西川和久の不定期コラム
税込5万円を切る高コスパスマホ、Google「Pixel 3a」
~SoCを変更しつつPixel 3の多くの機能を継承
2019年5月16日 06:00
米Googleは8日、Androidスマートフォン「Pixel 3/3 XL」のSoCをSnapdragon 670へ変更したミドルクラススマートフォン、「Pixel 3a」および「Pixel 3a XL」を発表した。
発売より一足早く前者が編集部から送られて来たので、試用レポートをお届けしたい。
Pixel 3の多くの機能を継承しつつSnapdragon 670を搭載した戦略的モデル
2018年10月10日に同社のPixel 3/3 XLが発表され、約半年が経った。前評判は高かったものの、高価格だったためか、筆者が実際に使っている人を街で見かけたことは今のところない。
その意味で、「もう少し安ければ……」と誰もが思っていることを実現したのが、今回ご紹介するPixel 3aだ。税込で48,600円という価格は、同クラスのライバル機が吹き飛ぶハイコストパフォーマンスに仕上がっている。
おもにPixel 3から削られているものは、SoCがSnapdragon 845からSnapdragon 670へ、128GBモデルがなく64GBモデルのみ、前面カメラの広角側なし、IP68からIP52、Qi非対応、ソフトタッチガラスからポリカーボネート製へ(ただしユニボディになった)、USB 3.1 Gen 1からUSB 2.0へ(Type-Cは同じ)、Pixel Visual Core非搭載など。逆に増えたのが3.5mmイヤフォンジャックだ。
つまり(多少サイズ/画素数が違うものの)有機ELディスプレイ、背面カメラ性能、FeliCa対応はそのまま継承。リリース情報を見て、多くの人が「お!」っと思ったのではないだろうか。
製品のおもな仕様は以下のとおり。
Google「Pixel 3a」の仕様 | |
---|---|
SoC | Snapdragon 670(オクタコア、2GHz、Adreno 615 GPU内蔵) |
メモリ | 4GB/LPDDR4X RAM |
ストレージ | 64GB |
OS | Android 9 Pie |
ディスプレイ | 5.6型OLEDディスプレイ2,220×1,080ドット |
ネットワーク | IEEE 802.11 a/b/g/n/ac、Bluetooth 5.0 LE、NFC/FeliCa |
SIM | Nano SIMカードスロット×1 |
LTE(※3CA対応) | バンド1/2/3/4/5/8/12/13/17/18/19/21/26/28/38/41 |
3G | バンド1/2/4/5/6/8/19 |
GSM/EDGE | 850/900/1,800/1,900MHz |
インターフェイス | USB2.0(Type-C)、3.5mmイヤホンジャック、ステレオスピーカー |
センサー | 近接、周辺光、加速度、ジャイロ、磁力、指紋センサー、気圧 |
前面カメラ | 800万画素(f/2.0) |
背面カメラ | 1,220万画素(f/1.8、SONY IMX363) |
サイズ/重量 | 70.1×151.3×8.2mm(幅×奥行き×高さ)/147g |
バッテリ | 3,000mAh |
防水防塵 | IP52 |
本体色 | Clearly White、Just Black、Purple-ish |
価格 | 48,600円 |
SoCはSnapdragon 670。8コアで最大2GHz、GPUとしてAdreno 615を内蔵している。ここが一番大きな変更点となる。
後述するベンチマークテストを参考にして欲しいが、Snapdragon 845と比較すると3Dゲーム系は厳しいものの、ソーシャルなどネット中心であれば、まったく問題ない性能だ。
メモリはLPDDR4Xの4GB。ストレージは64GBモデルのみ。microSDカードなどの外部メディアは非対応なので、大量に楽曲や動画などをローカルに保存するのは難しい。
OSはAndroid 9 Pie。OSアップデートに関しては、Pixelシリーズだけあり3年間保証されているのもGoodだ。
ディスプレイは5.6型有機ELディスプレイで解像度は2,220×1,080ドット。Pixel 3は同じ有機ELでも5.5型2,160x1,080ドットだったが、ここは微々たる違いだ。それよりも5万円未満の機種で有機ELなのを驚くべきだろう。
ネットワークは、IEEE 802.11 a/b/g/n/ac無線LAN、Bluetooth 5.0 LE、NFC/FeliCa。SIMロックフリー機でおサイフケータイ対応なのはポイントが高い。SIMはNano SIMカード1枚のみ。対応バンドは表のとおりだ。ミドル/ローレンジでもデュアルSIMでDSDV/デュアルVoLTE対応機種があるので、ここはマイナスポイントとなるだろうか。
インターフェイスは、USB 2.0 Type-C、3.5mmイヤフォンジャック、ステレオスピーカー。先のとおり、Type-CながらUSBが3.1 Gen 1から2.0へ変更され、3.5mmイヤフォンジャックを搭載する。センサーは近接、周辺光、加速度、ジャイロ、磁力、指紋センサー、気圧に対応。個人的には3.5mmイヤフォンジャックありは嬉しい変更点となる。
カメラは前面800万画素(f/2.0)、背面1,220万画素(f/1.8、SONY IMX363)。前面の広角800万画素がなくなり、f/1.8からf/2.0へとレンズも若干暗くなっている。ただしメインの背面カメラは機能も含め同じ。Pixel 3のカメラは評判が良いだけに、これは期待大だ。
サイズは70.1×151.3×8.2mm(幅×奥行き×高さ)、重量147g。バッテリは3,000mAh。防水防塵としてIP52に対応する。Pixel 3はIP68だったが、何もないよりはマシだろう。
本体色はClearly White、Just Black、Purple-ishの3種類。そして、これだけの機能を持ちながら48,600円と驚きの戦略的プライスとなっている。
なお上位モデルのPixel 3a XLは、パネルサイズ/解像度が6.0型2,160x1,080ドット、バッテリ容量3,700mAh以外は同じで、税込6万円だ。
筐体はポリカーボネート製だ。届いたのはJust Blackで、以前Pixel 3を触ったときと雰囲気はほとんど変わっていない。シンプルで綺麗だ。サイズや厚み、重量なども持った感じはちょうど良い。昨今、ミドルレンジはピカピカ系が多いので、個人的には好みとなるだろうか。
前面は、パネル中央上に前面カメラ。いわゆる今どきの狭額縁でも、ノッチ付きでもない。ナビゲーションはソフトウェア式だ。左側面にNano SIMカードスロット。下側面にスピーカーとType-C。右側面に電源ボタンと音量±ボタン、上側面に3.5mmイヤフォンジャック。背面は、左上に背面カメラ。中央上に指紋センサーを配置。
付属のUSB式ACアダプタは、サイズ約50×40×25mm/重量65gで、出力5V/3A、9V2A。15分の急速充電で7時間利用可能となる。
5.6型有機ELディスプレイは2,220×1,080ドットあるのでppi(441ppi)は十分確保されており文字などはスムーズ。明るさ、コントラスト、発色、視野角も十分。設定/ディスプレイ/カラーで、ナチュラル/ブースト/アダプティブ(標準)と好みの発色に切替可能だ。
発熱は、動画連続再生での長時間駆動やカメラの連続撮影などを行なっても、とくに変化なし。サウンドは、このサイズながら横位置でのステレオスピーカーで、ちゃんと筐体中央がセンターになる。基本中域中心だがバスドラの音がドスンと聴こえパワーもある。イヤフォン出力は、音色は同系統だが、パワーが若干不足気味だろうか。Bluetoothのオーディオコーディックは、SBC/AAC/aptX(HD)/LDACに対応している(開発者オプションで確認)。
ケースも同時に届いたので試したところ、カジュアルなルックスで雰囲気もあり、また滑り止めにもなるのでなかなか重宝する。ただし厚みや幅が結構増すので、素のままで使った時のスリム感も捨て難い。
カメラに関してはこの後まとめてあるので参考にして頂きたいが、全般的に価格を考えれば十分以上に仕上がっている。
暗いところはめっぽう強いが、平凡な描写に加えポートレートモードの焦点距離が倍に
カメラは前面800万画素(f/2.0)。Pixel 3にあった広角800万画素はなくなり、さらにレンズもf/1.8からf/2.0へと暗くなった。自撮り用としては2歩後退と言える。背面1,220万画素(f/1.8、SONY IMX363、35mm換算27mm)は、機能も含めまったく同じだ。出力は最大3,024×4,032ピクセル。
撮影モードは、パノラマ、ポートレート、カメラ、動画、その他。その他には、夜景モード、360度パノラマ、フォトブース、スロモ録画、タイムラプス、Playground、レンズ、設定が含まれている。いわゆるプロモードはない。
カメラは、上にタイマー、モーション、ホワイトバランス(自動/曇り/晴れ/蛍光灯/電球)、フラッシュの設定、ポートレートモード時は加えて前面カメラも含め顔写真加工(OFF/ナチュラル/ソフト)。右端に露出補正、下側にズーム倍率のスライダーが出る。
設定は、位置保存、Googleレンズの候補、操作、グリッドの種類、背面カメラの写真解像度(12.2/8/2.8/8.3/4.1/0.9MP)、前面カメラの写真解像度(8/5/2.8/4.1/0.9/0.2MP)、背面カメラの動画解像度(UHD 4K/HD 1080p/HD 720p)、前面カメラの動画解像度(HD 1080p/HD 720p/SD 480p)など。
詳細設定に、レンズ汚れの警告を表示、HDR+コントロール、RAW+JPEG管理、動画の保存容量を節約(H.264/AVCからH.265/HEVCへ)がある。
ポートレートモードは他社の場合、測距用の別カメラとのデュアルレンズ構成となるが、本機はシングルレンズでAIを使って背景を認識しボカすことができる。
同様の機種としてiPhone XRがあるものの、iPhone XRの被写体は人のみの対応。本機は人以外でも背景をボカすことができる。加えてポートレートモードで撮影した写真は、あとからフォトアプリでピンの位置、ボケ味調整が可能だ。また試したところ前ボケにも対応している。
ただし非常に残念なのは、焦点距離が倍の35mm換算54mmになってしまうことだ。50-85mmは一般的に写真の世界ではポートレート用とも呼ばれるが、被写体との距離が結構離れる。以下の作例をご覧いただきたいが、よくあるカフェのテーブル向かいに座った被写体は、近過ぎて席を立って後ろに下がるなどしないと撮影できず、スマホ的な用途としては役に立たないケースが多い(筆者がiPhone XからP20 Proに乗り換えた理由の1つ)。
本機はAI処理で背景ボケに対応しているため、27mmのままでもポートレートモードは実現可能なはずだ。是非とも対応をお願いしたい。
作例などを撮っていて気になったのは2点。1つはHDR+で、詳細設定にあるHDR+コントロールはデフォルトでOFF。だが、OFFだからHDR+がOFFではなく、「マニュアルコントロールがOFFで、HDR+は常時ON」となっているのだ。
過去も含め基本これまで作例はデフォルトの状態でモードと露出補正/WBだけ必要に応じて調整していたので、作例としての統一性はOKなのだが、下記に掲載したHDR+ OFF/HDR+ ON/HDR+ 拡張の違いをご覧いただきたい。個人的にはHDR+ OFFが正解でHDR+ ON/HDR+ 拡張は不自然だと思う。
これがそのまま作例にも表れ、全部ではないものの、コントラストが浅く色乗りもイマイチな、昔の補色系CCDを思い出す仕上がりとなるケースがある。個人的な好みもあるだろうが、詳細設定/HDR+コントロールは要注意だ。
もう1点はAWBで、どこのカメラで撮ってもこうだよね、という一般的なシーンはまったく問題ないものの、ミックス光など、少し難しいシーンだとほぼ青(高い色温度)に転ぶ。たとえば以下のパスタの写真は、オートで撮ったらこうなってしまった。とても不味そうだ(笑)。
店内は電球、でも窓際は自然光というよくあるカフェでの1枚で、まとめて掲載した作例での同一シーンは、WB:晴れ、露出補正+にして撮影している。加えて夜景での電球が白くなり過ぎるケースも多々あった。同社が得意とするAIで、AWBとAEの精度をもっと上げて欲しいところだ。
その他/夜景モードは、何回か撮影し、合成する方式なので、被写体は静止物しか使えず、明るく撮れるとはいえ、ご覧のように色がおかしい。本機は普通の撮影モードでも低照度には強いため、あえて夜景モードを使うパターンは少なそうだ。
前置きが長くなったが、作例46枚を掲載する。先に書いたHDR+はONのまま、最後の6枚だけHDR+をOFFにしている。この中で一番暗いのは、夜景の電車の次にある葉と壁の写真。f/1.8、1/15秒でISO感度は5,344と、このシーンでこれだけ写ればほかの夜景は楽勝となる。
ただ、これだけ暗くても撮れるということは、一般的な夜景の場合、背景が暗いので、AEはそれに合わせてしまい、結果、全体的に明るくなり過ぎるケースが多発。露出補正をマイナスにすることが多かった。他社ではAEが暗いのを分かっていてもそこまで上げられないため、普通の写真となるのだが、ある意味逆効果になっている。
さて、暗いところに激強いのはご覧のとおりだが、普通のシーンは平凡で面白みのない写りだ。つまり「空間スキャナとしては高性能だが、写真として見るとつまらない」といったところだろうか。デジカメが出始めた頃、フィルムとの比較でよく使われた記憶色(青い空はもっと青く、赤い花はもっと赤く、そしてハイコントラスト)的なモードがあっても良いような気がするのは筆者だけだろうか。
もともとPixel 3のカメラの評判が(ほかのレビューなどを読む限り)良く、その背面カメラと同じとあったため、期待度が高く辛口となってしまったが、5万円未満の価格を考えれば十分以上の写りと言えよう。
以下の作例では、HDR+コントロールは標準(OFF/つまりつねにHDR+ ON)で撮影(最後6枚はHDR+ OFF)。恐竜? と靴の写真はポートレートモード、スプーンなどが棚に並んでいる写真は3倍ズーム。パスタの写真だけWB:晴れに固定。ほかはすべてAWB。露出補正は必要に応じて調整している。
容易な初期設定
初期設定は、SIMなし、Googleアカウントや指紋認証などの設定はスキップして行なった。この状態で計9画面。とくに分かりにくい部分もなく、よほどの初心者ではない限りサクッとセットアップは可能だろう。
指紋認識は、パターン/PIN/パスワードとの併用となり、どれか1つを先に設定する必要がある。指紋の登録も含め一般的で簡単に設定でき、認証も瞬時だ。
SIMの設定に関してはもともと本機はシングルSIMなので、単にAPNを選ぶだけで再起動も必要なく、ネットに接続できる。
少し慣れが必要な独特の操作性
OSはAndroid 9 Pie。64GBのストレージは初期起動時12.75GB使用中だ(若干の画面キャプチャを含む)。IMEはGboardがインストールされている。
操作系は上から下へのスワイプで通知パネルは変わらないが、下から上のスワイプ(-ナビゲーション)でアプリ切替と、iOSのような挙動だ。この状態でさらに-ナビゲーションを下から上にスワイプするとアプリ一覧となる。ただしiOSとは違い[戻る]が必要なので、画面左に<ナビゲーションがある。
壁紙の長押しでホームの設定/ウィジェット/壁紙は同じ。また-ナビゲーション長押しでGoogleアシスタントが起動する(もちろん音声を登録すればOK Googleでも)。輝度調整などは通知パネルに含まれるものの、音量系は画面右端に別枠で表示される。
面白い機能としては、Pixel 3にもあった、本体下半分を握って離すとGoogleアシスタントが起動するActive Edgeも搭載している。この握る時の強さや離す時のタイミングは調整可能だ。
このように、一部一般的なAndroid機とは異なった動きをする。Android端末使用歴が長い程、戸惑うかも知れないが、慣れてしまえば(個人的には)こちらの方が快適に使える。
アプリは、「おサイフケータイ」、「カメラ」、「カレンダー」、「ドキュメント」、「ドライブ」、「ニュース」、「ファイル」、「ファミリーリンク」、「フォト」、「マップ」、「メッセージ」、「時計」、「設定」、「電卓」、「電話」、「連絡帳」、「Android Auto」、「Chrome」、「Duo」、「Gmail」、「Google」、「Google Pay」、「Home」、「Keep」、「Playストア」、「Play Music」、「Playムービー&TV」、「YouTube」、「YT Music」(YouTube Music)。お馴染みのアプリばかりだ。他社製はまったく含まれておらず気持ちいい。
ウィジェットは、「カレンダー」、「ドキュメント」、「ドライブ」、「マップ」、「メッセージ」、「時計」、「設定」、「連絡先」、「Chrome」、「Gmail」、「Google」、「Googleニュース」、「Google Play Music」、「Keep」。
3D以外の性能は十分だが短めの連続駆動時間
ベンチマークテストは簡易式だが「Google Octane 2.0」と「AnTuTu Benchmark」を使用した。Google Octane 2.0は11,303、AnTuTu Benchmarkは157,562(49位)。
まずGoogle Octane 2.0が1万を越えているので、Web系の表示は問題ない。しばらく室内は本機のみを使っていたが、メインのP20 Proと比較しても違和感ない描画速度だ。
同様にFacebook、Instagram、Twitterなどソーシャル系アプリもスムーズに動く。AnTuTu Benchmarkは3D系の評価も含まれるためスコアは伸びないが、3D系のゲームさえしなければ問題ないレベルだろう。
バッテリ駆動時間は、Wi-Fi接続、音量と明るさ約50%でYuTubeを全画面連続再生したところ、約10時間で電源が落ちた。明るさ50%は室内であれば十分明るいが、音量50%だとか細く鳴っている感じだ。
サイトによると「自動調整バッテリ機能がよく使うアプリを認識して優先的にバッテリを使用し、使用頻度の低いアプリのバッテリ消費を抑えます」とあるものの、動画の連続再生は抑えようがないため、SoC/パネルなどの消費がそのまま直結する。6型未満の小型筐体でバッテリ容量が3,000mAh前後に制限されると、この程度の持ちなのだろう。
以上のようにGoogle「Pixel 3a」は、有機EL、おサイフケータイ、低照度に強い多機能カメラを搭載し、税込価格が5万円切りと、かなり振り切ったスマホだ。
Snapdragon 670もソーシャルなどネット系中心で3D系のゲームさえしなければ十分な性能。実際数日間普段通り使ってみたがストレスはまったく感じなかった(対P20 Pro比)。
反面、Nano SIMスロットが1つ、ストレージが64GBで外部メディア非対応など、用途によっては厳しい部分もあるが、これが問題ないユーザーであればお勧めしたいSIMロックフリースマホと言えよう。