西川和久の不定期コラム
Ryzen搭載で5万円台のデル製15.6型ノート「Inspiron 15 3000」
2019年5月13日 11:00
デルは15.6型ノートPC「Inspiron 15 3000」を2月に発売した。Intelプロセッサ搭載モデルとAMDプロセッサ搭載モデルがあり、モバイル向けのRyzen 3 2300Uを実装した後者「Inspiron 15 3000(3585)」は税別51,980円の手ごろな価格で販売されている。今回はこちらの製品の試用レポートをお届けしたい。
Ryzen 3 2300Uを搭載した15.6型ノートPC
今回発表のあったInspiron 15 3000は、冒頭にも書いたとおり、IntelモデルとAMDモデルが存在する。Intelモデルは第8世代Core(型番が3580)、第7世代Core(同3581)、Celeron N4000(同3582)。そしてAMDモデルがRyzen搭載で同3585となる。そして、Ryzen搭載モデルにはRyzen 3 2200U、Ryzen 3 2300U、Ryzen 5 2500Uの3タイプあるようだ。
注意したいのが、執筆時点ではRyzen 3 2200Uと2300U搭載機に関しては、メモリ、ストレージも同じで、価格も同じものがある点だ(Inspiron 15 3000 スタンダード SSDの場合)。2コア4スレッドのRadeon Vega 3と、4コア4スレッドのRadeon Vega 6では性能に結構違いがあるため、購入のさいは気を付けたい。
今回手元に届いたのはRyzen 3 2300U搭載モデルだ。おもな仕様は以下のとおり。
【表1】デル「Inspiron 15 3000(3585) スタンダード SSDモデルのスペック | |
---|---|
CPU | Ryzen 3 2300U(4コア4スレッド/2~3.4GHz/キャッシュ 4MB/TDP 15W) |
メモリ | DDR4-2666 4GB |
ストレージ | 128GB M.2 PCIe NVMe SSD |
光学ドライブ | DVD±RWドライブ |
OS | Windows 10 Home |
ディスプレイ | 15.6型HD(1,366×768ドット)、非光沢 |
グラフィックス | Radeon Vega 6 Graphics |
ネットワーク | Ethernet、IEEE 802.11ac無線LAN、Bluetooth 4.1 |
インターフェイス | USB 3.0×2、USB 2.0、HDMI、HD対応Webカメラ、音声入出力、SDカードリーダ |
本体色 | スパークリング ホワイト、ブラック、シルバー、カッパー |
サイズ | 380×258×22.7mm(幅×奥行き×高さ) |
重量 | 2.18kg |
価格 | 税別51,980円(クーポン適応後49,381円 ※執筆時点) |
プロセッサはモバイル向けのRyzen 3 2300U。4コア4スレッドで、クロックは2GHzから最大3.4GHz。キャッシュは4MBでTDPは15W。グラフィックスとしてGPUコア数6つのRadeon Vega 6 Graphicsを内包している。この点がCore iとは大きく違うところだ。
メモリはDDR4-2666の4GB、ストレージは128GB M.2 PCIe NVMe SSD。またDVD±RWドライブも搭載している。OSは64bit版のWindows 10 Home。
ディスプレイは15.6型HD(1,366×768ドット)で非光沢。価格を抑えるためにHDパネルを使っているようだが、さすがにHD解像度では不便な場合が多いだろう。映像出力用にはHDMIポートを装備している。
ネットワーク機能は、Ethernet、IEEE 802.11ac無線LAN、Bluetooth 4.1。有線LANがGigabit Ethernetでないのは残念なところ。そのほかのインターフェイスは、USB 3.0×2、USB 2.0×1、HD対応Webカメラ、音声入出力、SDカードリーダ。
カラーバリエーションはスパークリング ホワイト、ブラック、シルバー、カッパーの4色。本体サイズは380×258×22.7mm(幅×奥行き×高さ)、重量2.18kg。価格は税別51,980円(配送料込)。ただし執筆時点では5%オフクーポンが配布されており、適応すれば税別49,381円(税込53,331円)になる。メモリ容量と画面解像度的には不満があるとは言え、なかなかお買い得な価格だ。ハードウェア構成は変更できず、ソフトウェアやサービス系のみカスタマイズできるようになっている。
なお、Ryzen 3 2300U搭載モデルはメモリ4GBのみ。一方でRyzen 5 2500U(4コア8スレッド/2~3.6GHz/Radeon Vega 8)搭載を搭載する「 Inspiron 15 3000 プレミアム SSD」というモデルを選べば、メモリは8GBになる。こちらのストレージは256GB M.2 PCIe NVMe SSDで、税別69,980円、クーポン適応後58,083円(税込62,729円)だ。
使用した筐体は写真のとおり、スパークリング ホワイトのモデル。天板と側面、裏がホワイトと、なかなか綺麗だ。15.6型なのでそれなりにフットプリントがあり、重量2.18kgでズッシリ重い。バッテリ駆動時間もさほど長くないため、基本は室内移動可能なの据え置き型といった使い方を想定したほうがいいだろう。
本機は頑丈さも売りにしており、-40~65℃環境での耐久テスト、電源ボタンは押下4万回、キーボードのEnterキーは1,000万回、タッチパッドボタンは100万回……など、耐久性を確保しているため、低価格な製品ながら作りは結構ガッチリしている。
前面はパネル中央上にHD対応Webカメラ。左側面に電源入力、HDMI、Ethernet、USB 3.0×2、音声入出力。右側面にロックポート、光学ドライブ、USB 2.0、SDカードリーダを配置。裏は四隅にゴム足と手前左右にスピーカーがある。付属のACアダプタは、サイズ約90×38×25mm(同)、重量160g、出力19.5V/2.31A。
15.6型HD解像度のディスプレイは、非光沢で見やすいものの、発色、コントラスト、視野角はそれなりで、この部分のコストカットが目立つ。HDMIで外部ディスプレイを接続し、本機側のパネルはサブとして使いたいところか。
キーボードはテンキー付きのアイソレーションタイプで、防水設計だ。主要なキーのキーピッチは約19mm。フットプリントが大きいためキーボードのレイアウトはまともなものの、[¥]と[Backspace]キー間のピッチのせまさが気になるところ。打鍵感やストロークは一般的で問題はない。タッチパッドは1枚プレート式。パームレストともに十分広く使いやすい。
稼働中の振動やノイズは試用した範囲ではとくに問題なし。発熱はベンチマークテストなど負荷をかけるとおもにキーボード上側が少し熱を持つもののパームレストまでは降りてこないので安心だ。サウンドはスピーカーが裏にあるので反射するものにもよるが、出力50%程度で、一般的なノートPCの音量になる。最大だとかなりうるさい。音質はクラス相応だが、大音量で音楽や動画を楽しむことができる。
Ryzen 3 2300Uでも結構な性能
初回起動時のスタート画面(タブレットモード)は1画面。Dell/Dell+グループがプリインストールされている。デスクトップは壁紙のみが変更されている。後述するベンチマークテストからもわかるが、Core iプロセッサと比較してもそれなりの性能が出ているため、メモリ4GBでつらいアプリ以外は割とストレスなく操作できる。
ストレージは128GB M.2 PCIe NVMe SSDの「BC501 NVMe SK hynix 128GB」。Cドライブのみの1パーティションで約105.97GBが割り当てられ、空き容量は約78GB。容量が少な目なだけに、WINRETOOLS/Imgae/DELLSUPPORTパーティションで計約12GB割り当てられている。
光学ドライブは「PLDS DVD+-RW DU-8A5LH」。EthernetはRealtek、Wi-FiとBluetoothはQualcomm製だ。グラフィックスにはAMD Radeon(TM) Vega 6の文字が見える。
おもなプリインストールソフトウェアは、同社製ツールとして「Dell CinemaColor」、「Dell Customer Connect」、「Dell Digital Delivery」、「Dell Mobile Connect」、「Dell Power Manager」、「Dell Update」、「My Dell」、「SupportAssist」。
そのほか、「MaxxAudioPro、「マカフィーリブセーフ」、「Media Suite Essentials for Dell」、「Power Media Player for Dell」、「Power2Go for Dell」、「PowerDirector for Dell」、「SmartByte Diagnostics」、「SmartByte」など。おもにツール系とメディア系がインストールされている。
使用したベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R15、CrystalDiskMark、BBench。結果は以下のとおりで、参考までにCore i5-8265U(4コア8スレッド/1.6~3.9GHz/UHD Graphics 620)とDDR4-2400 8GBを搭載する「ThinkPad T490s」を比較対象に入れている(Whiskey Lakeになった14型の「ThinkPad T490s」参照)。
【表2】ベンチマーク結果 | ||
---|---|---|
Inspiron 15 3000(3585) | ThinkPad T490s | |
PCMark 10 v1.1.1761 | ||
PCMark 10 Score | 3,105 | 3,747 |
Essentials | 6,528 | 7,704 |
App Start-up Score | 7,679 | 10,290 |
Video Conferencing Score | 6,547 | 6,308 |
Web Browsing Score | 5,535 | 7,046 |
Productivity | 4,732 | 6,034 |
Spreadsheets Score | 6,355 | 6,909 |
Writing Score | 3,524 | 5,271 |
Digital Content Creation | 2,630 | 3,073 |
Photo Editing Score | 3,953 | 3,774 |
Rendering and Visualization Score | 2,025 | 1,982 |
Video Editting Score | 2,275 | 3,883 |
PCMark 8 v2.8.704 | ||
Home Accelarated 3.0 | 3,147 | 3,393 |
Creative Accelarated 3.0 | 2,864 | 3,569 |
Work Accelarated 2.0 | 4,410 | 4,678 |
Storage | 5,005 | 5,058 |
3DMark v2.8.6546 | ||
Time Spy | 482 | 453 |
Fire Strike Ultra | 221 | 287 |
Fire Strike Extreme | 589 | 526 |
Fire Strike | 1,316 | 1,142 |
Sky Diver | 5,059 | 4,778 |
Cloud Gate | 6,720 | 9,296 |
Ice Storm Extreme | 48,830 | 46,891 |
Ice Storm | 61,920 | 69,269 |
CINEBENCH R15 | ||
OpenGL | 27.89 fps | 53.23 fps |
CPU | 375 cb | 541 cb |
CPU(Single Core) | 109 cb | 152 cb |
CrystalDiskMark 6.0.0 | ||
Q32T1 シーケンシャルリード | 1607.651 MB/s | 3017.741 MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 364.024 MB/s | 502.114 MB/s |
4K Q8T8 ランダムリード | 283.563 MB/s | 769.038 MB/s |
4K Q8T8 ランダムライト | 293.483 MB/s | 479.465 MB/s |
4K Q32T1 ランダムリード | 256.243 MB/s | 322.022 MB/s |
4K Q32T1 ランダムライト | 204.171 MB/s | 227.872 MB/s |
4K Q1T1 ランダムリード | 38.157 MB/s | 58.108 MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 103.836 MB/s | 119.640 MB/s |
BBench(輝度0%、電源モード:バッテリ節約機能) | ||
バッテリ残量5%まで | 8時間12分49秒 | 15時間42分23秒 |
傾向としてプロセッサ単体性能は健闘しているもののCore i5-8265U搭載のThinkPad T490sのにはおよばず。ただし3DMarkでは逆転しているケースもあり、Vega 6の性能が証明されたかたちとなっている。Ryzen 5 2500U(4C/8T, 2GHz/3.6GHz, Radeon Vega 8)だとどうなるのか気になるところ。
BBenchはディスプレイの明るさ0%、電源モード:バッテリ節約機能で残5%まで8時間12分49秒。今時としては短く、また実際使用してても見る見る減って行くのがわかる。
以上のようにデル「Inspiron 15 3000(3585)」は、Ryzen 3 2300Uを搭載し、クーポンを適応すると税別で5万円を切る15.6型ノートPCだ。ベンチマークテストの結果もなかなかがんばっている。ただし安価な分、ディスプレイの解像度がHD(1,366×768ドット)、メモリ4GB、ストレージ128GBと、せっかくのプロセッサ性能を活かし切れていない印象を受ける。
またこのモデルではハードウェアのカスタマイズができず、メモリ8GBにしたいなら、Ryzen 5 2500U搭載モデルをえらぶしかない。ただし、液晶ディスプレイの解像度は同じくHDだ。
本製品は解像度、メモリ/ストレージ容量などに不満があるものの、GPU性能の高いRyzen 3プロセッサに惹かれるといったユーザーには選択候補の1つとして検討に値するノートPCと言えるだろう。