西川和久の不定期コラム
Whiskey Lakeになった14型の「ThinkPad T490s」
2019年4月24日 11:00
レノボ・ジャパン株式会社は3月下旬、MWC 2019で発表した「ThinkPad T490(s)」など数モデルの国内販売を開始した。編集部からT490sが送られて来たので、試用レポートをお届けしたい。
Whiskey Lake搭載14型ThinkPad Tの軽量モデル
従来Tシリーズには、T4x0sとT4x0の2種類あり、一番の違いはsモデルの方が軽いことだ。その分、若干機能などが削られている。
今回ご紹介するT490sとT490との最大の違いは、前者はdGPUが搭載不可、最大メモリが32GBに抑えられていることだろうか。とはいえ、ビジネス用途であれば大きな差ではないだろう。対して重量は1.27kg~と1.46kg~と違いがあり、スマホ1台程度の違いであるものの、持った時のズッシリ感が結構違う。
前モデルに相当するT480sのプロセッサはKaby Lake-Rだったが、T490sではWhiskey Lakeへと更新された。なおT490はすでにレビューが掲載されているので、興味がある人はあわせてご覧いただきたい。
直販モデルは、さまざまな仕様にカスタマイズ可能だが、今回レビューするT490sは、仕様が固定の販売代理店モデル「20NX002NJP」だ。おもな仕様は以下のとおり。
「ThinkPad T490s」(20NX002NJP)の仕様 | |
---|---|
プロセッサ | Core i5-8265U(4コア 8スレッド/1.6~3.9GHz/キャッシュ 6MB/TDP 15W) |
メモリ | 8GB/PC4-19200 DDR4(オンボード) |
ストレージ | SSD(PCIe NVMe OPAL2.0対応)256GB |
OS | Windows 10 Pro(64bit) |
ディスプレイ | 14型IPS式フルHD(1,920×1,080ドット)、非光沢、10点タッチ対応 |
グラフィックス | Intel UHD Graphics 620/HDMI、Type-C |
ネットワーク | Intel Wireless-AC 9560(2x2)、Bluetooth 5.0 |
インターフェイス | USB 3.1 Type-C×2(内一つ電源と共通、内一つThunderbolt 3)、 イーサネット拡張コネクター2、USB 3.0×2、 HD対応Webカメラ(ThinkShutter付)、音声入出力、 指紋センサー、microSDメディアカードリーダ |
バッテリ/駆動時間 | 3セル/リチウムイオンバッテリ /約17.7時間 |
サイズ/重量 | 約328.8×226.15×16.7mm(幅×奥行き×高さ)/約1.31kg |
価格 | 212,000円 |
プロセッサはWhiskey LakeのCore i5-8265U。Core i5ながら4コア/8スレッド、クロックは1.6GHzから最大3.9GHz。キャッシュは6MBでTDPは15W。メモリはPC4-19200 DDR4で8GBのオンボードだ。PCMark 10のSystem Informationで確認したところデュアルチャネル構成だった。ストレージはPCIe NVMe OPAL2.0対応の256GB SSD。OSは64bit版のWindows 10 Proとなる。
グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel UHD Graphics 620。外部出力用にHDMIとType-Cを備えている。ディスプレイは14型IPS式非光沢のフルHD(1,920×1,080ドット)。このモデルは10点タッチに対応する。
ネットワークはIntel Wireless-AC 9560(2x2)、Bluetooth 5.0。有線LANはデバイス的には搭載しているものの、実際使うには別売の「ThinkPad イーサネット拡張ケーブル 2」が必要となる。
そのほかのインターフェイスは、USB 3.1 Type-C×2(内1つ電源と共通、内1つThunderbolt 3)、イーサネット拡張コネクター2、USB 3.0×2、HD対応Webカメラ(ThinkShutter付)、音声入出力、指紋センサー、microSDメディアカードリーダ。販売代理店モデルはキーボードバックライトがない。
3セル/リチウムイオンバッテリを内蔵し駆動時間は約17.7時間。サイズ約328.8×226.15×16.7mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.31kg。価格は212,000円。
前述の通り、直販モデルはカスタマイズが可能で、執筆時最安値モデルはCore i5-8265U/8GB/M.2 NVMe 128GB/Windows 10 Home/IPS式FHD/キーボードバックライトありで206,280円/eクーポン適応後134,082円と、それなりに安価だ。
おもなカスタマイズは、メモリ(16GBだと+21,600円)、ストレージ(256GB Solid State Drive, M.2 2280, SATA, OPAL 2.0, TLC,+8,640円/256GB ソリッドステートドライブ(M.2 2280, NVMe)OPAL対応,+9,720円/512GB ソリッドステートドライブ(M.2 2280, NVMe)OPAL対応、5月9日まで12,960円引き+22,680円/1TB ソリッドステートドライブ(M.2 2280, NVMe)OPAL対応,5月9日まで31,320円引き+60,480円)、パネル(14.0型FHD液晶IPS 300cd/平方m光沢なし、マルチタッチパネル(10点),+8,640円/14.0型FHD液晶(IPS 400cd/平方m省電力パネル)光沢なし(WWANが必須選択),+8,640円)……など多彩だ。またWWANは非対応/対応にかかわらず0円となっている。
国内での仕様を見る限り、sモデルに関しては、メモリ32GBやWQHDパネルのカスタマイズはないようだ。
いずれにしても、明らかに直販モデルのほうが割安だろう。128GBでストレージが不安なら、この部分だけ予算に応じて選べばよい。
筐体は今さら書くまでもなく、マットブラックでThinkPadそのもの。昔ながらの安定感がある。重量は実測で1,324g。持ち上げるとそれなりに重い。
前面は、パネル中央上にHD対応Webカメラ。ThinkShutter付だ。いわゆる狭額縁ではない。左側面にUSB 3.1 Type-C(電源共通)、USB 3.1 Type-C(Thunderbolt 3)、イーサネット拡張コネクター2、USB 3.0、HDMI、音声入出力。右側面にロックポート、USB 3.0(Powered)を配置。背面側面にmicroSDカードリーダがある。イジェクトピンを使うタイプなので頻繁に出し入れする用途には不向きだ。裏は手前左右のスリットにスピーカー(T490はキーボードの奥にある)。
付属のType-C/ACアダプタのサイズは約105×45×28mm(同)、重量227g、出力は20V/3.25A、15V/3A、9V/2A、5V/2A。このモデルに限り、65Wの急速充電対応タイプが付属する。通常の45W型が充電時間約2.62時間に対して、65Wでは約2.25時間。約20分ほどの差となっている。
ディスプレイは14型IPS式非光沢のフルHD。写真からも分かるようにパネルを180度開くことができる。このモデルはタッチにも対応だ。最近のノートPCと比較して明るさが若干暗めだが、コントラスト、発色、視野角は良好。輝度を0%にすると明るい環境下ではほぼ見えなくなる。タッチの反応は問題なし。
キーボードとタッチパッドは、お馴染みTrackPoint/TrackPad付きだ。キーピッチや並び、ストローク、打鍵感など、安定した仕上がりとなっている。TrackPadの右上に指紋センサー。残念なのは、販売代理店モデルはLEDバックライトがないことだろうか。
振動、ノイズ、発熱に関しては、昨今の同クラスと比較するとかなりある方だ。とくにベンチマークテストなど負荷をかけると、CPUファンが回りだし、ノイズや振動が発生、右側面にあるスリットから熱い空気がどっと出る。加えてその上にあたるキーボード右端も熱い。この位置はすぐ脇に{Enter]キーがあるだけに相当気になる部分だ。無理して薄型軽量化してるようには見えないだけに、なぜこうなるのか不思議だ。
サウンドは、ThinkPadだからとりあえず音が出れば、程度に思っていたものの、予想外にパワーがある。音質的には一般的なスピーカーが裏にあるノートPCだが、とりあえず問題ないだろう。
以上のように、T490sは、今どきの狭額縁でも薄型でもなく、良くも悪くも変わらないThinkPadそのものだ。個人的には必要以上に狭額縁とか、薄くし過ぎて利便性を損なっているノートPCより、この無骨な感じが好きだが、ここは個人の趣味に左右されると思われる。
Whiskey Lake Core i5としては一般的な性能
初期起動時のスタート画面(タブレットモード)は1画面。Lenovoグループにある「Lenovo Vantage」がプリインストールとなる。デスクトップは壁紙のみの変更とシンプルだ。Whiskey LakeなCore i5、PCIe NVMe OPAL2.0対応SSD、メモリ8GBなので、普通の用途であればストレスなく快適に操作できる。
ストレージはPCIe NVMe OPAL2.0対応SSD 256GBの「Intel SSDPEKKF256G8L」。Cドライブのみの1パーティションで約237GBが割り当てられ、空き214GB。Wi-FiとBluetoothはIntel製だ。また「ThinkPad イーサネット拡張ケーブル 2」が必要で、ダイレクトに有線LANを接続できないものの、デバイスは内蔵していることが分かる(Intel Ehternet Connection I219-V)。
おもなプリインストールソフトウェアは、「Lenovo Vantage」、「Dolby Audio Premium」、「Thunderboltコントロール・センター」、「ELAN TrackPoint for ThinkPad」といった基本的なツール類のみとなる。
ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R15、CrystalDiskMark、BBench。結果は以下の通り。
ベンチマークテスト | |
---|---|
PCMark 10 v1.1.1761 | |
PCMark 10 Score | 3,747 |
Essentials | 7,704 |
App Start-up Score | 10,290 |
Video Conferencing Score | 6,308 |
Web Browsing Score | 7,046 |
Productivity | 6,034 |
Spreadsheets Score | 6,909 |
Writing Score | 5,271 |
Digital Content Creation | 3,073 |
Photo Editing Score | 3,774 |
Rendering and Visualization Score | 1,982 |
Video Editting Score | 3,883 |
PCMark 8 v2.8.704 | |
Home Accelarated 3.0 | 3,393 |
Creative Accelarated 3.0 | 3,569 |
Work Accelarated 2.0 | 4,678 |
Storage | 5,058 |
3DMark v2.8.6546 | |
Time Spy | 453 |
Fire Strike Ultra | 287 |
Fire Strike Extreme | 526 |
Fire Strike | 1,142 |
Sky Diver | 4,778 |
Cloud Gate | 9,296 |
Ice Storm Extreme | 46,891 |
Ice Storm | 69,269 |
CINEBENCH R15 | |
OpenGL | 53.23 fps |
CPU | 541 cb |
CPU(Single Core) | 152 cb |
CrystalDiskMark 6.0.0 | |
Q32T1 シーケンシャルリード | 3017.741 MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 502.114 MB/s |
4K Q8T8 ランダムリード | 769.038 MB/s |
4K Q8T8 ランダムライト | 479.465 MB/s |
4K Q32T1 ランダムリード | 322.022 MB/s |
4K Q32T1 ランダムライト | 227.872 MB/s |
4K Q1T1 ランダムリード | 58.108 MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 119.640 MB/s |
BBench(ディスプレイの明るさ0%、電源モード:バッテリ節約機能) | |
バッテリ残量5%まで | 15時間42分23秒 |
ベンチマークテストの各スコアは、iGPU内蔵のCore i5-8265Uとしては平均的なスコアだろう。冒頭で紹介したT490(i7-8565U/GeForce MX250)のレビューにあるスコアと比較すると、それなりに差があるものの、これはi5とi7、iGPUとdGPUの違いを考えれば仕方ない。通常用途であれば十分高速だ。
バッテリ駆動時間は、ディスプレイの明るさ0%、電源モード:バッテリ節約機能で残5%まで15時間42分23秒。逆にバッテリ駆動時間は、T490と比較すると約6時間差と大幅に長くなっている。ただし、輝度0%は暗すぎるため、実際はもう少し短くなるだろうか。
以上のように、Lenovo「ThinkPad T490s」は、Whiskey LakeのCoreプロセッサを搭載した14型ノートPCだ。T490と比較して約200gほど軽く、バッテリ駆動時間が約6時間伸びているため、どちらかと言えばこちらに魅力を感じる人も多いだろう。今回ご紹介した販売代理店モデルでは、ある程度仕様が固定しているが、直販モデルだとさまざまなカスタマイズが可能な上、eクーポンで比較的安く購入できる。
発熱が気になるものの、それ以外はまさにThinkPadそのもの。往年のThinkPadファンはもちろん、流行に流されない安定感を求めるユーザーにお勧めしたい1台だ。