西川和久の不定期コラム

Snapdragon 855とフリップカメラを採用した「ASUS ZenFone 6」

ZenFone 6

 8月20日ASUSは、Snapdragon 855を搭載し、ノッチレスでかつ前面/背面カメラを1つにまとめる機構を持つフリップカメラ採用の6.4型スマートフォン「ZenFone 6」を発表した。短期間であるが、一足早く使用する機会に恵まれたので、試用レポートをお届けしたい。

フリップカメラで前面も背面も同じ写り!

 ノッチが必要なのは、前面カメラをどこかに埋め込む必要があり、そのスペースにパネルを付けられないためだ。目立たなくする方法としては「できるだけ面積を狭く」、またはOPPOのように「通常カメラ部分は本体内にあり使用時にポップアップ」これによって完全にノッチレスにする……など、ある意味、方法は限られていた。

 そこに登場したのが、今回ご紹介するASUS「ZenFone 6」に搭載したフリップカメラだ。通常は一般的な背面カメラと同じ位置に標準と広角カメラがあり、前面切替時に自動的に180度フリップして背面カメラをそのまま前面カメラとして使用する。

 この方法のメリットは、上にポップアップする仕掛けと異なり、前面カメラと背面カメラに同じセンサーが使用でき、性能も同じにできること。自撮りが多いユーザーは写りに差が出ないため、とくに効果的だろう。

 加えてセンサーやレンズなどが減るためコストダウン可能(ただし構造的にコストアップするため最終的な加減はどうなのか不明)、さらに180度だけではなく途中の角度を扱えることで、撮影時に幅ができる、オートパノラマ可能、といった特徴があげられる。

 欠点は、なんといっても機械的に動くため(工夫しているだろうが)故障しやすいことだろう。ポップアップ式より複雑な構造なので、さらに故障率は高そうだ。結果どう出るかは、実際長期間使用しないと分からないところもある。

 カメラ以外としてはSnapdragon 855/6GB/128GB(8GB/256GBもあり)、6.4型、Android 9なスマートフォンとなる。おもな仕様は以下のとおり。

ASUS「ZenFone 6」の仕様
SoCSnapdragon 855(1コア2.8GHz+3コア2.42GHz+4コア1.7GHz、Adreno 640 GPU内蔵)
メモリ6GB
ストレージ128GB
OSAndroid 9 with ZenUI 6
ディスプレイ6.4型IPS式フルHD+(2,340×1,080ドット)、画面占有率約92%、Gorilla Glass 6、DCI-P3比100%、NTSC比96%、HDR10対応
ネットワークIEEE 802.11ac対応、Bluetooth 5、NFC(Type A/B)
SIMNano SIM×2カードスロット(DSDV+デュアルVoLTE)
対応バンドFDD-LTE: 1/2/3/4/5/7/8/18/19/26/28
TD-LTE: 38/39/41/46
W-CDMA: 1/2/3/4/5/6/8/19
GSM/EDGE: 850/900/1,800/1,900MHz
※キャリアアグリゲーション: 5CA(DL)/2CA(UP)
インターフェイスUSB Type-C、microSDカードスロット、3.5mmイヤフォンジャック
センサー加速度/電子コンパス/光/近接/指紋/ジャイロ
位置情報GPS/A-GPS/GLONASS/Beidou/QZSS
カメラ4,800万画素(f/1.79)+1,300万画素(広角)
サイズ/重量75.4×159.1×8.4-9.1mm(幅×奥行き×高さ)/約190g
バッテリ5,000mAh
カラーバリエーションミッドナイトブラック、トワイライトシルバー

 SoCはオクタコアのSnapdragon 855。1コア2.8GHz+3コア2.42GHz+4コア1.7GHzのCPUを内蔵し、GPUとしてAdreno 640を備える。8系なのでハイエンドなSKUだ。メモリ6GB、ストレージ128GB(UFS 2.1)。モデル違いで8GB/256GBも用意されてる。OSはAndroid 9 with ZenUI 6。

 ディスプレイは、6.4型IPS式フルHD+(2,340×1,080ドット)。先にあげたフリップカメラによりノッチレスで画面占有率約92%。Gorilla Glass 6を採用し、DCI-P3比100%/NTSC比96%と色域も広い。HDR10対応だ。

 ネットワークはIEEE 802.11ac対応、Bluetooth 5。NFCはType A/Bのみ。SIMはNano SIM 2つとmicroSDカードが同時使用可能。DSDV+デュアルVoLTEで対応バンドは表のとおり。

 インターフェイスはUSB Type-C、microSDカードスロット、3.5mmイヤフォンジャック。このクラスの割に3.5mmイヤフォンジャックがあるのは個人的にはポイントが高い。センサーは加速度/電子コンパス/光/近接/指紋/ジャイロ。位置情報はGPS/A-GPS/GLONASS/Beidou/QZSSを内蔵する。

 カメラは先に説明したとおり、前面/背面の区別はなく、4,800万画素(f/1.79)+1,300万画素(広角)。標準と広角の画素数がアンバランスであるが、詳細はカメラの説明をご覧頂きたい。

 カラーバリエーションはミッドナイトブラック、トワイライトシルバーの二色。サイズは75.4×159.1×8.4-9.1mm(幅×奥行き×高さ)、重量約190g。バッテリは5,000mAhを内蔵している。税別価格は下位モデルで69,500円、上位モデルで82,500円だ。

画面占有率約92%でノッチもハードウェアナビゲーションボタンもない
背面。トワイライトシルバー。中央上に本機独自の「フリップカメラ」。その下に指紋センサー
左側面にNano SIM/microSDカードスロット。下側面に3.5mmイヤフォンジャック、Type-C、スピーカー
右側面、上から順にスマートキー、音量±ボタン、電源ボタン
奥からSIM1、SIM2、microSDカード
付属品。ソフトケース、ACアダプタ(サイズ約50×40×25mm、重量57g、出力5V/2A,9V/2A)、USBケーブル、イヤフォンとイヤーパッド
重量は実測で202gと、仕様より少し重い

 筐体はメタリックな感じで質感も高い。パネルが6.4型、重量は実測で200g超えと、少し大きく重いものの、バランスがいいのか、持った時にズッシリせず、また持ち難い感じもない。

 前面は画面占有率約92%でノッチもハードウェアナビゲーションボタンもない。背面は中央上に本機独自の「フリップカメラ」、その下に指紋センサー。左側面にNano SIM/microSDカードスロット。下側面に3.5mmイヤフォンジャック、Type-C、スピーカー。右側面は上から順にスマートキー、音量±ボタン、電源ボタン。SIM/microSDカードスロットは奥からSIM1、SIM2、microSDカードと3つ全部同時に使用できる。

 一般的なスマートフォンと比較して1つ増えている「スマートキー」は、Googleアシスタントをサクッと呼び出せるボタンだ(シャッターとしても使用可能)。

 付属品は、ソフトケース、ACアダプタ(サイズ約50×40×25mm、重量57g、出力5V/2A,9V/2A)、USBケーブル、イヤフォンとイヤーパッド。Quick charge 4.0/18Wの急速充電に対応している。

 ディスプレイは6.4型IPS式でフルHD+(2,340×1,080ドット)。明るさ、コントラスト、視野角は良好。DCI-P3比100%/NTSC比96%のため壁紙になっているエメラルドグリーンの海など発色も結構良い。狭額縁だが、持って画面を見る時に、一部手で覆われないよう、ギリギリの幅だ。

 振動やノイズはもちろん皆無。発熱はベンチマークテストやカメラ連続使用などで少し熱くなるものの、十分許容範囲に収まっている。

 サウンドは筐体全部を使って鳴らす感じで非常にパワフル。イヤフォン出力も同じ傾向で筆者の好きなジャズやロックがガンガン鳴る。ただ迫力がある反面、繊細さには欠けるためクラシック系などは苦手かもしれない。

【お詫びと訂正】初出時に、モノラルスピーカーとしておりましたが、ステレオ対応でした。お詫びして訂正させていただきます。

 Bluetoothは、SBC/AAC/aptX(HD)/LDAC/aptX Adaptive/aptX TWS+に対応(開発者向けオプションで確認)。加えてHi-Res/DTS X Ultraにも対応する。

本機独自のフリップカメラで前面/背面同スペック

 百聞は一見に如かず、まずカメラアプリから背面/前面切替を行なっているこの動画をご覧いただきたい。一見背面カメラに見える部分が、フリップして180度自動的に回転し前面カメラになる。また動画は撮っていないがカメラアプリから途中の角度で止めることもでき、スマートフォンの位置は固定のままアングルを変更することも可能だ。Snapdragon 855などハイエンドな部分に加え、これが本機一番の売りとなる。もちろん出たまま落下した時は自動的に収納する機能も持つ。

電動駆動によるフリップカメラ。動画は単に背面/前面切替だが、撮影時の角度調整やモーショントラッキングの自動追尾、オートパノラマなどにも対応

 カメラは4,800万画素(f/1.79)+1,300万画素(広角f/2.4)。メインカメラのセンサーはソニーIMX586を使用(像面位相差AF/デジタルズーム最大8倍)。物理的な焦点距離は標準5mm、広角2mmとなっている(Exifより)。旧モデルで広角は盛大に歪んでいたものの、本機では自動補正があり目立たない。フラッシュはデュアルLEDを搭載する。

 カメラのモードは、「タイムラプス」、「スローモーション」、「モーショントラッキング」、「動画」、「写真」、「ポートレート」、「パノラマ」、「夜景」、「PRO」。中でもモーショントラッキングとパノラマは、フリップカメラを使い、被写体を自動追尾したり、カメラ固定のままパノラマが撮影できたりと、ほかの機種では見られない機能がある。

 下中央にある山形のアイコンは左で標準、右で広角。シャッターボタン右にあるカメラのアイコンで前面/背面の切り替え及び、ここを上下にスライドさせることによって、任意の位置でカメラのアングルを固定できる。

 写真モードは上に設定/HDR/縦横比/フラッシュ/カラーフィルタの切り替え。ただし48MP(4,800万画素)モードではフラッシュ以外機能しなくなる。4,800万画素時の出力画素数は6,000×8,000ドット、1,200万画素時は3,000×4,000ドット。

 ポートレートモードは、背景ぼかしに加え、「肌のトーン」、「ファンデ」、「美白」、「目の大きさ」、「小顔」の調整も可能だ。

 設定は、カメラの解像度(48MP/12MP/9MP/7MP/RAW+JPEG)/タイマー/タイムスタンプ/ウォーターマーク/タッチシャッター/AF自動調整/最適化/測光モード/電子水準器/ヒストグラム/フィリップ音/グリッド/場所サービス/ちらつき防止/スマートキーをシャッターとして使用/音量ボタン設定/インスタントカメラの設定ができる。広角の解像度は13MP/10MP/8MP(13MPで4,224×3,136ドット)。

 標準と広角の画素数は、素のままだと48MP対13MPとアンバランスになるものの、標準で4,800万画素だとHDRやカラーフィルタが機能しなくなり、また出力画素数6,000×8,000ドットは大き過ぎるため、通常は12MPで使用し、機能と出力画素数、そして広角とバランスさせるのがデフォルトとなっている。

 PROモードは、AF/シャッタースピード(1/3200-32秒)/ISO(25-3200)/EV(±2)/WB(2750-7500K)などに対応。

 動画に関しては、標準4K(60fps)/4K/フルHD(60fps)/フルHD/HDでEIS対応、広角4K/フルHD(60fps)/フルHD/HDで撮影できる。

写真モード。山形のアイコン右で広角
ポートレートモード。美肌だけでなくいろいろなモードがある
PROモード
設定
設定/カメラ解像度(標準)
48MPにするとHDRなどが使えなくなる
設定/カメラ解像度(広角)
標準
広角

 作例を28枚掲載したので参考にして頂きたい。基本写真モードでAWB/AEは補正なし。はじめの方は48MPモード、ピンク色の車から12MPモード(HDR+)。恐竜はポートレートモード、国旗の写真はHDR++、一番最後は夜景モード。

 使用感は起動/AFなどは速くストレスを感じないものの、シャッターを押した直後、ほんのわずかだが固まり何もできなくなる瞬間がある(連続的にシャッターボタンを押すような撮影をしない限り影響ないが)。AWBやAEは結構的確だ。写りは派手過ぎず地味過ぎず、見たままの自然な感じだろうか。Qualcommっぽい写りだ。

作例(大きな画像で開きます。元画像は横向きです)

 気になるとすればやはりこのカメラ駆動部分だろう。出たまま机に(前面を上)置くと“収納できません”的なメッセージが出るのはいいとして、例えば海(砂浜)で使ったときなど、細かい砂が噛んで動かなくなったり、負荷がかかって故障する原因にならないだろうか。また突然の雨などで濡れてしまった場合も不安要素だ。ここのところ週1回は海に遊びに行っているので(つい先日は物凄いゲリラ雷雨に襲われた)、この点はどうなのだろうと思ってしまう。

初期セットアップ

 初期設定はアカウントや環境のコピーなどすべてスキップしてWi-Fiのみで行なった。計15画面と、同社独自アカウント画面などがある関係で少し多めだ。

ようこそ
国/地域の選択
インターネット接続
Wi-Fi
プライバシーの権利を理解している
アプリとデータのコピー(コピーしない)
Googleログイン(スキップ)
日付と時刻
Googelサービス
接近センサー
携帯電話を保護する
スマートキー
ASUS製品を登録する
ASUS Data Transfer
セットアップ完了

 指紋認証と顔認証は、パターン、PIN、パスワードのいずれかを設定した後に行なえる。どちらも簡単に設定でき難しい部分はない。認証は瞬時だ。また顔認証はメガネのあり/なしで登録し、同あり/なしで各々問題なく認識した。

 ただフリップカメラの機構上、顔認識で使用頻度が増えると一気に故障率が上がりそうな気がするので(1日100回近く? は動きそうだ)、なるべく指紋認証を使った方が無難だろう。

あなたの指紋を登録できます
画面ロックを選択(指紋+PIN)
指紋認証にはPINが必要です
通知
指紋センサーに指を置きます
すぐに繰り返す
さらにキャプチャーする
登録完了
端末のロック解除
あなたの顔を登録できます
画面ロックを選択(顔+PIN)
あなたの顔を登録できます
登録中

 SIMの設定はDSDVの一般的なものだ。Nano SIMを挿入、APNを設定すれば再起動なしでインターネットが利用できる。

モバイルネットワーク/SIM1
APN
ネットワークとインターネット(ステータスバーでVoLTEがON)

素直な操作性のAndroid 9 with ZenUI 6

 初期起動時ホーム画面は2画面。1画面目に「Googleフォルダ」、「ギャラリー」。2画面目に「Tools」フォルダ、「まんがお得」、「Facebook」。ドックに「電話」、「メッセージ」、「Google Play」、「Chrome」、「カメラ」を配置している。Androidは9、ストレージは17.69GB使用中(一部画面キャプチャを含む)。IMEはATOKを搭載している。

 通知パネルは上から下へスワイプ、アプリ一覧は下から上へスワイプ、壁紙/ウィジェットは壁紙長押し……など、Androidの標準的な操作となる。

Home(1/2)
Home(2/2)
Googleフォルダ
Toolsフォルダ
通知パネル
システム
ストレージとメモリ
端末情報

 アプリは、「カメラ」、「カレンダー」、「ギャラリー」、「ドライブ」、「ファイルマネージャー」、「フォト」、「マップ」、「まんがお得」、「メッセージ」、「音声レコーダ」、「時計」、「設定」、「天候」、「電卓」、「電話」、「連絡先」、「ASUS Data Transfer」、「ATOK」、「Chrome」、「Duo」、「Facebook」、「Gmail」、「Google」、「Google Pay」、「i-フィルター」、「Instagram」、「Messenger」、「Playストア」、「Play Music」、「Playムービー&TV」、「YouTube」。

 Google関連にプラスアルファ程度とシンプルな構成だ。ただホーム2画面目も含め「まんがお得」はちょっと違う気がするのは筆者だけだろうか(笑)。

アプリ一覧

 ウィジェットは、「カレンダー」、「ドライブ」、「ファイルマネージャー」、「マップ」、「時計」、「設定」、「天候」、「電卓」、「連絡先」、「ASUS Launcher」、「Chrome」、「Gmail」、「Google」、「Google Play Music」。

ホーム画面の管理(壁紙/ウィジェット/ホームを編集/ユーザー設定)
ウィジェット(1/4)
ウィジェット(2/4)
ウィジェット(3/4)
ウィジェット(4/4)
壁紙

本連載最速パフォーマンス更新! に加え約16時間駆動

 ベンチマークテストは簡易式だが「Google Octane 2.0」と「AnTuTu Benchmark」を使用した。また本機はAIブースト機能があるので、AnTuTu Benchmarkはオン/オフの2種類計測している。

 Google Octane 2.0は24,113、AnTuTu Benchmarkは、AIブーストOFFで361,721(6位)、ONで369,419(3位)。すべてのスコア、筆者この連載記録を更新した。Google Octane 2.0の2万越えはCore iプロセッサ並みの値となる。AIブーストオン/オフでの変化もはっきり表れ、ランキングが6位から3位へ上昇している。同社の説明によると10%ほど向上するらしい。

Google Octane 2.0は24,113
AIブースト切替
AnTuTu Benchmark(1/2)、AIブーストオフで361,721
AnTuTu Benchmark(2/2)、AIブーストオフで6位
AnTuTu Benchmark(1/2)、AIブーストオンで369,419
AnTuTu Benchmark(2/2)、AIブーストオンで3位
輝度/音量50%、Wi-Fi経由でフルHD動画を全画面連続再生。14時間経過後で残11%

 バッテリのベンチマークテストは、輝度/音量50%、Wi-Fi経由でフルHD動画の全画面連続再生を行なった。14時間経過後で残11%。ほぼ16時間で電源が落ちた。バッテリが5,000mAhと言うこともあり、なかなかのスタミナだ。ただし輝度50%は室内であれば十分だが、音量50%はそれほどうるさくない音量だった。


 以上のようにASUS「ZenFone 6」は、Snapdragon 855/6GB/128GBで6.4型のパネルを搭載したSIMロックフリースマートフォンだ。ここまではある意味ハイエンドで一般的だが、加えてフリップカメラを搭載し、前面/背面で同じ機能/同じ写り、加えてカメラが自動的に動くことを利用したモーショントラッキングやパノラマは、他機種は物理的に不可能な機能までも持っている。

 このフリップカメラの故障率が若干気になるものの、ほかは仕様的に気になる部分もなく、パワーやバッテリ駆動時間などに加え、このフリップカメラにグッときたユーザーにお勧めしたい1台と言えよう。