西川和久の不定期コラム
約1Lの筐体に第12世代Coreを搭載したコンパクトPC!「NEC Mate タイプMC<MC-C>」。光学ドライブとの一体感も高い
2022年8月15日 10:08
ここのところデスクトップPCに関してはNUCタイプのものが続いているが、今回はNECの企業向けでコンパクトなPC「Mate タイプMC<MC-C>」が編集部から送られてきたので試用レポートをお届けしたい。
約1Lのコンパクトな筐体へ第12世代Core i(T)を搭載
今回ご紹介するMate タイプMC<MC-C>は、約1Lの筐体(電源はACアダプタ)に第12世代Alder LakeのCore i7-12700T、i5-12500T、i3-12100T、そしてCeleron G6900Tを搭載可能で幅34.5mmとスリムなPCだ。SKUの型番から分かるように、デスクトップ用だが全てTタイプ=省エネ型が使われている。
本機はモデルごとに完成品+カスタマイズではなく、まずフレームモデルと呼ばれるベーシックな部分(メモリ/ストレージなし)の価格があり、ディスプレイ、ストレージ、メモリ、光学ドライブ、Wi-Fi&BT、キーボード・マウス、そのほかのオプションなどの有無によって合計金額が変わる仕組みだ。
最小構成は、Celeron G6900T/メモリ4GB/HDD 500GB/Wi-Fi&BTなしで16万400円(税別)と、サポート付きの企業向けだけあってスペックの割に定価は割高となる。ただし直販の「Web得選街」でほぼ同じ構成のモデルとなる「Mate J タイプMC<MC-C>」は7万1,027円(税込)からとなっており、実質は半額以下となっている。
今回手元に届いたのは、Core i5-12500Tをフレームモデルとして、16GB、暗号化機能付SSD 256GB、DVDスーパーマルチドライブ、Wi-Fi&BTをセレクトしたモデルだ。主な仕様は以下の通り。
NEC「タイプMC<MC-C>(MKN44/C-C)」の仕様 | |
---|---|
プロセッサ | Core i5-12500T(6コア12スレッド/2~4.4GHz/キャッシュ 7.5MB, 18MB/TDP 35W/ターボパワー 74W) |
メモリ | 16GB/8GB×2(SO-DIMM PC4-25600/最大32GB) |
ストレージ | SSD 256GB(暗号化機能付) |
光学ドライブ | DVDスーパーマルチドライブ |
OS | Windows 10 Pro(Windows 11 Proライセンスからのダウングレード) |
グラフィックス | Intel UHD Graphics 770/ミニD-sub15ピン、HDMI、DisplayPort |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、Wi-Fi 11ax対応、Bluetooth |
インターフェイス | USB 3.1×4、USB 3.0 Type-C×1、 3.0、USB 2.0、音声入出力 |
サイズ/重量 | 34.5×18.29×179mm(幅×奥行き×高さ/光学ドライブなし)、重量1.28kg(光学ドライブあり2.04kg) |
価格 | 30万2,400円(税別) |
プロセッサは第12世代Alder LakeのCore i5-12500T。6コア12スレッドで、クロックは2GHzから最大4.4GHz。このSKUはPコアのみでEコアはない。キャッシュは7.5MB/18MB、TDPは35Wでターボパワー時74W。末尾にTがあるため省エネタイプとなる。
参考までにTなしのi5-12500だと、コアの構成は同じだが、クロック3.0GHz〜4.6GHz。TDPは65W/117Wと結構変わってくる。また別途vPro Essentials搭載モデルも用意されている。
メモリはSO-DIMM PC4-25600の8GB×2の計16GB。最大32GBまで搭載可能だ。ストレージは暗号化機能付きの256GB SSD。OSはWindows 10 Proだが、これはWindows 11 Proライセンスからのダウングレードとなる。ビルド21H2だったので、この範囲でWindows Updateを適応し評価した。もちろんWindows 11へのアップブレードも可能だ。DVDスーパーマルチドライブはオプション扱いで、手元に届いた実機には装着済みだった。
グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel UHD Graphics 770。出力用にミニD-sub15ピン、HDMI、DisplayPortを装備。今どきこのクラスでミニD-sub15ピンを使うケースはあるのだろうか。
ネットワークはGigabit Ethernet、Wi-Fi 11ax対応、Bluetooth。そのほかのインターフェイスは、USB 3.1×4、USB 3.0 Type-C×1、USB 3.0、USB 2.0、音声入出力。
本体サイズは34.5×18.29×179mm(幅×奥行き×高さ/光学ドライブなし)。光学ドライブありの時は幅63mmになる。ACアダプタ仕様ということもあり筐体は約1Lとかなりコンパクトだ。重量は1.28kg(光学ドライブあり2.04kg)。この特性を活かして、ディスプレイの裏に装着可能なよう、VESAマウンタも用意されている。
価格は今回の構成(11ダウングレード、暗号化機能付きSSD 256GB、メモリ8GB×2、光学ドライブ、LAN/Wi-Fi/BT、再セットアップ用媒体/なし)で30万2,400円。ただし先述の直販での販売例の通り、企業が導入する際はこの価格より大幅なディスカウントが適用されることだろう。
筐体はiPhone 13 Proとの比較からも分かるように約1Lでコンパクト。ただこのサイズで実測1,939gなので、持ち上げるとズッシリ重い感じがする。写真はないが、縦置き時、下側面にもゴム足があり、縦置きでも横置きでも対応できる。また付属のスタンドを使って少し傾ける置き方も可能だ。
前面は、音声入出力、USB 3.1、USB 3.0 Type-C、電源ボタン。サイドにDVDスーパーマルチドライブ。このDVDスーパーマルチドライブはオプションなので、ないとその分薄くなる。背面は、USB 3.1×2、USB 3.0、USB 2.0、HDMI、DisplayPort、電源入力。DVDスーパーマルチドライブ側にUSB Type-B。付属のACアダプタは、サイズ105×43×28mm(幅×奥行き×高さ)、重量226g、出力20V/3.25A(65W)。
写真からも分かるように、Wi-Fiはロッドアンテナを装着可能。本体とDVDスーパーマルチドライブとの接続は専用の短いUSBケーブルで邪魔にならないようになっている。
ちょっと面白い工夫としては、VESAマウントでディスプレイの裏に本体を設置した場合、電源オンするにはディスプレイの裏へ手を回して電源ボタンを押す必要があるが、本機はキーボードの[Alt]+Pで電源オンが可能になっている点(背面のUSB 2.0へキーボード接続時)。ちなみにいつものキーボード付きモバイルモニターでもOKだったので、(保証はしないだろうが)特に同社のキーボード専用機能というわけでもないようだ。電源オフは通常、Windowsから行なうので問題ない。
とは言え、今回のようにDVDスーパーマルチドライブがあると、メディアの出し入れは裏に手を回すことになるのだが……。
ノイズはベンチマークテストなど負荷をかけると若干発生する。筐体に耳を近付ければ……と言うレベルなので、一般的な場所への設置であれば特に気になることはないだろう。
総じて約1Lの筐体へうまくまとめられており、加えてオプションのDVDスーパーマルチドライブを付けた時の一体感も見事。昔ながらの無骨なデザインだが、個人的には嫌いではない。
シンプルなソフトウェア構成で業務用としては十分なパフォーマンス
初期起動時、スタート画面はフルHDで1画面。NECグループが追加されている。デスクトップはWindows標準のままでシンプル。コンシューマモデルのようにアプリ山盛りではない。
ストレージはSSD 256GBの「KIOXIA KBG5AZNV256G」。仕様によるとシーケンシャルリード3,400MB/s、シーケンシャルライト1,900MB/s。CrystalDiskMarkの結果はリードが少し遅めだが、ライトはそのまま出ている。C:ドライブのみの1パーテションで約236GBが割り当てられ空き202GB。BitLockerで暗号化されている。GbEはIntel i219-LM、Wi-FiはIntel AX201、BluetoothもIntel製だ。
なお、本シリーズでは、「Windows Autopilot」やUSBメモリなど各デバイスの利用制限が行なえる「Acronis DeviceLock Lite」にも対応している。この辺りはいかにも業務用と言えるだろう。
主なプリインストール済みのソフトウェアは、「PC設定ツール」、「型番・製造番号表示ユーティリティ」、「Power2Go」、「ウィルスバスタークラウド」とシンプル。PC設定ツールは本機の場合、ECモード一択となる。
ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R23、CrystalDiskMark。以前、Core i7-1250Uを搭載した「FMV LOOX 90/G」をご紹介しているが、こちらは第12世代i7でもSKUの末尾がUなので基本モバイル用。比較すると省エネのTとはいえ、デスクトップ用のプロセッサなので本機の方が多くの部分で勝っていた。いずれにしても業務用としては十分なパフォーマンスだ。
【表】ベンチマーク結果 | |
---|---|
PCMark 10 v2.1.2563 | |
PCMark 10 Score | 5,062 |
Essentials | 10,065 |
App Start-up Score | 14,982 |
Video Conferencing Score | 7,251 |
Web Browsing Score | 9,388 |
Productivity | 7,094 |
Spreadsheets Score | 6,688 |
Writing Score | 7,525 |
Digital Content Creation | 4,931 |
Photo Editing Score | 6,643 |
Rendering and Visualization Score | 3,634 |
Video Editting Score | 4,967 |
PCMark 8 v2.8.704 | |
Home Accelarated 3.0 | 4,576 |
Creative Accelarated 3.0 | 4,231 |
Work Accelarated 2.0 | 3,331 |
Storage | 5,044 |
3DMark v2.22.7359 | |
Time Spy | 872 |
Fire Strike Ultra | 578 |
Fire Strike Extreme | 1,173 |
Fire Strike | 2,489 |
Sky Diver | 8,973 |
Cloud Gate | 15,681 |
Ice Storm Extreme | 58,205 |
Ice Storm | 72,662 |
Cinebench R23 | |
CPU | 8,758 pts(6位) |
CPU(Single Core) | 1,541 pts(1位) |
CrystalDiskMark 6.0.0 | |
Q32T1 シーケンシャルリード | 2759.244 MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 1998.023 MB/s |
4K Q8T8 ランダムリード | 1166.171 MB/s |
4K Q8T8 ランダムライト | 423.120 MB/s |
4K Q32T1 ランダムリード | 523.954 MB/s |
4K Q32T1 ランダムライト | 454.814 MB/s |
4K Q1T1 ランダムリード | 46.569 MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 127.591 MB/s |
以上のようにNEC「タイプMC<MC-C>(MKN44/C-C)」は、約1Lで幅34.5mmの筐体へ第12世代Alder LakeのIntel Core i5-12500Tを搭載したスリムなPCだ。予算に応じて4タイプのプロセッサなどを選べるのもポイントが高く、全てのSKUがTタイプなので、動作時のノイズもほとんどない。「Windows Autopilot」や「Acronis DeviceLock Lite」に対応しているところが、いかにも企業用モデルらしいところ。
同クラスのコンシューマ向けPCと比較した場合、やや割高にはなっているものの、同社の手厚いサポートを期待できる。第12世代Core iを搭載したスリムなPCを導入したい企業にお勧めできる1台と言えよう。