笠原一輝のユビキタス情報局
ThinkPad Bluetooth ワイヤレス・トラックポイント・キーボード 日本語版を試す
~タブレットユーザー待望の本格Bluetoothキーボード
(2013/6/25 12:36)
レノボ・ジャパン株式会社は、「ThinkPad Bluetooth ワイヤレス・トラックポイント・キーボード - 日本語」というBluetooth接続のキーボードを発表した。LenovoのThinkPadシリーズの特徴となるスティック型のポインタデバイス“TrackPoint”(トラックポイント)を搭載した外付けキーボードは、これまでいくつか販売されてきたが、その最新版ということになる。
Lenovoは、2012年に発売されたThinkPad T430s/X230などの2012年モデルから6列配列のキーボードに変更しており、本製品もその新しい6列配列のキーボードを採用して生まれ変わっている。また、PCとの接続も従来のUSBからBluetoothへと変更されており、どちらかと言えばデスクトップ向け製品からモバイル向けへと位置付けが変わっているのも大きな特徴となっている。
長い歴史を持つTrackPoint付き外付けキーボード
TrackPointを搭載した外付けキーボードの歴史は長い。古くは日本IBMから発売されたキーボードに始まっており、例えば1999年に発売された「IBM Space Saver Keyboard II」は、デスクトップPC用のキーボードには一般的に搭載されていた10キーをなくして省スペースなこと、さらにはTrackPointが用意されているため別途マウスを必要としない点などで、TrackPointに慣れ親しんでいたユーザーに好評を博した。
次いで登場したのが「ThinkPlus USBキーボード ウルトラナビ付」だ。このキーボードは10キーも用意されており、TrackPoint、パッドも用意されていたことから“ウルトラナビ(TrackPointとパッドをセットでUltraNavと呼んでいる)付”という名前がついている。
次いで、その10キーレス版である「ThinkPlus USBトラベルキーボード ウルトラナビ付」も発売されている。その後、2009年に後継製品としてリリースされたのが、現在も販売されている「ThinkPad USB トラックポイントキーボード」だ。
IBM Space Saver Keyboard IIと、ThinkPlus USBキーボード ウルトラナビ付、ThinkPlus USBトラベルキーボード ウルトラナビ付、ThinkPad USB トラックポイントキーボードという3製品の大きな違いは、前者がデスクトップPC向けのキーボードにTrackPointをつけたのに対して、後の3製品はノートPCであるThinkPadのキーボードをそのまま外付けキーボードにしていることにある。つまり、後者3製品はTrackPointだけでなく、ThinkPadのキーボードの使い勝手をそのまま外付けキーボードでも利用できるというのが魅力になっていた。
【お詫びと訂正】初出時、IBM Space Saver Keyboard IIをメカニカルキーとしておりましたが誤りです。また、IBM Space Saver IIより以前に発売されたTrackPoint付き外付けキーボードも存在しますので修正しました。お詫びして訂正いたします。
6列配列を採用した新型キーボードを採用、日本語入力環境で便利な機能も
今回レノボ・ジャパンが日本で発売することを発表した「ThinkPad Bluetooth ワイヤレス・トラックポイント・キーボード - 日本語」は、そうしたThinkPadキーボードをそのまま外付けキーボードにした製品の流れを汲む。これまで販売されてきたThinkPad USB トラックポイントキーボードとの大きな違いは、キーボードが6列配列のキーボードになっていること、PCとの接続がUSBからBluetoothへと変更されていることだ。
以前の記事でも触れたとおり、ThinkPadシリーズのキーボードは2012年型の製品(ThinkPad T430s/T430/T530/X230など)から、従来の7列配列から6列配列へ変更されている。その経緯に関して、詳しくは前出の過去記事を参照して頂きたいが、ノートブックPCの市場全体が、重厚長大なフルサイズノートPCから、Intelが推進するUltrabookのような製品へと移行しようという時に、システムの中で大きな面積を占めてしまう7列配列キーボードは時代の趨勢と合わなくなってきたのが大きな要因だった。
本製品もそうした新時代のThinkPadに合わせて6列配列が採用されている。というよりも、従来のThinkPad USB トラックポイントキーボードのように、ThinkPadシリーズ向けに作られたキーボードの部品を、そのまま外付けキーボードに流用しているため、必然的にそうなったと考えられる。
このため、キーの形状やタッチなども、2012年型のThinkPadシリーズと共通になっている。キートップの形状はアイソレーション型と呼ばれるもので、キートップの大きさが若干小さくなっているもののキー間隔が十分に確保されたタイプに変更されている。こうしたキーボードは現在のノートPCでは主流になってきており、2012年型のThinkPadシリーズや他社のUltrabookなどを利用している人には違和感なく利用することができるだろう。なお、キーピッチは19mmが確保されており、大きさから考えてもT430sなど、Tシリーズのキーボードに近いキーボードだと考えられる(1世代前で7列配列のT420sと比較してみたが、ほぼ同じサイズだった)。
キーストロークは2mm±0.2mmとなっており、触ってみた印象では、前出の2012年型ThinkPadシリーズと同程度と感じた。また、前モデルのThinkPad USB トラックポイントキーボードとの比較では、底面の足を出して斜めにした時の入力感が向上していると感じた。いずれの製品もこの斜めにする機構を備えるが、ThinkPad USB トラックポイントキーボードではキーボード自体の剛性がやや足りない感じで、入力していると“ぐにゃぐにゃ”する感じがあった。しかし、本製品では本体の剛性が大きく改善されており、底面の足を出してかなり強くキーボードを叩いてもひ弱な感じがしないのだ。快適に入力できるという意味では、効果は非常に大きいといえるだろう。
ただ、その反面重さは450g(カタログスペック、実測では420gだった)とやや重めになっている。剛性の確保などを優先したことやバッテリが内蔵(詳しくは後述)されているためだろう。しかし、TrackPointが内蔵されているため、別途マウスを持ち歩く必要がないことは指摘しておきたい。例えば、Bluetoothマウスなどを持ち歩けば、それで100~200gぐらいにはなってしまう。そう考えれば十分正当化されると言えるのではないだろうか。
なお、本製品もWindows 8を意識したキーボードになっており、ファンクション(F*)キーは標準でWindows 8の機能キーとなっている。Fnキーと組み合わせなくてもミュート、ボリュームアップ/ダウン、マイクミュート、液晶の輝度のアップ/ダウン、画面切り替え、無線のオン/オフ、PCの設定を呼び出し(Windows 8時)、チャームの検索呼び出し(Windows 8時)、タスク切り替え、全てのアプリケーション表示(Windows 8時)といった機能に割り当てられている。これらの機能をワンタッチで呼び出すのは確かに便利なのだが、日本語環境では、(IMEによるが)F7でカタカナ変換、F8で半角変換、F9でアルファベット変換などファンクションキーを利用することが多く、これはこれで不便だという議論もあるだろう。そうしたユーザーにとって嬉しいのは、「Fnキーロック」が用意されていることで、FnキーとESCキーを同時に押すことでFnロックが有効になり、普通のファンクションキーとして利用できる。日本語入力でファンクションキーを多用しているユーザーには非常に嬉しい仕様ということができるだろう。
NFCタグ機能を利用したペアリング機能を利用して、お気楽ペアリングが可能
従来製品がUSBで接続するUSBキーボードだったのに対して、本製品はPCとの接続インターフェイスがBluetooth 3.0になっている。このため、バッテリが内蔵されており、付属のMicro USBケーブルを利用して充電する。
ペアリングはもちろん一般的な手順でも可能だが、NFCを内蔵しているWindows 8マシンの場合には、本製品の底面に用意されているNFCタグを利用して自動でペアリングさせることができる。利用方法は簡単で、底面のNFCのロゴが書かれた部分を、PC側のNFCリーダに重ね合わせるだけだ。そうすると、画面の右上部にペアリングするかのメッセージが表示されるので、それをタッチするかクリックすると、PCが自動で設定を読み取り、必要なドライバをインストールしたり、ペアリングを行なってくれる。実際に、Windows 8が初期導入されているVAIO Proで実行した見たところ、問題なくペアリングとドライバの導入が行なわれた。
ペアリングされるとドライバーの導入が促され、必要に応じて追加のドライバを導入できる。コントロールパネルの「マウスのプロパティ」から利用可能な設定ツールが用意されており、TrackPoint操作時のポインタ速度や、ThinkPadシリーズと組み合わせて利用する場合にはThinkPadシリーズのOSDを利用するかなどの設定が可能になる。
なお、基本的に本製品はLenovoが発売するノートPCと組み合わせて利用することを前提としている。そのために動作保証外にはなるのだが、他社のBluetooth内蔵PCやスマートフォン、タブレットと組み合わせて利用することもできる。筆者が個人的に利用しているNTTドコモの「ELUGA X P-02E」もNFCに対応しているため、試しにNFCによるペアリングを実験してみたところ、キーボードは問題なく利用できた。もちろん、スマートフォン側がポインタに対応していないため、TrackPointを使うことは出来ない。繰り返しにはなるが、メーカー保証外の使い方になるので、全ての端末で利用できるとは限らない。他メーカーのPCやスマートフォンなどと利用する場合には自己責任でお願いしたい。
キーボードにこだわるモバイルユーザーのベストチョイスか?
ここ数日、本製品を利用して記事作成を行なったりしてみたが、普段利用しているノートPCと同じようなキータッチで入力できるというのは大きなメリットだと感じた。こうした外付けキーボードの中にはコスト重視の製品が多いことは否めないが、本製品は明らかに打ちやすさだったり、使いやすさということに主眼が置かれている。入力デバイスとしてのキーボードにこだわるユーザーで、モバイル時の“使える”キーボードを探していたということであれば、福音となるだろう。
想定される利用シーンだが、やはりWindowsタブレットと組み合わせて利用するというのが最も分かりやすい使い方ではないだろうか。既に述べた通り、本製品にはWindows 8での利用を前提としたファンクションキーが標準で用意されており、相性が抜群だからだ。筆者個人としては、Atom Z2760を搭載したWindows 8タブレットや、Surface RTなどと組み合わせて利用している。通常、こうしたタブレットはキーボードなしで使っているが、外で原稿を書いたりすることがない場合など本格的なPCを持って行くほどではない外出時に、Windowsタブレットとともに持ち歩いて、メールの返事をする時やSNSに書き込んだりする時などに利用している。主にコンテンツを消費するデバイスと言われているタブレットだが、時にはコンテンツ作成もする。そんなユーザーで、かつキーボードにはこだわりがあるというユーザーであれば検討してみていいのではないだろうか。