西川和久の不定期コラム

Ryzen PRO搭載の14型モバイルノート「ThinkPad T495s」

製品写真

 レノボ・ジャパン株式会社は6月4日、Ryzen PROを搭載する13.3型と14型のThinkPadを発表した。前回のThinkPad X395に引き続き、今回は14型ThinkPad T495sが送られて来たので、試用レポートをお届けしたい。

ThinkPad T490sのAMD Ryzen 5 PRO 3500U搭載版

 ご存知のように、ThinkPadにはいろいろなシリーズが用意されており、なかでも人気があるのは、X/T/X1 Carbonではないだろうか。今回ご紹介するThinkPad T495sは、この人気のあるTシリーズ、T490sのAMDプロセッサ搭載版となる。

 執筆時点での販売代理店モデルは、20QJ0000JP(Ryzen 5 PRO 3500U/8GB/256GB/10 Pro)の1モデル。直販モデルは、ThinkPad T495s: パフォーマンス(Ryzen 5 PRO 3500U/8GB/256GB/10 Home)、ThinkPad T495s: プレミアム(Ryzen 7 PRO 3700U/16GB/512GB/10 Home)、ThinkPad T495s: パフォーマンス(Pro OS選択可能)(Ryzen 5 PRO 3500U/8GB/256GB/10 Pro)の3モデルが用意されている。

 販売代理店モデルとパフォーマンス(Pro OS選択可能)モデルは10 Proで同一構成。ほかは10 HomeでRyzen 7 PRO 3700U搭載機は直販モデルのみ扱っている。

 手元に届いたのは10 Pro搭載のRyzen 5 PRO 3500U/8GB/256GB。おもな仕様は以下のとおり。

レノボ「ThinkPad T495s」の仕様
プロセッサRyzen 5 PRO 3500U(4コア8スレッド/2.1GHz~3.7GHz/キャッシュ 4MB/TDP 15W)
メモリ8GB PC4-19200 DDR4(4GB×2)
ストレージSSD 256GB
OSWindows 10 Pro(64bit)
ディスプレイ14型1,920×1,080ドット、非光沢、タッチ非対応
グラフィックスRadeon Vega 8 Graphics、HDMI/Type-C
ネットワークIEEE 802.11ac対応、Bluetooth 5.0、Ethernet拡張コネクター2
インターフェイスUSB 3.1 Type-C×2、USB 3.1×2(1つPowered)、720p対応Webカメラ、microSDカードスロット、指紋センサー、音声入出力
バッテリ/駆動時間3セルリチウムイオン/約13.9時間
サイズ/重量約329×226.15×16.7mm(幅×奥行き×高さ)/約1.33kg
税別価格188,000円(販売代理店モデル)

 プロセッサはRyzen 5 PRO 3500U。4コア8スレッドで、クロックは2.1GHzから最大3.7GHz。キャッシュは4MB、TDPは15W。前回試用したThinkPad X395と同じSKUとなる。メモリはPC4-19200 DDR4で8GB(PCMark 10 System Informationで4GB×2と確認)。ストレージはSSD 256GB。OSは64bit版のWindows 10 Proを搭載する。

 ディスプレイは14型IPS式非光沢のフルHD(1,920×1,080ドット)。外部出力用にHDMIとType-Cを備えている。それぞれ最大出力は4,096×2,160ドット。

 ネットワークは有線LANとしてEthernet拡張コネクター2。これは本体内にGbEコントローラを内蔵しているので、単にRJ45とコネクタ形状が違うだけだ。標準で変換ケーブルも付属する。隣接するType-Cと合わせて別売のDockに接続するための構造となる。無線LANはIEEE 802.11ac対応。Bluetooth 5.0にも対応している。

 そのほかのインターフェイスは、USB 3.1 Type-C×2、USB 3.1×2(1つはPowered)、720p対応Webカメラ、microSDカードスロット、指紋センサー、音声入出力。Type-Cは電源入力も兼ねている。ネットワークおよびインターフェイス関連は、前回のThinkPad X395と同じ構成だ。

 バッテリは3セルリチウムイオンを内蔵し、最大約13.9時間駆動可能。サイズ約329×226.15×16.7mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.33kg。販売代理店モデルの場合、税別価格188,000円となる。

 直販モデルは同じ構成で213,840円(税込・送料無料)となるものの、OSがWindows 10 Homeで良い場合は、eクーポン適用後115,258円(税込・送料無料)と結構お買い得だ。同一構成のX395は105,754円(eクーポン適用後/税込・送料無料)。1万円ほどしか変わらない。

 最上位のプレミアムモデルは、Ryzen 7 PRO 3700U/メモリ16GB/SSD 512GBでeクーポン適用後152,842円。下位モデルと約3.7万円ほどの差となる。

 カスタマイズではメモリ16GB、ストレージSSD最大1TB、タッチ対応パネル、英語キーボードなどの選択が可能だ。ただしOSは10 Homeのまま英語版のみ(10 Home搭載モデル)、また仕様上はLTEに対応しているとあるが、執筆時点では販売代理店モデル、直販モデルともに項目は見当たらなかった。

前面。旧タイプと比較すると狭額縁。パネル中央上にWebカメラ。ThinkShutter装備
斜め後ろから。ロゴはThinkPadのみ。iの点の部分が赤く点灯/点滅。後ろ側面にmicroSDカードスロット
左。Type-C(電源入力共通)、Type-C、Ethernet拡張コネクター2、USB 3.1、HDMI、音声入出力
右。ロックポート、USB 3.1(Powered)
キーボード。テンキー無しのアイソレーションタイプでTrackPointとキーボードバックライトあり。タッチパッド脇の右上に指紋センサー
キーピッチ。実測で約19mm。14型とフットプリントが広くほぼ破綻はない
裏。四隅にゴム足。手前左右にスピーカー。バッテリは内蔵式で着脱できない
横から。それなりにスリムだが、各コネクタと比較して分かるように限界的な感じでもない
付属のACアダプタ(45W)とEthernet変換アダプタ。付属のACアダプタは45Wタイプ。サイズ約93×40×30mm(同)、重量194g、出力20V/2.25A 15V/3A 9V/2A 5V/2A
重量は実測で1,314g
T440sとの比較。フットプリントはほぼ同じだが、T440sは弁当箱タイプなのが分かる

 筐体はお馴染みのマットブラックで、所有するT440sと比較すると薄く、そして実測で1,314gと約200gほど軽くなっている。同時に持ち上げると重量差はあまり分からないものの、薄く感じる。

 比較写真はないが、フチは約3分の2ほどになっている。とはいえ、旧モデルと比較すれば狭額縁だが、昨今の他社の狭額縁を謳うノートPCほどは狭くない。

 天板はLenovoのロゴはなくThinkPadのロゴのみ。iの点の部分は赤く点灯/点滅する。前面は、パネル中央上にWebカメラ。ThinkShutterを装備している。左側面は、Type-C(電源入力共通)、Type-C、Ethernet拡張コネクター2、USB 3.1、HDMI、音声入出力。右側面は、ロックポート、USB 3.1(Powered)を配置。裏は四隅にゴム足。手前左右にスピーカー。バッテリは内蔵式で着脱できない。少しわかりにくいが、後ろ側面にmicroSDカードスロットがある。

 付属のACアダプタは45Wタイプだ。サイズ約93×40×30mm(同)、重量194g、出力20V/2.25A、15V/3A、9V/2A、5V/2A。

 14型のディスプレイは、発色、コントラスト、視野角はOKだが、明るさはX395同様、最大輝度が他社のノートPCと比較して若干暗めだ。物撮りも輝度100%で背景とのバランスが丁度良かった(他社製は明る過ぎることが多く、50~75%に下げて撮っている)。おもに室内であれば全く問題ないものの、屋外の明るいところでは輝度不足になるかも知れない。

 キーボードはテンキーなしのアイソレーションタイプ。TrackPoint装備のいわゆるThinkPadキーボードだ。主要キーのキーピッチは約19mm。14型なので余裕があり歪な並びやピッチもない。ストロークはそれなりに確保、打鍵感も良い。明るさ2段階のキーボードバックライトも搭載している。

 タッチパッドはパームレストも含めフットプリントに余裕があるため、広めで快適に操作可能だ。脇右上に指紋センサー。

 振動やノイズは、試用した範囲では許容範囲内に収まっている。発熱はX395同様、ベンチマークテストなど負荷をかけると、おもに右側面が強烈に熱くなるが、筐体が大きい分、パームレストまでは熱が降りてこない。この点は大きい差のように思える。

 サウンドは裏にスピーカーがあるため、机などに反射するタイプだ。幅があるのでステレオ感はX395より良い。ただ最大出力と音質は同じ傾向。カマボコレンジで雑な音、パワーも足りない。基本ビジネス向けなので、同社としてはあまり気にしていないのだろう。

NVMe SSDでさらに性能アップ

 OSは64bit版のWindows 10 Pro。初期起動時のスタート画面(タブレットモード)は1画面。Lenovoグループがプリインストールとなる。デスクトップは壁紙の変更のみとシンプルだ。

 Ryzen 5 PRO 3500U/8GB/SSD 256GBなので、一般的な用途であればストレスもなく快適に使用できる。またSSDがNVMeタイプなので更に足回りは速くなっている。

 ストレージはSSD 256GBの「SAMSUNG MZVLB256HBHQ」。Cドライブのみの1パーティションで約237.23GBが割り当てられ空き215GB。データシートによるとNVMeタイプで「Read speed: up to 3000 MB/s」とある。確かにベンチマークテストでは相当する値が出ている。前回のThinkPad X395と比較して、主要ハードウェア的に異なるのはこの部分だ。

 GbEはRealtek製、Wi-Fi(Wireless-AC 9260)とBlietoothはIntel製だ。これからも分かるように、Ethernet拡張コネクター2は単にコネクタ形状が違うEthernetポートとなる。この点は個人的に不満なのだが、X395でいろいろ書いたので今回は省略する。

スタート画面(タブレットモード)。Lenovoグループがプリインストール
起動時のデスクトップは壁紙の変更のみ
デバイスマネージャ/主要なデバイス。ストレージはSSD 256GBの「SAMSUNG MZVLB256HBHQ」。GbEはRealtek製、Wi-Fi(Wireless-AC 9260)とBlietoothはIntel製
ストレージのパーティション。Cドライブのみの1パーティションで約237.23GBが割り当てられている

 おもなプリインストールのソフトウェアは、同社お馴染み「Lenovo Vantage」のみ。ご覧のようにデザインが一新されている。ほかのソフトウェアは念のためコントロールパネルのプログラムと機能を確認したが「OneDrive」だけとあっさりした構成だった。

Lenovo Vantage / Home
Lenovo Vantage / デバイス
Lenovo Vantage / デバイス / 電源
Lenovo Vantage / セキュリティ

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R15、CrystalDiskMark、BBench。結果は以下のとおり。

ベンチマークテスト
PCMark 10 v2.0.2115
PCMark 10 Score3,617
Essentials6,900
App Start-up Score6,901
Video Conferencing Score7,314
Web Browsing Score6,511
Productivity5,643
Spreadsheets Score7,582
Writing Score4,201
Digital Content Creation3,300
Photo Editing Score4,953
Rendering and Visualization Score2,708
Video Editting Score2,681
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelarated 3.03,346
Creative Accelarated 3.03,246
Work Accelarated 2.04,381
Storage5,052
3DMark v2.9.6631
Time Spy789
Fire Strike Ultra528
Fire Strike Extreme1,041
Fire Strike2,256
Sky Diver7,908
Cloud Gate11,004
Ice Storm Extreme54,616
Ice Storm64,647
CINEBENCH R15
OpenGL42.11 fps
CPU639 cb
CPU(Single Core)140 cb
CrystalDiskMark 6.0.0
Q32T1 シーケンシャルリード3536.732 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト2346.281 MB/s
4K Q8T8 ランダムリード584.152 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト1516.223 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード342.296 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト250.147 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード43.331 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト138.431 MB/s
BBench(キーボードバックライト/ディスプレイの明るさ0%、電源モード:バッテリー節約機能)
バッテリ残量5%まで13時間58分16秒

 前回の「X395」のスコアは掲載していないものの、プロセッサ、メモリ、パネル解像度が同じで、ストレージのみこちらの方が高速。比較するとほぼ同レベルで、明らかに異なるのはPCMark 8のStorageだった。多くはRyzen 5 PRO 3500Uの平均的なスコアと見て良さそうだ。

 BBenchは、キーボードバックライト/ディスプレイの明るさ0%、電源モード:バッテリ節約機能で測定したところ、残5%で13時間58分16秒。仕様上、約13.9時間なのでそのとおりの結果だった。

 ThinkPad X395と比較して2時間ほど長くなっている。ただし明るさ0%はほぼ見えないため、実際はもう少し短くなると思われる。

 総じて、競合プロセッサのCore i5-8265Uを搭載したThikPad T490sと比較して、iGPUは上、プロセッサはほぼ同レベル、バッテリ駆動少し短め、価格若干安め、といったところだろうか。何を重視するかによってどちらを選ぶかとなりそうだ。

 またThinkPad X395と比べると、筆者は今回に限って(もともと12.5/13.3型好きというのもあり)T495sに軍配を上げる。

 最後に余談であるが、X390/395、T490s/495s、この次の型番はどうなるのだろう。3桁目は変えられないため、2桁目で1桁増えたX3100/T4100sとなるのだろうか。それとも16進数でX3A0/T4A0sとなるのか? 気になるところだ。


 以上のようにLenovo「ThinkPad T495s」は、AMD Ryzen 5 PRO 3500U/8GB/256GBを搭載した14型フルHDノートPCだ。筐体に余裕がある分、発熱はX395ほどでもなく気にせず運用可能。もちろん昔から変わらないThinkPadクオリティは健在だ。

 高めの価格はeクーポンが使える直販モデルなら内容相応。仕様上はEthernet拡張コネクター2以外、とくに気になる部分もない。ThinkPad(Tシリーズ)ファン、AMDファン、14型ノートが欲しいユーザー、すべてにお勧めできる1台と言えよう。