Windows 8.1ユーザーズ・ワークベンチ
すべてのプラットフォームのハブとしてスマートデバイスを手足のように使う
(2014/3/19 06:00)
ブラウザさえあればOSは何でもいいという状況が整いつつある。タブレットは情報の消費に多大な恩恵をもたらしたし、そのタブレットにキーボードを接続すれば生産性も上がる。それでもWindowsを使うのはなぜなのだろう。
競合よりも連携
Windows 8.1のリリースから約半年。4月にはそのアップデートも予定されているという。巷では8型スクリーンのWindows 8.1タブレットが好調で、特に日本ではゲームユーザーの評価も高い。Windowsでしかできないゲームを楽しみたいなら、Windows機は欠かせないということだ。Windows用ゲームはiOSやAndroidタブレットでは逆立ちしても遊べない。同様の理由で、Windows用にしか用意されていないアプリケーションが、日常の暮らしや仕事でどうしても必要なら、やはりWindows機が必須となる。
逆にiOSやAndroidでしかできないことも多かった。だが、Windowsストアアプリが次第に増えてきたことや、ブラウザでのWebアプリの利用によって、それらを代替することができる場合も多くなってきた。今現在、Windows機しか手元になくて困るのは、GPSを使ったリアルタイムの地図ナビゲーションくらいだろうか。あるいは、「SmartNews」などのように、モバイルOS用にしかアプリが提供されていない人気アプリもあるにはある。これがなくては1日が終わらないというユーザーもいるかもしれない。
ただ、手元にWindows PCがあるときに、スマートフォンを携帯していないということは、ありえないといってもよく、どれか1つに固執して、PCとスマートフォン、タブレットを競合させることよりも、うまく連携させて使うことを考えた方が得だ。
連携のための早道は、Windowsデスクトップ、Windowsストアアプリ、iOS、Android全ての環境に用意されているアプリを駆使することだ。ストアアプリはまだ充実にはほど遠いので、Webアプリで代用することも視野に入れて考える。
そのための基本ツールとして、「OneDrive」と「OneNote」をどう活用するかは、複数のデバイス連携を考える中でとても重要な要素となる。
向き不向きを考えてデバイスを使い分ける
例えば、スマートフォンで撮影した写真に、ちょっと長めのコメントを添えてTwitterに投稿するという場合のワークフローを考えてみよう。長いコメントを書くにはキーボードが欲しいし、写真を撮るならスマートフォンの方が機動性が高い。
前準備としてAndroidスマートフォンにOneDriveアプリを入れておき、設定でカメラバックアップをオンにしておく。そのスマートフォンで写真を撮影したら、Windows PCを開き、キーボードを使って愛用のTwitterクライアントやWebページでコメントを書く。書き終わるころには、写真がOneDriveの画像フォルダ内のカメラロールフォルダに同期されているので、それを貼り付ければいい。OneDriveはiPhoneやiPad用のアプリも用意されているので、異なる環境でも同じことができる。
一方、OneNoteは、Officeアプリの1つでクラウドを使ったメモの同期ができる。同期はリアルタイムで行なわれ、複数のデバイスから同時に編集ができるので、複数のデバイスでメモを開きっぱなしにして、それぞれでバラバラに修正を加えても致命的な競合が起こらない。
Windows PC上のOneNoteでメモを取っているときに、メモの一部として写真を挿入したいとする。その場合はスマートフォンのOneNoteで同じメモを開き、そこで写真を撮って挿入すれば、ほどなくPC上のOneNoteの然るべき位置に写真が挿入される。これもまた、iPadやiPhoneでも同じことができる。スマートフォンで撮影した写真は、OneDriveが同期するので、それを使ってもかまわないのだが、ここは1つ、自動的に挿入されることの手軽さを選びたい。
WindowsノートPCがタッチ対応ではない場合、もう1台のPCとして8型液晶のWindowsタブレットがあれば、OneNoteに手書きのメモを挿入するのも簡単だ。双方で同じメモを開き、タブレット側で手書きすれば、ノートPC側にも挿入される。AndroidやiOS用のOneNoteには、描画機能が装備されていないので、この連携はWindows PC同士ならではのものとなる。
あらゆる環境の差異を吸収するOneNote
スマートフォン側にしかアプリが提供されていなくても、そのデータをWindows PCとうまく共有できる可能性がある。Android OSに装備されたインテント、いわゆる共有機能を使うのだ。ファイルがある場合にはOneDrive、ファイルがない場合はOneNoteを介してWindowsにデータを持って行く。
例えば、ブラウザを開いてサイトを見ているときに、このページはあとでゆっくり読みたいと思ったとしよう。普通は、Pocketなどの「あとで読む」系のサービスを使って、そのサイト情報を保存してきた。
Windows 8.1にもリーディングリストアプリが用意され、新しいUIのIEで開いているページについてはリストに登録しておき、あとで、そのリストを呼び出して参照することはできる。だが、デスクトップ版のIEからはリーディングリストは使えないし、Windows以外の環境からも使えない。
ストア版OneNoteなら、Windowsの共有機能を使って、新しいUIのIEで表示しているサイトを受け取れるし、デスクトップ版IEならページの情報や、その印刷イメージをOneNoteに送ることができる。OneNoteはプリンタでもあるので、印刷ができるアプリからなら、イメージとしてデータを送ることができる。
このように、Androidの共有機能を使えば、多くのアプリからOneNoteにデータを送ることができ、そのデータをほかのプラットフォームのOneNoteで参照できる。iOSではこうしたことが難しいのが残念だ。
PCは買い換えるのではなく買い足すもの
こうしたデバイス間の連携は、DropboxやEvernoteといった古くからあるサービスを使えばできていたことではある。双方ともにマルチプラットフォームで、Windowsはもちろん、iOSやAndroidからも使えるサービスとして愛用されてきた。もちろん、これらのサービスを使い続けたって構わない。だが、OfficeをプリインストールしたWindows PCなら、これらの機能を、何も考えずにすぐに利用できる点がうれしい。
しかも、最近、「OneNote 2013」が無償で公開された。Mac版もリリースされ、こちらも無償公開だ。Officeプリインストール機でなくても、まさに全てのPCでOneNoteのフル機能が使えるようになったのだ。
複雑になりすぎず、クラウド上のファイルシステムを提供するだけのOneDriveと、さまざまなプラットフォームで、さまざまな形式のデータの受け皿となるOneNoteの組み合わせは、シンプルでありながら実に強力で、異なるプラットフォームのデバイスを並べて使っても、まるで、それらがマルチディスプレイであるかのように連携させられる。それに加えて、Windowsしか選択肢がなかった時代にできていたことを、Windowsは何も失っていない。
OSの違いやフォームファクタの違いを敵対する必要は全くなく、好きなデバイスを好きなだけ好きなように使えばいいのだ。でも、その内の1台としてWindows 8.1のPCがあれば、いろいろな場面でデータの受け皿となり、それを材料として情報を生産できるだろう。例えば、最新のiPadからタッチに対応していない古いデスクトップPCへリモートデスクトップで接続し、ベッドで“寝モバ”を楽しむというのもありだ。Windows 8.1がProエディションならそれができる。
パーソナルコンピュータでぼくらは何をしてきたのか。そして、これから何をしようとしているのか。少なくとも、パーソナルコンピュータは買い換えるものではなく、買い足して併用するものだと考えた方がいい。
というわけで、約半年に渡って、いろいろな観点からWindows 8.1を見てきたこの連載も、今回で一旦おしまいとする。この春にはWindows 8.1もさらなるアップデートが行なわれるし、2015年のWindows 9登場の噂も流れ始めている。どうか、楽しく豊かなパーソナルコンピューティングを享受してほしい。
ご愛読ありがとうございました。