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AIとクラウドでタブレット/2in1の新たな価値を創造する「Surface Go 4」
2023年11月6日 06:12
Microsoft SurfaceシリーズのPCにはターゲットユーザーの異なるいくつかのラインアップがある。2023年9月に登場した「Surface Go 4」は、その中でもっともエントリー向けの性能をもつ法人向けタブレットPCだ。着脱式キーボードで2in1としても使える薄型/コンパクトなモデルとなっている。
高パフォーマンスを狙った製品ではないが、AIやクラウドの活用が進む昨今、従来のWindowsタブレットとは求められるもの、可能なことが変わってきているようにも思われる。オプションの「タイプ カバー」とともにメーカーからお借りすることができたので、紹介していきたい。
性能は従来機種を踏襲しつつ、安全性を高め活用範囲を広げる装備が追加
Surface Go 4は法人向けのWindowsタブレット。必要最小限のスペックで、企業の大量導入にも向いたエントリーマシンとなっている。「Surface ペン」などオプションのスタイラスペンによる入力に対応し、同じくオプションの脱着式キーボード「Surface Go タイプ カバー」または「Surface Go Signature タイプ カバー」を利用することで2in1デバイスとしても活用できる。
ディスプレイは10.5型(1,920×1,280ドット)、CPUは従来機種より最大80%高速化したとするIntel Processor N200(4コア4スレッド、最大3.7GHz、TDP 6W)で、これは第12世代以降のIntel CoreのEコアのみで構成されたもの。GPUはCPU内蔵のIntel Core UHD Graphics、メモリは8GB(LPDDR5)、ストレージは64/128/256GBのバリエーションが用意される。今回試用したのは128GBのモデルだ。
下記に前モデルのSurface Go 3と比較した仕様表を示したが、OS、CPU、メモリ、ストレージ周りで多少の変更はあるものの、全体的なスペックにさほど大きな違いはない。サイズは全く同じなので、Surface Goシリーズ用の保護ケースなど既存アクセサリはそのまま使えそうだ。(今のところ)Wi-Fiモデルのみであること、バッテリ駆動時間が約12.5時間に延びたこと、NFCが搭載されたこと、といったあたりが実使用するユーザーにとっての目立つ違いだろうか。
Surface Go 4 | Surface Go 3 | |
---|---|---|
OS | Windows 11 Pro/Windows 10 Pro | Windows 11 Home (Sモード) |
CPU | Intel Processor N200 (4コア4スレッド、最大3.7GHz、TDP 6W) | Intel Pentium Gold 6500Y (2コア4スレッド、最大3.4GHz、TDP 5W) 第10世代Intel Core i3-10100Y (2コア4スレッド、最大3.90GHz、TDP 5W) |
GPU | Intel UHD Graphics | Intel UHD Graphics 615 |
メモリ | 8GB (LPDDR5) | 4/8GB (LPDDR3) |
ストレージ | 64/128/256GB (UFSドライブ) | 64GB (eMMC)/128GB (SSD) |
ディスプレイ | 10.5 インチ PixelSense ディスプレイ (1,920×1,280ドット) | 10.5 インチ PixelSense ディスプレイ (1,920×1,280ドット) |
インターフェイス | USB 3.1 Type-C 3.5mmヘッドフォン端子 Surface Connect ポート Surface タイプ カバー ポート microSDXCカードスロット | USB 3.1 Type-C 3.5mmヘッドフォン端子 Surface Connect ポート Surface タイプ カバー ポート microSDXCカードスロット |
通信機能 | Wi-Fi 6、Bluetooth 5.1 | Wi-Fi 6、Bluetooth 5.0 |
WAN | 0 | LTEモデルあり |
カメラ | 1080p前面カメラ 800万画素/1080p背面カメラ | 500万画素前面カメラ 800万画素背面カメラ |
セキュリティ | 顔認証 (Windows Hello対応) Secured-core PC準拠 | 顔認証 (Windows Hello対応) |
サウンド | Voice Clarity付きDual far-field スタジオマイク Dolby Audio Premium搭載2Wステレオスピーカー | Dual far-field スタジオマイク Dolby Audio 2Wステレオスピーカー |
センサー | 環境光センサー 加速度計 ジャイロスコープ 磁力計 NFC | 環境光センサー 加速度計 ジャイロスコープ 磁力計 |
バッテリー駆動時間 | 最大12.5時間 | 最大11時間 (Wi-Fiモデル) 最大10.5時間 (LTEモデル) |
サイズ | 245×175×8.3mm | 245×175×8.3mm |
重量 | 521g | 544g (Wi-Fiモデル) 553g (LTEモデル) |
カラー | プラチナ | プラチナ/マットブラック |
法人が運用する際に影響があると思われる変更点としては、標準OSが「Pro」となり、Secured-core PCの認定を受けていることだ。ProとしてはHyper-Vによる仮想化やActive Directory(ドメイン参加)、ストレージを暗号化するBitLockerに対応し、Secured-core PCとしてはハードウェア保護による高いセキュリティと効率的なリモート管理を実現する。企業はこれまで以上に安心して導入できるようになった、と言えるだろう。
Surface Go 4が活躍する場面としては、製造、建設、物流や教育の現場が挙げられる。最初から高いセキュリティで使用できるようになったことを考えると、こうした業種での活用はますます広がるものと思われる。また、単体でNFCに対応したことで会員管理をICカードで行なうような施設での導入も進むかもしれない。ただしLTE対応モデルが用意されていないため、基本的には屋内・敷地内での用途に絞られそうだ。
念のためベンチマークテストの結果も掲示しておく。「PCMark 10」や「3DMark」のスコアを見る限りは、やはりエントリーマシンらしい控え目な性能に止まっている。ストレージも今や3,000MB/s超が当たり前のビジネスノートに比べれば物足りないかもしれない。手元に従来モデルのベンチマークのデータがないので確かなことは言えないが、おそらくSurface Go 4が実使用下で劇的なパフォーマンスアップが図られた、ということはなさそうだ。
クラウドに加え、AI活用も視野に入れたデバイス
タブレットPCとしても、ノートPCとしても、Surface Go 4のハードウェア面のパフォーマンスは非力であることは否めない。これは、Surface Goシリーズがそもそもローカルで高度な処理を行なうための端末ではなく、低負荷のスタンドアロンツールやクラウドサービスの利用を主眼に設計した端末だからだ。
企業が業務に活用するCRM、ERPのようなツールは、今や多くがクラウドで提供されている。そうした大規模ソリューション以外にも、近年はちょっとした社内ツールの開発にローコード・ノーコードツールを採用するケースが増えており、これらもクラウド上で動作するものが少なくない。インターフェイスがWebベースの技術で構築されていることが多いため、言ってみればWebブラウジングが可能なレベルの性能さえ備えていれば十分に機能するわけだ。
なので、クラウドサービスの利用がメインなら、それこそSurface Go 4のような小回りの利くデバイスの方がビジネスの現場では活躍してくれる。そして、最近はそこに「AIツール」も加わった。これもクラウドサービスの一種ではあるけれど、とりわけSurface Go 4登場前後にリリースされた「Copilot in Windows」や「Microsoft 365 Copilot」は、Surface Go 4にとって大きな意味をもちそうだ。
Microsoftが提供する「Copilot」(Bing Chat)は、みなさんご存じの通り、ユーザーがテキスト入力した指示や質問をAIが理解し、適切と思われる回答をチャット形式で返してくれるもの。アップロードした画像を元に回答を求めることもでき、インターネットでの「検索」の仕方は大きく変わりつつある。
CopilotはWebブラウザのMicrosoft Edge上で利用できる。または、Windows 11で最新のアップデートを適用し、MicrosoftアカウントでWindowsにログオンしているユーザーは、Windowsに統合された「Copilot in Windows」として使うこともできる。
プレビュー版ではあるものの画像生成AIによる「Image Creator」というサービスもMicrosoftからリリースされ、これもEdge上で利用できる。テキストで簡単な指示を与えるだけで、ユーザーがイメージしているものに近い高品質な画像を出力してくれるものだ。社内用のプレゼン資料やツール開発で使える画像素材が、プロのデザイナーの手を借りることなくすぐに得られるようになった。
画像生成AIの技術は、Microsoftの他のサービスに埋め込まれる形でも提供され始めている。手軽に使えるものとしては、たとえば「Microsoft Designer」がある。こちらもテキストによる指示でポスターや資料などのベースデザインを生成でき、それをもとに人間が手を加えて完成品として仕上げられるものだ(日本語に完全には対応していないという課題はある)。
「Copilot」でSurface Go 4は本領を発揮する
MicrosoftのAIサービスで最新のものは「Microsoft 365 Copilot」だ。「Microsoft 365 Apps for enterprise」と「Active Directory」といったサービス/機能を導入している法人アカウントが対象になる(1ユーザーあたり月額30ドルの追加費用が必要)という制約はあるが、Surface Goシリーズを導入するような大企業のユーザーであればクリアできるハードルだろう。
Microsoft 365 Copilotでは、Word、Excel、PowerPoint、OutlookをはじめとするOfficeアプリケーションにCopilotの機能が統合される。Wordでの文書作成、Excelでのデータ分析、PowerPointでの資料作成やレイアウト変更、Outlookでの返信メール作成などをAIが支援し、業務効率や生産性の向上に貢献する。
話を戻すと、Surface Go 4は基本がタブレットPCであり、軽量/コンパクトで場所を問わない使いやすさと、指先やペンによるデータの入力しやすさが特徴だ。しかしながら、Officeアプリケーションによる資料作成など、一般のノートPCでこなすようなデスクワークに向いた端末とは言いがたい。画面は小さいし、タイプ カバーでキーボードを追加し2in1デバイスとして使えるとはいえ、キーピッチが約17mm(実測)と狭いのもネックだ。
ところが、Copilotを活用するとなれば話は変わってくる。AIチャットを使い、最小限のテキスト入力をするだけで作業の少なくない部分を自動で補完してくれるのであれば、大画面や入力しやすいフルキーボードは必須とはならないからだ。しかもデザイン業務においてはペン入力できめ細かい描画ができる分、画像生成AIの力を借りつつより完成度高く仕上げられる可能性もある。
そうしたことを考えると、Surface Go 4のような小型のWindowsタブレットは、クラウドだけでなくAIの力も借りることで、これまでにない価値創造が可能になるデバイスと言えるのではないか。AI時代の「シンクライアント」の姿がSurface Go 4であるとも思える。
Surface Go 4に企業のこれからの働き方が見える
AI関連のサービスはMicrosoft以外にGoogleやOpenAIなどからも提供されており、それらを活用することでも似たようなことは実現できる。が、OS、ハードウェア、AIサービスのいずれもがMicrosoft製で統一されていることによる機能や使い勝手の最適化は、将来的に期待できるところだろう。
また、OS上で実務作業を直接支援してくれるAI機能を使える点は、そうした機能統合がまだあまり進んでいないAndroidタブレットやiPadと比べたときのアドバンテージでもある。性能はパワフルではないが、企業のビジネスをパワフルにし、そのうえで働き方の少し先の未来まで見えるデバイス。Surface Go 4はそんな印象を受けるPCだ。
11月6日(月)21時より、Surface Go 4の解説ライブを配信します。特徴やスペックの解説はもちろん、実機を用意して各部の機能やデザイン、質感などをチェックしたり、アプリケーションを動作させた際の挙動をお見せしたりします。解説は日沼諭史氏、MCはPADプロデューサーの佐々木修司。(ライブ配信終了後は即録画版を視聴いただけます)