Ubuntu日和

【第54回】お手軽に画像生成するならこれ!Intel Arc A580の侮れない実力

設置場所の関係でうまく写真が撮れず、使用感あふれるものになってしまった

 2月23日のことであった。大阪日本橋にいた筆者は、某店でIntel Arc A580を搭載したAR-A580D6-E8GB/DFが2万円程度で販売されているという情報を聞き、購入してしまった。

 第16回で紹介したようにIntel Arc A380 Challenger ITX 6GB OCは所有しているが、正直性能には物足りなさを感じていた。この時はビデオカードを積める検証用PCがDeskMeet X300であったが、その後より大きなPCケースを購入して長いビデオカードでも積めるようになった。より高速なIntel Arcを試してみるいい機会だったのだ。

 発売時期に公開されたレビュー記事「「Intel Arc A580」ついに発売へ。シリーズ最後のピースの性能やいかに?」を読むと、性能はまずまずだが、ワットパフォーマンスは悪く、特に価格がネックであったことが分かる。2万円というのは特価であったものの、普通に購入しても2万円台半ばともあれば、このネックがなくなったと考えていいだろう。

使用するハードウェアとソフトウェア

 検証に使用したPCの構成は次の通りだ。

分類メーカー型番
CPUIntelCore i5-13500
メモリーCrucialCT32G4DFD832A
マザーボードASRockB660M Pro RS
ビデオカード玄人志向AR-A580D6-E8GB/DF
SSDキオクシアSSD-CK500N3/N
ケースSilver StoneSST-SG11B
電源玄人志向KRPW-SXP600W/90+

 IntelのビデオカードではUEFI BIOSでResizable BARを有効にしろといわれるが、ASRockのマザーボードではC.A.Mという名称のようで、ほかのメーカーのマザーボードを使用している場合は注意が必要だ。

 OSはUbuntu 22.04 LTSだ。24.04 LTSがリリースされた今であっても、ハードウェアベンダーが提供するドライバを使用する場合は、当面は22.04 LTSを使い続けたほうがいい。しっかりUbuntu側でサポートしているNVIDIA製GPUを使用している場合は除くが。

 第47回でも紹介しているように、ただIntel Arcを使用するだけであれば最新版にアップデートすると認識される。しかし今回は画像生成AIを使う関係で別途ドライバをインストールすることになった。Client Intel Package Repository Configurationを参考にドライバをインストールする。

 ほぼそのままコピー&ペーストだが、次のコマンドを実行しよう。

$ wget -qO - https://repositories.intel.com/gpu/intel-graphics.key | sudo gpg --yes --dearmor --output /usr/share/keyrings/intel-graphics.gpg
$ echo "deb [arch=amd64,i386 signed-by=/usr/share/keyrings/intel-graphics.gpg] https://repositories.intel.com/gpu/ubuntu jammy client" | sudo tee /$ etc/apt/sources.list.d/intel-gpu-jammy.list
$ sudo apt update
$ sudo apt install -y intel-opencl-icd intel-level-zero-gpu level-zero   intel-media-va-driver-non-free libmfx1 libmfxgen1 libvpl2 libegl-mesa0 libegl1-mesa libegl1-mesa-dev libgbm1 libgl1-mesa-dev libgl1-mesa-dri   libglapi-mesa libgles2-mesa-dev libglx-mesa0 libigdgmm12 libxatracker2 mesa-va-drivers mesa-vdpau-drivers mesa-vulkan-drivers va-driver-all vainfo hwinfo clinfo

 「このシステムについて」を見てみると次のようになる。

Intel Arc A580がしっかり認識している

Vulkanベンチマーク

 第53回を筆頭に本連載では何回かUbuntuでSteamのゲームができることを紹介している。Windows用のゲームも動作し、Protonという仕組みを使ってリアルタイムでDirect3DをVulkanに変換している。ということはVulkanが速ければWindows用のゲームも速くなるはずだ。Phoronix Test Suiteで簡単にVulkanのベンチマークを測ってみた。

 比較対象はRX6600XT CLI 8Gだ。すなわちRadeon RX 6600XTである。

 簡易なベンチマークであるGravityMarkでは、あまり大きな差は見られない。グラフではGPUの名称が誤っているが、間違いなくA580での結果である。

GravityMarkでのベンチマーク

 一方Waifu2x-NCNNでは、TAA(Temporal Anti-Aliasing)を有効にすると無視できない差が出る。

Waifu2x-NCNNでのベンチマーク

 とはいえ、それほど重くない3Dゲームであれば特に問題なくできそうだ。「ライザのアトリエ」はA380では少し重かったが、A580では全く問題ないであろう。

画像生成

 せっかくVRAMが8GBもあるのだから、画像生成をやってみよう。

 「5万円台で生成AIに理想的なVRAM 16GBの「Intel Arc A770」でStable Diffusionが使えるか試してみた」を読むと分かるのだが、IntelのGPUは画像生成(だけではないが)を加速するライブラリがIPEXとOpenVINOの2種類ある。今回はIPEXを使用することにした。

 この記事によるとWindowsでAUTOMATIC1111版Stable Diffusion WebUIが動作したようだが、筆者が試したところではUbuntuではうまく動作しなかったので、SD.Next版Stable Diffusion WebUIを使用することにした。

 ドキュメントに従って、インストールは次のコマンドを実行した。

$ wget -O- https://apt.repos.intel.com/intel-gpg-keys/GPG-PUB-KEY-INTEL-SW-PRODUCTS.PUB | gpg --dearmor | sudo tee /usr/share/keyrings/oneapi-archive-keyring.gpg > /dev/null
$ echo "deb [signed-by=/usr/share/keyrings/oneapi-archive-keyring.gpg] https://apt.repos.intel.com/oneapi all main" | sudo tee /etc/apt/sources.list.d/oneAPI.list
$ sudo apt update
$ sudo apt install intel-basekit git python3.10-venv libgl1 libglib2.0-0
$ git clone https://github.com/vladmandic/automatic.git
$ cd automatic
$ ./webui.sh --use-ipex

 768×768ドットで20枚連続生成してみた。結果は次の通りだ。

A580での生成結果。恥ずかしいのでプロンプトは隠している

 約9分で非常に速い。なお3回計測した3回目である。

 同条件でRadeon RX 6600XTでも計測してみたところ、次のようになった。

6600XTでの生成結果

 17分以上かかった。ほぼ倍の時間だ。

 同条件ではないものの、似たような条件でGeForce GTX 3060(VRAM 12GBモデル)を動作させてみたところ、おおむね6600XTと同じくらいの時間がかかった。どうやら「A580がダントツで速い」という結果で間違いなさそうだ。

 というわけで、画像生成をやってみるなら、Intel Arc A580はいい買い物だといえる。