イベントレポート
Internet Explorer 11とSkyDriveの強化点を解説
(2013/6/28 00:42)
Microsoftは、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコ市にあるMoscone Centerにおいて、Windowsソフトウェアの開発者向けイベント「Build 2013」を6月26日~28日(現地時間)の3日間に渡り開催している。
初日となる6月26日には、同社CEOのスティーブ・バルマー氏による基調講演が行なわれ、COMPUTEX TAIPEIで初めて公開されたWindows 8の改良版となるWindows 8.1の公式プレビュー版を公開した(別記事参照)。
基調講演終了後には、報道関係者向けのセッションが開催され、Windows 8.1における大きな目玉機能の1つとなるInternet Explorer 11(IE11)と、SkyDriveの新機能に関する説明が行なわれた。
IE11が他社のWebブラウザに比べて性能で大きく上回っていることがアピールされたほか、SkyDriveはデスクトップアプリからも、Windowsストアアプリからも透過的にファイルを扱えるようになることなどが紹介された。
検索バーの拡張、WebGL、HTML5動画への対応など新機能に対応したIE11
Microsoftは2012年10月に投入したWindows 8において、Internet Explorer 10(IE10)を導入したが、Windows 8.1 Previewに実装されているIE 11はそれに次ぐ新バージョンとなる。IE10では、タッチへの対応に主眼が置かれており、Modern UI版とデスクトップ版の2つのUIが用意されていたが、その特徴はIE11でも受け継がれている。
ほかのWindows用Webブラウザもタッチ対応しているものは出ているが、Modern UIに最も最適化されているのは現状IEだけだ。例えばポインタを重ねるとサブメニューが表示されるような場合、ほかのブラウザだとうまく対応できていなかったりするが、IE11で表示させた場合にはマウスでポインタを動かしたときと同様にタッチしても自然にサブメニューが表示されるようになっており、タッチ操作でも違和感なくブラウズが可能だ。説明したMicrosoftの関係者は「IE11が目指しているのは、小さな画面でタッチで操作しても、大きな画面でマウスやキーボードで操作しても同じユーザー体験で利用できることだ」と述べている。
このほかにも、IE11にはいくつかの新機能が実装されている。例えば、アドレスバー検索の機能が強化されており、従来はWeb検索の結果だけが表示されていたのに対して、IE11ではWeb検索、ローカルファイルの検索、Modern UIのストアアプリなども検索の候補として表示されるようになっている。同様の機能はWindows 8.1のチャームで利用できるが、こちらは検索プロバイダーがBingに固定される。IE11は、従来通り検索プロバイダーを別の検索エンジンに切り換えられる。
また、IE11では新しいWeb標準に対応しているのも大きな特徴で、WebGLや、HTML5の動画再生に対応した。WebGLに関してはすでにほかのブラウザが対応していたため、ようやくIEもそれに追いついたことになる。Microsoft関係者は「従来のWebGLに関してはセキュリティ上の課題があったが、新しいバージョンでそれが解決されたので、実装することにした」と遅れた理由を説明している。
HTML5動画に関しては、米国で動画配信サービスを行なっているNetflixのサービスを利用したデモが行なわれた。これまでのIEではHTML5の動画再生には対応していなかったため、Netflixのサービスを利用するには、別途Modern UIアプリをインストールする必要があった。
このほか、既にGoogle Chromeなどでサポートされてきた、複数の異なるデバイス間で設定、リンク、タブなどを同期する機能も追加されており、例えばWindows 8のノートPCを使っていた後、タブレットでブラウズを開始すると、ノートPCで開いていたのと同じページからブラウズを再開するという使い方がIEでも可能になる。
性能の強化にフォーカスしたIE11
今回のBuildで、IE11の性能が盛んに強調された。性能に関して解説したMicrosoftのエンジニアは「GPUなどの新しいハードウェアや消費電力の削減などが、今のWebブラウザでは差別化のポイントになっている」と、IE11がGPUを積極的に活用することでCPUへの負荷を下げ、システムの消費電力を下げることに貢献していると説明した。
同社がデモで訴求したのは、GPUの活用の度合いが、他社のブラウザに比べて高いという点だ。LAWN MARK 2013というベンチマークでは、IE11が5つあるオブジェクトの描画を10秒程度で全て終えたのに対して、Google Chromeでは1つ目のオブジェクトの描画も終わらないという様子が披露された。
Microsoftのエンジニアによれば、IE11におけるGPU利用は、GPGPUのような汎用コンピューティング(つまりはCUDAやOpenCLなど)ではなく、一般的なグラフィックスアクセラレーションの延長線上にある技術だという。例えばピンチによるズームなど、タッチによる処理に関しても全てGPUを利用しているので、CPUにかかる負荷は低いという。また、JPEGデコーディングを含むJPEG表示のアクセラレーションもGPUで行なっているので、画像の数が非常に多いページを開く時でも、従来より圧倒的に高速に開けるという。
もちろん、Coreプロセッサが搭載されたPCのように、CPUが強力な場合にはCPUを利用することで、速度に不満を感じることはないだろう。しかし、CPUよりGPUが効率的な局面で、GPUアクセラレーションをより活用することができれば、そのメリットは大きい。
大きな利便性の向上につながるSkyDriveの改良
SkyDriveは、Microsoftが提供するクラウドストレージサービスで、日本では無料で7GBまで利用でき、追加で利用権を購入することで107GBまで増やすことができる。
SkyDriveの特徴は、Microsoftが提供するということもあって、Windowsとの親和性が高いということだ。Windows 8でも標準でModern UIで動作するSkyDriveアプリが用意されている。ただし、Windows 8でSkyDriveのストレージをローカルストレージのように使えるのは、Windowsストアアプリだけで、デスクトップアプリケーションに関しては、別途デスクトップ用同期ツールを利用する形だった。
これに対してWindows 8.1では、SkyDriveがシステムレベルで統合されており、SkyDriveのフォルダは、Windowsデスクトップからも、Modern UIからも同じように見ることができるようになっており、アプリケーションから普通にファイルを開け、保存すると自動でクラウドにデータが保存される仕組みになっている。
もちろん、PCは常にネットワークに接続されているわけではないが、Modern UIのSkyDriveアプリから、フォルダやファイル単位でオフライン利用ができるようになり、これまでオンラインでしか利用できなかったModern UIアプリの利便性が向上した。
こうした改良により、SkyDriveはほとんどローカルストレージに保存している感覚で利用することができる。また、同期の設定も、デバイスによって変えることができるので、例えばメインのPCには全てのフォルダを同期するように設定しておき、ストレージが小さいデバイスの場合は重要なファイルのみを同期するような設定にしておくという使い分けが可能になる。また、ローカルにコピーしなくても、ネットにさえ繋がっていれば、常にローカルと同じ感覚で利用することができるという点は便利だ。
さらに、従来のデスクトップPC用SkyDriveアプリは、同期を行なう際に現在接続されているネットワークが従量制課金なのか、定額制課金なのかを検知する機能がなく、問答無用で同期してしまっていたのに対して、Windows 8.1では、無線を従量制課金にした場合は、同期を行なわないように設定することができる。現在国内の通信キャリアはデータ通信に7GBや3GBといった上限を設ける「半定額制」を設けているところがほとんど(例外はUQとイー・モバイル)なので、モバイル環境で通信キャリアの3GやLTEを利用しているユーザーでも安心して利用できるのは見逃せないポイントだと言える。
このように、Windows 8.1のSkyDriveは、モバイル環境で本格的にノートPCやタブレットを利用するユーザーにとって利便性を向上させる機能と言え、ビジネスユーザーにも要注目だと言えるだろう。
Windows RTのサードパーティIMEはWindows 8.1でも状況に変化はなし
このほか、Microsoftは日本の報道関係者向けにユーザー体験の改良に関する説明会を開き、ソフトウェアキーボードやIMEに関する状況を説明した。
Windows 8.1ではソフトウェアキーボードに改善が加えられており、QWERTY配列のソフトウェアキーボードでフリック機能が使えるほか、日本のスマートフォンユーザーには馴染みが深いテンキーを利用したフリック入力に対応していることが明らかにされた。ただし、ソフトウェアキーボードに関しては従来通りMicrosoftが定義したソフトウェアキーボードのみが利用可能で、サードパーティベンダーが追加で組み込んだり、ユーザーが定義したりということは依然としてできない。
また、IMEに関しても従来と同じで、Windows 8.1に関してはサードパーティのIMEを組み込むことができるが、Windows RT 8.1に関しては依然としてできない。この点は次期バージョン以降の課題として残ることになる。
なお、Windows 8ではタブレットとして利用する時に従来のコントロールパネルに相当するPC設定(英語ではPC Setteing)で設定できる内容が全てではなく、より詳しい設定をしようとすると、デスクトップでコントロールパネルで設定する必要があったが、Windows 8.1ではそれが大きく改善されている。Microsoft によれば「Windows 8.1では設定項目が400も増えており、ナビゲーションも2段階になるなど、より設定しやすくなっている」とのことで、より細かな設定をしたいというユーザーのニーズにも応える改良を行なっていると説明した。