西川和久の不定期コラム

レノボ「YOGA Tab 3 8」

~独自のシリンダ形状を採用したYOGA Tab第3世代の8型タブレット

YOGA Tab 3 8

 レノボ・ジャパン株式会社は10月27日、YOGA Tabの3世代目を発表した。DLPプロジェクタを搭載の10.1型、シリンダ形状を採用した10.1型と8型の3モデルの内、編集部から2モデル送られてきたので、前回の「YOGA Tab 3 Pro 10」に続き、「YOGA Tab 3 8」の試用レポートをお届けしたい。

Snapdragon 212(210)を搭載したシリンダ型ヒンジ採用8型タブレット

 写真を見ると、YOGA Tab 3 8(「YOGA Tab 3 10」も含む)は、一見、前回のYOGA Tab 3 Pro 10のサイズ違いの製品のように見えるが、DLPプロジェクタの有無やパネル解像度の違いだけでなく、搭載するSoCなども異なり、ハードウェア的には全く別物だ。

 YOGA Tab 3 8の搭載SoCはIntelではなく、ARMのQualcomm Snapdragonだ。具体的にはWi-Fi版がSnapdragon 212 APQ8009(4コア、1.3GHz)、LTE版がQualcomm Snapdragon 210 MSM8909(4コア、1.1GHz)を搭載する。主な仕様は以下の通り。

仕様YOGA Tab 3 8
SoCWi-Fi版: Snapdragon 212 APQ8009(4コア、1.3GHz)
LTE版: Qualcomm Snapdragon 210 MSM8909(4コア、1.1GHz)
メモリ1GB
ストレージ16GB
OSAndroid 5.1
ディスプレイタッチ対応8型1,280×800ドットIPS液晶
ネットワークIEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 4.0
その他Micro USB、microSDカードスロット、800万画素(180度回転)、音声入出力、音声入出力
センサー加速度センサー、光センサー、デジタルコンパス、GPS
バッテリ駆動時間約20時間(リチウムイオン/2セル/6,200mAh)
サイズ/重量210×146×3~7mm(幅×奥行き×高さ)/約466g(Wi-Fi版)、約472g(LTE版)
税別店頭予想価格23,800円(Wi-Fi版)、28,800円前後(LTE版)

 SoCは先に書いた通りQualcomm Snapdragon。エントリー向けの21x系なので、性能は高くない。メモリは1GBで、ストレージは16GB。Androidのバージョンは5.1。Wi-Fi版とLTE版は、SoCとSIMスロットの有無以外、ほぼ同じ(バッテリや重量が若干異なる)仕様だ。

 ディスプレイはタッチ対応の8型1,280×800ドットIPS液晶。YOGA Tab 3 10は10.1型だが、解像度は変わらない。またHDMIなどの外部映像出力は非搭載。

 インターフェイスは、IEEE 802.11b/g/n対応無線LAN、Bluetooth 4.0、Micro USB、microSDカードスロット、800万画素(180度回転)カメラ、音声入出力。センサーは、加速度センサー、光センサー、デジタルコンパス、GPSを搭載する。YOGA Tab 3 Pro 10とは違い、IEEE 802.11a/acには未対応。またカメラは180度回転するため、背面に1つのみとなっている。

 サイズは210×146×3~7mm(幅×奥行き×高さ)で、重量はWi-Fi版で約466g、LTE版で約472g。6,200mAhの2セルリチウムイオンバッテリを搭載し、バッテリ駆動時間は約20時間。税別店頭予想価格はそれぞれ23,800円(Wi-Fi版)と28,800円前後(LTE版)の見込み。

 なおYOGA Tab 3 10は、バッテリが3セルで容量8,400mAh、連続動作時間約18時間、サイズ253×185×3.5~9.5mm(同)、重量は約655g(Wi-Fi版)、約665g(LTE版)となっている。そのほかの仕様はYOGA Tab 3 8と共通で、税別店頭予想価格は26,800円(Wi-Fi版)、31,800円(LTE版)前後となっている。

 価格差が小さいので、サイズやLTEの有無など、用途や好みで選ぶことになるだろう。

前面。下のメッシュ部分にスピーカー
背面。スタンドの裏にmicroSDカードスロット、右下に800万画素カメラを備える
左側面(チルトモード/スタンドは出していない)。音量ボタン、Micro USB、電源ボタン
付属品など。USBケーブルとUSB式のACアダプタ(サイズ約4.2×3.6×2.2cm、重量38g)。通常5v/1.5Aで急速充電モードは無い
重量。実測で474g

 筐体はシリンダとスタンド部分のみクローム。パネルのフチはツヤありブラックで、他はマットなブラックと質感は良い。持った時のバランスはYOGA Tab 3 Pro 10でも書いたように、シリンダ部分が重く個人的には何となく持ちにくい。

 シリンダ部分は、ロックを外せばスタンドとして使用可能になるが、角度が約90度と180度の固定のため、自由度は低い。特にスタンドモードはもう少し角度のパターンが欲しい。なお、スタンドの穴に引っ掛けるハングモードに対応する。

 前面下部のメッシュ部分にスピーカー。背面やや下中央にあるボタンを押すと、シリンダのロックが外れ回転する。スタンドの裏にmicroSDカードスロット。右下に800万画素カメラがあり、この部分だけ180度回転する。そのため、カメラは1つのみだ。

 左側面に音量ボタン/Micro USB/電源ボタン、右側面に音声入出力を配置。付属のUSB式ACアダプタは、サイズ約42×36×22mm(同)、重量約38g。出力は5Vで、急速充電には非対応だ。

 8型IPS式1,280×800ドットのパネルは、YOGA Tab 3 Pro 10ほどではないものの、明るさやコントラスト、発色、視野角ともに良い。並べて比較しなければ特に不満もないだろう。AnyPenテクノロジに関しては、後半のアプリ関連を参考にして欲しい。

 振動やノイズは皆無で、発熱も試用した範囲では特に気にならなかった。サウンドに関しては、筐体が小さい分、スケール感や低音は劣るが、YOGA Tab 3 Pro 10と比較しても遜色なく、高品質でパワーがある。

焦点距離4mm、3264×2448ピクセル、WB Auto、ISO114、F不明、1/120秒※リンク先原寸大

 カメラは、YOGA Tab 3 Pro 10と同じシーンで1点のみ作例を掲載した。発色の傾向は、ご覧のように非常によく似ている。

 ただカメラアプリは、設定に「撮影場所の記憶/画像サイズ/シャッター音/カウントダウンタイマー/タイマー時にビープ音/記憶位置/顔認識/ISO感度/露出/ホワイトバランス/ノイズ除去/ジャスチャー撮影」といった、ワンタッチで操作したい部分が入り込んでいるため、少し扱いにくいかも知れない。

 いずれにしても、10.1型と比較すれば小さくなったとは言え、8型なので片手で保持はしにくい。

ほぼスタンダードなAndroid 5.1

 ホーム画面は1画面。Googleフォルダも配置されているが、画面が狭いせいか、時計以外の
ウィジェットは無い。ストレージの空きは10.92GB。Androidのバージョンは5.1.1で、YOGA Tab 3 Pro 10よりマイナーバージョンが進んでいる。ARM版とIntel版の違いもあるだろう。

 クイックアクセスにある「Lenovoスマート・スイッチ」は、スタンド/チルト/保留(片手で持つ)/ハング、そしてカスタムといった、各モード時における表示(鮮やか/標準/淡い)とDolbyオーディオ・モード(音楽/ムービー/ゲーム)をプリセット可能だ。

ホーム画面。シンプルな画面構成。Googleフォルダがある
ホーム画面/Googleフォルダ
クイックアクセス/通知画面。一般的なものに加え、DOLBYのON/OFFや「Lenovoスマート・スイッチ」がある
設定/ストレージ。空きは10.92GB
設定/タブレット情報。Androidのバージョンは5.1.1

 標準搭載のアプリは、「カメラ」、「カレンダー」、「ギャラリー」、「ダウンロード」、「ドライブ」、「ニュースと天気」、「ハングアウト」、「フォト」、「ブラウザ」、「マップ」、「メール」、「音楽」、「音声レコーダー」、「音声検索」、「時計」、「設定」、「電卓」、「連絡先」、「Chrome」、「Dolby」、「FSKAREN」、「Gmail」、「Google」、「Google+」、「Google設定」、「Lonovo Yoga Tab 3」、「McAfee Security」、「Playゲーム」、「Playニューススタンド」、「Playストア」、「Playブックス」、「Playミュージック」、「Playムービー&TV」、「SHAREit」、「SYNCit HD」、「U-NEXT」、「Yahoo!」、「YouTube」。

 Android標準に若干のアプリが加わった感じだろうか。YOGA Tab 3 Pro 10にあった「Lenovoスケッチパッド」と「プロジェクター」は含まれていない。後者はハードウェア的に対応していないので当然として、「Lenovoスケッチパッド」は、AnyPenテクノロジに対応しているにも関わらずインストールされていなかった。

 IMEは、標準で富士ソフトの「FSKAREN」となっているが、設定に”手書き入力”の項目はなかった。

 これは後半のベンチマークテストで分かるが、YOGA Tab 3 Pro 10と比較して性能が大幅に劣るので、反応が鈍くなる関係だと思われる(「YOGA Tab 3 Pro 10」でも太で書くと少しタイムラグがあった)。ただし、例えば写真アプリでトリミングするときの枠調整などではズレも無く普通に追尾するため、軽い操作であれば問題ないようだ。

アプリ画面1/2
アプリ画面2/2

 ウィジェットは、「アナログ時計」、「おすすめのコンテンツを楽しむ」、「カレンダー」、「コンテンツx3」、「デジタルクロック」、「ドライブ」、「ドライブのショートカット」、「ドライブのスキャン」、「ニュースと天気x4」、「ハングアウト」、「フォトギャラリー」、「ブックマークx4」、「ミュージックプレイリスト」、「メール」、「メールフォルダ」、「音楽」、「経路を検索」、「書籍」、「設定」、「電源管理」、「電卓」、「連絡先」、「Gmail」、「Gmailのラベル」、「Google Now」、「Google Playニューススタンド」、「Google Playブックス」、「Google Playミュージックx2」、「Google+ユーザーの場所」、「Google+投稿」、「Googleアプリ」、「Playマイライブラリ」、「Playストア」、「Yahoo! JAPAN」。

ウィジェット1/9
ウィジェット2/9
ウィジェット3/9
ウィジェット4/9
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 YOGA Tab 3 Pro 10にも含まれている特徴的なアプリとしては、AirDropのような「SHAREit」、クラウドに対応したバックアップアプリの「SYNCit HD」、そして左右のスピーカーの幅を軽々超え立体的に聞こえる「DOLBY ATMOS」が挙げられる。特に「DOLBY ATMOS」は、とてもこのサイズのタブレットから出ている音とは思えないほど上下左右共に立体的になる。機会があれば是非試して欲しい。

SHAREit(YOGA Tab 3 Pro 10と共通)
SYNCit HD(YOGA Tab 3 Pro 10と共通)
DOLBY ATMOS(YOGA Tab 3 Pro 10と共通)

Nexus 7(2013)比で約2/3のパフォーマンス

 ベンチマークテストは、AnTuTuベンチマークの結果を掲載。比較のためNexus 7(2013/OSは5.1.1)のスコアをカッコ内に併記した。

 結果は、総合 18,253(27,409)。Multitask 2,807(4,313)、Dalvik 1,930(2,858)、CPU Int 1,488(2,382)、CPU Float 1,385(2,503)、CPU Single-thread Int 1,135(1,686)、CPU Single-thread-Float 925(1,533)、RAM Operation 1,298(1,319)、RAM Speed 1,415(997)、2D 848(1,647)、3D 3,011(6,696)、I/O Storage 1,371(835)、I/O Database 640(640)。参考までにGoogle Octane 2.0の結果は2,278。Nexus 7(2013)が3,256。

 項目で多少幅はあるものの、Nexus 7(2013)と比較してザックリ6~7割の性能だ。Google Octane 2.0の結果も芳しくなく、今時のAndroid搭載タブレットとしてはもう少し頑張って欲しいところか。

AnTuTuベンチマーク1/2
AnTuTuベンチマーク2/2。ランキングとしては最下位。GALAXY Note 4の半分以下だ

 バッテリ駆動時間は、音量/輝度ともに50%に設定し、YouTubeの動画を全画面で繰り返し再生したところ、12時間半で電源が落ちた。仕様上は最大約20時間だが、これもYOGA Tab 3 Pro 10同様、負荷がかかるテストなので、8型で12時間半作動すれば十分と言ったところだろう。

 以上のようにYOGA Tab 3 8は、YOGA Tab 3 Pro 10の映像やサウンド面の良い点を引き継ぎつつ、シリンダ型ヒンジ採用など魅力的な部分もある製品だ。性能はパッとしないが、その分低価格で、もう一回り大きいサイズが欲しければYOGA Tab 3 10も用意されている。

 購入しやすい価格帯で映像やサウンドに優れ、使いやすいAndroidタブレットを求めているユーザーの候補になりうる1台と言えよう。

(西川 和久http://www.iwh12.jp/blog/