西川和久の不定期コラム
デル「Inspiron 11 3000 エントリー」
~Braswellを搭載した11.6型で34,980円からのノートPC
(2016/2/20 06:00)
デル株式会社は2月9日、エントリークラスの11.6型ノートPCを2モデル発表した。価格は税別34,980円からで、BraswellアーキテクチャのCeleron/Pentiumを搭載している。記事を見てちょうど興味を持っていたところに、編集部から実機が送られてきたので、楽しみながら試用レポートをお届けしたい。
BraswellなCeleronかPentiumを搭載した11.6型ノートPC
今回発表されたのは、Celeron N3050(2コア/2スレッド、1.6GHz~2.16GHz)搭載の「Inspiron 11 3000 シリーズ エントリー」と、Pentium N3700(4コア/4スレッド、1.6GHz~2.4GHz)搭載の「Inspiron 11 3000 シリーズ エントリー・プラス」と、後者のOffice搭載モデルの3モデルだ。税別価格は順に34,980円/49,980円/69,980円と、比較的安価なノートPCとなっている。
Celeron N3050やPentium N3700に関しては、既に搭載したマザーボードなどが販売されているので、大まかな性能は予想が付く。余談になるが、たまたま筆者はCeleron N3150と、Pentium N3700を搭載したマザーボードを所有していることもあり(過去記事参照)、これらのSoCは結構身近な存在だ。安価だけあって、気になるのは筐体やパネルの品質だろう。
手元に届いたのはCeleronを搭載したInspiron 11 3000 シリーズ エントリーだ。主な仕様は以下の通り。
DELL「Inspiron 11 3000 エントリー」 | |
---|---|
プロセッサ | Intel Celeron N3050(2コア/2スレッド、1.6~2.16GHz、cache 2MB、SDP/TDP 4W/6W) |
メモリ | DDR3L-1600 2GB |
ストレージ | 32GB eMMC |
OS | Windows 10 Home(64bit) |
ディスプレイ | 11.6型(非光沢)1,366×768ドット、タッチ非対応 |
グラフィックス | SoC内蔵Intel HD Graphics、HDMI出力 |
ネットワーク | IEEE 802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth 4.0 |
インターフェイス | USB 2.0、USB 3.0、HD(720p) Webカメラ、microSDXC対応カードリーダ、音声入出力、デジタルマイク |
バッテリ駆動時間 | 最大約10.25時間(2セル) |
サイズ/重量 | 292×196×18.5~19.9mm(幅×奥行き×高さ)/約1.2kg |
税抜価格 | 34,980円から |
SoCはCeleron N3050、2コア/2スレッドでクロックは1.6~2.16GHz。キャッシュは2MBでSDP/TDPはそれぞれ4W/6W。メモリはDDR3L-1600 2GB。ストレージは32GBのeMMCだ。OSはWindows 10 Homeを搭載。
対して上位モデルは、SoCにPentium N3700、メモリにDDR3L-1600 4GB、ストレージは128GB SSDとなっている。
そのほかの仕様は同じだが、SoC/メモリ/ストレージの主要パーツ3点がこれだけ違うと、性能差はかなりあると思われる。価格差は1.5万円だ。
理由は後半のベンチマークテストの部分で改めて述べるが、「タブレットのようなライトな用途だがキーボードが欲しい」という方には”エントリー”を、「一般的なノートPCとして使いたい」方は”エントリー・プラス”を個人的にはおすすめしたい。
グラフィックスはSoC内蔵Intel HD Graphics。前世代のBay Trailより強化されており、その性能には定評がある。外部出力用としてHDMI端子を装備。ディスプレイは、11.6型の1,366×768ドット表示。このクラスとしては珍しく非光沢のパネルになっている。タッチには非対応だ。
ネットワークはIEEE 802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth 4.0。インターフェースは、USB 2.0、USB 3.0、HD(720p) Webカメラ、microSDXC対応カードリーダ、音声入出力、デジタルマイク。有線LANがないのは残念だが、USB 3.0があるので、必要であればGigabit Ethernetアダプタを追加することも可能だ。またIEEE 802.11acに対応しているのはポイントが高い。
バッテリは2セルで、駆動時間は最大約10.25時間。サイズは292×196×18.5~19.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.2kg。結構薄くコンパクトにまとまっているが、重量が1kgを超えているのは仕方ないところか。本体色はホワイトとレッドの2色。写真だけしか見ていないものの、レッドもなかなか良さそうだ。
筐体は全てプラスチック製で手触りもツルツルしているので、そう言った意味では価格相応だが、チープな感じはなく、ちょっとキュートに仕上がっている。個人はもちろん、ホワイトであればビジネス用途も問題ないだろう。持った時のバランスは重過ぎず、軽過ぎずといった、1.2kgという重量相当。厚みが18.5~19.9mmなので、安価なモデルにありがちなモッサリした雰囲気もない。
同社のサイトによると、過酷な熱条件、ヒンジの耐久性、入力環境の耐久性、ボタンの耐久性、PC 本体のひねりなどがテストされており、通常環境での堅牢性は期待できそうだ。
前面はパネル中央上にWebカメラ、正面側面には何もない。左側面に電源入力、HDMI、USB 3.0、microSDカードリーダ。右側面にロックポート、USB 2.0、音声入出力を配置。バッテリは内蔵式で着脱できない。HDMI出力が右側面の後ろ側にあるので、外部ディスプレイを接続した時にケーブルが邪魔にならない。付属のACアダプタは、実測で約90×35×25mm(同)/160gとコンパクトだ。
ディスプレイは非光沢の1,366×768ドット。IPSパネルではないため視野角は狭めだが、十分実用範囲。明るさ/コントラストも良好。ただ発色は少し地味目で、特に赤の彩度が低いように思うが、見にくいと感じるレベルは辛うじて脱している。ほかに気になる部分もないため、発色だけが個人差でOKかNGかとなりそうだ。筆者的には何とか許容範囲と言ったところ。
キーボードはテンキーなしのアイソレーション式で、同社のサイトには防水と書かれている。コーヒーなどを零しても平気なのか、どの程度か知りたいところだ。キーピッチは実測で約18mm確保され、一部右端の[BS]、[Enter]、[^]、[\]キーなどが少し狭いものの、全体的には素直なレイアウトだ。たわみもなく快適に入力できる。
タッチパッドは物理的なボタンがない、1枚プレート型を採用している。面積も十分あり、感度も良く使いやすい。
振動やノイズは皆無で、発熱も試用した範囲では全く気にならなかった。サウンドは「Dell Audio(Waves MaxxAudio Pro)」を搭載しており、このクラスの割にはパワーも音質も十分。
このようにパネルの発色以外は、価格を考慮すると上手くまとめられた一台で、外観も含め、目を惹くノートPCの雰囲気を醸し出している。
Atom搭載の8型タブレットより気持ち高い性能
OSはWindows 10 Home 64bit。BraswellやeMMC搭載ということもあり、使用感はノートPCというより、8型のタブレットに近い。実際、後半のベンチマークテストの結果からも、その傾向が見て取れる。
初期起動時のスタート画面(タブレットモード)は、Dell以降のDell Help & Support、マカフィー リブセーフインターネットセキュリティ、Dropbox 20GBがプリインストールされている。デスクトップは、壁紙が違うもののショートカットなどは標準のままだ。
ストレージは32GB eMMCの「SanDisk DF4032」を搭載。Cドライブのみの1パーティションで約28.07GBが割り当てられ、空きは14.4GBとかなり少ない。データなどはmicroSDカードへ逃がす必要があるだろう。
Wi-Fiは「Intel Dual Band Wireless-AC 3160」。BluetoothもIntel製だ。特に見慣れないデバイスもなく、標準的な構成となっている。
プリインストールのソフトウェアは、Windowsストアアプリは特になし。デスクトップアプリは、「Dell Customer Connect」、「Dell Digital Delivery」、「Dell Help & Support」、「Dell Notification Center」、「Dell Power Manager Lite」、「Dell Update」、「Product Registration」、「SupportAssist」、「Dell Audio」、「Dropbox 20GB」、「Intel WiDi」、「マカフィー リブセーフインターネットセキュリティ」が追加されている。
基本的にツール系ばかりで、以前とあまり内容は変わっていないものの、いくつかのアプリはUIが若干新しくなっていた。
ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2。バッテリ駆動時間テストはBBench。またCrystalMarkの結果も掲載した(2コア2スレッドと条件的に問題はない)。
winsat formalの結果は、総合 3.9(5.1)。プロセッサ 5(6.8)、メモリ 5.5(7.2)、グラフィックス 3.9(5.1)、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 6.85(8.15)。カッコ内は筆者の所有するPentium N3700(ASRock N3700-ITX/8GB/SSD128GB)のスコアだ。
ただし、メモリ3GB未満の場合スコアが5.5に制限されるので、メモリのバンド幅を比較すると約7,646MB/s対約10,799MB/sの違いとなる。冒頭に結論を書いてしまったが、この差が1.5万円であれば、作業用のノートPCとしてはやはりエントリー・プラスの方を選びたいところ。
実際、自作のPentium N3700マシンで、原稿や開発はもちろん、RAW現像も含むPhotoshopなどを普通に使っていた。上を見えれば欲は出るだろうが、割とストレスなく作業が可能だった。現在はパワー不足というより、主にサーバー用途のMac OS Xマシンとのコピー&ペーストが面倒で、Parallels Desktop上のWindows 10へ戻ってしまったが。
PCMark 8 バージョン2のスコアは1602。CrystalMarkは、ALU 14650、FPU 11824、MEM 16003、HDD 20270、GDI 4193、D2D 3360、OGL 3939となった。Google Octane 2.0のスコアは4185。winsat formalも含め、Atom Z3735F/2GB/eMMC搭載のタブレットより気持ち速い程度となる。
BBenchは、省電力、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果だ。バッテリの残5%で35,720秒/9.9時間。仕様上、最大約10.25時間なのでほぼ同じ結果だ。
以上のように、DELL「Inspiron 11 3000 エントリー」は、BraswellなCeleronにメモリ2GB、ストレージ32GBを搭載した11.6型の安価なノートPCだ。価格の割にチープな雰囲気もなく、上手くまとまった一台に仕上がっている。“キーボード付きタブレット”程度のライトな用途であれば本機を、ノートPCとして使いたい場合は上位モデルをお勧めしたい。
画面の発色が地味なのが気になるものの、それ以外は特に問題なく、最新アーキテクチャで安価なノートPCを試してみたいユーザーにお勧めできる逸品と言えよう。