ終わるのかを含めて忍耐が必要だ。
同様に、今、目の前で作ったファイルが、無事にクラウドのSkyDriveに保存されたのかどうかを知るのも難しい。以前のSkyDriveユーティリティでは、状態が最新であることが通知メッセージで表示されていたことを考えると、このあたりは、まだ、改善が必要だと感じている。
同期のためのファイル転送は自動的に行なわれ、ユーザーがそのタイミングや優先するフォルダ等を管理することはできない。また、手元の環境で試したところ、ソニーの「VAIO Duo 13」やAtom搭載の32bit Windows機など、Instant Go対応機において、スリープ中の同期は行なわれないようだ。これについては、巨大なファイルを書き込むために、スリープ中にシステムディスクを動かしてもいいのかといった懸念もあり、今後、どのようなソリューションが用意されるのかが気になるところだ。
それでも、SkyDriveがOSに統合されたことで、64GB程度しかストレージ容量を持たないコンピュータでも、仮想的に過去に作成したファイルを常に持ち歩くといったことができるようになったのはうれしい。しかも、新しい方法を強要されるわけではない。これまでと同じ方法でファイルにアクセスすれば、必要に応じてそのファイルだけがダウンロードされ、あたかも、そのファイルを持ち歩いているかのような環境が手に入るのだ。
また、SkyDrive上のフォルダやファイルは、簡単に他のユーザーと共有できる。エクスプローラでファイルを右クリックし、共有-SkyDriveと進むと、リンクの取得のためのダイアログが表示される。ここで、リンクを取得し、そのURLをメールに添付したり、SNSで公開すれば、そのファイルを参照できるわけだ。自分の個人的なフォルダ内にあるファイルを直に共有することに抵抗があるなら、専用のフォルダを作って、そちらにコピーを置いて共有すればいいだろう。
ただし、データファイルは1つであるという原則を頭においておく必要がある。例えば、一部のアプリケーションでは、サイドカーファイルと呼ばれるスタイルを持つデータの持ち方をするケースがある。この場合、1つのファイルをデータとしてダウンロードしただけでは不十分で、関連するファイルがセットで必要になる。
また、プログラムのフォルダでは、exeファイルのほかに、dllやiniファイルなども必要だ。これらに関しては、必要なファイルをローカルにコピーするなり、フォルダごとオフラインで使えるようにしなければならない。そのためには、フォルダを右クリックし、ショートカットメニューから「オフラインで使用する」を実行すればいい。
この方法を利用して、個々のコンピュータのストレージ容量やSkyDriveで自分が使えるストレージ容量に応じて、どのフォルダをオフラインで使えるようにし、どのフォルダをオンラインでのみ使えるようにするのかを決めておこう。
実際には、最も大きなストレージを持つコンピュータで、それに見合った容量のSkyDrive容量を購入し、すべてのファイルを同期させ、それよりストレージが少ないコンピュータでは、一部のフォルダだけをオンラインで使うように設定すればいいだろう。
もちろん、すぐに必要なファイル以外は、オンラインのみの状態にしていても、インターネットにさえ接続できれば、いつでも使えるので、初期の設定では、どうしても必要なファイルがない限りは、初期設定のままでもいいだろう。
SkyDriveにデータ保管を依存することでバックアップなどの作業からはほぼ解放される。たとえ災害などがあって、手元のストレージを何も持ち出すことができなくても、すべてを失うことはなく、新しいコンピュータを入手して同期すれば過去のデータを取り戻せる。もちろん、Web経由での参照も可能だし、iOSやAndroidといったモバイルOS用のアプリも用意されている。かけがえのないデータのための保険と考えれば、コストも負担しやすいかもしれない。