西川和久の不定期コラム

ワコムAESペンや好みに応じた2種類のキーボードが選べる13.3型2in1「dynabook D83/J」

dynabook D83/J

 東芝クライアントコンピューティング株式会社は、13.3型でワコムAESペン対応の2in1「dynabook D83/J」を発売しており、法人向けは9月下旬より展開されている。プロセッサ違いで3タイプあるなか、中位モデルが編集部から送られて来たので試用レポートをお届けしたい。

キーボードを2種類用意した2in1

 タブレットとキーボードが合体する2in1と呼ばれるカテゴリが登場してから結構な月日が経った。本体側が安価で折りたたみ式の簡易式キーボードと合体したり、ガッチリ合体してまるでクラムシェルのように使えたり、Surfaceのようにキックスタンドを搭載し、バックライト付きで単品でもそれなりの価格になる専用キーボードを用意するものなど、見た目も含め多種多様だ。

 この合体時の使い勝手によって、どちらかと言えばタブレットにキーボードはおまけ、もしくはクラムシェルとしても使えるノートPC替わりと、その性格も異なる。

 今回ご紹介する「dynabook D83/J」は、後者に相当するが、「インターフェイス重視」と「軽量重視」、2タイプのキーボードを用意した2in1だ。おもな仕様は以下のとおり。

【表1】dynabook D83/Jの仕様
プロセッサCore i5-8250U(4コア8スレッド/1.6~3.4GHz/キャッシュ6MB/TDP 15W)
メモリ8GB LPDDR3-2133(交換不可)
ストレージSSD 128GB
OSWindows 10 Pro(64bit)
ディスプレイ13.3型フルHD(1,920×1,080ドット)、光沢なし、10点タッチ対応、ワコムAES方式のペン入力対応(付属ペンで4,096段階筆圧/傾き検知/レポートレートも240pps)
グラフィックスIntel HD Graphics 620
ネットワークIEEE 802.11ac対応、Bluetooth 4.2
インターフェイスUSB Type-C(電源コネクタ)×1、音声入出力、500万画素前面カメラ、800万画素背面カメラ
バッテリ/駆動時間リチウムポリマー/約10時間
サイズ/重量約316×207×9.1mm(幅×奥行き×高さ)/約799g
税別価格215,500円から
キーボードドック(インターフェイス重視モデル)
インターフェイスUSB 3.0×2、Gigabit Ethernet、HDMI、ミニD-Sub15ピン
合体時のサイズ/重量約316.0×217.0×22.1mm(同)/約1,229g
キーボードドック(軽量重視モデル)
インターフェイスなし
合体時のサイズ/重量約316.0×212.5×15.1mm(同)/約1,179g

 プロセッサは第8世代Kaby Lake-RのCore i5-8250U。4コア8スレッドでクロックは1.6GHzから最大3.4GHz。キャッシュは6MBでTDPは15W。同社のサイトによると、Core i5-8350U vPro、Core i5-8250U、Core i3-8130Uの3タイプが用意され、手元に届いたのは中位モデルとなる。

 メモリは8GB LPDDR3-2133で交換不可。PCMark 10のSystem Informationによると4GB×2の構成のようだ。ストレージはSSD 128GB。OSは64bit版のWindows 10 Proを搭載する。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 620。ディスプレイは非光沢13.3型フルHD(1,920×1,080ドット)で、10点タッチとワコムAES方式のペン入力に対応する。前モデルは12.5型だったので大きく進化した部分だ。

 ネットワークは、IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 4.2。そのほかのインターフェイスは、USB Type-C(電源コネクタ)×1、音声入出力、500万画素前面カメラ、800万画素背面カメラ。

 なお、Windows Hello対応の顔認証/指紋センサーはオプションで2018年12月より、LTE対応ワイヤレスWANモデルは2019年1月を予定している。

サイズは約316×207×9.1mm(幅×奥行き×高さ)、重量約799g。リチウムポリマーバッテリを内蔵し、最大約10時間駆動が可能だ。税別価格は215,500円から。この価格には後述する「インターフェイス重視」か「軽量重視」のどちらかのキーボードが付属する。

前面は、画面中央上に500万画素前面カメラ。狭額縁ではなく一般的なフチの広さだ
背面は、中央少し右寄りに800万画素背面カメラ。下半分はキックスタンドになっている
左側面に電源ボタン、音量±ボタン、下のスリットはLスピーカー。上側面はなにもない
右側面に3.5mmジャック、Type-C(充電用兼)、Rスピーカー。下側面に合体用のコネクタなど
Surfaceと似たタイプのキックスタンド。無段階で調整できる
付属のUSB Type-C対応ACアダプタのサイズは60×60×28mm(幅×奥行き×高さ)、重量198g。出力5V/3A、9V/3A。Type-C接続の拡張アダプタはEhternet、USB、HDMI、ミニD-Sub15ピン、裏側にType-C。ペンは単6形電池を1本使用
本体の重量は実測で769g
ワコムAES方式のペン入力対応(付属ペンで4,096段階筆圧/傾き検知/レポートレート240pps)。キックスタンドはこの角度が最大

 冒頭に書いたとおり、付属のキーボードには2種類あり、1つは「インターフェイス重視」。写真からもわかるように、かなりがっしりしたタイプで、キックスタンドと併用し、クラムシェルっぽく使うことができる。インターフェイスは、USB 3.0×2、Gigabit Ehternet、HDMI、ミニD-Sub15ピンを搭載。実測で423g。本体と合わせて1,192gと1kgを少しオーバーする。

 もう1つは「軽量重視」でインターフェイスは一切なく、Surfaceのタイプカバーによく似た構造で、後ろ側が本体下のフチに吸着する。実測で374g。本体との合計重量は約1,143g。こちらでも1kgを少し超える。

インターフェイス重視のキーボード。ガッチリした感じでなかなかカッコいい。ただあまりキックスタンドを倒し過ぎると、キーボード側が浮く
軽量重視のキーボード。本体下のフチにキーボード側が吸着。Surfaceと同じ構造になっている

 写真だけの判断だとまるっきり構造が違い、「軽量重視」のほうが圧倒的に軽く見えるが、実際の差はたった49g。2種類必要なのかという疑問すら持つ。

 実際操作したところでは、打鍵感はSurfaceのタイプカバーのようにパコパコする「軽量重視」より、ガッチリ打てる「インターフェイス重視」のほうがいいが、サクッと取りつけられるのは「軽量重視」だ。「インターフェイス重視」はキーボード上部の出っ張りに本体を合わせる必要があり、これが意外と手間取りサクッと入らない。どちらを選ぶかは、用途によるといった感じだ。

 先に挙げたプロセッサ3タイプに加え、この2つのキーボードがあるため、製品ラインナップとしては計6モデル用意されている。

インターフェイス重視キーボード
キーボード上部に本体との合体/固定用凸とスライド式の留め具が2つ
裏面にはゴム足がある
キーピッチは約19mm
重量は実測で423g
左側面にロックポート、固定スイッチ、ミニD-Sub15ピン、HDMI
右側面はUSB Type-C、ステータスLED、Ethernet、USB×2
軽量重視キーボード
キーボード上部に本体とのコネクタがある。物理的な固定方法は磁石
手前以外、ほとんど宙に浮くためゴム足などはとくにない
キーピッチは約19mm
重量は実測で374g

 まず本体は13.3型のキックスタンド付きタブレットだ。オールブラックでなかなかカッコよく、重量も実測で769gとまずまず。片手で楽々持ち上がり、9.1mmと薄めなので、カバンなどへ入れてもかさばらない。

 前面は画面中央上に500万画素前面カメラ。背面は中央少し右寄りに800万画素背面カメラ。下半分はキックスタンドになっており、無段階で調整可能だ。倒せる角度はペンを持った写真を参照してほしい。この手の使い方だともっと倒れてほしいところか。

 左側面に電源ボタン、音量±ボタン、下のスリットはLスピーカー。上側面はなにもなく、右側面に3.5mmジャック、Type-C(充電用兼)、Rスピーカー。下側面に合体用のコネクタなどを配置。

 付属のUSB Type-C対応ACアダプタのサイズは60×60×28mm(幅×奥行き×高さ)、重量198g。出力5V/3A、9V/3A。Type-C接続の拡張アダプタはEhternet、USB、HDMI、ミニD-Sub15ピン、裏側にType-C。ペンは単6形電池1本使用する。

 13.3型の非光沢ディスプレイは、これまでいろいろ非光沢パネルを見てきたが、群を抜いてマットな感じだ。これを見てしまうと普通の非光沢は半光沢に見えるほど。明るさ、コントラスト、発色、視野角も良好。とくに赤が鮮やかで非光沢系にある地味な感じもない。なかなか品質の高いパネルが使われている。

 もちろんタッチも良好でかつ、指紋跡も付きにくい。ただ欲を言えば1,920×1,080ドットではなく、1,920×1,280ドットなど縦横比3:2のものが使いたいところ。

 付属のペンはワコムAES方式対応だ。筆者の場合、絵心がないので落書きしかできないものの、それでも昨今書いたなかでは滑らかであまりPCのペンっぽくなく、書き心地が良いように思う。

 キーボードに関しては上記したとおり。タッチパッドはどちらも1枚プレート型で、パームレストも含めそれなりに面積が確保され使いやすい。

 ノイズや振動はとくになし、発熱はベンチマークテストなど負荷をかけると上半分(とくに左上)に熱を持つ。持ち続けるには少し熱いかなと思うレベルだ。タブレットの場合、どうしても本体を持つ機会が多いので、できればもう少し熱のコントロールができていればいいのだが……。

 サウンドは下左右外向きにスピーカーがあるため、机などに反射せず、そのまま音が左右に逃げる感じとなる。シャリシャリ音でパワーもあと一歩だろうか。ただ手で持つときこの部分を持つと、手で音が反射して手前に来るため、音量・音質ともにかなりの差が出る。

十分な性能にBBenchで11時間越え

 OSは64bit版のWindows 10 Pro。初回起動時のスタート画面(タブレットモード)は1画面半。とくにグループ名は設定されていないが、「東芝お客様登録」以降がプリインストールとなる。デスクトップは壁紙の変更と「ウイルスバスターのセットアップ」へのショートカットが1つとシンプルだ。

 Core i5、メモリ8GB、SSDということもあり、タブレットで使ってもキーボードと合体して使っても、ペンで遊んでもストレスなく動作する。

 ストレージは128GB SSD/M.2のSAMSUNG「MZNLN128HAHQ」。C:ドライブのみの1パーティションで約103GBが割り当てられ空き75.4GB。昨今のPCとしては容量が少なめだろうか。

 Wi-FiとBluetoothはIntel製。キーボード側のEthernetは「TOSHIBA KB Dock USB Ethernet」とUSB接続なのがわかる。

スタート画面
「東芝お客様登録」以降がプリインストール
壁紙の変更と「ウイルスバスターのセットアップ」へのショートカットが1つ
ストレージは128GB SSD/M.2のSAMSUNG「MZNLN128HAHQ」。Wi-FiとBluetoothはIntel製。キーボード側のEthernetは「TOSHIBA KB Dock USB Ethernet」
C:ドライブのみの1パーティションで約103GBが割り当てられている

 プリインストールされているソフトウェアは、東芝フォルダに「画面設定ユーティリティ」。「dynabookシステム情報」、「dynabookスマートフォンリンク」、「dynabookセッティング」。「TruCapture」、「TruNote」、「TruNote Clip」、「TruNote Share」、「TruRecorder」、「アプリケーションの再インストール」、「オンラインマニュアル」、「お問い合わせ」、「東芝お客様登録」など。

 dynabookスマートフォンリンクは、dynabookをBluetoothスピーカー/マイク/キーボード/マウスにするものだ。TruNoteは同社の手書きユーティリティと、TruCaptureなど組み合わせて使うツール群が一式入っている。

dynabookシステム情報
dynabookスマートフォンリンク
dynabookセッティング/ホーム
dynabookセッティング/ecoユーティリティ
dynabookセッティング/起動オプション
dynabookセッティング/高度な設定

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R15、CrystalDiskMark、BBench。結果は以下のとおり。

【表2】ベンチマーク結果
PCMark 10 v1.1.739
PCMark 10 Score3,253
Essentials6,906
App Start-up Score8,150
Video Conferencing Score6,373
Web Browsing Score6,344
Productivity5,428
Spreadsheets Score6,996
Writing Score4,212
Digital Content Creation2,493
Photo Editing Score3,179
Rendering and Visualization Score1,507
Video Editting Score3,238
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelarated 3.02,985
Creative Accelarated 3.03,097
Work Accelarated 2.04,375
Storage4,967
3DMark v2.6.61764
Time Spy324
Fire Strike Ultra223
Fire Strike Extreme414
Fire Strike846
Sky Diver3,344
Cloud Gate6,451
Ice Storm Extreme34,170
Ice Storm49,682
CINEBENCH R15
OpenGL42.73 fps
CPU423 cb
CPU(Single Core)141 cb
CrystalDiskMark 6.0.0
Q32T1 シーケンシャルリード547.028 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト397.131 MB/s
4K Q8T8 ランダムリード401.177 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト241.068 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード209.496 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト170.449 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード33.791 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト75.221 MB/s
BBench(ディスプレイの明るさ0%、電源モード:バッテリー節約機能)
バッテリ残量0%まで11時間26分58秒

 性能はクラス相応と言ったところか。SSDも標準的な速度で爆速ではない。Core i5とは言え、4コア/8スレッドなのでCINEBENCH R15のCPUなどは高いスコアになる。

 バッテリ駆動時間は、約11時間半。めずらしく0%まで動作している。仕様では約10時間なので1時間半ほど上回った。輝度0%でも暗めの室内なら見える明るさなので、たまにヘビーに使いつつで約10時間となりそうだ。


 以上のように、「dynabook D83/J」は、第8世代Core i5-8250U、メモリ8GB、SSD 128GB、ワコムAES方式のペン入力対応のペン付属、そして「インターフェイス重視」と「軽量重視」、2種類のキーボードを選べるキックスタンド式13.3型フルHDの2in1だ。試用した範囲で気になる部分はなく、その作りはさすがと言ったところ。

 大手国産でペン対応、好みに選べるキーボード、そしてWindows Hello対応の顔認証/指紋センサーやLTE対応まで含めたマルチな2in1を探しているユーザーにおすすめできる製品と言えよう。