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スマホクーラーは単なる飾り?iPhone 16 Proで検証してみた

 当然のことながら、スマホで高負荷な作業を実行すると、PCと同じように本体内に熱がこもる。そのため多くのスマホはヒートパイプ、放熱シート、ペイパーチャンバーを搭載しており、冷却効率を向上。ゲーミングスマホの中には、純正の冷却ファンユニットを用意したり、空冷ファンを内蔵しているモデルも存在する。

 iPhone用にもサードパーティーから、磁気技術「MagSafe」を利用した冷却ファンが多数販売されている。これらは2,000~3,000円という比較的手頃な価格で入手可能だ。しかしこれらの商品は、はたして効果があるのだろうか?効果があるとしたらどの程度なのだろうか?

 今回は発売されたばかりの「iPhone 16 Pro Max」と「iPhone 16 Plus」を使用して、サードパーティー製冷却ファンの効果を実際に試してみた。ぜひ購入前の参考にしてほしい。

今回使用したMagSafe対応冷却ファンについて手短かに解説

 ベンチマークの前に、まずは今回使用したMagSafe対応冷却ファンについて手短かに説明しておこう。本製品はAmazonで記事執筆時点に3,499円で販売されていたバッテリ脱着式の冷却ユニットだ。パッケージには冷却ファン本体、1,800mAhバッテリ×2、充電台、USB Type-Cケーブル、MagSafe非対応製品に取り付けるための「マグネットプレート」が同梱。USB Type-Cケーブル経由、またはバッテリ経由にて電力を供給し、スマホの背面を冷却可能だ。

製品パッケージ
パッケージには冷却ファン本体、1800mAhバッテリ×2、充電台、USB Type-Cケーブル、マグネットプレートが同梱

 冷却ファンとバッテリを合体させた状態のサイズは70.5×55×37mm、重量は実測118.8g。筐体の材質はアルミニウム、ABS樹脂、銅、磁石。冷却方式はペルチェ素子で、冷却ファンには7枚のブレードを装備。バッテリ1つの容量は1,800mAhで、バッテリ駆動時間は最大約90分。冷却モードはL1(最弱)~L7(最強)の7段階で調整可能だ。

LED画面でバッテリ残量を確認可能。充電中は稲妻マークが表示される
冷却ファンはLED仕様。ただしバッテリを装着するとほとんど見えない

 比較的安価な冷却ファンだが、冷却ファン本体にLED画面を装備。電源スイッチでオンオフ、調節ボタンで冷却モードをL7→L1へと切り替えられる。バッテリ残量も表示できるので、使いやすい製品だと感じた。

冷却ファンのサイズは実測70×54×21mm、重量は実測72.2g。手前に電源ボタン、LED画面、調節ボタンを用意
バッテリのサイズは実測67×43×13.5mm、重量は実測46.6g。冷却ファンには磁石で手軽に装着できる
充電台のサイズは実測85×55×16mm、重量は20.9g。端子はUSB Type-C
USB Type-Cケーブルの長さは実測100cm
MagSafe非対応製品に取り付けるための「マグネットプレート」。裏側には両面テープが貼られている
日本語説明書が付属

 なお本製品動作中にサーモグラフィーカメラで撮影したところ、冷却面の表面温度はL1(最弱)で15.5℃、L7(最強)で14.7℃となった(室温27℃前後で測定)。冷却面に触れば冷たく感じるし、単体で動作させ続けたところ冷却面が結露している。効果はどうあれ、冷却性能を備えていることは間違いない。

冷却面の表面温度はL1(最弱)で15.5℃、L7(最強)で14.7℃(室温27℃前後で測定)

負荷の高いベンチを長時間実行したとき、最低スコアが104%相当に向上

 さて本題だ。今回テストに使用したiPhoneは、「A18 Proチップ」を搭載する「iPhone 16 Pro Max」と、「A18チップ」を搭載する「iPhone 16 Plus」。両機種で冷却ファンの装着前、装着後に総合ベンチマーク「AnTuTu Benchmark V10.0.6」、CPUベンチマーク「Geekbench 6.3.0」、AIベンチマーク「Geekbench AI 1.1.0」、3Dベンチマーク「3DMark Steel Nomad Light」を実施した。

 ベンチマークの実施回数は3回。1回計測するたびに再起動し、その後3分間のクーリングタイムを置いている。今回掲載したスコアは、3回の中でもっともよかったスコアだ。

「iPhone 16 Pro Max」で冷却ファンなしで「3DMark Steel Nomad Light」を実行した際の背面温度は最大40.5℃、冷却ファンを付けて実行した際の表面温度は最大38.8℃。これがどのぐらいベンチマークスコアに反映されるか要注目だ

 気になる結果だが、冷却ファンを装着した際、「iPhone 16 Pro Max」は101~103%(平均102%)、「iPhone 16 Plus」は99~102%(平均101%)のスコアを記録した。ベンチマークスコアが向上しているのは間違いないが、「iPhone 16 Pro Max」で2%、「iPhone 16 Plus」で1%のスコア向上。ちょっと微妙な結果ではある。

AnTuTu Benchmark V10.0.6(総合)
AnTuTu Benchmark V10.0.6(CPU、GPU、MEM、UX)
Geekbench 6.3.0
Geekbench AI 1.1.0
3DMark Steel Nomad Light(Overall score)
3DMark Steel Nomad Light(Average frame rate)

 というわけでもう少し高負荷なベンチマークである「3DMark」の「Steel Nomad Light Stress Test」を実施した。これは20分間連続して「Steel Nomad Light」を実行するので、より発熱の影響と、冷却ファンの効果が見られるはずだ。しかし結果は、「iPhone 16 Pro Max」、「iPhone 16 Plus」ともに101~104%(平均102%)となった。

 とはいえ、最低スコアが104%向上しているので、負荷の高いベンチマークを、長時間実行した時ほど、冷却ファンの効果をより得られるというのは間違いないわけだ。

3DMark Steel Nomad Light Stress Test
左が冷却ファンなし、右が冷却ファンありの「iPhone 16 Pro Max」の結果
左が冷却ファンなし、右が冷却ファンありの「iPhone 16 Plus」の結果

過大な期待さえしなければ、一定の効果を得られる。楽しい周辺機器だ

 冷却ファンの効果があることは間違いない。ただ、個人的には想像していたほどのスコアアップではないというのが正直なところ。しかし、クーラーを装着していると、iPhoneでもっとも発熱している背面上部に触れることはまずないが、クーラーをはずした直後、端末の中心に触れてみると、背面のほかの部分よりも温度が低いのは実感できる。サーモグラフィーカメラの画像を見ても、端末全体の温度が冷えているのがよく分かる。猛暑の時期であれば、手の中はある程度不快感が減ると思われる。

 サードパーティ製冷却ファンは2,000~3,000円前後と非常に安価であり、手を出しやすい。また装着すると、なかなかクールな外見となる。過大な期待さえしなければ、一定の効果を得られる、楽しい周辺機器と言えよう。

暗闇で光る冷却ファンはなかなかに美しい。3,000円程度の価値はあると思う