笠原一輝のユビキタス情報局

サブスクか永続かを選べるバンドル版Office、Microsoft 365 Personal (24か月)搭載PCとは何か?

Microsoft 365 Personal (24か月)の全体フロー

 グローバルなPC市場と、日本のそれの違いを1つだけ挙げよといわれれば、多くの関係者が「プリインストール(添付)されたソフトウェア」と答えるだろう。日本ではMicrosoft Officeの添付率は、店頭で販売される一般消費者向けPCの90%を超えているといわれており、既にそうした添付ソフトウェアがほとんどなくなっている、グローバル市場との大きな差別化要因になっている。

 そうした中、昨年(2025年)の10月からPIPC版Officeには新たに施策が開始されており、既に新規に販売されている一般消費者向けのPCなどに添付されて販売され始めている。そうしたMicrosoftの新しい取り組みとなる「Microsoft 365 Personal (24か月)搭載PC」について、日本マイクロソフトに取材した内容などをもとに紹介していきたい。

新規PCに添付されるソフトウェアが当たり前だった日本市場だが、2010年代後半からは減少傾向に

PIPC版Officeとパッケージ版Officeの違い(生成AI、Photoshopでの生成)

 一般消費者向けPCへのプリインストールソフトウェアの歴史は古く、1990年代の前半に富士通「FMV DESKPOWER」などの一般消費者向けPCに多数のソフトウェアを添付して販売するようになり、日本ではそうしたソフトウェアの添付が当たり前になった。

 今からは信じられないかもしれないが、バンドルされているソフトウェアは、Microsoft Officeやその競合となるLotusの「Super Office」などのオフィスアプリから、定番の年賀状作成ソフト、写真編集ソフト、ゲームなどなどほとんどのジャンルのソフトウェアが用意されており、当時は一般消費者向けのPCを買えば、一通りのソフトウェアがそろうという状況だった。

 こうしたソフトウェアの添付は、PCメーカーにとっては非常に安いライセンス料で添付できるため、PCのお買い得感を演出できるというメリットがあったし、ソフトウェアベンダーにとってはバージョンアップ時にバージョンアップ料金で利益を上げられるというメリットがあり、そしてユーザーはハードだけでなくソフトウェアも含めて安価に入手できる……という「三方全得」(そんな言葉があるのかどうか知らないが)みたいな状況で1990年代から2010年代にかけてエンドユーザーがソフトウェアを入手する手段として一般的なものだった。

 それが大きく変わったのが、2010年代にAdobeがサブスクリプション型のライセンスモデルを始めてからだ。それにMicrosoftも追随してサブスクリプション型のOfficeの提供を開始した。さらに、ソフトウェアのインストールも従来のように光学メディアで提供が廃れていき、Webサイトやアプリストアからダウンロードしてインストールするのが当たり前になっていった。それに合わせて、PCから光学ドライブは消えていき、一般消費者向けのPCにプリインストールされて添付されるソフトウェアは減っていった……というのが歴史になる。

 なお、これらの話はいずれも一般消費者向けのPCでの話で、法人向けPCにはOfficeは(少数の例外を除いて)添付されてきていないし、現在も添付されていないのがほとんどだ。これは、法人向けPCではかつてはボリュームライセンス、現在ではサブスク型のライセンスを購入するのが一般的であり、一般消費者向けのOfficeを利用することは中小企業での利用例はあるが、大企業ではあまり例がないからだ。

根強い人気を誇るプリインストール版Office、Microsoftは何度もサブスク版への移行を目指すが成功してこなかった

2014年に開催されたOffice Premium発表会に参加したMicrosoft CEO サティヤ・ナデラ氏

 そうした添付されたソフトウェアの中で、いまだに根強い人気を誇るのが、MicrosoftのPIPC版Officeだ。PIPCとは、「Pre Install PC」の略称で、日本マイクロソフトの社内用語で「PCに添付して販売されるソフトウェア」という意味になる。

 MicrosoftのPIPC版Officeの歴史は古く、前述のように1990年代前半から日本で当たり前になったソフトウェアてんこ盛りの一般消費者向けPCに提供が開始された。当時は別途パッケージ版と呼ばれるインストールメディア(当初はFD、後にCD-ROMやDVD-ROM)とセットで販売されるOfficeと並び、一般消費者がOfficeアプリケーションを入手する方法として双璧だったのだ。

 ただし、PIPC版は安価に添付されているということもあり、パッケージ版に比べると制約があった。その制約は、PIPC版Officeは、その添付されているPCハードウェアだけで利用できるということで、PCが壊れたからほかのPCに移して利用するということはできないということだ。パッケージ版は、同時に最大2台までインストールできるということで、古いPCからアンインストールしたり、PCが壊れて利用できなくなったなどの場合にはほかのPCに移して利用することが可能だった。

 そうした状況が大きく変わったのが、2014年だ。

 PIPC版とパッケージ版の違いは前出の通りだったのだが、PIPCはOffice PremiumプラスOffice 365サービス(以下Office Premium)といういわゆるOffice Premiumと呼ばれる製品に進化したのだ。

 これは簡単に言うと、そのプリインストールされたPCでしか使えないOfficeアプリケーションは一緒なのだが、Office 365サービスと呼ばれるOneDrive 1TB、モバイルアプリ、Skype無料通話月間60分というクラウドベースのサービスが1年間分バンドルされ、その後クレジットカードやPOSAカードなどで課金することで、1年間の契約期間が終了した後も、使い続けられるというものだった。

 なお、従来のパッケージ版のOfficeも、パッケージがなくなりPOSAカードやクレジットカードなどでライセンスを買い、MicrosoftのWebサイトやMicrosoft Storeなどからソフトウェアをダウンロードしてインストールする形になったため、パッケージ版という呼ばれ方はなくなり、サブスクリプション版に対して「永続版」の名称で呼ばれるようになった。

【表】Officeの変遷(筆者作成、年代などには若干の前後がある)
90年代~2010年代前半2010年代後半2020年代2025年10月以降
名称PIPC版OfficeOffice Premium(Officeアプリ+クラウド機能)PIPC版 Office Home&Business/Microsoft 365 Personal(12ヶ月)Microsoft 365 Personal (24 か月)
利用可能PC/台数バンドルPCのみ/1台バンドルPCのみ/1台バンドルPCのみ/1台バンドルPCのみ/1台
名称パッケージ版Office(2台のPCに導入可)永続版Office(Personal/Home&Business/Professionalなど)永続版Office Home & Business永続版Office Home & Business
利用可能PC/台数制限なし/2台制限なし/2台制限なし/2台制限なし/2台
名称Office SoloMicrosoft 365 Personal/FamilyMicrosoft 365 Personal/Family
利用可能PC/台数5台5台(Personal)5台(Personal)

 しかし、このOffice Premiumは数年で提供が終了し、2020年代前半には、サブスク版、永続版、PIPC版(サブスク版/永続版)の3本立てになってOfficeは販売されてきた。

 サブスク版のMicrosoft 365は、「Microsoft 365 Personal」(1ユーザー5台+OneDrive 1TB)と「Microsoft 365 Family」(1ユーザー+5ユーザーとそれぞれのユーザーにOneDrive 1TB)という2つが、永続版は「Office Home & Business」などとして販売され、PIPC版はOffice Home & Businessの永続版とMicrosoft 365 Personal(12カ月)が用意されるという状況が、昨年まで続いていた。

 こうした歴史を振り返ると、グローバルでは成功したPIPC版Officeのサブスク版への移行は、日本では成功してこなかったと評価せざるを得ないだろう。実際、直近でもOffice Home & Businessの永続版とMicrosoft 365 Personal1年(12か月)が用意されていたが、ほとんどのPCメーカーは永続版の添付を選んできた。つまり、PCメーカーとしては永続版がほしいというユーザーの方が多くて、サブスク版が欲しいというユーザーはあまり多くないと判断していた、そう理解できるだろう。

PCメーカーがサブスクか永続かを選ぶのではなく、ユーザーがサブスクか永続かを選べるようにした

Microsoft 365 Personal (24か月)は最初に24カ月のMicrosoft 365 Personalを選ぶか、3カ月の体験後にサブスク/永続を選ぶかの2つから選ぶことができる

 そうした状況を改善するために、Microsoftは昨年の10月に新しいPIPC版ライセンスの導入を発表した。具体的には、これまで永続版Office Home & Businessないしはサブスク版のMicrosoft 365 Personal(12か月)のどちらを添付するかはPCメーカーが選択してきた(その結果ほとんどが永続版になっていたのは既に説明した通りだ)。今回の新しいライセンスでは、両者を1つのパッケージにして、ユーザーが永続版かサブスク版かを選べるようにした(かつ、サブスク版は1年分から2年分に無償提供期間が延長される)。

 この新しいハイブリッド版のPIPCライセンスは、正式には搭載したPCを「Microsoft 365 Personal (24か月)搭載PC」と日本マイクロソフトは呼んでいる。つまり、ソフトウェアの名称としては「Microsoft 365 Personal (24か月)」だと呼んでよいということになる(以下ハイブリッド版PIPC版ライセンスのことを「Microsoft 365 Personal (24か月)」と呼ぶ)。

 日本マイクロソフト 業務執行役員 コンシューマチャネル事業部 Surface戦略本部 本部長 當野喬之氏によれば、購入してアクティベーションした後に、ユーザーは2つの選択肢が提供されるという。

(1)24カ月分のMicrosoft 365 Personalを選ぶ

(2)3カ月間Microsoft 365 Personalを体験した後、残り21カ月のMicrosoft 365 Personalを継続する、あるいは永続版のOffice Home & Business 2024を選択する

 つまり、製品名「Microsoft 365 Personal (24か月)」が体現しているとおり、基本的には24カ月分のMicrosoft 365 Personalだが、3カ月体験してみてそれが必要ないとユーザーが判断した場合にはOffice Home & Business 2024を選択できる、そうした立て付けの製品だと考えられるだろう。

Microsoftの狙いはまずはサブスク版を体験してもらい、その上でユーザーに選んでもらうという選択肢を提供すること

日本マイクロソフト 業務執行役員 コンシューマチャネル事業部 Surface戦略本部 本部長 當野喬之氏

 Microsoftとしてこのような仕組みにした狙いとしては、Microsoft全体がCopilotに代表されるようなAIの利用活用を促進する上で、こうした形のライセンスが必要だと判断したためだという。

 「CopilotやCopilot+ PCなどが登場したことにより、PIPC版のOfficeもAIに対応している必要があるのではないかという議論を行ない、まずはユーザーの皆さまに3カ月お使いいただき、その後サブスク版をご継続いただくか、永続版を選んでいただけるようにした」(當野氏)との通りで、CopilotのようなAI機能をOfficeアプリケーションでも使いたいという声があり、それに対応するためにユーザーが永続版かサブスク版かを選べるようにMicrosoft 365 Personal (24か月)を導入したのだという。

 というのも、現状のAIの機能は、基本的にクラウドベースで提供されるのが一般的だ。そのためには、クラウドを活用しない永続版ではなく、サブスク版が必要だったというのはうなずける話だ。

 ただ、選べるようにしたが故に、最初から永続版を使いたいというユーザーにとっては、3カ月目に選ばないといけないのは面倒だという声は寄せられているそうで、今後そこはなんらかの改善が必要かもしれないということはあるのかもしれない。それはユーザーが選べるようにしたということの裏返しだ。

 まずは3カ月使ってみてもらいAI機能を含めてサブスク版が便利だと感じてもらえればサブスク版を継続してもらい、いやいやAIとかいらないから普通に永続版のOfficeでいいというのであれば、永続版を選択してもらう……それがMicrosoftの狙いだということだ。

新しいPIPC版は、ユーザーが永続版とサブスク版から好きな方を選べるようになったということは大歓迎

Surface Laptop 13インチ

 現在、新入学、新社会人向けのPC春商戦は終盤を迎えつつあるが、MicrosoftはSurface Pro、Surface LaptopなどのSurface製品向けにキャンペーンモデルを昨年の12月から提供しており、新社会人や新入学の学生など向けに提供している。具体的には「Surface Pro 12インチ」と「Surface Laptop 13インチ」の2モデルに特別モデルを用意しており、たとえばSurface Pro 12インチにはキーボード、スリムペン、ACアダプタ(Surface Pro 12インチではACアダプタは別売)をセットにして販売している。

 今回のモデルでは25歳以下のユーザー限定と、従来の新入学/新社会人向けのモデルに比べてシンプルな対象としたことで、面倒な学生証での確認などが省かれていることもあり、人気のセットになっているそうだ。価格はオープンプライスだが、大手量販店などで値段を確認してみると、Surface Pro 12インチの特別セットは実売16万円弱という設定になっている。従来の新入学向けモデルというと、10万円の壁と言われたものだが、現在は物価上昇や円安などの影響で価格レンジが上がっており、10万円台の半ばという価格がターゲットレンジといわれているので、ちょうどそのあたりにミートする価格レンジだと言えるだろう。

Surface Pro 12インチ

 こうしたモデルにもMicrosoft 365 Personal (24か月)は付属している。新入学の学生にとって、OpenAIのGPTやClaudeベースのAIモデルを利用できるAIであるCopilotを、2年間無償で使えるというのは決して小さなメリットではないと思う。今や何らかのAI機能を活用することは学業であろうがビジネスであろうが必須だといえる。それをとりあえず2年間試せると考えればサブスク版を選ぶのもありだし、3カ月試してそれが必要ではないと思った場合には、永続版のOffice Home & Business 2024を、2年を超えてずっと使い続けるのもありだ。

 筆者個人としては選べるようになったというのは、エンドユーザーの一人として歓迎して良いのではないかと考えている、サブスク版のPIPCがほしいユーザーも、永続版がほしいユーザーもどちらのニーズも満たせるようになったのだから。