笠原一輝のユビキタス情報局
メモリ16GBもあり、フツーに使えるノートPCになった「Surface Laptop Go 3」
2023年10月3日 22:00
Microsoftは9月21日(米国時間)に、Surface Laptop Goシリーズの最新製品となる「Surface Laptop Go 3」を発表し、10月3日より販売開始する計画だと明らかにした。それを受けて本日(10月3日)より家電量販店、各種ECサイト、Microsoftの直販サイト「Microsoft Store」などで実際に販売が開始され、既にお手元に届いている読者も少なくないだろう。
今回筆者は日本マイクロソフトよりサンプル機の貸し出しを受けて、Surface Laptop Go 3を触る機会を得たので、実機を利用したレビューをお届けしていきたい。
基本的にSurface Laptop Go 3は、従来のSurface Laptop Goシリーズの「比較的軽量で比較的安価なSurface Laptop」というコンセプトを受け継ぎながら、CPUがパフォーマンス・ハイブリッド・アーキテクチャを採用した第12世代インテルCoreプロセッサ(以下第12世代Core)に強化されていることが最大の特徴となる。
また、一般消費者向けモデルではメモリ8GB/SSD256GB、メモリ16GB/SSD256GBの2モデルのみが用意されており、メモリ4GBなどの実利用では積極的に選択したくない低価格だが低スペックモデルは姿を消し、普通に使えるWindowsノートPCとして定義し直されていることももう一つの特徴だ。
キープコンセプト維持でCPUが強化
Surface Laptop Goシリーズは、Surfaceのメインストリーム向けクラムシェル型PCとなる「Surface Laptopシリーズ」に対してのより小型で廉価版という位置づけの製品として投入されているシリーズになる。メインストリーム向けのWindowsタブレット「Surface Proシリーズ」に対して、より廉価で小型のWindowsタブレット「Surface Go シリーズ」があるというのと同じ位置づけと考えると分かりやすいだろう。
Surface Laptopは15型と13.5型の2つのディスプレイを搭載した製品があるが、13.5型/2,256×1,504ドットで約1.27~1.29kgの13.5型モデルと比較すると、Surface Laptop Go 3は12.4型で解像度がやや低めな1,536×1,024ドットのディスプレイを搭載し、重量が1.13kgやや軽量になっていることが大きな違いとなる。
そして価格帯もSurface Laptop 5 13.5型は10万円台後半~20万円台という価格設定になっているのに対して、Surface Laptop Go 3が10万円台前半~10万円台後半と1クラス下の価格設定になっている。
Surface Laptop 5 | Surface Laptop Go 3 | |
---|---|---|
CPU | Core i7-1255U/i5-1235U | Core i5-1235U |
メモリ | 8GB/16GB | 8GB/16GB |
ストレージ | 256GB/512GB | 256GB |
ディスプレイ | 13.5型(2,256×1,504ドット) | 12.4型(1,536×1,024ドット) |
タッチ/ペン | タッチ/ペン(MPP) | タッチ/- |
生体認証 | 顔認証 | 指紋認証 |
サイズ(幅x奥行x高さ) | 308×223×14.5mm | 278×206×15.7mm |
重量 | 1.272kg~1.297 | 1.13kg |
価格帯(税込) | 17万280円~27万8,080円 | 14万2,780円~17万3,580円 |
また、細かな違いで言うと、Surface Laptop 5では生体認証はIRカメラを利用した顔認証になっていることと、ディスプレイがタッチだけでなくペン操作に対応しているが、Surface Laptop Go 3では生体認証は指紋認証で、ディスプレイはタッチのみに対応しており、ペンには未対応なことも違いとして挙げられる。
こうしたSurface Laptopシリーズの中でも軽量/廉価版という位置づけになるSurface Laptop Goシリーズの最新製品となるSurface Laptop Go 3だが、製品名からも分かるように今回で3代目の製品になる。初代となるSurface Laptop Goが2020年10月から、2代目となるSurface Laptop Go 2として2022年6月から販売開始されている。
初代Surface Laptop Go、2代目となるSurface Laptop Go 2、そして今回発表されたSurface Laptop Go 3のスペックをまとめると以下のようになる。
Surface Laptop Go | Surface Laptop Go 2 | Surface Laptop Go 3 | |
---|---|---|---|
CPU | Core i5-1035G1 | Core i5-1135G7 | Core i5-1235U |
メモリ | 4GB/8GB(LPDDR4X) | 4GB/8GB(LPDDR4X-4266) | 8GB/16GB(LPDDR5-5200) |
ストレージ | 64GB/128GB/256GB | 128GB/256GB | 256GB |
ディスプレー | 12.4型(1,536×1,024ドット) | 12.4型(1,536×1,024ドット) | 12.4型(1,536×1,024ドット) |
生体認証 | 指紋認証(LED付き) | 指紋認証(LED付き) | 指紋認証(LED付き) |
Wi-Fi/BTモジュール | Intel AX201(Wi-Fi 6/BT5) | Intel AX201(Wi-Fi 6/BT5.1) | Intel AX201(Wi-Fi 6/BT5.1) |
サイズ(幅x奥行x高さ) | 278.18×205.67×15.69mm | 278.13×204.25×15.75mm | 278×206×15.7mm |
重量 | 1.11kg | 1.1127kg | 1.13kg |
OS | Windows 10 Home(Sモード) | Windows 11 Home | Windows 11 Home |
Office | Office Home and Business 2019 | Office Home and Business 2021 | Office Home and Business 2021 |
価格帯(税込) | 8万4,480円~12万6,280円 | 9万5,580円~12万2,980円 | 14万2,780円~17万3,580円 |
Surface Laptop Go、Go 2、Go 3はいずれもほぼ同じ形状(278×206×15.7mm)の筐体を採用し、重量も1.11kg~1.13kgとほぼ同じだ。また、ディスプレイも同じ大きさ/解像度のディスプレイ(12.4型/1,536×1,024ドット)を採用と、3世代目になっても基本的にはキープコンセプトになっていると言ってよい。キーボードの形状や指紋認証センサーを兼ねている電源ボタンといった機能面でも同様で、正直に言って外見だけでどの世代かを見分けるのが難しいぐらいだ。
しかし、CPUやメモリ、ストレージの構成が各世代で大きく変わっており、今回のGo 3でもそれは同様だ。特にCPUが象徴的で、初代のSurface Laptop Goでは第10世代インテルCoreプロセッサ(開発コードネーム:Ice Lake)、Surface Laptop Go 2では第11世代インテルCoreプロセッサ(開発コードネーム:Tiger Lake)だったが、今回のSurface Laptop Go 3では第12世代Coreへと進化している(詳しくは後述)。
また、メモリとストレージが強化されている点も大きな強化点となる。初代Laptop Go、Laptop Go 2では、メインメモリが4GBないしは8GBのモデルが用意されており、(一般消費者向けのモデルでは)16GBモデルは用意されていなかった(Go 2では企業向けのモデルには設定があった)。
しかし、今回のGo 3では4GBモデルの設定がなくなり、8GBないしは16GBのモデルだけになっている。Webブラウザだけに用途を絞るならともかく、普通にWindowsのアプリケーションを使おうとすると4GBは使いモノにならないし、8GBだってお勧めできないという現状を考えれば、16GBのモデルが設定されたことは歓迎して良いだろう。
また、ストレージも初代Goでは64GB(ただしeMMC)/128GB/256GBという設定になっており、Go 2では128GBないしは256GBという設定になっていたのに対して、今回のGo 3では256GBのみが設定されている。これもストレージはあればあるに越したことはないというWindows OSの特性を考えれば歓迎して良い。
ただし、そうしてスペックが上がった分、価格帯は上がっている。今回一般消費者向けには2モデルしか設定がされていないが、下位モデル(メモリ8GB/ストレージ256GB)が14万2,780円、上位モデル(メモリ16GB/ストレージ256GB)が17万3,580円となっており、従来の1桁台後半~10万円台前半という価格帯からは上がっている。
第12世代Coreを採用、CPUがアップ、GPUはややダウン
そのように見ていくと、今回のSurface Laptop Go 3の最大の強化点はCPUが第12世代Core(Core i5-1235U)に強化されていることだ。Surface Laptop Goに搭載されていた第10世代Core(Core i5-1035G1)、Surface Laptop Go 2に搭載されていた第11世代Core(Core i5-1135G7)とスペックを比較した表が以下の表3になる。
Core i5-1235U | Core i5-1135G7 | Core i5-1035G1 | |
---|---|---|---|
世代 | 第12世代 | 第11世代 | 第10世代 |
開発コードネーム | Alder Lake | Tiger Lake | Ice Lake |
CPUコア・アーキテクチャ名 | Golden Cove(P)/Gracemont(E) | WillowCove | SunnyCove |
CPUコア数/スレッド | 2コア(P)+8コア(E)/10スレッド | 4コア/8スレッド | 4コア/8スレッド |
L3キャッシュ | 12MB | 8MB | 6MB |
Turbo時最大周波数 | 4.4GHz(P)/3.3GHz(E) | 4.2GHz | 3.6GHz |
GPU | Iris Xe Graphics | Iris Xe Graphics | UHD Graphics |
GPUアーキテクチャ | Xe-LP | Xe-LP | Gen 11 |
EU | 80 | 80 | 32 |
GPU最大周波数 | 1.2GHz | 1.3GHz | 1.05GHz |
第12世代Coreの最大の特徴は、Intelが「パフォーマンス・ハイブリッド・アーキテクチャ」と呼んでいる、2種類のCPUコアから構成されているCPUになっていることだ。IntelがPコアと呼ぶ高性能で低レイテンシになっているGolden Cove、IntelがEコアと呼ぶ高効率で並列実行性を重視したGracemontという2つの種類のCPUコアを搭載している。前者が2コア、後者が8コアの構成になっており、HTT(Hyper Threading Technology)にはPコアのみが対応しており、CPU全体で8コア/10スレッドという構成になっている。
Go 2で採用されていたCore i5-1135G7は、第12世代以降のCPUでいうところのPコアが4コアあるので、Pコアが2コアになっているCore i5-1235Uは後退に見えるかもしれない。しかし、実際のところはそうではない。まずCPUの面積でいうと、IntelはPコア1つとEコア4つがほぼ同じ面積だと説明している。つまり第11世代のPコア4つと、第12世代のPコア2つとEコア8つというのは、チップのダイ面積で比較するとさほど変わらないということができる。第11世代と第12世代ではどちらも10nm世代であるので、CPUコアに割いている面積はどちらもそんなに変わらないと考えられる。
しかし、第12世代は、2種類のCPUコアを実行時に効果的に活用できる。Intelが「Intel Thread Director」と呼んでいるWindows 11 OSのスケジューラと協調して動く仕組みが導入されており、OSが実行するスレッド(命令実行単位)を、これは低レイテンシのPコアで実行した方が速い、これは並列実行した方が速いので複数のコアがあるEコアで実行した方が速い……などと自動で割り当てながら動作する。このため、トータルで見ると第12世代の方が速くなるのだ。
また、L3キャッシュが8MBから12MBに強化されているほか、Go 3ではメインメモリがGo 2までのLPDDR4X-4266からLPDDR5-5200に強化されておりメモリ帯域幅が上がっている。そのように、メモリ階層が改善されていることも大きな特徴と言える。
このように大きく強化されているCPUに対して、GPUは据え置きだ。第12世代Coreで採用されている内蔵GPUのXe-LP(ブランドとしてはIris Xe Graphics)は、第11世代Coreと同じで、メインメモリがLPDDR5になってメモリの帯域幅が上がっていることが唯一の向上点と言える。
しかも、Core i5-1135G7とCore i5-1235Uを比較してみると、実行ユニット(EU)の数は一緒だが、GPUの最高クロックは前者が1.3GHz、後者が1.2GHzとなっており、むしろ動作クロックは下がっている。このことが性能に与える可能性はあると言える。
Core i5-1235Uのスペック予想と同じ結果に。バッテリ駆動時間は約12時間
このように見ていくと、従来世代の製品になるGo 2に搭載されているCore i5-1135G7と、今回のGo 3に搭載されているCore i5-1235Uを見ていくと、CPUに関しては性能が向上し、GPUに関してはやや下がると予想することが可能だ。
実際にベンチマークプログラムを利用してその性能をチェックしていこう。比較対象は従来モデルとなるSurface Laptop Go 2、Surface Laptop Goで、いずれのスコアは以前レビューした当時のスコアになる。厳密に言えばベンチマークプログラムのバージョンも上がっていたりするので、完全にそろえたスコアではないが、大きな傾向という意味では違っていないと考えられるので、その点はお断わりしておきたい。
PCMark10の結果は見て分かるとおり、Core i5-1235Uを採用しているGo 3が、Core i5-1135G7を採用しているGo 2を上回っている。総合スコアで1割程度上がっており、SoCが1世代進化した分としては十分な性能向上を見てとれるだろう。
詳細を見ていくと、PCの基本的な使い方を示すEssentialsは約12%、オフィスアプリなどの生産性向上を目指すアプリの性能を示すProductivityは約16%、そしてコンテンツ作成アプリの性能を示すDigital Content Creationは約17%と性能が向上していることが分かる。
唯一性能が5%低下していることを示しているのがGamingで、5%程性能が低下している。これはGPUのブースト時動作クロックがやや低めに設定されていることが影響していると考えられるだろう。
同じことは、3DMarkのDirectX11のベンチマークとなるFireStrikeにも言える。総合スコアで約3%、グラフィックスのみのテストで約1%の性能低下が見られている。それに対して主にCPUの性能が影響すると考えられるPhysics scoreでは逆に8%性能が上がっており、CPUの性能は上がっていることがここからも見られる。
このように、Surface Laptop Go 2と比較したSurface Laptop Go 3の性能は、CPU周りに関しては10%台の前半~後半ぐらい性能が向上しており、CPUで動作するアプリケーションに関しては確実に向上するだろう。それに対してGPUの性能に関してはほぼ同じか、少し低下する、そうした評価が公正な評価と言えるのではないだろうか。
なお、内蔵バッテリに関しては従来モデルと同じ39.7Whの容量になっており、公称値では最大15時間のバッテリ駆動が可能となっている。PCMark 10に用意されているバッテリ・アプリケーションズというMicrosoft OfficeとEdgeブラウザを利用したバッテリベンチマークでは11時間43分のバッテリ駆動が可能だった。
PCMark 10バッテリ・アプリケーションズのバッテリベンチマークは比較的ユーザーの実利用に近い駆動時間を再現してくれるテストなので、少なくとも10時間以上、うまく使えば12時間近くバッテリで使えることが見てとれると言える。こうした製品としては十分なバッテリ駆動時間を実現しているということができるだろう。
Secured-Core PC対応などMicrosoft純正であるメリットを重視するなら妥当か
以上のように、Surface Laptop Go 3は、初代のSurface Laptop Go、Surface Laptop Go 2と同じ、1.13kgというSurface Laptopとしては軽量な筐体、12.4型で1,536×1,024ドットというディスプレイ(タッチのみ対応、ペンは未対応)、生体認証は指紋認証センサーという大きな枠組みはまったく同様で、基本的にはキープコンセプトの製品と言える。
その最大の特徴は、パフォーマンス・ハイブリッド・アーキテクチャのCPUを採用した第12世代Coreに強化されていることで、CPU性能が向上している。
既に述べたとおり、今回日本マイクロソフトは日本市場の一般消費者向けには2つのモデルを用意している。両モデルの違いはシンプルで、下位モデルがメモリ8GB、上位モデルがメモリ16GBとなる。
モデル | XK1-0005/0010/0015/00063 | XKQ-0005/00010/0015/0063 |
---|---|---|
CPU | Core i5-1235U | Core i5-1235U |
メモリ | 8GB | 16GB |
ストレージ | 256GB | 256GB |
OS | Windows 11 Home | Windows 11 Home |
Office | Office Home and Business 2021 | Office Home and Business 2021 |
カラバリ | プラチナ(0005)/セージ(0010)/サンドストーン(0015)/アイスブルー(0063) | プラチナ(0005)/セージ(0010)/サンドストーン(0015)/アイスブルー(0063) |
価格/Microsoft Store価格 | 14万2,780円 | 17万3,580円 |
この価格だが、上位モデルとなるSurface Laptop 5 13.5の同じようなスペックの製品がSurface Laptop 5 13.5(Core i5/8GB RAM/256GB SSD)なので、それと比較することになるが、従来の価格だと15万1,580円という価格設定になっており、その価格と比較してしまうとSurface Laptop Goの下位モデルとの価格差は1万円弱となる。
この値段なら、正直Surface Laptop 5 13.5を買った方が良いという結論になりそうだが、実は10月1日よりSurface Laptop 5などの価格は改定されており、このモデルは17万280円になる。
そうしてみると、約3万円という価格差になり、ディスプレイの解像度やペンが使えないといった機能面での差としては妥当な価格差と言える。
ユーザーがSurfaceシリーズを選択する、大きな理由の1つは、Microsoftの純正製品だというところにあると筆者は考えている。たとえば、このSurface Laptop Go 3は一般消費者向けの製品としては珍しく、Microsoftの「Secured-Core PC」に対応している。
簡単に言えば、Windows 11でサポートされているようなハードウェアを利用した高度なセキュリティ機能がもれなく有効になっているPCのことを「Secured-Core PC」とMicrosoftは呼んでおり、企業向けの製品などではこれが標準で有効になって出荷されていることもあるが、一般消費者向けPCでは有効になっている例があまりない。
しかし、一般消費者であろうが、企業ユーザーであろうが、使えるセキュリティの機能はすべて有効になっていることが好ましいのは筆者が繰り返すまでもなく、そうしたことをいち早くサポートしていることがSurfaceシリーズの魅力の一つになっている。
そうした「ファーストパーティー製品」であることの安心感を評価し、16GBモデルが選べるようになったSurface Laptop Go 3は、機能限定版のノートPCから脱却し、普通に使える軽量・廉価版のSurface Laptopになったと言え、そうした観点から選択するのはありだろう。