買い物山脈
レノボ・ジャパン「ThinkPad X1 Carbon」
~プライベートでも利用するようになった抜群の高性能ノート
(2015/5/11 14:58)
- 購入価格
- 157,500円(税抜)
- 購入時期
- 2015年4月18日
- 使用期間
- 約3週間
筆者の個人的な「ThinkPad」シリーズへの思い入れ、というものはそう大したものではないのだが、必要な要素を選んでいくといつもThinkPadに辿り着くため、結果的にとても気に入って選んでしまうという形が多い。
ノートPCとして初めて購入したのはソニーのバイオ「N505」(PCG-N505)だったが、その次に購入したのが「ThinkPad X30」の10周年記念モデルだった。X30用の英語キーボードのパーツを後から購入して装着し、とても気に入って使っていた。ケータイ Watch編集者/記者として仕事するようになって酷使し始めたことで、X30は基板がダメになってしまい、修理に出して交換したのだが、その1年後に再度同じ症状が発生(しかも、出張中のラスベガスのホテルで途方に暮れた)。その後、最終的にはベゼル(キーボード外周の枠になっているパーツ)の一番細い部分にヒビが入って全体的な強度にも不安が生じたことなどもあり、当時発表されたばかりだった「ThinkPad X60s」に買い替えた。
9年も使ってしまったX60s
X60sでもキーボードを英語版に換装し使い始めたが、正直言ってキーボードのタッチはX30より劣る、ふにゃっとしたコシのないもので、あまり好みではなかった。しかしそのフィーリング以外は、すこぶる快調だった。それから数年し、おりしもSSDがブームになり、なおかつX60sに装着できるタイプのSSDが早くもマイナーになりつつあったので、Windows 7への移行を含めて、40GBのIntel製SSDに換装した。Windows XP+HDD時代は、かったるかった起動速度や反応も非常にキビキビとしたものになり、ハードウェア的には数年の型落ちだったマシンが見事に息を吹き返したように感じられた。フルサイズセンサーで2,400万画素の一眼レフカメラの「D750」と組み合わせるようになった最近こそ、写真の表示にもたつきが感じられるようになったが、取材先でテキストエディタを起動しブラウザを立ち上げる程度ならなんら不満はなかった。
X60sの問題点を無理やりに挙げるとするなら、逆説的だが、“壊れなかった”こと、と言えるかもしれない。
X60sは2006年に購入し、SSD+Windows 7への換装は行なったことと、バッテリを2度ほど交換し、最後はヒンジ側に少し飛び出る拡張バッテリへと移行したことを除いては、2015年4月の時点でも特に故障することなく動いていた。実に9年も使っていたことになる。
今どき4:3の液晶で、隅に誇らしげに「IBM」のロゴが入っているThinkPadを広げると、ある時までは珍しがられて話のネタにもなったが、最近では「IBM時代のThinkPad? コイツ大丈夫か?」と顔に現われる人が出始めた(気がする)のと、さすがに自分でもどうかと思い始めた。業務的にも、1,024×768ドットの画面解像度が、自ら発行するコンテンツを確認する際にキツくなってきたことも大きい。
あとは、長年の使用で、キーボードやパームレストの辺りが汚れて、夏場などは特にネトっとする時があると感じ始めたこともある(笑)。まぁ、9年も仕事で使えば、汚くもなるというものだ。デスクトップPCのキーボードは、キートップと本体ベゼルを年1回お湯と洗剤で洗っているが(ちなみに、キートップを洗濯ネットに入れて洗濯機で服と一緒に洗う知人もいる)、これは潔癖というより、余分な汚れで、耐久性を損ないたくないという思いからだ。電子機器であろうと道具を適切なコンディションに保つのは、大工がカンナの手入れをするのと同じだと思っている。しかし、ノートPCのキートップは引き抜きで破損する可能性が(経験的にも)高く、本体を分解してパームレスト部分を水洗いというのも分解、修理並の手間が掛かる。
ちなみにX60sはプライベートでは利用せず、社内では会議などデスクを離れて作業する時しか使わなかったので、ほとんど取材による外出先でのみ使っていたことになる。四六時中起動していたわけではない点が、長い寿命に寄与したのだろう。故障せず、理不尽なエラーにもほとんど遭遇しなかったため、引退させるのは多少もったいない感じもある。海外を含めてさまざまな場所で使ってきた思い入れもあるが、使用期間が10年に迫ると、いつ不具合を起こすか分からない時限爆弾を抱えている感覚が出てくるもの確か。ということで、買い換えを決意した。今はただ「9年間、おつかれさま」と言いたい。
第3世代ThinkPad X1 Carbon
そうした経緯もあって、発表されたばかりだった「ThinkPad X1 Carbon」(第3世代、20BS)の購入を検討し始めた。
プライベートでは「ThinkPad X100s」、「ThinkPad X1」(※Carbonではない)などを購入し、いずれも英語キーボードに換装して使っていた。X1の仕様は新しいThinkPadへの過渡期的製品といった感じで、仕事向きとは思っていなかった。そして、その長く続いた過渡期の最後というか、時代の流れに最も翻弄されていたのが前の世代のX1 Carbonだったと感じていた。そんな中、X60sを温存しながら辛抱強く待っていたところに発表されたのが第3世代のX1 Carbonだった。
心情的には“帰ってきたX1 Carbon”と言ったところだろうか。極めて個人的な感覚、と断っておくが、クラムシェル型のノートPCに、筆者は、未知のものを含む革新的な進化を求めていない。仕事の道具として、非常に現実的な姿になって帰ってきたX1 Carbonは、そうした意味でも歓迎されるものだった。
さて、第3世代のX1 Carbonで筆者が選んだ構成は、ディスプレイが2,560×1,440ドットでノングレアの非タッチパネル、CPUはCore i7-5500U、無線LANがIEEE 802.11ac対応、SSDは256GBのPCI Expressというものだ。そして忘れてはいけないのが英語キーボードである。
レノボのサイトで注文したのだが、さかんに宣伝されている“米沢生産”とやらでは、少なくとも筆者の注文時には英語キーボードを選択できず、日本語キーボードのみだった。そのため、ページのすみっこに残されていた中国生産モデルを選び、英語キーボードを選択して注文した。X1ではキーボードを後から交換できたが、現在のX1 Carbonはキーボードが本体と一体化されていて、違う言語のキーボードに交換できないため、注文時に選ぶ必要があるからだ。
というわけで、メイド・イン・ジャパンが謳われている第3世代のX1 Carbonだが、筆者宅に届いたのは「Made In China」が印字されたモデルとなっている。と言っても、残念とかそういう感覚は特にないのだが。
ちなみに3代目というと家業をつぶす代として有名(?)だが、筆者が今も(セミリタイアさせて)自宅で使っているニコンの「D3」は紛れも無く名機だし、遡れば「F3」も名機であり、個人的には第3世代を気に入っている。ThinkPad X60s(X60含む)に至っては、当時の発表会で、あの内藤氏が「社内では“第3世代ThinkPad”と呼んでいる」と太鼓判を押す第3世代っぷり。こじつけっぽくはあるが、3代目X1 Carbonは、購入前の胸騒ぎという意味でも、期待は大きかったのだ(笑)。
フルサイズのキーピッチ
デスクトップマシンではフルサイズのキーボードを使っているため、同じキーピッチのX1 Carbonは、やや狭めだったX60sよりさぞかし仕事がしやすいだろうと思っていたのだが、9年におよぶX60sへの身体の最適化は、本人が考えていた以上に進んでいたようだ。X1 Carbonが手元に届いてから、初めて取材に出かけ、膝の上でX1 Carbonを広げて文字を打とうとした時、「キーピッチが広すぎる!」と感じたのだ(笑)。
肘や手首はX60sの本体幅やキーピッチを覚えており、さらに外出先という環境と感覚的に結びついており、デスクトップのキーボードと同じで打ちやすいはずなのに、外出先で文字を打とうとすると、広くすぎてうまく打てないという、逆転現象を感じてしまった。自分の中でダブルスタンダードが確立されていたのである。
もっとも、この違和感は最初のうちだけで、慣れると、デスクトップと同じキーピッチであることなどはプラスに作用していると感じられるようになった。
FnキーのLEDが常時点灯
前世代のX1 Carbonでかなりだめ出しを食らった感のあるファンクションキーの段は、今世代で、オプションとして販売しているBluetoothキーボードなどと同じ、Windows 8.1世代の製品として常識的なデザインのものになった。
ただし、標準では音量や画面輝度といった機能がキーに割り当てられており、例えば元々「F4」の場所にある「マイクミュート」キーは、右下に小さく「F4」と書かれている。従来のファンクションキーとして利用する場合は、Shiftキーよろしく、左隅のFnキーを押しながら「マイクミュート/F4」を押すと、「F4」が入力されるという、コンビネーション操作になっている。これは入れ替えることもでき、「ファンクションロック」を有効にすれば、通常はファンクションキーの段が従来のファンクションキーとして機能し、Fnキーを押しながら押すと新参者であるマイクミュートなどになる。
キーボードで大きな不満ががあるとすれば、このファンクションロックの状態を示す緑色のLEDが「Fn」キーに内蔵されており、筆者のように、常時、従来のファンクションキーとして使いたい場合、左下に煌々とこのLEDが常時点灯している状態になるのだ。しかも、構造上、シーリングが甘く、キートップ下の基板側に光が漏れていて、安っぽい。ファンクションロックの有効化は常態ではないとするのは結構だが、LEDの点灯についても入れ替えや、どちらの状態で点灯するか、選択ができるようになって欲しかった。
ちなみにBIOSの設定で左下のFnキーとCtrlキーを入れ替えることができるが、筆者はもともとCtrlキーは内側を押すため、入れ替えていない。
14型2,560×1,440ドットに苦戦
14型で2,560×1,440ドットという解像度は、深く考えずに選んでしまったが、2015年5月現在、微妙に曲者だと感じている。これは別にX1 Carbonに限ったことではないが、ドットが小さすぎて、ソフトウェアのメニューなど、基本的な表示部分が、100%の等倍表示だと小さすぎて見にくいのだ。高解像度の写真を確認するにはうってつけだが、とんでもなく小さく表示されるものがある。
例えば、買う前はブラウザで従来よりも縦に長く表示できる、と喜んでいたのだが、ドットの小ささから、全体を拡大表示せざるを得ない。結局23型で縦が1,080ドットか1,200ドットのディスプレイを使っている感覚だ。
これはテキストエディタ(秀丸)でも同様で、14型というサイズとラップトップの距離感で認識できる文字の小ささには限界があり、縦のドット数がいかに多かろうと、その恩恵を際限なく受けられるわけではないと、身に染みて感じた次第である。
しばらくは等倍と拡大の試行錯誤が続きそうだ。
LightroomとUstreamがサクサク
今回購入したX1 Carbonがこれまでと違うのは、プライベートでも活用しようと考えている点だ。そのため、CPUはCore i7-5500Uを選択し、無線LANもなるべく高速な11acタイプを選んだ。可能な範囲でなるべく妥協しないようにしたのだ。
プライベートな用途の中で、負荷の高い作業は、RAW画像の現像とUstreamなどの動画配信(のお手伝い)だ。これまでは、RAW画像の現像はデスクトップ以外ではスペックの面で現実的ではなかったため、「Lightroom」はデスクトップPCのみで利用していたが、X1 Carbonは、画像の保存場所という問題を除けば、デスクトップと変わらぬパワフルさだ。旅先の旅館で、RAW現像や、D750で撮影した動画の簡単な編集も問題なく行なえる。今更という感じもあるが、ノートPCにハイスペックを求めてこなかった筆者には、新たな境地なのである。
Lightroomがサクサク動くという点は、RAWだけではなく、JPEGを使っている仕事でも影響は大きかった。これまでは重かったので、エクスプローラーで選別し、簡易的な画像縮小専用ツールを組み合わせて作業していたのだが、X1 CarbonではLightroom上で選別と書き出しができるようになり、外出先での画像処理が格段に楽になった。
Ustreamなどの動画配信は、筆者が運営しているものではなく、友人の配信を機材の面で手伝っているものだ。エスケイネットの「MonsterX Live」と組み合わせてHD配信(720p)を行なっているが、そのままだとエンコードの負荷が結構高い。最近ではIntel CPUの「Quick Sync Video」(QSV)をエンコードに利用できるオープンソースの「Open Broadcaster Software」(OBS)というソフトウェアを使っているため、エンコード負荷を下げられている。X1 Carbonのi7-5500Uでは、QSVのおかげもあり、UstreamのHD配信(720p、2Mbps)ではCPU負荷が平均して20%台だった。
X1(Core i5)を使っていた時でもQSVのおかげでCPU負荷はさほど高くなかったが、この頃は、ブルースクリーンでクラッシュする事故が定期的に発生し、辟易していた。今回のX1 Carbonは、さっそく配信に使う機会があったが、2時間以上の配信で一度もエラーを吐かずに配信を終えられた。ただこれは、ソフトウェアのバージョンアップのおかげなのか、ハードウェアを刷新したためなのかは分からない。
SDカードスロットがない
FnキーのLEDの点灯が気になる点を除けば、大きな不満はない……、と言いたいところだが、購入前から不満に思いつつも諦めていたのが、SDカードスロットを搭載しない点だ。薄型化を追求するX1 Carbonでは、有線LANの端子はアダプタ経由になった。ACアダプタの端子もいつのまにか丸型から平たい四角型に変更されたため、予備のACアダプタも買い直した。
着々と進んでいたインターフェイス淘汰の波の中で、SDカードスロットがリストラの憂き目に遭うのは仕方がないとも思えるが、一眼レフカメラをプライベートでも仕事でも使う筆者にとっては残念でならない。結局、仕事でもプライベートでも必ず小さなSDカードリーダーを持ち歩く羽目になり、加えて、それを忘れたり紛失したりするリスクも高まる。機種の選択を覆すほどの要素ではないが、これが最も残念だった点だ。
ACアダプタ
ACアダプタについては、最新モデルは軽量小型化されているので、予備の買い直しも前向きに捉えた。X1 Carbonに同梱されるのは45Wの長方形スリムタイプ。(これまでのことを考えると)かなり軽量で、メガネプラグ側のケーブルをサードパーティ製の小型のプラグなどに変えれば、「65WトラベルACアダプター」よりも軽量化できるだろう。
持ち運び用として65W トラベル ACアダプターも購入した。このACアダプタは65Wでありながら、前述の45WのACアダプタと変わらない重量を実現したものだ。ただ、トラベルと名付けられているものの、プラグは折りたたみ式ではない。海外のプラグに対応するため、プラグのパーツを取り外せるが、電源プラグの金属パーツをむき出しで鞄に入れるのは少々気が引ける。また、プラグは本体から直接生える形なので、周りに余裕のないコンセントでは困りそうだ。正直なところ、65Wというワット数に意味を見出せなければ、同梱の45WのACアダプタの方がサイズ、重量ともバランスが良く、使いやすいと感じた。
本気に応えられるPC
筆者はこれまで、ノートPCは“サブマシン”と常に位置付け、趣味も仕事も、主要な作業はすべてデスクトップPCで行なってきた。そのため、これまでのノートPCに求めるスペックも、そこそこのものばかりだった。
しかし今回のX1 Carbonは、デスクトップでの作業の大半を肩代わりできるようなスペックで選んだ本気のモデルだ。排熱処理や通信速度、SSDの速度などの面でも、バランスよく成熟しているのではないか、と感じている。今後は、これまでなら諦めたり、ためらったりしていたようなヘビーな使い方にも挑戦してみたいと思っている。