西川和久の不定期コラム
Lenovo「YOGA Tab 3 Pro 10」
~DLPプロジェクタ搭載の10.1型Androidタブレット
(2015/12/1 06:00)
レノボ・ジャパン株式会社は10月27日、同社タブレット「YOGA Tab」シリーズの第3世代機、3モデルを発表した。DLPプロジェクタを搭載の10.1型、シリンダー形状を採用した10.1型と8型の中、編集部から2モデル送られてきたので、今回はまず「YOGA Tab 3 Pro 10」から試用レポートをお届けしたい。
Cherry TrailのAtomとDLPプロジェクタを搭載した10.1型タブレット
YOGA Tab 3 Pro 10は10.1型でDLPプロジェクタ付き、「YOGA Tab 3 10」と「YOGA Tab 3 8」は、お馴染みのシリンダー形状を採用した、それぞれ10.1型と8型のパネルサイズが異なるタブレットだ。それぞれにWi-Fi版とLTE版も用意されている。
ボールペンなど、いろいろなペンをスタイラスペンとして利用できるAnyPenテクノロジにも対応しており、数あるAndroidタブレットの中でも異色なデバイスと言えよう。
「YOGA Tab 3 Pro 10」の主な仕様は以下の通り。
仕様 | YOGA Tab 3 Pro 10 |
---|---|
SoC | Atom x5-Z8500(4コア4スレッド、1.44~2.24GHz、キャッシュ2MB、SDP 2W) |
メモリ | 2GB |
ストレージ | 32GB |
OS | Android 5.1 |
ディスプレイ | タッチ対応10.1型WQHD(2,560×1,600ドット)IPS液晶 |
ネットワーク | IEEE 802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth 4.0 |
その他 | Micro USB、microSDカードスロット、背面1,300万画素/前面500万画素対応Webカメラ、音声入出力、JBL製スピーカー |
センサー | 加速度センサー、光センサー、デジタルコンパス、GPS |
バッテリ駆動時間 | 約18時間(リチウムポリマー/2+1セル/計10,200mAh) |
サイズ/重量 | 247×179×4.68mm(幅×奥行き×高さ)/約665g |
その他 | DLPプロジェクタ、DOLBY ATMOS、IPX1クラスの防滴設計 |
税別店頭予想価格 | 65,800円(Wi-Fi版)、70,800円前後(LTE版) |
SoCはCherry TrailのAtom x5-Z8500。4コア4スレッドで、クロックは1.44GHzから最大2.24GHz、キャッシュは2MBでSDPは2W。Windowsタブレットでも搭載機種は多くない中、AndroidタブレットでCherry Trail搭載は珍しい。メモリは2GB、ストレージは32GB。Androidのバージョンは5.1だ。
ディスプレイは10.1型IPS液晶。解像度はWQHD(2,560×1,600ドット)で、299ppiと高密度。グラフィックスは内蔵のIntel HD Graphics。ただし、HDMIなどの外部出力端子は無い。
インターフェイスは、IEEE 802.11a/b/g/n/ac対応無線LAN、Bluetooth 4.0、Micro USB、microSDカードスロット、背面1,300万画素/前面500万画素対応Webカメラ、音声入出力、JBL製スピーカー。センサーは、加速度センサー、光センサー、デジタルコンパス、GPSを搭載する。
最大の特徴は、最大70型の映像を出力可能とするDLPプロジェクタを搭載していることだろう。また、前モデルは横方向への投影のみだったが、本機ではDLPプロジェクタをシリンダー面上に配置することで、世界初の180度回転に対応しており、壁だけでなく天井にも投影可能となった。
バッテリは、2セルと1セルのリチウムポリマーバッテリをヒンジ部と本体の2カ所に内蔵し、計10,200mAhと大容量だ。そのほか、DOLBY ATMOSやIPX1クラスの防滴設計も見逃せないポイントと言えよう。
サイズは247×179×4.68mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約665g。税別店頭予想価格は、Wi-Fi版で65,800円、LTE版で70,800円前後で、差額は5千円だ。
筐体はシリンダーとスタンド部分がクロームで、背面がマットなブラックと質感はかなり高い。ただ、このグリップにもなるシリンダー部分は、以前にも書いたと思うが、片手で握っても両手で持ってもバランスが悪く、個人的にはしっくりこない。加えて実測で663gの本体重量も相まって、長時間片手で持ち続けるのは辛い感じだ。
シリンダー部は回転させることでチルトモード/スタンドモードになる。これらのモードは設置時の安定性も高く、角度も自由に変えられるので、非常に使いやすい。主にチルトモードが作業用、スタンドモードは観賞用となるだろうか。スタンド部分に穴があり、ここに何かを引っ掛けることによってハングモード(ぶら下げる)にもなる。
前面パネルの左フチ中央に前面500万画素カメラ。下のメッシュの部分にスピーカー。背面は、中央の少し下のボタンを押すとロックが外れシリンダー部分が回る。スタンドの裏にmicroSDカードスロットがある。やや左下にDLPプロジェクタ、右下に1,300万画素背面カメラを配置。左側面に音量ボタン、Micro USB、電源ボタン。右側面に音声入出力とDLPプロジェクタON/OFFボタン。
付属のUSB式ACアダプタは、サイズが約50×42×23mm(同)で、重量が約66g。通常5V出力だが、急速充電用に7/9/12Vのモードも持つ。実際、充電時間は(正確に測ってないものの)かなり速い。
液晶パネルは、明るさコントラスト、視野角ともに十分。発色が鮮やかで、かなり高品質なパネルだ。DLPプロジェクタとAnyPenテクノロジに関しては、後半のアプリの部分で触れているので参考にして欲しい。
ノイズや振動はもちろん皆無。発熱もテストした範囲では(季節がらもあるだろうが)全く問題無かった。サウンドは、10.1型タブレットとしては文句無しといったところ。低音が弱いのは仕方ないとして、抜けが良くパワフルな音だ。
余談になるが、このクラスのAndroidタブレットでこれだけの画質と音質が得られるのなら、Windows搭載のノートPCやタブレットも含む2-in-1も頑張って欲しいところだ。
カメラに関しては背面1,300万画素のみ作例を1点掲載した。夕方で日陰にビルから反射した夕日が若干差し込む微妙なシーンだったので、オートホワイトバランスが少し色温度低めになっているが、綺麗に写っている。ただし、10.1型の筐体は大きくホールドはしにくい。
カメラアプリは、メモカメラ/ストロボ/カメラ/動画/パノラマのモードがあり、ホワイトバランスや露出をワンタッチで調整でき、使いやすい。設定は、場所/画像サイズ/カウントタイマー/目盛線/ノイズ除去/ストレージのオン/オフなどに対応している。
プロジェクタとLenovoスケッチパッド・アプリ搭載
ホーム画面は1画面。GoogleフォルダとLenovoフォルダが配置されている。ウィジェットは時計とNetflixの2つ。Android搭載デバイスながら、スッキリしている。
ストレージの空きは22.3GB。Androidのバージョンは5.1で、クイックアクセスにDolbyやプロジェクターのオン/オフもある。
標準搭載のアプリは、「カメラ」、「カレンダー」、「ギャラリー」、「ドライブ」、「ハングアウト」、「ビデオ」、「ファイル・ブラウザー」、「フォト」、「プロジェクター」、「マップ」、「メール」、「ユーザーガイド」、「音声レコーダー」、「音声検索」、「時計」、「設定」、「電卓」、「連絡先」、「Chrome」、「Dolby」、「Evernote」、「FSKAREN」、「Gmail」、「Google」、「Google設定」、「Lenovoスケッチパッド」、「Lenovo e-Frame」、「Netflix」、「Playストア」、「Playミュージック」、「SHAREit」、「SYNCit HD」、「U-NEXT」、「Yahoo!」、「Yoga Tab 3 Pro」、「YouTube」。
プリインストールの状態としては、Android標準と、用途別にアプリのアイコンが配置されている。なかなか整理されており好感が持てる。
ウィジェットは、「アナログ時計」、「おすすめのコンテンツを楽しむ」、「カレンダー」、「コンテンツx3」、「デジタルクロック」、「ドライブ」、「ドライブのショートカット」、「ドライブのスキャン」、「コンタクト」、「ハングアウト」、「ビデオ」、「フォトギャラリー」、「ブックマークx2」、「ミュージックプレイリスト」、「経路を検索」、「設定とショートカット」、「連絡先x2」、「Evernoteのショートカット」、「Gmail」、「Gmailのラベル」、「Google Now」、「Google Playミュージック」、「Google Sound Search」、「Googleアプリ」、「Lenovo天気予報」、「Netflix」、「Playマイライブラリ」、「Playストア」、「Yahoo! JAPAN」。
プリインストールのアプリで特徴的なのは、「Lenovoスケッチパッド」と「プロジェクター」だろう。
「Lenovoスケッチパッド」は、一度起動すると常駐し、起動しているアプリとは無関係に画面自体がスケッチブックとなるもので、AnyPenテクノロジを使って鉛筆などで手書き入力ができる。以前も試したが、やはりボールペンは苦手のようで、鉛筆の方が(細いプラスドライバーも)反応は良かった。
このアプリではペンの太さを細/中/太と3段階に設定できるが、太だと反応にもたつきを感じたが、細/中は特に気にならなかった。視覚上のズレも無く、スタイラスペン無しで身の回りの普通のペンが使えるため、利用しない手はないだろう。
「プロジェクター」は、搭載しているDLPプロジェクタへデータを送るアプリだ。ホーム画面からも分かるように、動画、画像、ドキュメントを投影することができる。物語は、いろいろなデータをまとめて物語風に表示するというものだ。
もちろん、このアプリを使わなくても、画面をミラーリングして投影できるので、YouTubeなども(多少ピンは甘くなるものの)大画面で楽しむことが可能だ。ピントや台形調整もでき、適当に設置してもうまく表示ができる。少しの時間、YouTube上のMVを楽しんでしまった。
Nexus 7(2013)比で約2倍のパフォーマンス
ベンチマークには、AnTuTuベンチマークを実行。比較対象として、Nexus 7(2013/OS5.1.1)のスコアもカッコ内に併記した。
結果は、総合 45,676(27,409)。Multitask 6,074(4,313)、Dalvik 4,149(2,858)、CPU Int 4,348(2,382)、CPU Float 4,354(2,503)、CPU Single-thread Int 2,002(1,686)、CPU Single-thread-Float 2,494(1,533)、RAM Operation 3,164(1,319)、RAM Speed 3,308(997)、2D 1,659(1,647)、3D 1,0797(6,696)、I/O Storage 2,562(835)、I/O Database 745(640)。参考までにGoogle Octane 2.0の結果は6,735。Nexus 7(2013)が3256。
項目で多少幅はあるものの、Nexus 7(2013)/5.1.1と比較してザックリ2倍といったところだろうか。特に不満なくサクサク作動する。
バッテリ駆動時間は、音量、輝度ともに50%に設定し、YouTubeの動画を全画面で繰り返し再生したところ、8時間半で電源が落ちた。仕様上は最大約18時間だが、このテストは高い負荷がかかるため、10.1型で8時間半の駆動は特に短いわけではない。
以上のように「YOGA Tab 3 Pro 10」は、一般的なのAndroid搭載タブレットとは一味も二味も違う製品だ。最速ではないにせよ、それなりの性能でDLPプロジェクタ搭載。さらに「DOLBY ATMOS」搭載で、映像とサウンドともに楽しめる。普通のタブレットには無いこれらの魅力にグッときたユーザーにお勧めしたい1台と言えよう。