実録! 俺のバックアップ術
Windows Home Server同等の利便性を求め、個人向けWindows Storage Server機を導入
~平澤寿康編
2017年2月28日 00:00
筆者は以前まで、クライアントPCのバックアップやファイルサーバー、リモートアクセスサーバー用途として、「Windows Home Server(WHS)」シリーズを長年活用していた。初代WHSは発売と同時に導入し、その後継OSであるWHS 2011も発売と同時に利用を開始し、非常に便利に活用してきた。
WHSシリーズを使うようになった大きな理由の1つが、クライアントPCのバックアップ機能だ。LANに接続されているクライアントPCを自動的にバックアップ可能なのはもちろん、リストアもLAN経由で容易に行なえる機能が備わっていたため、手間をかけずにバックアップを実施したかった筆者にとって、これ以上ない存在だったわけだ。
しかし、WHSシリーズは、WHS 2011を最後に開発が終了し、そのWHS 2011も2016年4月12日にメインストリームサポートが終了。これを持って、WHSシリーズはその役割を終えた形となった。
そこで、WHSの代替として導入したのが、OSとして「Windows Storage Server 2011 R2 Essentials」を採用している、個人・SOHO向けストレージサーバー製品だ。
Windows Storage Server 2012 R2 Essentialsは、 Windows Server 2012 R2をベースとしてストレージサーバー向けに特化したOSで、エンタープライズ向けの機能などは省かれているものの、LAN内でのファイル共有はもちろん、メディアサーバー機能、外出先からインターネット経由で保存ファイルにアクセスできるリモートアクセス機能、クライアントPCのバックアップやレストア機能など、標準のサーバー関連機能はしっかりと網羅している。
また、WHS同様にコネクタソフトウェアをクライアントPCにインストールすることで、クライアントPCの定期的な自動バックアップも可能となる。
ストレージ管理はWindows ServerやWindows 10などと同様の「記憶域スペース」が利用できるため、柔軟なストレージ管理が行なえる。そして、ストレージに保存するファイルの重複をチェックして容量の無駄遣いを省く重複除外機能も用意されている。Windows Serverベースということで、OneDriveやOffice 365などとの連携も非常に容易なのはもちろん、その他のクラウドサービスとの連携や機能拡張が柔軟に行なえるという点も大きな魅力となっている。
このように、Windows Storage Server 2012 R2 Essentialsは、WHSが備えていた機能を、ほぼまんべんなく網羅しているため、WHSの代替としてベストと考え導入したわけだ。
クライアントPCの自動バックアップ機能はWHSとほぼ同等
さて、Windows Storage Server 2012 R2 EssentialsのクライアントPCバックアップ機能だが、機能面や利便性はWHSとほぼ同等となっている。
クライアントPCにコネクタソフトウェアを導入し、サーバーに登録するとともに、自動バックアップを有効にしておけば、毎日自動的にバックアップが実施される。初回こそフルバックアップとなるため、バックアップ完了まで時間がかかるが、それ以降は差分バックアップとなるため、数分でバックアップが完了する。
もちろん、バックアップはバックグラウンドで自動的に実施され、PCを使っている状態でも問題なく実行される。筆者は、毎日深夜1時以降にバックアップを実施するように設定しており、たまにPCを使っている状態でバックアップが開始となる場合も少なくないが、その場合でも大きな負荷がかかっているという印象はなく、気が付いたらバックアップが終了している、ということがほとんどだ。
また、PCがスリープ状態にある場合でも、自動的に復帰してバックアップが行なわれる点も嬉しい部分。ノートPCでは、液晶を閉じてスリープさせている状態でも、復帰してバックアップが実行されるため、毎日バックアップのためにスリープさせずに運用する必要がない。
つまり、一度バックアップの設定を済ませてしまえば、それ以降バックアップに関してユーザーが一切意識することなく、全て自動的に行われることになる。これも、WHSのバックアップ機能と全く同じだ。WHSと同等のバックアップ手段が実現できたという意味で、Windows Storage Server 2012 R2 Essentialsの導入は筆者にとって大正解だった。
いざという時のリストアも、WHS同様に比較的簡単に行なえるようになっている。
クライアントPCのハードウェア構成に応じたリストアディスクを作成する機能が用意されており、そちらを作成しておけば、LAN経由でのフルリストアが可能。現時点で、導入から今までにフルリストアを行なう事態は発生していないが、導入時にテスト用PCで試したところ、問題なく簡単にフルリストアできたため、心配はしていない。
それとは別に、これまで撮影した写真や原稿などの元ファイルは、クライアントPCバックアップと分けて、1~2カ月程度の期間でサーバーに手動でコピーするようにしている。これは、過去仕事で使った写真や原稿などのデータには、直接アクセスできるようにしておきたいためだ。
筆者は、過去1年間ほどの写真や原稿などのデータは、ほぼ全てメインで利用しているノートPCに保存するようにしている。そして、それ以前のデータはサーバーに置いてあるわけだが、そちらにも容易に参照できるようにしておきたいために、手間はかかるものの、手動でコピーしている。
これもバックアップの範疇に入るとは思うが、個人的にはバックアップとは考えずに実行している。これで、NASなどと同様にLAN経由でファイルに直接アクセスしたり、リモートアクセス機能を利用して外出先からも容易にアクセスできるようになっている。
OS単体売りはなく、ハードウェアに導入済みとしてのみ提供
Windows Storage Server 2012 R2 Essentialsは、OS単体で販売されておらず、ハードウェアにバンドルする形でのみ提供されている。と言うわけで筆者は、Windows Storage Server 2012 R2 Essentialsが導入されているThecus製のストレージサーバー「W4000+」を導入している。原稿執筆時の価格は8万円前後だ。
W4000+は、本体前面に4基3.5インチHDDベイを備え、HDDレスで販売されている、いわゆるNASキットに近い性格の製品だ。
CPUにAtom D2701、メモリは4GBと、サーバーマシンとして考えるとやや非力な印象もあるが、基本的に自宅での利用のため大勢のユーザーを管理したり、大量のファイルアクセスが発生することもないため、必要十分な性能といえる。実際に自宅で使用している場面で、ファイルアクセスが遅いと感じたことはこれまで一度もない。
ストレージデバイスは、Western DigitalのNAS向けHDD、WD Redシリーズの6TBモデル「WD60EFRX」を2基装着し、記憶域スペースで「双方向ミラー」設定で利用することで冗長性を確保している。なお、OSはあらかじめ本体内に装着されている2.5インチSSDにインストールされている。
自宅では、このW4000+を部屋の隅にあるPCの上に無造作に置いて利用している。いつでもすぐに手が届く場所ではないが、ハードウェアを触る場面はHDDの増設や交換といったメンテナンスを行なう時だけなので、邪魔にならなず風通しの良いところに置いて使っている。
さらなる冗長性の確保が今後の課題
このように、Windows Storage Server 2012 R2 Essentialsの導入により、常にクライアントPCの最新バックアップがあり、過去のデータにもどこからでも即座にアクセスできる環境が実現できており、最低限ではあるが2重の冗長性は確保できているので、バックアップ環境として個人的にははまずまず満足している。
ただ、課題もあると認識している。最大の課題は、やはりさらなる冗長性の確保だろう。現時点では、搭載した2台のHDDを双方向ミラー設定で運用しているため、クライアントPCのバックアップデータや、別途転送している写真、原稿などのデータは全て2重で保持されている。
ただ、万が一の事態を考えて、できれば外部にサーバー用のバックアップストレージを用意して、サーバー内のストレージ領域を丸ごとバックアップするなどの対策を施したい。
容量無制限で利用できるクラウドサービスを活用してバックアップするという手段も考えているが、現時点ではそちらもまだ実行に移していない。クラウドサービスは便利なのは間違いなく、筆者もさまざまな場面で活用している。ただ、手持ちの全てのデータをクラウドに預けるのは、個人的に抵抗があるため、なかなか踏ん切りがつなかい状況だ。
とりあえずは、大容量のアーカイブ用HDDを用意して、サーバー内のストレージ領域を丸ごとバックアップし、3重の冗長性を確保するところから始めたいと考えているところだ。