西川和久の不定期コラム
ASUS「Flip C100PA」
~890gの軽量Chromebook、360度回転するタッチ対応10.1型液晶を搭載
(2015/10/27 06:00)
ASUSは10月1日、重量が890gと軽量で、回転式の10.1型液晶ディスプレイを搭載したChromebook「Flip C100PA」を発表。10月3日より販売を開始した。試用する機会を得たので体験レポートをお届けしたい。
1kgを大きく切った全部入りのChromebook
もともとChromebookは対Windowsとして出てきたが(と筆者は思っている)、Microsoft Officeが使える安価なWindowsタブレットの登場など、最近のMicrosoftの積極的な動きによって、価格的なメリットは薄れてしまった。しかし、即起動する快適さや、Chromeブラウザと一体化したOS、自動更新、クラウドとの親和性、能力の割に軽い実装など、Windowsにはない魅力がある。
ただ、一部のハイエンド機種を除き、多くはコスト削減を優先したローエンド向けで、筐体の質感やパネルの品質が正直イマイチなモデルが多かった。しかし、ここにきて安価にも関わらず、それを覆すモデルが登場した。それがFlip C100PAだ。
キーワードは「重量890g」、「タッチ対応10.1型IPS式液晶」、「最大9時間のバッテリ駆動」、「360度回転する筐体」、「4万円未満の価格」となるだろうか。これからも分かるように、モバイルノートPCとして魅力的なマシンに仕上がっている。主な仕様は以下の通り。
ASUS「Flip C100PA」の仕様 | |
---|---|
SoC | Rockchip RK3288C(1.8GHz、4コア) |
メモリ | 2GB(LPDDR3-1066) |
ストレージ | SSD 16GB |
OS | Google Chrome OS |
ディスプレイ | 10.1型IPS式(光沢)、1,280×800ドット、タッチ対応 |
グラフィックス | プロセッサ内蔵Mali T-764 |
ネットワーク | IEEE 802.11a/b/g/n/ac |
その他 | USB 2.0×2、Micro HDMI、microSDカードスロット、Bluetooth 4.0、92万画素Webカメラ、音声入出力、ステレオスピーカー |
サイズ/重量 | 262.8×182.4×15.6mm(幅×奥行き×高さ)/890g |
バッテリ駆動時間 | 最大約9時間 |
価格 | 39,000円前後 |
SoCはRockchip RK3288C。4コアでクロックは1.8GHz。見慣れないSoCなので軽く調べたところ、ARM Cortex-A17、Mali T-764(クアッドコア)、OpenGL ES3.1/OpenCL 1.1、H.264 4Kデコード……などに対応といった特徴を持ち、2014年のCESで発表されている。このクラスにマッチしたSoCと言えるだろう。
一般向けのメモリは2GBだが法人向けは4GB。価格を4万円未満に抑えるために一般向けは2GBになっていると思われるが、できれば4GBモデルも扱って欲しいところだ。
ストレージはSSD 16GB。ディスプレイは10.1型IPS式で解像度は1,280×800ドット。なんとタッチ対応だ。タッチの必要性についてはいろいろあるだろうが、個人的には11型前後だとついついパネルに触れてしまう癖があるので、この対応はありがたい(なぜか15.6型以上になるとタッチしなくなる)。
外部出力用としてMicro HDMIを装備。また、本機最大の特徴としてパネルが360度回転し、ノートパソコンスタイル、タブレットスタイル、テントスタイル、スタンドスタイルに変形できる。
インターフェイスは、IEEE 802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth 4.0、USB 2.0×2、microSDカードスロット、92万画素Webカメラ、音声入出力、ステレオスピーカー。無線LANがIEEE 802.11acに対応しているのはポイントが高い。
本体サイズは262.8×182.4×15.6mm(幅×奥行き×高さ)。重量は890gと、1kgを大幅に切っている。バッテリ駆動時間は最大約9時間。価格は39,000円前後だ。
冒頭に挙げたキーワードも含め、いろいろな面で、モバイラーとしては「お!」と思う内容ではないだろうか。
筐体はツヤ消しのシルバーで覆われ非常に高級感がある。360度回転するパネルもしっかり固定されているので、ふらつくことはない。さすがに実測880gは軽く、片手で楽々持ち上がる。
前面のパネル中央上に92万画素Webカメラ。裏は四隅に固定用のゴム足と、前左右にスピーカー。左側面は、電源入力、バッテリ/電源LED、音量±ボタン、電源ボタン。右側面は、音声入出力、microSDカードスロット、USB 2.0×2、Micro HDMIを配置。また側面は写真からも分かるように結構薄い。バッテリは内蔵タイプで着脱はできない。
付属の専用ACアダプタは、サイズ47×47×27mm(同、突起物含まず)、重量100g。本体と合わせても980gと、1kgを切っている。
10.1型IPS式のディスプレイは、価格帯からは信じられないほど高品質だ。視野角もかなり広い。過去、4万円未満のマシンはいろいろ試用してきたが、ここまでのものは見たことがない。タッチも良好でスクロールなどを快適に行なえる。
キーボードは10キーなしのアイソレーションタイプだ。たわむこともなく感触は良い。タッチパッドもスムーズで、設定によってスクロール方向をWindows準拠とOS X準拠に切り替え可能だ。キーピッチは[Enter]キー周辺のみ少し狭いものの、約18mmを確保。[Enter]キー自体が狭いのが気になる部分であるが、個人的には問題なかった。
最上段にあるChrome OS固有のファンクションキーは、左から順に、ブラウザの戻る、進む、リロード、全画面表示、タスク切り替え、輝度±、ミュート、音量±、ロックと並んでいる。タスク切り替えに関しては後半に画面キャプチャを掲載したので参考にして欲しい。
そして本機の特徴であるパネルが360度回転することにより、通常のノートPCスタイルに加え、タブレットスタイル、テントスタイル、スタンドスタイルに変身する。タブレットスタイル時には縦表示にも対応。中でもテントスタイルは、スピーカーが若干斜め下ながらも正面に向くこともあり、音楽や動画再生時に積極的に使いたい。
サウンドは底面にスピーカーが付いていることもあり、机など硬いものの上に置くと反射する仕掛けだ。同様にテントスタイルはパネルの角度によって反射角が変わり、45度前後が一番ボリューム感が増す。レンジが狭いのは仕方ないとして、もう一歩パワーが欲しいところ。ところが音声出力にイヤフォンを接続したところ、iPad並みの音質とパワーがあった。これにはちょっと驚いた。
振動やノイズは皆無。熱に関しては時期的に室温が低いというのもあるだろうが、試用した範囲ではほとんど発熱を感じなかった。
以上のように、IEEE 802.11acとHDMI出力に対応、筐体の質感良し、しかも実測880g。キーボードとタッチパッドも良好。タッチ対応のパネルとサウンドもグッドなどなど、申し分のないハードウェアに仕上がっている。しかも4万円切りの価格。当初「Chromebookでも4万円近い価格は少し高いか……」と思っていたが、十分お釣りが来る。
Chrome使いならシームレスに使える快適な環境
セットアップは非常に簡単だ。画面キャプチャは撮っていないものの、言語/キーボードの設定(標準で日本語)、Wi-Fiの設定を行ない、Googleアカウントを入力するだけ。起動時間は完全に電源が落ちている状態からログイン画面まで約5秒と高速。もちろんスリープから復帰は瞬時。
起動直後のデスクトップは、ご覧のようにWindowsと非常に似ている。右下にはクイック設定/通知エリアがある。
設定は多くの部分がChromeブラウザと同じ。タッチパッドの設定やPowerwash(完全リセット)など、ハードウェアに依存する部分が追加されている。普段Chromeを使っている人であれば、即使いこなせるだろう。
拡張機能は標準で、Chromeリモートデスクトップ、Google Keep、Playムービー、Googleスプレッドシート、Googleスライド、Googleドキュメント、カメラ、電卓が設定されている。なお、ログインしたGoogleアカウントでほかのChromeブラウザを使っている場合は、アプリや拡張機能などの設定が自動的に同期する。
標準搭載のアプリは、Chrome、Webストア、ASUS、ヘルプ、Google Search、YouTube、Gmail、Googleカレンダー、Googleマップ、Googleドライブ、Googleドキュメント、Googleスプレッドシート、Googleスライド、Google+、ファイル、Play Books、Playムービー、Googleフォーム、電卓、Googleマイマップ、カメラ、Chromeリモートデスクトップ、Google図形描画、Google Keep。ASUSはカスタマーサポート登録へのURLだ。
以前試用した時は、左下がスタートボタン→スタートメニュー的な動きだったが、それがなくなり、ご覧のようなパネルが表示されるようになった。文末に過去のChromebook関連のURLも掲載したので、興味のある方は合わせてご覧いただきたい。
以下特徴的な画面を掲載したが、独立ウィンドウで表示する電卓やファイルなど以外、Chromeブラウザそのものなので、WindowsユーザーでもMacユーザーでも馴染みやすい。
IMEに関してはスペースキーの左右にある[英数]、[かな]で入力モードが切り替わる。この点はOS Xと全く同じだ。Windowsユーザー用に[ESC]キーの下に[かな/英数]キーもあるが、これはまず使わないだろう。なお画面キャプチャは[Ctrl]+[タスク切り替え]キーで行なえる。
少し面白いChromeアプリ/拡張機能で「ARC Welder」というのがある。これはChrome OS上でAndroidアプリを動かすエミュレータのようなものだ。
正確にはGoogleがAndroidアプリをChromeアプリ化できる「Android Runtime for Chrome(ARC)」をオープンソースで公開しており、それをエンドユーザーが簡単に操作できるようUIを用意したものと言えばいいだろうか。Chromeアプリ/拡張機能なので、プロセッサやOSを問わず、Chromeさえ動けば使うことができる。
使い方は簡単で、「ARC Welder」をWebストアからインストール。動かしたいAndroidアプリのapkを用意しChromebookへコピー、アプリ画面から「ARC Welder」を起動し、apkを指定するだけ(初期起動時に作業用のフォルダを指定する必要がある)。
実際Android版のTwitterアプリが起動している画面を掲載したので参考にして欲しい。本機の場合、タッチ対応なので、まるでスマートフォンで操作しているように扱うことができる。実行速度も気持ち遅い程度で、ライトに使うなら問題ないレベルだ。
互換性は多くのアプリを試していないので何とも言えないが、Twitter、Feedlyアプリは作動。Facebookアプリはログイン画面までは出るものの、ログインしようとするとネットワークエラーで先に進めなかった。
この技術が実用レベルまで高まれば、Chrome OSは、Chromeアプリに加え、無数にあるAndroidアプリまで使えるようになる。今後が楽しみな技術と言えよう。
また以前、Windowsの共有フォルダやNASなどSMBマウントできない件をChrome OSの欠点にあげていたものの、これも「File System for Windows」アプリで解決した。
Webストアからアプリをダウンロードし、サーバーのIPアドレス、ポート(デフォルト445)、ユーザー名、パスワード、リソース名を指定すれば、ファイルシステムがマウントされ、ファイルアプリで自由に読み書きできる。これなら一旦クラウド上にファイルを置き、といった操作が不要となり、普段使っているNASなどにダイレクトにアクセスでき非常に便利。もはや環境的にはWindowsやOSXと差がなくなった。
ベンチマークテストは、簡易となってしまうが、Google Octane 2.0を使用した。結果は7519。Cherry TrailやBraswellよりはJavascriptが少し速いということになる。
バッテリ駆動時間に関しては、輝度・音量ともに50%で、YouTubeを全画面連続再生したところ、10時間が経過する少し手前でバッテリ切れとなった。ほぼ仕様通りだ。音量は小さめだが、明るさは十分ある状態なので、普通に操作した場合はもう少し伸びると思われる。
以上のようにASUS「Flip C100PA」は、タッチ対応で360度回転式の10.1型ディスプレイを搭載したChromebookだ。バッテリ駆動は9時間を超え、筐体の質感も良く、加えて890gの軽量さも魅力的。ただオフラインアプリがあるとは言え、事実上オンラインでないと使えないのが最大の欠点とも言えるが、それはクラウド全盛の昨今、ほかのOSも大差ない。
画面やキーボード、筐体がハイクオリティで、1kgを切り、長時間バッテリ作動、そして安価なChromebookは現在これ一択ではないだろうか。