買い物山脈

約6万円のiPad Pro用Magic Keyboardを購入。ファンクションキー列追加で実用性向上に大満足

製品名
13インチiPad Pro(M4)用Magic Keyboard ブラック
購入価格
5万9,800円
購入時期
2024年6月28日
使用期間
約2カ月
「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです
「Magic Keyboard」を13インチiPad Pro(M4)と合体させた状態。ほかに11インチ用もラインナップされる

 厚みわずか5.1mmと異次元のスリムさへと進化を遂げた、新しい13インチiPad Pro(M4)。そのiPad Proと組み合わせてテキスト入力を快適に行なえるようにする専用キーボード「Magic Keyboard」もまた、モデルチェンジにあわせてリニューアルされた。

 実売価格は5万9,800円と、ミドルクラスのタブレットが1台買えてしまいかねないお値段だが、果たしてそれだけの価値はあるのだろうか。購入して約2カ月、実際の使用感についてレポートをお届けする。

Magic Keyboardの購入に至った理由

 このMagic Keyboardは、iPad Proではお馴染みのオプションで、これまでiPad Proのモデルチェンジに合わせて何度かリニューアルされている。筆者は過去モデルはいずれも利用経験はあるが、借用して数週間ほど使った程度ということで、あくまでお試しレベル。購入して長期にわたって使うのは今回が初めてだ。

外観。iPadを吸着させる背面パネルとキーボード面から構成される。この両者の分離はできない
背面パネルに13インチiPad Pro(M4)をマグネットで吸着させる。カメラ位置を合わせるとスムーズだ
合体させた状態。見た目はノートPCと相違ない
カメラ部は穴が空いておりカメラの段差を吸収できる
横から見たところ。ほぼ直角に立てることもできる
最大限まで倒したところ。180度開くことはできない

 これまで購入に至らなかった理由は大きく分けて2つある。1つは実測1,370gとかなりの重量があり、持ち歩いて使う自分のライフスタイルに適していなかったこと。なにせ筆者が常用しているWindowsノートよりも重いため、いまいち食指が動かなかったというわけだ。

 今回はこの重量が、実測1,239gまで軽量化された。差は131gと小型スマホ1台分程度で、劇的に軽くなったわけではないが、厚みが減ったこととの合わせ技で、体感的にはもう少し軽くなったように感じる。決して百点満点ではないが、及第点という判断だ。

重量は実測で1,239g。納得はしていないが許容範囲ではある
持ち運んでの利用にも向いている。東海道新幹線の座席テーブルにもぴったりだ

 これまで購入に至らなかった理由のもう1つは、iPadでテキスト入力を行なうにあたり、筆者のニーズを満たすアプリが見つからなかったという個人的な事情によるものだ。

 筆者が必要としていたのは、まずDropboxに保存されているテキストを直接呼び出して編集できること。これに加えて、1行あたりの表示文字数をはじめとした書式を指定できるというのが必須条件だったのだが、後者を満たすアプリをこれまで見つけることができず、iPadを使ってテキストを入力すること自体を諦めていた。

 今回「iライターズ」というアプリがその条件をおおむね満たしていることが分かったため、このアプリ×iPadによるテキスト入力環境を強化すべく、本製品の購入に至ったというわけだ。そこそこ歴史の長いアプリゆえ、本腰を入れて探していれば、もっと早く見つけられていたかもしれないが、そこは後の祭りだ。

「iライターズ」と組み合わせるとさながらテキスト編集の専用機のように使える
左右の余白を指定できるため、1行あたりの文字数を調整できるのはありがたい

ファンクションキー列が追加されパワーアップ

 iライターズの話をする前に、「Magic Keyboard」の具体的な仕様をおさらいしておこう。本製品は、iPad Proをマグネットで吸着させ、ノートPCライクなスタイルで打鍵できるのが特徴だ。

 マグネットで吸着させると、Smart Connector経由でiPadから本製品へと給電されるので、キーボード単体で電力供給や充電を行なう必要はない。もちろんペアリングも不要だ。また背面ヒンジ部の側面にあるUSB Type-Cポートを使い、本製品経由でiPad Proを充電することもできる。

通信および給電はSmart Connector(3つの丸印)経由で行なわれる。ペアリングなどの必要はない
ヒンジ部左側面にUSB Type-Cポートを搭載。ここに給電ケーブルをつなぐとiPadごと充電できる
キーボード部は実測5mm前後と薄い。特にひ弱な印象は受けない

 これらのギミックは従来モデルと変わらないが、キーボードの最上段にファンクションキー列が追加されたのは従来モデルからの大きな進化だ。中でもescキーが使えるようになったのは、筆者のように普段はWindowsをメインに使っているユーザーにとって、操作を共通化できるという意味でプラスだ。本製品の新旧を見分けるには、このファンクションキー列の有無を見るのが何より手っ取り早い。

 キーピッチについては19mmと余裕があり、窮屈さはまったく感じない。使い始めてすぐの頃は、左下のShiftキーを押そうとして、うっかり隣のZキーを押してしまうことが何度かあったが、これは筆者が普段使っているキーボードに比べてShiftキーの横幅が狭いことによるもので、しばらく使っているうちに解消された。

 キーボード手前のトラックパッドも、従来よりも面積が広くなり、操作が容易になっている。実際に打鍵していると、右手の親指付け根がこのトラックパッドと頻繁に接触するのだが、それによってポインタが不意に動くということもない。こうした点を意識せずに操作に集中できることに、完成度の高さを感じさせる。

キーボード左半分のアップ。最上段にファンクションキーが追加されたことで、escキー(左上)が使えるようになった。Windowsに慣れているユーザーが併用するにはプラスだ
キーボード右半分のアップ。極端に幅が狭くなっているキーも見られない
iPadを持ち上げているパネルは垂直になっている。以前のモデルではこれが前傾状態でキー操作を邪魔しており、本モデルでは指が運びやすくなった
キーピッチも19mmと余裕がある
本体幅は280mm前後。おおむねA4サイズだ
キーボードの奥から手前までは182mm前後

テキスト入力を巡るアプリや用途あれこれ

 続いて筆者のテキスト入力まわりの環境を紹介する。かなり個人的な話なので、興味のない方はこの章を読み飛ばしていただいて構わない。

 今回筆者が新たに導入した「iライターズ」はテキストエディタに分類されるアプリで、Dropboxの中にあるテキストを編集できる機能を搭載している。これまでは「Textforce」というiOSアプリを使っていたのだが、iPadには最適化されていなかった上、最近になって公開自体が終了したことから、iPadで使えるエディタを本腰を入れて探さざるを得なくなり、その結果この「iライターズ」に行き当たったというわけだ。

「iライターズ」。Dropbox内にあるテキストファイルをiPad上で編集できる。価格は400円
ファイルを開くなどの操作は右上のアイコンをタップして行なう
iPadにおける日本語入力まわりの設定はiPadOSの設定画面の「一般」→「キーボード」から行なう。このあたりはほかのアプリと変わらない

 もっともTextforceと比べても、機能は非常に多い。具体的には、フォントサイズの変更や、フォントの指定、行間隔の変更などのカスタマイズが行なえる。自動保存に対応しているのもポイントだ。

 また左右の余白を設定することで、1行に表示される文字数を調整できるのもありがたい。テキストを入力するのに当たり、この13インチiPad Proの横幅すべてを使うのは、さすがに広すぎるからだ。欲を言えば、テキスト表示エリアと背景エリアの色を変えられれば見分けがついてなおよかったのだが、これについては試した限りできないようだ。

「iライターズ」の環境設定。フォントの種類やサイズ、行間隔などが変えられる。筆者はフォントサイズをやや大きめの「24」に設定している
余白まわりの設定の自由度が高いのが特徴。左右の余白を「200」前後にすると、1行に表示できる文字数が40文字前後という、Web表示に近い値になる
自動保存機能もあるので安心して作業に集中できる
画面の色調整機能も備える。個人的にはテキストの表示エリアと背景エリアを別の色で指定できる機能も欲しいところ
iPadOS側の画面分割機能である「SplitView」を利用し、余った部分にSNSなどを表示することも可能

 ちなみに筆者の場合、すでにあるテキストファイルの編集が主用途で、新規作成をする機会はほとんどない。筆者は音声入力で原稿の下書きをすることが多いのだが、音声入力では「仕様」、「使用」など、同音異義語が意図通りに変換されないことがよくある。しかしiPadOSであれば、こうした誤変換も、ダブルタップで単語を選択しての再変換が簡単にできる。

 こうした再変換は、WindowsおよびiPadOS(およびiOS)では可能だが、Androidでは行なえない。テキストファイルをいちから作成するのが主用途であれば、Androidタブレットで適当な機種を見繕っていたかもしれないが、筆者の場合はこうした事情から、iPadが当初からの有力候補だったというわけだ。

 なお漢字変換を半自動で行なってくれるiPadOSの機能「ライブ変換」は、いまのところ利用していない。自分で変換箇所を区切りながら入力していく方が慣れていて扱いやすいというのもあるが、ライブ変換はあくまでもテキストの新規作成向けの機能であって、単語単位での編集とは極めて相性が悪いというのがその理由だ。

文中の単語を範囲選択すると、画面の下段に別の変換候補が表示される。音声入力で意図通りに変換されなかった単語を再変換するには便利だ
罫線表示にも対応している。個人的には行番号は1行ごとに表示してほしいのだが、5行ごとにしか表示できないようだ
原稿用紙のようにマス目を表示することもできる。この状態で横書きを縦書きに切り替えれば紙の原稿用紙に似た外観になる

汚れを目立たなくする外装保護アクセサリを買ってみた

 ところでこの「Magic Keyboard」の数少ない問題点の1つに、表面に手の脂や汚れがつきやすいことが挙げられる。これについては従来モデルですでに把握していたので、敢えてホワイトモデルではなくブラックモデルを購入したのだが、パームレストはアルミ素材の採用によってこうした問題が起こりづらくなった一方、外装は相変わらずで、また手の脂だけではなくホコリもつきやすい。

ポリウレタンの外装はとにかく汚れやすく、また手の脂もつきやすい

 もしかするとこのMagic Keyboardの外装を保護するアクセサリがないか探してみたところ、そのものズバリの製品があることが分かった。実売価格は2千円ちょっとで、Magic Keyboardを気兼ねなく使えるようになるのならば、安いものだ。

 というわけで実際に購入し、表面と底面にそれぞれ貼ってみた。以下が貼り付け前後の比較写真だが、見た目は変わるものの、厚みについてはほぼ変化もなく、手の脂や汚れが気にならなくなる。筆者は使用しなかったがパームレスト部に貼るためのパーツも用意されているので、アルミの質感が苦手な人にもよいかもしれない。

 こうしたアクセサリは剥がす時にどれだけ跡が残らないかが評価の多くを占めるので、現時点では点数をつけるのは困難だが、汚れを目立たなくするという機能においては、今のところ減点要素はない。ビニール素材ゆえ置いた時に滑りやすくなるのは、時と場合によってはマイナスになるかもしれない、というのが唯一の懸念点だ。

パッケージ。実売価格は2,199円。IMMOENUCという事業者が販売している
同梱品一覧。右下の黄色い袋にはウェットティッシュなどが入っている
台紙から剥がして貼り付ける。要領はスマホの保護シートなどと変わりはない
Magic Keyboardの下段にのみ貼り付けた状態。質感は変わるが見た目の違和感は少ない
貼付前の状態。汚れはウェットティッシュなどでよく拭き取っておく
貼付後の状態。若干の伸縮性があり、空気も抜けやすい
林檎マークの部分は別パーツになっており段差も再現されている
境目の部分のアップ。端まで覆うわけではないが、表面を保護する目的にはぴったりだ
今回使ったのは外装面のシールのみ。パームレスト用のシールは利用しなかった

ハードは十分に満足。iPadOS側の進化に期待

 以上のように、全体的に満足感は高く、日々の業務においても不可欠な戦力になっている。一般的に高額なデバイスであればあるほど、たとえ使いづらくても、支払った額の元を取るために我慢して使おうという考えが働きがちだが、本製品についてはそうした無理はまったくなく、極めて前向きに活用できており、実際に出番も多い。

 このMagic Keyboardについては、過去にほかのライター各氏から、従来のモデルを買ったはいいものの徐々に出番が減っていったとか、すぐに手放してしまったという声をチラホラ聞いていたので、この金額の投資をすることに迷いもあった。だが、ファンクションキーを搭載した今回のモデルまで待ったことで、結果的によい買い物ができた形になったようだ。アドバイスいただいた皆様には感謝したい。

 今後に期待することがあるとすれば、おおむね完成の域に達したと考えられるハードウェアよりも、むしろiPadOSの日本語入力環境の方だろうか。かつてに比べると大幅に進化したとはいえ、カーソルの移動だったり、escキーを押したときの挙動だったりと、カユいところにあと1歩届かない印象はあちこちにある。それらがカスタマイズできれば、より自然に使えるようになり、利用頻度もさらに上がっていくように感じる。

意外と出番があるのがこのMission Controlキー。起動中のアプリのウィンドウを一覧表示できる
Mission Controlキーを押したところ。別のアプリへの切り替えも容易だ