西川和久の不定期コラム
レノボ「YOGA 900」
~Skylakeと13.3型IPS式3,200×1,800ドット液晶搭載の回転ノート
(2015/12/7 14:07)
レノボ・ジャパン株式会社は10月27日、液晶パネルが360度回転するYOGAの新型を発表した。13.3型IPS式3,200×1,800ドットのパネルと、改良したヒンジを採用し、Skylakeを搭載したハイエンドモデルだ。編集部から実機が送られてきたので試用レポートをお届けしたい。
Skylake、360度回転QHD+、SSD、USB 3.0 Type-Cと全部入りのハイエンド
同社は随分前から、パネルが360度回転し、ラップトップ/タブレット/テント/スタンドと4モードに変形するYOGAシリーズを出しているが、本機ではプロセッサをパワーアップしただけでなく、改良を加えた独自のヒンジを6カ所に配置。パネルを回転させた時の滑らかさや、固定時にタッチしてもフラフラしない構造となっている。
写真からも分かるように、このヒンジは「YOGA 3 Pro」とほぼ同じ構造で、何となく時計のバンドや、少し違うがSurface Bookのヒンジにも雰囲気が似ている。過去に同シリーズを何回か試用しているので、その違いが気になるところだ。
下位モデルと上位モデル、2モデルある中、今回手元に届いたのは上位モデル。主な仕様は以下の通り。
製品名 | YOGA 900 (上位モデル) |
---|---|
プロセッサ | Core i7-6500U(2コア4スレッド、2.5~3.1GHz、キャッシュ 4MB、TDP 15W) |
メモリ | LPDDR3-1600 8GB(最大8GBオンボード) |
ストレージ | SSD 512GB |
OS | Windows 10 Home(64bit) |
グラフィックス | プロセッサ内蔵Intel HD Graphics 520 |
ディスプレイ | 13.3型QHD+(3,200×1,800ドット、光沢あり/ゴリラガラス)IPS液晶、10点タッチ対応 |
ネットワーク | IEEE 802.11ac/a/b/g/n対応無線LAN(Intel Dual Band Wireless-AC 8260)、Bluetooth 4.0 |
インターフェイス | USB Type-C×1(映像出力対応)、USB 3.0×2(内1つPowered)、USB 2.0×1(電源供給機能付き)、マルチメディアカードリーダ、音声入出力、JBLステレオスピーカー、720p Webカメラ |
センサー | 加速度センサー、光センサー、デジタルコンパス |
サイズ/重量 | 約324x225x14.9mm(幅×奥行き×高さ)/約1.29kg |
バッテリ駆動時間 | 最大約9.5時間(4セルリチウムイオンポリマー) |
その他 | Microsoft Office Home & Business Premium プラス Office 365 サービス |
カラーバリエーション | クレメンタインオレンジ、プラチナシルバー、シャンパンゴールド |
税別店頭予想価格 | 25万円前後 |
プロセッサはCore i7-6500U。2コア4スレッドで、クロックは2.5GHzから最大3.1GHz。キャッシュ4MBでTDPは15W。末尾がUなので低TDPタイプだ。メモリはLPDDR3-1600の8GB。オンボードなので増設はできない。ストレージは512GB SSDで、後半で触れるがM.2接続タイプだった。OSはWindows 10 Home。
グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 520。外部出力用のHDMIコネクタなどは無く、必要であればUSB 3.0 Type-Cから変換アダプタ経由で出力できるが、変換アダプタは付属されていないため、別途用意しなければならない。今後、薄型のノートPCやタブレット(2-in-1含む)は、USB 3.0 Type-Cを搭載し、HDMIなどは無し…という傾向になるかも知れない。
ディスプレイは、ゴリラガラスを採用した13.3型QHD+(3,200×1,800ドット)IPS液晶。光沢ありで、10点タッチにも対応している。そして冒頭で書いたように、360度回転するヒンジを搭載し、4つのモードに変形が可能だ。独自のヒンジに関しては別途写真を掲載しているので参考にして欲しい。
ネットワークは、Intel Dual Band Wireless-AC 8260 (IEEE 802.11ac/a/b/g/n対応)を搭載。有線LANは無い。これも必要であれば、USB 3.0のポートへアダプタを接続することになる。Bluetooth 4.0にも対応。
その他のインターフェイスは、USB Type-C×1、USB 3.0×2(内1つPowered)、USB 2.0×1(電源供給機能付き)、4in1メディアカード・リーダー、音声入出力、JBLステレオ・スピーカー、720pカメラ。1ポートあるUSB 2.0は電源入力を兼ねる。この時、一般的な5Vではなく、20Vで付属のACアダプタから供給される。センサーは、加速度センサー、光センサー、デジタルコンパスを搭載する。
サイズは約324x225x14.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.29kg。4セルのリチウムイオンポリマーバッテリを内蔵し、最大駆動時間は約9.5時間。カラーバリエーションは、クレメンタインオレンジ、プラチナシルバー、シャンパンゴールドの3種類が用意される。
税別店頭予想価格は、Microsoft Office Home & Business Premium プラス Office 365 サービス込みで25万円前後だ。
なお下位モデルは、Core i5-6200U(2コア4スレッド、2.3~2.8GHz、キャッシュ3MB)、メモリ4GB、SSD 256GB、10点マルチタッチ対応13.3型3,200×1,800ドットIPS液晶、Office Home & Business PremiumプラスOffice 365サービスを搭載し、税別店頭予想価格は187,800円前後だ。
3種類あるカラーバリエーションの中、届いたのはシャンパンゴールド。文字通りあまり金色は強くなく、薄っすら赤が混じった雰囲気だ。トップカバーと裏にこの色が使われ、キーボード周辺はマットなブラックで、派手な中にも落ち着きがあるデザインで質感もよい。重量が実測で1,297gということもあり、13.3型のフットプリントの割に、持ってみると軽く感じる。厚みが14.9mmなのも影響しているだろう。
前面はパネル中央上に720pカメラ、裏の前左右のスリットにスピーカー。左側面に電源入力兼のUSB 2.0、USB 3.0(Powered)、USB 3.0 Type-C、マルチメディアカードリーダ。右側面にUSB 3.0、音声入出力、画面回転ロックボタン、電源ボタンを配置。バッテリは内蔵式で着脱はできない。
付属のACアダプタは、サイズ約65×65×30mm(同)、重量163gと大き目だ。給電時、5Vではなく20Vで給電する関係だろう。プラグは折り畳みに対応している。
ディスプレイは、光沢ありのゴリラガラスを採用した、13.3型3,200×1,800ドットIPS液晶。明るさ/コントラストは十分確保され発色もよい。もちろんIPS式なので視野角も広い。この解像度でデスクトップ環境は使い辛いかと思ったが、標準で文字などがスケーリングされており全く問題無かった。10点タッチもスムーズに反応する。
キーボードは3段階のバックライトを搭載したアイソレーションタイプだ。たわむこともなく、軽くてソフトなタッチながらもしっかりしている。バックライトの設定は[Fn]+[Space]キーで行える。キーピッチは主要部分は約19mmだが、右側の一部が狭くなっているのが残念。
なお、最上段のキーは、[Fn]キーとのコンビネーションでファンクションキーになり、通常はパネルの明るさや音量をコントロールする機能キーとなる。また「YOGA 3 Pro」では5列配列だったが6列に戻っている。
タッチパッドは物理的なボタンが無い1枚プレートタイプとなる。ファンクションキーで無効にすることも可能だ。
さて独自のヒンジ、少し寄り気味で撮った写真を2点掲載したのでご覧いただきたい。パイプの部分の色を筐体に合わせ、一体感を高めているのが分かる。ヒンジの形状は凹凸の部分でほかに傷をつけそうだが、角を面取りしてあるので、余程のことがない限り大丈夫だろう。
実際回転させると、確かにスムーズで、止めた時もフラフラぜず、タッチしても不安定なことは無い。なかなか良くできた仕掛けだが、メカ感のある見た目なので、好みは別れるかも知れない。
振動やノイズは皆無。発熱も試した範囲では全く問題無かった。サウンドはこのクラスではなかなか体験できない程の朗々とした鳴りっぷりで驚いてしまった。抜けも良く、パワーもある。ただし音量を最大にすると筐体が共振する上、少し歪み出す。JBL製のDolby Home Theater対応スピーカーなので、Dolby Audioで再生する内容に応じて音色を変えることも可能だ。
Core i7-6500U搭載機としては標準的だが、若干SSDが速い
OSはWindows 10 Home 64bit。タブレットモード時のスタート画面は2画面。1画面目は標準に加えMicrosoft Office、2画面目は同社のプリインストールとなる。デスクトップは、壁紙の変更に加え、左側にショートカットを3つ追加と、どちらかと言えばあっさり目だ。Core i7でメモリ8GB、SSD搭載なので、快適に作動する。
ストレージはHynixのM.2接続SSD「HFS512G39MND」。スペック上は、リード530MB/sec、ライト370MB/secとそれなりに速い。ベンチマークテストの結果も良好だ。CドライブとDドライブの2パーティションで、それぞれ約432GBと24GBが割り当てられている。Cドライブの空きは406GB。
Wi-Fiは「Intel Dual Band Wireless-AC 8260」。Bluetoothもインテル製だ。有線LANには非対応だが、必要であればUSB 3.0があるのでアダプタを付ければいいだろう。
プリインストール済のソフトウェアは、Windowsストアアプリは、「Lenovo Companion」、「Lenovo ID」、「Lenovo Settings」。Lenovo Companionは以前からあるが、よりフラットでシンプルなUIになっていた。
デスクトップアプリは、Lenovoフォルダに「Lenovo Photo Master」、「OneKey Recovery」、「Product Demo」、「REACHit(クラウドストレージ兼一括検索)」、「SHAREit(AirDropに似たファイル共有)」、「ユーザーマニュアル(PDF)」。Dolby Audio、REACHitをローカルドライブにマッピングするREACHit Drive。
Lenovo系のアプリは、Windowsストアアプリにある程度雰囲気を似せて作られており、同時に起動してもあまり違和感が無くなった。
ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2 Home(accelerated)、BBenchの結果を見たい。CrystalMarkのスコアも掲載した(2コア4スレッドで条件的には問題ない)。
winsat formalの結果は、総合 5.7。プロセッサ 7.5、メモリ 7.7、グラフィックス 5.7、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 8.15だ。PCMark 8 バージョン2のHome(accelerated)は2620で、CrystalMarkは、ALU 50694、FPU 51171、MEM 52385、HDD 40192、GDI 15383、D2D 5816、OGL 12391。M.2接続のSSDだけあってHDDのスコアが少し高めだろうか。
BBenchは、バックライト最小、キーボードバックライトオフ、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果が、バッテリの残5%で51,690秒/14.4時間。仕様上は最大9.5時間なのに、12時間を軽く超えてきた。バックライト系をオンにしても10時間以上持ちそうだ。これならバッテリが着脱できなくても、多くのケースで問題にならないだろう。
以上のようにレノボ・ジャパン「YOGA 900」は、SkylakeのCore i7、QHD+液晶、M.2 SSD、USB 3.0 Type-Cと、最新のデバイスやインターフェイスを多く採用した先進的なノートPCだ。独自のヒンジでラップトップ/タブレット/テント/スタンド、各モードへの回転や固定時の不安定感も無くなり、完成度は高い。もちろんパネルのクオリティやサウンド、キーボードなどのベーシックな部分もしっかしている。BBenchも12時間を楽々超えた。
HDMIや有線LANは非搭載で、USB 3.0を使ったアダプタ経由になるのは仕方ない部分であるが、仕様の範囲内で気になる部分もなく、パネルが360度回転するノートPCを探しているユーザーにおすすめの逸品と言えよう。