西川和久の不定期コラム
ワコムAESペンや好みに応じた2種類のキーボードが選べる13.3型2in1「dynabook D83/J」
2018年11月30日 11:00
東芝クライアントコンピューティング株式会社は、13.3型でワコムAESペン対応の2in1「dynabook D83/J」を発売しており、法人向けは9月下旬より展開されている。プロセッサ違いで3タイプあるなか、中位モデルが編集部から送られて来たので試用レポートをお届けしたい。
キーボードを2種類用意した2in1
タブレットとキーボードが合体する2in1と呼ばれるカテゴリが登場してから結構な月日が経った。本体側が安価で折りたたみ式の簡易式キーボードと合体したり、ガッチリ合体してまるでクラムシェルのように使えたり、Surfaceのようにキックスタンドを搭載し、バックライト付きで単品でもそれなりの価格になる専用キーボードを用意するものなど、見た目も含め多種多様だ。
この合体時の使い勝手によって、どちらかと言えばタブレットにキーボードはおまけ、もしくはクラムシェルとしても使えるノートPC替わりと、その性格も異なる。
今回ご紹介する「dynabook D83/J」は、後者に相当するが、「インターフェイス重視」と「軽量重視」、2タイプのキーボードを用意した2in1だ。おもな仕様は以下のとおり。
【表1】dynabook D83/Jの仕様 | |
---|---|
プロセッサ | Core i5-8250U(4コア8スレッド/1.6~3.4GHz/キャッシュ6MB/TDP 15W) |
メモリ | 8GB LPDDR3-2133(交換不可) |
ストレージ | SSD 128GB |
OS | Windows 10 Pro(64bit) |
ディスプレイ | 13.3型フルHD(1,920×1,080ドット)、光沢なし、10点タッチ対応、ワコムAES方式のペン入力対応(付属ペンで4,096段階筆圧/傾き検知/レポートレートも240pps) |
グラフィックス | Intel HD Graphics 620 |
ネットワーク | IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 4.2 |
インターフェイス | USB Type-C(電源コネクタ)×1、音声入出力、500万画素前面カメラ、800万画素背面カメラ |
バッテリ/駆動時間 | リチウムポリマー/約10時間 |
サイズ/重量 | 約316×207×9.1mm(幅×奥行き×高さ)/約799g |
税別価格 | 215,500円から |
キーボードドック(インターフェイス重視モデル) | |
インターフェイス | USB 3.0×2、Gigabit Ethernet、HDMI、ミニD-Sub15ピン |
合体時のサイズ/重量 | 約316.0×217.0×22.1mm(同)/約1,229g |
キーボードドック(軽量重視モデル) | |
インターフェイス | なし |
合体時のサイズ/重量 | 約316.0×212.5×15.1mm(同)/約1,179g |
プロセッサは第8世代Kaby Lake-RのCore i5-8250U。4コア8スレッドでクロックは1.6GHzから最大3.4GHz。キャッシュは6MBでTDPは15W。同社のサイトによると、Core i5-8350U vPro、Core i5-8250U、Core i3-8130Uの3タイプが用意され、手元に届いたのは中位モデルとなる。
メモリは8GB LPDDR3-2133で交換不可。PCMark 10のSystem Informationによると4GB×2の構成のようだ。ストレージはSSD 128GB。OSは64bit版のWindows 10 Proを搭載する。
グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 620。ディスプレイは非光沢13.3型フルHD(1,920×1,080ドット)で、10点タッチとワコムAES方式のペン入力に対応する。前モデルは12.5型だったので大きく進化した部分だ。
ネットワークは、IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 4.2。そのほかのインターフェイスは、USB Type-C(電源コネクタ)×1、音声入出力、500万画素前面カメラ、800万画素背面カメラ。
なお、Windows Hello対応の顔認証/指紋センサーはオプションで2018年12月より、LTE対応ワイヤレスWANモデルは2019年1月を予定している。
サイズは約316×207×9.1mm(幅×奥行き×高さ)、重量約799g。リチウムポリマーバッテリを内蔵し、最大約10時間駆動が可能だ。税別価格は215,500円から。この価格には後述する「インターフェイス重視」か「軽量重視」のどちらかのキーボードが付属する。
冒頭に書いたとおり、付属のキーボードには2種類あり、1つは「インターフェイス重視」。写真からもわかるように、かなりがっしりしたタイプで、キックスタンドと併用し、クラムシェルっぽく使うことができる。インターフェイスは、USB 3.0×2、Gigabit Ehternet、HDMI、ミニD-Sub15ピンを搭載。実測で423g。本体と合わせて1,192gと1kgを少しオーバーする。
もう1つは「軽量重視」でインターフェイスは一切なく、Surfaceのタイプカバーによく似た構造で、後ろ側が本体下のフチに吸着する。実測で374g。本体との合計重量は約1,143g。こちらでも1kgを少し超える。
写真だけの判断だとまるっきり構造が違い、「軽量重視」のほうが圧倒的に軽く見えるが、実際の差はたった49g。2種類必要なのかという疑問すら持つ。
実際操作したところでは、打鍵感はSurfaceのタイプカバーのようにパコパコする「軽量重視」より、ガッチリ打てる「インターフェイス重視」のほうがいいが、サクッと取りつけられるのは「軽量重視」だ。「インターフェイス重視」はキーボード上部の出っ張りに本体を合わせる必要があり、これが意外と手間取りサクッと入らない。どちらを選ぶかは、用途によるといった感じだ。
先に挙げたプロセッサ3タイプに加え、この2つのキーボードがあるため、製品ラインナップとしては計6モデル用意されている。
まず本体は13.3型のキックスタンド付きタブレットだ。オールブラックでなかなかカッコよく、重量も実測で769gとまずまず。片手で楽々持ち上がり、9.1mmと薄めなので、カバンなどへ入れてもかさばらない。
前面は画面中央上に500万画素前面カメラ。背面は中央少し右寄りに800万画素背面カメラ。下半分はキックスタンドになっており、無段階で調整可能だ。倒せる角度はペンを持った写真を参照してほしい。この手の使い方だともっと倒れてほしいところか。
左側面に電源ボタン、音量±ボタン、下のスリットはLスピーカー。上側面はなにもなく、右側面に3.5mmジャック、Type-C(充電用兼)、Rスピーカー。下側面に合体用のコネクタなどを配置。
付属のUSB Type-C対応ACアダプタのサイズは60×60×28mm(幅×奥行き×高さ)、重量198g。出力5V/3A、9V/3A。Type-C接続の拡張アダプタはEhternet、USB、HDMI、ミニD-Sub15ピン、裏側にType-C。ペンは単6形電池1本使用する。
13.3型の非光沢ディスプレイは、これまでいろいろ非光沢パネルを見てきたが、群を抜いてマットな感じだ。これを見てしまうと普通の非光沢は半光沢に見えるほど。明るさ、コントラスト、発色、視野角も良好。とくに赤が鮮やかで非光沢系にある地味な感じもない。なかなか品質の高いパネルが使われている。
もちろんタッチも良好でかつ、指紋跡も付きにくい。ただ欲を言えば1,920×1,080ドットではなく、1,920×1,280ドットなど縦横比3:2のものが使いたいところ。
付属のペンはワコムAES方式対応だ。筆者の場合、絵心がないので落書きしかできないものの、それでも昨今書いたなかでは滑らかであまりPCのペンっぽくなく、書き心地が良いように思う。
キーボードに関しては上記したとおり。タッチパッドはどちらも1枚プレート型で、パームレストも含めそれなりに面積が確保され使いやすい。
ノイズや振動はとくになし、発熱はベンチマークテストなど負荷をかけると上半分(とくに左上)に熱を持つ。持ち続けるには少し熱いかなと思うレベルだ。タブレットの場合、どうしても本体を持つ機会が多いので、できればもう少し熱のコントロールができていればいいのだが……。
サウンドは下左右外向きにスピーカーがあるため、机などに反射せず、そのまま音が左右に逃げる感じとなる。シャリシャリ音でパワーもあと一歩だろうか。ただ手で持つときこの部分を持つと、手で音が反射して手前に来るため、音量・音質ともにかなりの差が出る。
十分な性能にBBenchで11時間越え
OSは64bit版のWindows 10 Pro。初回起動時のスタート画面(タブレットモード)は1画面半。とくにグループ名は設定されていないが、「東芝お客様登録」以降がプリインストールとなる。デスクトップは壁紙の変更と「ウイルスバスターのセットアップ」へのショートカットが1つとシンプルだ。
Core i5、メモリ8GB、SSDということもあり、タブレットで使ってもキーボードと合体して使っても、ペンで遊んでもストレスなく動作する。
ストレージは128GB SSD/M.2のSAMSUNG「MZNLN128HAHQ」。C:ドライブのみの1パーティションで約103GBが割り当てられ空き75.4GB。昨今のPCとしては容量が少なめだろうか。
Wi-FiとBluetoothはIntel製。キーボード側のEthernetは「TOSHIBA KB Dock USB Ethernet」とUSB接続なのがわかる。
プリインストールされているソフトウェアは、東芝フォルダに「画面設定ユーティリティ」。「dynabookシステム情報」、「dynabookスマートフォンリンク」、「dynabookセッティング」。「TruCapture」、「TruNote」、「TruNote Clip」、「TruNote Share」、「TruRecorder」、「アプリケーションの再インストール」、「オンラインマニュアル」、「お問い合わせ」、「東芝お客様登録」など。
dynabookスマートフォンリンクは、dynabookをBluetoothスピーカー/マイク/キーボード/マウスにするものだ。TruNoteは同社の手書きユーティリティと、TruCaptureなど組み合わせて使うツール群が一式入っている。
ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R15、CrystalDiskMark、BBench。結果は以下のとおり。
【表2】ベンチマーク結果 | |
---|---|
PCMark 10 v1.1.739 | |
PCMark 10 Score | 3,253 |
Essentials | 6,906 |
App Start-up Score | 8,150 |
Video Conferencing Score | 6,373 |
Web Browsing Score | 6,344 |
Productivity | 5,428 |
Spreadsheets Score | 6,996 |
Writing Score | 4,212 |
Digital Content Creation | 2,493 |
Photo Editing Score | 3,179 |
Rendering and Visualization Score | 1,507 |
Video Editting Score | 3,238 |
PCMark 8 v2.8.704 | |
Home Accelarated 3.0 | 2,985 |
Creative Accelarated 3.0 | 3,097 |
Work Accelarated 2.0 | 4,375 |
Storage | 4,967 |
3DMark v2.6.61764 | |
Time Spy | 324 |
Fire Strike Ultra | 223 |
Fire Strike Extreme | 414 |
Fire Strike | 846 |
Sky Diver | 3,344 |
Cloud Gate | 6,451 |
Ice Storm Extreme | 34,170 |
Ice Storm | 49,682 |
CINEBENCH R15 | |
OpenGL | 42.73 fps |
CPU | 423 cb |
CPU(Single Core) | 141 cb |
CrystalDiskMark 6.0.0 | |
Q32T1 シーケンシャルリード | 547.028 MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 397.131 MB/s |
4K Q8T8 ランダムリード | 401.177 MB/s |
4K Q8T8 ランダムライト | 241.068 MB/s |
4K Q32T1 ランダムリード | 209.496 MB/s |
4K Q32T1 ランダムライト | 170.449 MB/s |
4K Q1T1 ランダムリード | 33.791 MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 75.221 MB/s |
BBench(ディスプレイの明るさ0%、電源モード:バッテリー節約機能) | |
バッテリ残量0%まで | 11時間26分58秒 |
性能はクラス相応と言ったところか。SSDも標準的な速度で爆速ではない。Core i5とは言え、4コア/8スレッドなのでCINEBENCH R15のCPUなどは高いスコアになる。
バッテリ駆動時間は、約11時間半。めずらしく0%まで動作している。仕様では約10時間なので1時間半ほど上回った。輝度0%でも暗めの室内なら見える明るさなので、たまにヘビーに使いつつで約10時間となりそうだ。
以上のように、「dynabook D83/J」は、第8世代Core i5-8250U、メモリ8GB、SSD 128GB、ワコムAES方式のペン入力対応のペン付属、そして「インターフェイス重視」と「軽量重視」、2種類のキーボードを選べるキックスタンド式13.3型フルHDの2in1だ。試用した範囲で気になる部分はなく、その作りはさすがと言ったところ。
大手国産でペン対応、好みに選べるキーボード、そしてWindows Hello対応の顔認証/指紋センサーやLTE対応まで含めたマルチな2in1を探しているユーザーにおすすめできる製品と言えよう。