西川和久の不定期コラム

ノッチつきとなり画面占有率アップ、AI対応カメラ搭載の「ZenFone Max Pro (M2)」

 ASUSは3月8日、SIMロックフリースマートフォン「ZenFone Max Pro(M1)」の後継機に相当する「ZenFone Max Pro(M2)」を発表、15日から販売を開始した。M1の発表が2018年12月19日だったので、かなり早いタイミングでのモデルチェンジだ。編集部から実機が送られて来たので試用レポートをお届けしたい。

Snapdragon 660/4GB/64GB、ノッチつき約6.3型、AI対応カメラ搭載

 今回ご紹介するASUS「ZenFone Max Pro (M2)」は、冒頭に書いたとおり、2018年12月19日に発表された「ZenFone Max Pro (M1)」(以下M1)の後継機種だ。たった数カ月でのモデルチェンジは、動きの早いスマートフォン業界でも異例と言える。

 おもな違いはSoCがSnapdragon 636からSnapdragon 660へ、メモリLPDDR4X 3GBから4GBへ、ストレージが32GBから64GBへ、画面がノッチつきとなり占有率アップ、カメラは前面が画素数アップ、背面は画素数こそダウンしたが(画素数が減って画質が落ちるとは限らない)AI対応になった点。一方でバッテリ容量や指紋認証/顔認証はそのまま維持した。

 価格が約5千円アップ、対応バンドは多少違いがあるものの、ここ数カ月内、M2発表前にM1を購入したユーザーが怒りそうな(笑)内容となっている。おもな仕様は以下のとおり。

ASUS「ZenFone Max Pro (M2)」の仕様
SoCSnapdragon 660(オクタコア、1.95GHz、Adreno 512 GPU内蔵)
メモリ4GB/LPDDR4X
ストレージ64GB
OSAndroid 8.1(ピュアAndroid)
ディスプレイ約6.3型IPS式2,280×1,080ドット、ゴリラガラス6
ネットワークIEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 5.0
SIMnanoSIMカードスロット×2(DSDV、デュアルVoLTE対応)
対応バンドGSM/EDGE  850/900/1,800/1,900MHz
W-CDMA B1/B2/B4/B5/B6/B8/B19
FDD-LTE B1/B2/B3/B4/B5/B7/B8/B12/B17/B18/B19/B28
TD-LTE B38/B41
(キャリアアグリゲーション 2CA)
インターフェイスUSB 2.0(Micro-B)、microSDカード(単独/最大2TB)、3.5mmイヤフォンジャック
センサーGPS、BeiDou、Galileo、QZSS、加速度、電子コンパス、光、ジャイロ、指紋、NFC
カメラ前面 1,300万画素
背面 1,200万画素+500万画素(深度測定用)
サイズ/重量約75.5×157.9×8.5mm/約175g
バッテリ5,000mAh
カラーバリエーションコズミックチタニウム、ミッドナイトブルー
税別価格35,500円

 SoCはSnapdragon 660。オクタコアで1.95GHz。GPUとしてAdreno 512を内包している。M1がSnapdragon 636だったので、この点だけでもそれなりの性能向上だ。さらにメモリはLPDDR4X 4GB、ストレージは64GBと、どちらも増量している。

 OSはAndroid 8.1。余計なカスタマイズは施さずピュアAndroidを謳っており、システムのリソース消費を最小限に抑えたとのこと。ただこの時期に発表するスマートフォンでAndroid 9(Pie)でないのは残念。また9(Pie)へのアップデートが気になる部分でもある。

 ディスプレイは、約6.3型IPS式2,280×1,080ドットでゴリラガラス6。ノッチを採用しM1と比較して画面占有率が向上している。

 ネットワークは、IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 5.0、SIM nanoSIMカードスロット×2。DSDV、デュアルVoLTE対応だ。またmicroSDカードスロットが別途あり、2つのnanoSIMカードとmicroSDカードが同時に使えるのは本機の強みとなっている。対応バンドは表のとおり。

 インターフェイスは、USB 2.0(Micro-B)、microSDカード(単独/最大2TB)、3.5mmイヤフォンジャック。BluetoothのオーディオコーディックはSBC/AAC/aptX(HD)/LDACに対応している(設定/開発者向けオプションより)。センサーはGPS、BeiDou、Galileo、QZSS、加速度、電子コンパス、光、ジャイロ、指紋、NFCを搭載。

 カメラは前面1,300万画素、背面1,200万画素+500万画素(深度測定用)。M1が800万画素、1,600万画素+500万画素だったので、前面は画素数がアップし自撮りに強くなった。背面は画素数が減っているものの、センサー自体が異なるため、それだけで画質が落ちるわけではない。カメラに関しては別途記述しているので参考にしていただきたい。

 カラーバリエーションは、コズミックチタニウムとミッドナイトブルーの2種類。サイズ約75.5×157.9×8.5mm、重量約175g。5,000mAhの大容量バッテリを内蔵し、税別価格は35,500円だ。

 なおProのない「ZenFone Max(M2)」は、Snapdragon 632/4GB/32GB/6.3型1,520×720ドット、800万画素前面/1,300万画素+500万画素背面カメラなどが主な違いで税別価格26,500円となる。

パネル中央上にノッチがあり、そこに前面カメラとLEDフラッシュ。ナビゲーションボタンはソフトウェア式
背面。左上に深度測定用500万画素/1,200万画素/LEDフラッシュ。中央少し上に指紋センサー
左側面にnanoSIM/microSDカードスロット。下側面に3.5mmイヤフォンジャック、USB(Micro-B)、スピーカー
右/上。上側面は何もなく、右側面に音量±ボタン、電源ボタン
nanoSIMスロット付近。奥からSIM1/SIM2/microSD
付属品。ケース、USB式ACアダプタ(サイズ約3.7×3.7×2.7cm、重量39g、出力5V2A)、イジェクトピン、イヤフォン、USBケーブル
重量は実測で171g
iPhone Xとの比較。高さはパネルサイズ分だけ大きく幅も少し広い。高さは若干高いと言ったところ。パネルの明るさは最大でiPhone Xの80%ほど

 カラーバリエーションはミッドナイトブルー。3Dカーブデザインを施した筐体は角度を変えると光の反射が変わり合わせて見え方も変化する。少し指紋が付きやすいかも知れないが、綺麗なデザインだ。

 前面はパネル中央上にノッチがあり、そこに前面カメラとLEDフラッシュ。ナビゲーションボタンはソフトウェア式だ。背面は左上に深度測定用500万画素/1,200万画素/LEDフラッシュ。中央少し上に指紋センサー。左側面にnanoSIM/microSDカードスロット。下側面に3.5mmイヤフォンジャック、USB(Micro-B)、スピーカー。右側面に音量±ボタン、電源ボタンを配置。nanoSIM/microSDカードスロットは、奥から順にSIM1/SIM2/microSD。

 付属品は、ケース、USB式ACアダプタ(サイズ約3.7×3.7×2.7cm、重量39g、出力5V2A)、イジェクトピン、イヤフォン、USBケーブル。

 約6.3型IPS式2,280×1,080ドットのディスプレイは、最大輝度でiPhone Xの約80%(目測)と結構明るく、発色、コントラスト、視野角すべて良好。エントリーモデルでも良いパネルが使われはじめたようだ。NTSC色域94%を唄っているのもこのクラスとしては珍しい。もう少し色に落ち着きが出ればよりベターだろうか。

 振動やノイズは当然皆無。発熱もカメラやベンチマークテスト、動画連続再生している限りとくに気にならなかった。

 サウンドはこれでま扱ってきたスマートフォンの中ではスピーカー出力/イヤフォン出力とも、過去最高にパワーがある。どちらも最大にすると歪んでしまうが、おそらくそこまで上げる必要はないだろう。ただ、ステレオスピーカーでないのが残念だ。

 同社のサイトによるとスピーカーが5マグネットでメタルボイスコイル、アンプは「NXP 9874」と書かれている。高域から低域までパンチのある音なので、ポップ系やロック系向き、反面クラシックは苦手かも知れない。イヤフォン出力の傾向はスピーカーと同じだが、加えて音に厚みが増す。このクラスでこれだけ鳴れば文句なし! と言ったところ。

AI、深度測定用センサーによるポートレート、美人エフェクト……など、今どきの機能を搭載!

 カメラは前面が1,300万画素、背面が約1,200万画素(1/2.9インチの「Sony IMX486」)+500万画素でどちらもLEDフラッシュを搭載。背面カメラの絞りはF1.8、物理的な焦点距離は4mmとなる(Exifより)。出力サイズは最大4,000×3,000ピクセル。ポートレートモードにしてもピクセル数は変わらない。

 設定は、位置情報/画像サイズ(12M/9M/8M/6M/5M、4K UHD/HD 1080p/HD 720p/SD 480p/VGA)/画質(低/標準/高)/セルフタイマー/保存先/連続撮影/顔認識/アンチバンディング/赤目低減。撮影モードはオート/Pro/HDR/スポーツ/夜景。

 上にあるアイコンは左からモード切替/フラッシュ/美肌エフェクト/ポートレート/設定。下側シャッターボタンの左にあるのはカラーフィルタだ。本機の売りであるAIシーン分析は、ピープル/フード/ドック/キャット/サンセット/スカイ/フィールド/オーシャン/フラワー/グリーン/スノー/ステージ/テキストの13種類。

 背面カメラは、美人エフェクトはPro以外有効/ポートレートとは排他、カラーフィルタはオートでポートレートモードと併用可能。AIシーン解析はオートのみ。前面カメラはカラーフィルタ、AIシーン解析や各モードはなくオートのみだが、美人エフェクトとポートレートの併用が可能と、少しコンビネーションがややこしい。

 Proモードは、WB:4種類、EV:±2、ISO:100-1,600、シャッタースピード:1/2,000-1/4秒、AF:スライド式。

オート。ピンチイン/アウトでズームするが、上下スライドでの露出補正がない
Pro
設定。位置情報/画像サイズ/画質/セルフタイマー/保存先/連続撮影/顔認識/アンチバンディング/赤目低減
モード。オート/Pro/HDR/スポーツ/夜景
ポートレート。ボケ味が調整できる
カラーフィルタ
AIシーン分析(フード)
美人エフェクト。オフ/低/中/高/カスタム

 作例を16枚掲載したので参考にして欲しい。基本オート。壁に植木鉢が並んでいるカットがポートレートモードだ。深度測定用カメラを搭載しているので、顔認識しなくても使用可能。一番暗いのは最後、電車が写っている夜景でISO 6400、F1.8、1/14秒となる。等倍で観ると結構ノイズがあるものの許容範囲だろう。

 起動やAF、保存も速く問題なく撮影できる。ただ少し気になったのは(M1は使ってないので不明だが)従来同社のカメラはオート時、上下のスライドで露出補正できたはずだが、ピンチイン/アウトのズームだけで上下スライドによる露出補正は搭載していなかった。このため、オートで明らかにオーバーやアンダーになる時は、Proに切り替え、露出補正を行なう必要がある。これは結構面倒だ。

 また、日中時の発色が少しシアン被りしている。今回掲載していないがHDRで撮影すると、ハイライト/シャドー共に付け足した部分が同じくシアン被りしている感じだ。AIシーン分析は、テキスト、フード、スカイなどは確認。HUAWEIのように明らかに絵を作り変える感じではなく、隠し味程度の効果のようだ。全体的に写りもクラスとしては並みだろうか。

※クリックでオリジナル画像が表示されます

セットアップ(指紋認識/顔認識にも対応)

 初期設定は、SIMなし、アカウントの設定などは基本スキップもしくはキャンセルで行なった。ピュアなAndroidを売りにしているためか、この部分にも同社のアカウントなどの設定はなく、計10画面と割と少な目だ。

ようこそ
Wi-Fiに接続
プライバシーの権利を理解している
アプリとデータのコピー
Googleログイン(スキップ)
名前
Googleサービス
携帯電話を保護する(必要としない)
Google Driveプロモーション(スキップ)
セットアップ完了

 指紋認識と顔認識は、パターン/PIN/パスワード設定後に行える。指紋センサーが裏にあるので、一般的には右手の人差し指になるだろうか。何度か角度を変えつつ押さえていると登録が完了する。認識は瞬時。

 顔認識は画面キャプチャのように、丸の中に顔を収める。ただ登録するタイミングが速過ぎて、顔が半端な位置になってしまうことが多かった。HUAWEI「nova lite 3」の時にも書いたが、位置が整うまでもう少し待って欲しいところ。眼鏡ありで登録したが、有無に関係なく認識される。

 デュアルSIM設定およびAPNは一般的なものだ。直接関係ないものの、nanoSIMカードスロット2つと、microSDカードスロットが排他ではなく独立しており、全部同時に使えるのは本機の強みだろう。

センサーに触れてください
指を離してからもう一度触れてください
指紋の登録は完了しました
あなたの顔を登録できます
顔データの設定
端末のスリープを解除する
APN
ネットワーク設定

ピュアなAndroid 8にいくつかのアプリを追加

 OSはAndroid 8.1.0。初期起動時、64GB中11.45GBが使用中(若干の画面キャプチャを含む)。IMEはATOK for ASUS。

 ホーム画面は3画面、1画面目にGoogle。Dockに電話、メッセージ、Gmail、Chrome、カメラを配置。2と3画面目にあるアプリやフォルダは下記を参考にして欲しいが、基本ピュアなAndroid 8+αのアプリでシンプルな構成だ。反面、同社のZenUIが好きなユーザーには物足らないかも知れない。

 上から下へスワイプで通知画面、下から上にスワイプでアプリ一覧、壁紙長押しで壁紙/ウィジェット/ホームの設定、もちろん画面分割にも対応する。

Home(1/2)
Home(2/2)
Googleフォルダ
ASUSフォルダ
アプリ一覧(1/2)
アプリ一覧(2/2)
通知画面(1/2)
通知画面(2/2)
ストレージ
システム
言語と入力
画面分割

 アプリは、「カメラ」、「カレンダー」、「スプレッドシート」、「スライド」、「ドキュメント」、「ドライブ」、「ファイル」、「フォト」、「マップ」、「まんがお得」、「メッセージ」、「音声レコーダ」、「時計」、「設定」、「電卓」、「電話」、「連絡帳」、「ATOK」、「Chrome」、「Duo」、「Facebook」、「FMラジオ」、「Gmail」、「Google」、「Google Pay」、「Instagram」、「Keep」、「Messenger」、「Playストア」、「Play Music」、「Playムービー&TV」、「YouTube」。Googleに幾つかのアプリを追加した構成となっている。

 とりたててこれと言った独自アプリは追加されておらず、これらに加えPlayストアから好みのアプリをダウンロードすれば環境設定完了となる。ある意味分かりやす構成だ。

 ウィジェットは、「カレンダー」×2、「スプレッドシート」、「スライド」、「ドキュメント」、「ドライブ」×3、「ホーム画面のヒント」、「マップ」×5、「時計」×2、「設定」、「電卓」、「連絡先」×3、「Chrome」×2、「Gmail」×2、「Google」×5、「Google Play Music」×2、「Keep」×2。

壁紙/ウィジェット/ホームの設定
ウィジェット(1/6)
ウィジェット(2/6)
ウィジェット(3/6)
ウィジェット(4/6)
ウィジェット(5/6)
ウィジェット(6/6)

ベンチマークテストはHUAWEI「nova lite 3」とよく似たスコアだがバッテリ駆動時間は大幅に上回る

 ベンチマークテストは簡易式だが「Google Octane 2.0」と「AnTuTu Benchmark」を使用した。Google Octane 2.0のスコアは9,149(9,860)、AnTuTu Benchmarkのスコアは129,311(128,447)。カッコ内はHUAWEI「nova lite 3」のスコアだ。

 この2つを比較する限り、Snapdragon 660とKirin 710は非常に似ているのがわかる。AnTuTuの詳細を見てもCPU:59,747(56,229)/GPU:27,371(28,104)/UX:35,206(35,932)/MEM:6,987(8,182)とほぼ同じだ。ざっくり現在のエントリーモデルの性能を表しているとも言えよう。爆速ではないものの、普通に使えるパフォーマンスだ。

Google Octane 2.0は9,149
AnTuTu Benchmark(1/2)は129,311
残5%で約18時間

 バッテリ駆動時間は、Wi-Fi接続、音量と明るさ50%でYuTubeを全画面連続再生したところ、約19時間で電源が落ちた。HUAWEI「nova lite 3」が約10時間だったので、かなりの差だ。SoCの差より、内蔵しているバッテリが5,000mAhか約3,400mAhの違いからの方が要因としては大きそうだ。また先にも書いたが音量50%はこれまで扱ったスマートフォンのどれよりも音量が大きく、煩過ぎていつもの場所ではなく、風呂場へ置いたほど(笑)。

 以上のようにASUS「ZenFone Max Pro (M2)」は、Snapdragon 660/4GB/64GB、ノッチつき約6.3型、デュアルレンズでAI対応カメラ搭載、指紋/顔認識など、今どきのスマートフォンの機能はすべて網羅しているエントリーモデルだ。2つのnanoSIMカードとmicroSDカードが併用できたり、パワーのあるサウンドもポイントが高い。

 反面、ライバル機と比較して機能の割に写りが平凡なカメラは気になると言えば気になるものの、上記した部分に加え、5,000mAhのバッテリで長時間駆動出来る点にグッときたユーザーにお勧めしたい1台だ。