Ubuntu日和
【第53回】Ubuntuでも遊べる無料ゲーム10選+1
2024年6月1日 06:14
本連載の第3回では、UbuntuでSteamのゲームを動かす方法を紹介した。無料のOSでも、ゲームコンソールとして十分使えることが理解していただけたのではないかと思う。
当然だが、Steamで販売されているような商用のタイトルの多くは有料だ。だがゲームは遊びたいが、ゲーム自体にあまりお金をかけられないという人も(特に学生などには)多いと思う。そこで今回は、Ubuntu 24.04 LTSでも遊べる「無料の」ゲームを紹介しようと思う。
Steamのストアを検索すると分かるのだが、実は無料で入手できるタイトル自体は結構な数がある。またゲームはUbuntuのパッケージとしても数多く提供されているが、これらも当然無料である。そうしたタイトルすべてを紹介するというわけにはいかないため、今回はその中から「これってUbuntuで動いたんだ」、「こんなゲームもあったんだ」と思ってもらえそうなタイトルを、筆者が独断で10本選んでみた。「なんであれがないんだよ! 」と思われるヘビーゲーマーの方もいると思うが、そのあたりはご理解いただければ幸いだ。
Steamで遊べる無料ゲーム
前述の通り、Steamには無料で遊べるタイトルが多く存在する。その中でもいわゆる「基本プレイ無料のソシャゲ」のようなタイプは避け、買い切りのゲームと同じように遊べるものを選んでみた。
Team Fortress 2
「Team Fortress 2」は、Steamの運営元でもあるValveが、2007年に発売した対戦型FPSゲームだ。最大24人のプレイヤーが赤と青の2チームに分かれ、さまざまなルールの下で対戦する。リリースから17年が経過しているが、現在でもアクティブなプレイヤーが多い、人気タイトルとなっている。
本作は非常に有名なため、名前くらいは聞いたことがある人や、スクリーンショット見れば「ああ、あれか」と思う人も多いのではないだろうか。Team Fortress 2はもともと有料であったが、現在ではSteamユーザーであれば、誰でも無料で遊べるようになっている。
The Battle for Wesnoth
「The Battle for Wesnoth」は、オープンソースで開発されている、ファンタジー戦略シミュレーションゲームだ。大戦略とファイアーエムブレムを足したようなゲームだと言えば、なんとなく想像はつくと思う。2003年の公開から20年以上の歴史を持つが、現在でも積極的にアップデートが行なわれている、非常に息の長いタイトルだ。
最大の特徴は、なんといっても「オープンソースソフトウェア」である点だ。プレイヤーはゲームの改良に貢献することもできるし、自分の考えたシナリオやユニットを制作することもできる。こうしたユーザーによって作成されたコンテンツは、アドオンとして公開されているため、自由にゲームを拡張することもできるのだ。
本作もTeam Fortress 2と同様に、Linuxに対応している。
Path of Exile
「Path of Exile」はダークファンタジーの世界を舞台とした、ハック&スラッシュタイプのオンラインアクションRPGだ。一言で言ってしまえば「Diabloの系譜」である。
無料とは思えない圧倒的なボリュームとやり込み要素を誇り、現在でも継続的なアップデートが行なわれている。リリースから10年以上を経過した今でも人気があり、Diablo、Titan Quest、Grim Dawnなどが好きな人に、特にお薦めしたいタイトルだ。
ちなみに2024年5月現在、続編である「Path of Exile 2」が開発中だ。年内にはアーリーアクセスも予定されている。こちらも無料でプレイできるため、本作に興味があったら、ぜひチェックしてみて欲しい。
本作と、以下で紹介する「ドキドキ文芸部! 」はLinuxに対応していないため、Steamの設定から、すべてのタイトルでProtonを有効にする必要がある。
ドキドキ文芸部!
「ドキドキ文芸部!」は、Python製のノベルゲームエンジン「Ren'Py」で制作された、いわゆる美少女ビジュアルノベルだ。PCおよび家庭用ゲーム機向けには、本作に追加シナリオを加え、HDリマスターしたものが「ドキドキ文芸部プラス!」のタイトルで販売されているが、基本シナリオのみを収録した本作は、無料で遊ぶことができる。
ところが、本作は日本語に対応していない(「プラス!」は公式に対応している)。英語でノベルゲームを楽しむのは、ちょっとハードルが高いだろう。そこで有志が作成した日本語パッチを当てる方法を紹介する。
以下のコマンドを実行して、GitHubからZIPファイルをダウンロードし、その中にある「game」フォルダをインストール先に上書きすればいい。Ubuntuのパッケージ以外からSteamをインストールしているなどの理由で、ゲームのインストール先のパスが異なる場合は、cpコマンドの引数を適宜変更しよう。手順については、Steamコミュニティのガイドも参考にしてほしい。
$ curl -LO https://github.com/proudust/ddlc-jp-patch/releases/download/200725/DDLC_JP_200725.zip
$ unzip DDLC_JP_200725.zip && cd DDLC_JP_200725/
$ cp -r game "$HOME/.steam/debian-installation/steamapps/common/Doki Doki Literature Club"
本作は公式ページや起動時にも警告があるように、子どもには向かない表現や(紳士向きという意味ではない。念のため)、一部刺激の強い場面がある。それを理解した上で、十分に気をつけてドキドキしてほしい。
APTでインストールできる無料ゲーム
Ubuntuのメリットの1つが、Debian GNU/Linux譲りの豊富なパッケージだ。「でも、Linuxに付属のゲームなんて、どうせソリティアやマインスイーパなんでしょう? 」と思うかもしれない。まあ半分くらいはその通りなのだが、実はこんなのもあるんだよ、というものを紹介しよう。
rRootage
「rRootage」は2003年に、ゲームクリエイターの長健太氏が発表した弾幕シューティングゲームだ。ボスとひたすら一騎打ちをするというシンプルな内容だが、本作のキモは、弾幕生成エンジン「Bulletsmorph」をゲームに組み込んでいるところにある。遺伝的アルゴリズムを用いて弾幕遺伝子を交配することで、新しい弾幕パターンを自動生成しているのだ。
ボリュームもあり、ショットとボムが使える「NORMALモード」、敵弾にかすってレベルアップする「PSYモード」、赤白2つの属性を切り替えて、同色の敵弾を吸収する「IKAモード」、バリアを張って敵弾を反射する「GWモード」の4種類のゲームモードと、40のステージが用意されている。
遊ぶには「rrootage」パッケージをインストールすればいい。
$ sudo apt install -y rrootage
Pentobi
「Blokus」というボードゲームがある。これはテトリスのミノ(ブロック)のようなさまざまな形のピースを盤面に並べる、陣取り型のボードゲームだ。ゲームのルールは非常にシンプルで、「ピースが置けるのは、既に置かれている自分のピースと頂点が接触しており、かつ辺同士は接触しない場所だけ」の一点のみ。この小学生でも理解できるシンプルさと、それゆえの奥深い戦略性が共存する、ボードゲームの名作だ。
CPUと対戦できる、Blokusのソフトウェア実装が「Pentobi」だ。遊ぶには「pentobi」パッケージをインストールしよう。
$ sudo apt install -y pentobi
Pentobiでは定番のClassicルールのほかに、二人対戦のDuoや、六角形の盤面と三角形のピースを使うTrigonなど、7つのゲームモードを備えている。特にTrigonは、使う盤面やピースの形状が異なるため、オリジナルのボードゲームでは専用の製品を別途購入する必要がある。これも無料で遊べてしまうのは、ソフトウェアならではのアドバンテージと言えるだろう。
GNOME上海
それは21世紀を翌年に控えた、ある夏の蒸し暑い夜のこと。「徹夜で麻雀大会じゃ! 」と意気込んでアパートの一室に集まるも、東一局目にして、誰も点数を計算できないことが発覚し、徹夜の上海大会に急遽変更されたという悲劇的伝説が、京都の方にあるとかないとか……。
という個人的な青春の思い出はさておき、ソリティアと並ぶテーブルゲームの定番といえば上海だろう。Ubuntuのデフォルトデスクトップ環境であるGNOMEのリリースには、GNOME上で動作するように開発された、さまざまなアプリケーション群が含まれている。この中にはゲームも存在し、そのうちの1つが「GNOME上海」だ。ゲーム内容はいわゆる「上海」なので、今更説明するまでもないと思う。
遊ぶには「gnome-mahjongg」パッケージをインストールすればいい。パッケージ名が「shanghai」ではない点に注意だ。
$ sudo apt install -y gnome-mahjongg
トランプの一人遊びに飽きたら、たまには麻雀牌を崩してみるのもいいのではないだろうか。
GNOME 2048
ちょっとしたゲームがひょんなことから大ヒットし、クローンや改変作品が無数に生まれる、ということがたまにある。少し前ならVampire Survivorsやスイカゲーム、最近では8番出口あたりがそんな立ち位置だろうか。そして2048は今から10年ほど前に、そんな感じで大流行したパズルゲームだ。
プレイヤーは4x4のグリッド内に配置された数字のパネルを、上下左右のキーでスライドさせる。パネルは1つだけではなく、グリッド内のすべてのパネルが同時に動く。そして同じ数字が書かれたパネル同士が接触すると、合体して中の数字が合計される。2→4→8→16とパネルの合体を繰り返し、2048のパネル作るのがゲームの目的だ。
2048には数多くのクローン実装があり、Ubuntuのリポジトリにも3種類が存在する。その中でも前述の上海同様、GNOMEアプリケーションとして配布されているのが「GNOME 2048」だ。遊ぶためには「gnome-2048」パッケージをインストールしよう。
$ sudo apt install -y gnome-2048
ちなみに別実装である「2048-Qt」の方が見た目も落ち着いており、数字のラベルを別のものに切り替えられたりと高機能である。お好みで「2048-qt」パッケージをインストールするのもお勧めだ。また「2048」パッケージでインストールできるバージョンは、CLIのターミナル内で動作する。CLIで動作するということはサーバールームでも……おっと上司が来たようだ。
Snapパッケージでインストールできる無料ゲーム
SnapはLinuxベースのシステムであれば、ディストリビューションを問わずに使える、ユニバーサルパッケージシステムの1つだ。ユニバーサルパッケージは依存関係を気にせずインストールできるため、OSのライフサイクルに縛られず、アプリの新バージョンを提供することができる。これが特に進化の早いデスクトップアプリと相性がよいため、現在ではさまざまなアプリがSnapで提供されている。そしてその中には、もちろんゲームも含まれている。
0 A.D.
「0 A.D.」は紀元前500年から紀元500年という時代を舞台とした、オープンソースのリアルタイムストラテジーゲームだ。プレイヤーは古代文明を指揮し、拠点を建設し、経済を発展させ、軍備を整える。そして最終的にはほかのプレイヤーの文明を、戦争で打ち負かすことが目的だ。一言で言えば、Microsoftの「Age of Empires」とやっていることは同じである。
……というか、もともと0 A.D.のプロジェクトは、2001年にAge of Empires IIのModとして開発がスタートしたものの、その後スタンドアロンのタイトルに方針を転換したという経緯があるのだ。
オープンソースでクロスプラットフォームなゲームのため、さまざまな方法でインストールできるのだが、Ubuntu 24.04 LTSであれば、以下のようにSnapを使うのが簡単だろう。23.10までであれば、APTでインストールすることもできたのだが、24.04 LTSにはパッケージが存在しないためだ。
$ sudo snap install 0ad
Warzone 2100
「Warzone 2100」も0 A.D.と同様の、リアルタイムストラテジーゲームだ。ただし0 A.D.が遥か古代を舞台にしていたのに対し、こちらはSFである。人類が核ミサイルによってほぼ滅亡した後の時代。プレイヤーは世界を再建するためのプロジェクトを指揮することになる。
Warzone 2100はもともと1999年にWindowsとPlayStation向けにリリースされたのだが、2004年にオープンソース化されて、現在に至っている。非常に古くさいゲームに見えるかもしれないが、現在でも開発は行なわれており、最新バージョンである4.4.2は、2023年11月にリリースされたばかりだ。
本作も0 A.D.と同様に、UbuntuであればSnapでインストールするのが簡単だろう。以下のコマンドを実行してほしい。
$ sudo snap install warzone2100
自分でコンパイルして遊べる無料ゲーム
オープンソースのメリットは、ソースコードにアクセスでき、改変や再配布ができるという自由にある。それゆえUbuntuのようなディストリビューションでは、自分たちにとって必要なパッチを当て、都合よくカスタマイズした上で、リポジトリから再配布できるというわけだ。
遠い昔。UnixライクなOSでは、ソフトウェアはソースコードを入手し、ユーザーが自分でパッチを当て、コンパイルして利用するのが当たり前だった。それに倣って、本記事でも最後のオマケとして、あの古典的名作ゲームにパッチを当てて、自分でコンパイルして動かす方法を紹介しよう。
JNetHack
かつて「Rogue」というゲームがあった。RogueはUnixのテキストコンソール上で動作することを前提に開発された、パーマデス制のシングルプレイヤーRPGだ。プレイヤーは洞窟の奥深くから魔除けを持ち帰ることを目的に、毎回ランダムに生成されたダンジョンを探索することになる。まあ分かりやすく言えば「シレンの元ネタ」である。
Rogueは「ローグライク」と呼ばれる派生作品を数多く生み出した(シレンもこの1つだ)。その中でも、元祖Rogueの直系の子孫にあたるのが「NetHack」だ。NetHackは現在でも開発が継続されており、Ubuntuにもパッケージが用意されている。
だが残念ながら、NetHackは日本語に対応していない。Ubuntuのパッケージからインストールしても、もちろん日本語では遊べない。そこでNetHackを日本語化するプロジェクト、JNetHackが公開してるパッチを当てて、自分で日本語化してみよう。
まずはNetHackのビルドと日本語化に必要なパッケージをインストールする。
$ sudo apt install -y nkf build-essential libncurses-dev bison flex
続いて最新のNetHackである、バージョン3.6.7のソースコードと、日本語化パッチをダウンロードする。
$ curl -O http://www.nethack.org/download/3.6.7/nethack-367-src.tgz
$ curl -o jnethack-3.6.7-0.1.diff.gz -L 'https://ja.osdn.net/frs/redir.php?m=ipconnect&f=jnethack%2F78334%2Fjnethack-3.6.7-0.1.diff.gz'
ソースコードを展開して、日本語化パッチを当てる。
$ tar xf nethack-367-src.tgz && cd NetHack-3.6.7
$ zcat ../jnethack-3.6.7-0.1.diff.gz | patch -p1
ビルドとインストールを行なう。
$ sh japanese/set_lnx.sh
$ make install
ビルドとインストールが正常に完了すると、ホームディレクトリ直下に「nh」というディレクトリが作成されているはずだ。この中の「install/games」ディレクトリ以下に、「jnethack」というバイナリがあるので、これを実行しよう。
$ ~/nh/install/games/jnethack
おわりに
というわけで、Ubuntu 24.04 LTSで遊べる無料ゲーム選んで紹介してきた。「単に無料でインストールできるだけのゲーム」ではなく、相応に遊びごたえのあるタイトルを選定したつもりだが、いかがだろうか。
OSやゲーム本体が無料でも、遊ぶには高価なゲーミングPCが必要なんじゃないの……? そう身がまえてしまう人もいるかもしれない。だが安心してほしい。今回紹介したタイトルのうち、Path of Exileと0 A.D.以外は、すべてN100搭載の安価なミニPCで動作確認をしている。さすがにN100では0 A.D.はまともなフレームレートが出ず、Path of Exileは起動すらしなかったが、リッチな3Dゲームでなければ、意外となんとかなるというのが筆者の感想だ。
これはLinuxディストリビューションにも言えることだが、どうせ無料なのだから、とりあえずダメモトでいろいろなタイトルを遊んでみてほしい。
それではよいゲームライフを!