西川和久の不定期コラム

M1版Mac mini購入記。驚愕のパフォーマンスと、CrossOver 20で秀丸の動作も確認

M1版Mac mini

 Appleは11月10日(現地時間)、初のAppleシリコンとなる「M1」を発表、同時にM1を搭載したMacBook Air、13インチMacBook Pro、Mac miniを発表した。筆者は早速メモリを16GBへ増やしたMac miniを購入したので試用レポートをお届けしたい。

Apple M1チップを搭載した新型Mac mini

 これまでの筆者手持ちのMac miniは第2世代Core i5プロセッサを搭載したMid 2011。最終的にはメモリを16GB、SSD 512GBを搭載し、1回ファンを交換するなど結構長い間使っていた。今でもテキスト/サーバー系の処理なら問題なく動くのでたまに起動している。

 Mac miniに関しては2012年、2014年、2018年と交換するタイミングがあったものの、2012年モデルは2011年モデルを買ったばかりなのでやめ、2014年はメモリがオンボードなのがいまいちで、2018年モデルは当時のメインマシンが第7世代のCore i7だったので見送り……と長らくアップデートするタイミングを失っていた。第10世代か第11世代搭載機が出ればと思っていたところにM1版Mac miniの発表があったので飛びついた次第だ。

 今回購入したのは、SSD 256GBでメモリを16GBへカスタマイズしたモデル。カスタマイズなしのメモリ8GBであれば11月17日着だったが、この関係で11月20日に到着している。おもな仕様は以下のとおり。

【表1】Apple「Mac mini(2020)」の仕様
プロセッサApple M1チップ
(高性能コア×4、高効率コア×4、8コアGPU、16コアNeural Engine)
メモリ8GB/16GB(ユニファイドメモリ)
ストレージSSD 256GB/512GB/1TB/2TB
OSmacOS 11 Big Sur
ネットワーク機能Gigabit Ethernet、Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)、Bluetooth 5.0
インターフェイスThunderbolt 3×2(DisplayPort出力は1基のみ)、HDMI、USB Type-A×2、3.5mmヘッドフォンジャック
サイズ約197×197×36mm(幅×奥行き×高さ)
重量1.2kg
税別価格7万2,800円~

 プロセッサはApple M1。1チップに高性能コア×4、高効率コア×4、8コアGPU、16コアNeural Engine、ISP(Image Signal Processor)、さらに8GBもしくは16GBのユニファイドメモリを内蔵している。これにより、一般的なチップの外にメモリを搭載するのと比べて、CPU、GPU、Neural Engineすべてからメモリアクセスが高速になる。

 反面弱点もあり、メモリ容量32GB/64GB対応はM1ではなく、次世代のチップになってしまう可能性が高い。今回MacBook Proのハイエンドモデルが出なかったのもこうした理由がありそうだ。ディスクリートGPU搭載モデルがないことや、Thunderboltポートの数が少ないのも、M1の仕様上の都合だと思われる。

 なお、Mac miniには搭載されていないが、前面カメラは内蔵ISPを使うため、MacBookでは高画質になった。おそらくiPhone 12のレンズとセンサーを使えば同じような絵になるはず。

 ストレージは256GB、512GB、1TB、2TBの4タイプを用意。OSはAppleシリコン初対応のmacOS 11 Big Surとなる。

 映像出力は、HDMI 2.0とThunderbolt 3(DisplayPort)。ただし、2つあるThunderbolt 3は、1つのみ画面出力可能で、HDMIと合わせて最大で2画面出力となる。M1版のMacBook AirとMacBook Proでも同じ仕様で、どうやらこれはM1の制限のようだ。

 解像度は、最大1台の6K@60Hzと、Thunderbolt経由で接続した最大6K@60Hz 1台もしくは、HDMI 2.0経由で接続した最大4K@60Hz 1台。iPadをディスプレイにするSidecarは数には含まれない。

 ただ、USB接続のDisplayLinkの対応版ソフトウェア(開発中)を使えば、もう1台の画面出力が可能だとのこと。YouTubeにM1版MacBook Proを使って3画面出力している動画が上がっているので興味のある人はご覧いただきたい。筆者もアダプタを持っているので、対応ソフトウェアが出たら試してみようと思っている。一時期使っていたがテキスト系であれば十分な性能だ。

 ネットワーク機能は、Gigabit Ethernet、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.0。そのほかのインターフェイスは、Thunderbolt 3×2、USB 3.0×2、3.5mmヘッドフォンジャックと少なめ。カードリーダがないのもちょっと痛い。サイズは約197×197×36mm(幅×奥行き×高さ)、重量1.2kg。

 税別価格はメモリ8GB、SSD 256GBで7万2,800円。筆者はメモリを16GBにカスタマイズしたので9万2,800円だった。最大のメモリ16GB、SSD 2TBだと17万2,800円となる。

正面は右下にPower LEDのみ
背面は左からAC入力、Gigabit Ethernet、Thunderbolt 3×2、HDMI、USB 3.0×2、3.5mmヘッドフォン出力
天板中央にAppleのロゴ
底面の丸いパネルは外れるが、メモリもSSDも交換/増設できないので外す意味がない
付属品はいつものシールと電源ケーブルのみ
重量は実測で1,178g

 筐体はMac miniそのもの。Mid 2011と比較しても背面のコネクタ類はを除けば、パッと見で違いがわからない。相変わらずシンプルで綺麗なコンパクトデスクトップだ。外部に大きいACアダプタがなく、電源内蔵も美しい。

 前面は右下に電源LEDのみ。背面は左からAC入力、Gigabit Ethernet、Thunderbolt 3×2、HDMI、USB 3.0×2、3.5mmヘッドフォン出力を配置。

 重量は実測で1,178g。同時に発表のあったM1搭載MacBook Airとあまり変わらない。移動先にディスプレイ、キーボード、マウスなどがあれば、本体だけ持ち歩いても体感は同じという話になる(笑)。

 ファンは搭載されているが、動作中の音が静かなのはもちろん、とにかく何をしても熱を持たず冷たいままだ。手持ちのMac mini(Mid 2011)、MacBook Pro 13(Mid 2012)、MacBook 12(2017)、MacBook Pro 16(2019)どれにしても少し触ればそれなりに暖かいのだが、今回のMac miniではそうならない。M1がArmベースということもあるのだろうが、Intel/AMD系では今のところ真似ができないのではないだろうか。

OSは最新のmacOS 11 Big Sur

 macOS 11 Big Surは、Appleシリコンに対応した初のOSとなる。アイコンの角に丸みをつけたり、「はい/いいえ」が左右ではなく上下になったり、コントロールパネルやウィジェットも含めて、多くのUIをiOS/iPadOSへ寄せている。

 システム的にはkext(カーネル拡張)の廃止、加えてRosetta 2を搭載。これはIntelコードをAppleシリコンコードへコンパイル(結果はキャッシュ)する機能だ。対応プロセッサが2種類ある関係から、Universalと呼ばれるIntel/Appleシリコンを1パックにしたアプリフォーマットにも対応。アプリの情報では、Universal/Intel/Appleシリコン(iOS/iPadOS)といった表示が出るようになった。

 初回起動時のバージョンは11.0であるが、執筆時点では11.0.1が出ている。SSD 256GBモデルだと空き約219GB。筆者の場合、データはすべてNASに保存していることもあり、これだけあれば十分だ。

初回起動時のホーム画面
コントロールパネルとウィジェット
ストレージ
アプリの情報、Appleシリコン/Universal/Intel
システムレポート → ハードウェアの概要
システムレポート → Apple M1

 プリインストールされているソフトウェアは、「App Store」、「Automator」、「FaceTime」、「Font Book」、「GarageBand」、「iMovie」、「Keynote」、「Launchpad」、「Mission Control」、「Numbers」、「Pages」、「Photo Booth」、「Padcast」、「QuickTime Player」、「Safari」、「Siri」、「Time Machine」、「TV」、「イメージキャプチャ」、「カレンダー」、「システム環境設定」、「スティッキーズ」、「チェス」、「テキストエディット」、「ブック」、「プレビュー」、「ボイスメモ」、「ホーム」、「マップ」、「ミュージック」、「メール」、「メッセージ」、「メモ」、「リマインダー」、「株価」、「計算機」、「辞書」、「写真」、「探す」、「連絡先」。

 ユーティリティ・フォルダに、「AirMacユーティリティ、「Audio MIDI設定」、「Bluetoothファイル交換」、「Boot Campアシスタント」、「ColorSyncユーティリティ」、「Digital Color Meter」、「Grapher」、「VoiceOverユーティリティ」、「アクティビティモニタ」、「キーチェーンアクセス」、「コンソール」、「システム情報」、「スクリーンショット」、「スクリプトエディタ」、「ターミナル」、「ディスクユーティリティ」、「移行アシスタント」。

 確認したところ、すべてのアプリがUniversalになっていた(一部対応アップデートあり)。

驚愕のM1とRosetta 2の性能

 M1搭載機(Mac mini、MacBook Air、MacBook Pro 13)の情報がネットに載りだしてからすでにベンチマークテストの結果についてはいろいろ出ているので今更だが、参考までに筆者所有のMacBook Pro 16(2019)との比較を行なった。Core i7-9750H、メモリ16GB(DDR4-2667)、SSD 512GB、Radeon Pro 5300Mを搭載した下位モデルだ。macOSはCatalina。メインマシンなのでBig Surはまだ様子見となっている。

 簡易式だがベンチマークテストは、GeekBench 5、Google Octane 2.0、iMovie、AmorphousMemoryMark 3.1、AmorphousDiskMark 3.1。すべてUniversalになっており、M1の性能を正確に測ることが可能だ。またGeekBench 5はAppleシリコン/Intelの切り替えができ、M1とRosetta 2の性能差も見ることができる。

【表2】ベンチマーク結果
M1Rosetta 216インチMacBook Pro(2019)@Catalina
GeekBench 5(Universal)
Single-Core1,7551,2691,024
Multi-Core7,6765,4915,579
OpenCL19,74025,451
Google Octane 2.0
Safari(Universal)63,158-43,046
Chrome 87(Universal)64,673-46,616
iMovie(Universal)
3分の素材をフルHD/mp4へ約30秒-約30秒
AmorphousMemoryMark 3.1(Universal)
SEQ128K T8 Read46.87-24.17
RND4K T8 Read27.59-26.48
SEQ1M T1 Read54.27-14.88
RND4K T1 Read14.35-10.92
SEQ128K T8 Write64.13-12.89
RND4K T8 Write21.21-12.77
SEQ1M T1 Write62.19-13.86
RND4K T1 Write8.54-11.3
AmorphousDiskMark 3.1(Universal)
SEQ1M QD8 Read3431.54-3427.97
SEQ1M QD1 Read2324.17-2000.24
RND4K QD64 Read1266.35-1136.1
RND4K QD1 Read65.43-46.7
SEQ1M QD8 Write2505.02-2847.25
SEQ1M QD1 Write2728.9-1911.06
RND4K QD64 Write86.99-208.12
RND4K QD1 Write40.2-196.09

 GeekBench 5に関しては、Single-CoreもMulti-Coreもとんでもないスコアが出た。Core i7-9750Hを搭載したMacBook Pro 16(2019)が軽く負けているのだ。Google OctaneはJavaScript(Single-Core)のベンチマークテストなので、その差がそのまま出ている。6万越えはちょっと見たことのないスコアだ。

 GeekBench 5を使った歴代Macのスコアはここに載っているが、Single-Coreは1位、Multi-Coreは13位(ただし上位はProモデル)。Single-CoreはMac Proさえ抜き去ってしまっている。

 Rosetta 2を使ったIntelプロセッサのエミュレーションは、約30%のオーバーヘッドと言われているが、元のM1が速いので、少し速度が落ちてもMacBook Pro 16(2019)下位モデルと互角以上のスコアになっている。これはかなり衝撃的だ。

 アプリによるようだが、実際IntelアプリをM1上で動かしてもそれを忘れてしまう動作速度となる。初回のみコンパイルするので少し起動に時間がかかるが、それもたいした時間ではない。

 OpenCLはさすがにディスクリートGPUには勝てないものの、かなり健闘しているのがわかる(なぜか現バージョンのGeekBenchではMetalに非対応)。iMovieは3分の素材をフルHD/mp4へ書き出すのにかかった時間だ。どちらも約30秒。M1がCore i7-9750H+Radeon Pro 5300Mと同じとは……。

 メモリはM1内のユニファイドメモリと普通のDDR4でやはり差が出る。SSDに関してはM1かIntelかは無関係で、256GBと512GBのデバイスの違いがそのまま出る格好となった。

 16インチMacBook Pro 16はこの春に購入したもので、この差は「まいったな……」というのが正直な感想だ。同じくM1を搭載したMacBook Pro、MacBook Airもほとんど同じ性能になることが予想され、M1はAppleにとって狙いどおりゲームチェンジャー的な存在と言えよう。

Intel、Universal、Arm、iOS/iPadOSアプリが動作可能。CrossOver 20でWindowsアプリも

 M1搭載機でのBig Surは、macOS用アプリとしてIntel版(Rosetta 2を使用)アプリ、Universal版アプリ、Arm64バイナリ、そしてIntel搭載機では動かないiOS/iPadOS用アプリが使用可能だ。

 筆者が仕事用に使うのは、Microsoft Office、Photoshop、Chrome、Visual Studio Code、Karabiner-Elements(Windows用キーボードリマッパー)、加えてHomebrew、XAMPP、Parallels Desktop/VMware Fusion/VirtualBoxなどの仮想マシン環境、Docker Desktop、そしてWindowsアプリであるが秀丸とWinSCPなどが必要となる。

 すでにUniversal対応済みがChrome、Karabiner-Elements。Rosetta 2でIntel版が動作可能もしくはUniversal対応のベータ版があるものとして、Microsoft Office、Photoshop、Visual Studio Code、Homebrew。

 Intel版で動作するのがXAMPPで、Weサイトにあるダウンロードリンクでは動かずbrew cask install xamppでインストールする必要がある。これはM1にかぎらずBig Surの制限だ。

 そして、まだないのがParallels Desktop/VMware Fusion/VirtualBoxなどの仮想マシン環境、そしてDocker Desktopとなる。

Big Sur@M1上で動作するMicrosoft Office(Intel)、Chrome(Universal)、Visual Studio Code(Universal)、Karabiner-Elements(Universal)、brew(Arm)

 またBig Surでkext(カーネル拡張)が廃止になったため、ドライバ系がほぼ全滅している。筆者の手持ちだとi1Display Proがこれに該当する。このためi1Profilerやハードウェアキャリブレーション用アプリ(Palette Master Element)は、i1Display Proが見つからないエラーとなる。こればかりは対応ドライバが出ないとどうにもならないが、回避方法はある。

 これらを使って作られるColor Profileはディスプレイ依存であって、マシン依存ではない。したがって、ほかのマシンで対象のディスプレイを測定、得られたColor ProfileをM1 Mac miniへコピーすればOKとなる。面倒であるが、キャリブレーション自体月1回程度なのでとくに問題はないだろう。ただし、MacBook AirとMacBook Pro 13はディスプレイ一体型なのでこの技は使えない。

 HomebrewのIntel版はRosetta 2で動作可能。M1(Arm)版はまだパッケージが少ない。このとき注意する点は、ターミナルの動作モードだ。情報でRosetta 2で動作かどうかをチェックボックスで設定しなければならない点だ。

 Intel版はこのチェックを入れた上でこれまでとおりインストール。/usr/local/に入る。Arm版はチェックを外し以下を実行。つまり、/opt/homebrewに入る。

$ cd /opt
$ sudo mkdir homebrew
$ sudo chown ユーザー名:admin homebrew
$ curl -L https://github.com/Homebrew/brew/tarball/master | tar xz --strip 1 -C homebrew

 いずれにしても、ターミナルをどちらで使うかに応じて毎回情報を開き、チェックボックスを設定するのは面倒なので、ターミナルをターミナルintelと名前を変えコピーし、後者のチェックボックスだけオンにして使っている。確認はコマンドライン上でuname -m。x86_64かarm64が表示される。

ターミナルintelとターミナルを起動、情報「Rosettaを使用して開く」がチェックあり/なし。アクティビティモニタに見える2つのターミナル/アーキテクチャはAppleとIntelになっているのがわかる

 LAMP環境のXAMPPが動けば仕事的には困らないが、仮想マシン環境とDocker Desktopがないのは痛い。とは言え、どれも有名どころなので、少しすれば対応するのではと楽観視している。とにかくどれかの方法でArm版のUbuntu、CentOSが動けばよい。Intel版の必要はない。

 iOS/iPadOSアプリは仕事では使わないものの、iPhoneやiPad(Pro)で使っているアプリがそのまま使えれば便利だ。実際起動すると大きく分けて2パターンあるようだ。

 1つはiOS専用のアプリ。これはウィンドウサイズが固定。ただフルHDのパネルで見るとそのウィンドウが小さく文字が見づらい。もう1つはiPadOS対応アプリ。これはウィンドウサイズが可変だ。Chrome OSのAndroidアプリも似たような状態になるためまたか……というところ。全画面のみのアプリがないだけBig Surのほうがマシかもしれない。まだたまに落ちたり不安点な部分がなくもないが、レスポンスも良くそれなりに使うことができる。

ウィンドウサイズ可変のFriendly Social Browser(FacebookやInstagramなどのスマホUIウェブサイトのwrapper)と、ウィンドウサイズ固定のradiko

 このiOS/iPadOSアプリ、システム的な問題以外の問題がある。それはデベロッパがApp Storeにアプリを登録するとき、Big Surへ「公開する/しない」を選択できることだ。ただ、Google系、Facebook、Instagram、TikTokなど、大手Webサービス系がほぼ全滅状態。Googleは意図的に外しているという話も出ている。

 基本ブラウザでアクセスできるので困らないのでは? となりそうだが、Instagramは明らかに機能不足、Facebookは新UIになってから動作が重い。大手がこぞってBig Surを除外してしまうとこの機能は絵に描いた餅状態になってしまう。もう少しシステムが安定した後にこのオプションはなくし、もれなく公開にすべきだろう。

 さて最後に残ったのはいつものWindowsアプリ。筆者が使っているのは秀丸とWinSCPだ。macOS上にはCotEditorなどいろいろエディタはあるが、折り返した行も行番号に加える機能がない。これがあると、たとえば幅を半角で80文字にしておくと、パッと見で全体のおおよその文字数わかって便利なため、原稿書きのみ相変わらず秀丸を使っている。WinSCPは単に登録済みの100以上あるHostを再登録するのが面倒なだけだ。

 M1搭載Macでこれらを動かすには、Arm版Windows(現在Intelアプリは32bitのみ対応、近々64bitにも対応する)でBoot Campするか、仮想マシン環境上でArm版Windowsを起動という方法が使えそうだが、Arm版Windowsは単品売りされていないのでできない。次にあり得るパターンとして、Rosetta 2で仮想マシン環境を起動し、Intel版Windowsを使うやり方だ。しかしRosetta 2は仮想マシン環境未対応なので同じく不可能。もちろんこれははじめからわかっていたことなのであきらめていた。

Big Sur@M1上で動くCross Over 20、秀丸、WinSCP

 ところが、Wine的なCrossOverを作っているCodeWeaversのブログにとある記事が載った。要約した日本語の記事もあちこちのIT系サイトに載ったので、見覚えのある人も多いのではないだろうか。

 M1版Macで「Team Fortress2(Windows版のゲーム)がCrossOver 20で動作した」という内容だが、動作条件がBig Sur 11.1ベータ版だったので、試さなかった人がほとんどだろう。

 CrossOver 20はすでにリリース済みで、ここからダウンロード可能。14日間のフリートライアルもできる。ダメもとでBig Sur 11.0.1@M1へインストールし、秀丸とWinSCPを入れたしたところ動作した。全機能を試したわけではないので、どこまで動くのかは不明だが、日ごろ使う範囲はとくに問題なく動作し、この原稿も3分の1ほどはこの環境上で書いている。日本語フォント、IME関連も問題なし。これはある意味大事件だ。

 仕掛け的には、Win 32bit apiを64bit apiへ変換(Catalina以降64bitアプリしか動かない)、Win 64bit apiをIntel版macOS apiへ変換(ここまでCrossOver 20)、Rosetta 2で実行……と3レイヤーもかかっている。しかしそのわりには、Intel版MacBook ProでParallels Desktopを使い、Windows上で秀丸を操作するより反応が良い(笑)。何が動くか未知数であるが、フリートライアルもあるので、興味のある人はぜひ試していただきたい。なお動作に関しては筆者も編集部も保証するものではないので、自己責任でお願いしたい。

 ここまでがマシン到着後、約2日間でわかった内容となる。試しながら原稿を書いているので大丈夫だと思うが、何か違うことがあればお許し願いたい。

上 : M1 Mac mini、下 : Mac mini(Mid 2011)、その下 : 懐かしいFireWire接続のHDD

 以上のようにApple「Mac mini(2020)」は、M1を搭載したコンパクトデスクトップだ。メモリ8GB、SSD 256GBモデルだと税別7万2,800円。M1お試し用としては一番安いモデルとなる。

 性能は前評判どおりすさまじく、加えてまったくと言ってよいほど発熱もしない。筆者はマイコンと呼ばれたころから長年パソコンを触っているが、こんなにワクワクしたのは久しぶりだ。それほど衝撃的でかつ興味深い1台に仕上がっている。

 Appleファンのみならず、新しい物好きなユーザーにもぜひ使ってほしい1台だ。外出用の12インチMacBookの代わりにM1搭載MacBook Airが欲しくなってしまった(笑)。