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Microsoft 365 Copilotが「Claude」対応。PC作業をAI代行

Microsoftが発表したClaude CoworkのMicrosoft 365 Copilot版となる「Copilot Cowork」(写真提供: Microsoft)

 Microsoftは、3月8日(3月9日、現地時間)に報道発表を行ない、同社の生産性向上ツール「Microsoft 365」向けのAIツールとなる「Microsoft 365 Copilot」の拡張を発表した。

 これまでMicrosoftは、投資先かつ協業先だったOpenAIのAIモデルだけを排他的に採用してきたが、今回OpenAIの競合であるAnthropicの「Claude」をMicrosoft 365 CopilotのAIモデルとして選択することが可能になることを発表。また、「Claude Cowork」の機能が統合された「Copilot Cowork」が研究開発プレビューとして実装されることが明らかにされた。

シングルAIモデルからマルチAIモデルへという大きな業界のトレンドの中でMicrosoftの対応に注目が集まっていた

発表前の段階でのMicrosoft 365 CopilotのチャットツールでのAIモデル選択画面

 Microsoft 365 Copilotは、大企業向けのMicrosoft 365 Enterprise、および中小企業向けに提供されているAI。既にMicrosoft 365を利用していて、そこにAIの機能を付加したいユーザーにとって、最初に検討するAIツールがMicrosoft 365 Copilotだ。

左がOpenAI CEO サム・アルトマン氏、右はArm CEO レネ・ハース氏(昨年ソフトバンクが行なった会見で撮影)

 このMicrosoft 365 Copilotで採用されているAIモデルは、これまでMicrosoftの投資先かつ協業先であるOpenAIのGPTのみが提供されてきた。これは、そもそもOpenAIがまだ小さな企業だった頃から投資を行なってきた結果であり、OpenAIのAIモデルは、Microsoftが優先的に提供される契約を結んでいるとされてきたためだ。実際、この発表前の時点でのMicrosoft 365 Copilotのチャットボットで選択できるAIモデルは「GPT-5.3 Quick response」、「GPT-5.2 Quick response」、「GPT-5.2 Think Deeper」の3つになっていた。

 OpenAIのAIモデルが他社のモデルに比較して圧倒的な優位性を持っていた時期にはこれでよかったのだが、AIモデルの開発競争が激化することで、Googleの「Gemini」、Anthropicの「Claude」なども開発が進み、むしろ世間の評価はGeminiやClaudeが上回るような状況が生じてきていた。このように、AIモデルの良し悪しは刻々と変わっており、1つのAIモデルしか選択できないことは競争上のリスクになりつつあった。

Adobe MAXでのAdobe Photoshopのデモ

 そうした状況の中で、SaaSベースでアプリケーションを提供するソフトウェアベンダーの中では、自社開発のAIモデルや1社だけのAIモデルから、複数のAIモデルに舵を切るところが増えている。たとえば、Adobeは昨年(2025年)の10月に開催されたAdobe MAXで、自社開発のAIモデル「Firefly」だけでなく、GoogleのGemini 2.5 Flash Image(いわゆるNano Banana)などのパートナーAIモデルを導入することを発表しており、最新のPhotoshopで利用できるようになるなど、大きな方針転換を明らかにしている。

 Adobeだけでなく、多くのSaaSベンダーでそうしたマルチAIモデルの導入が相次いでおり、OpenAIに依存しているMicrosoftがどうするのかは注目が集まっていた。

 そうした中で、MicrosoftOpenAIは2月27日に共同のプレスリリースを発表している。同日にOpenAIがAWS(Amazon Web Services)と新しいパートナーシップ関係を結んだことを受けたもので、昨年の10月28日に両社が発表した両社の関係は今後も変わらないと明らかにされていた。

 しかし、OpenAIがAWSというMicrosoftの直接の競合と関係を結ぶことができるのなら、その逆も可能だと考えられ、それは時間の問題だと考えられてきた。

Microsoft 365 CopilotでClaudeが選択可能になるほか、Claude Coworkが「Copilot Cowork」として提供される

Copilot Cowork(写真提供: Microsoft)

 今回Microsoftが発表したのは、OpenAIの競合となるAnthropicが提供する「Claude」を、Microsoft 365 Copilotで利用できるようになったということだ。

左がAnthropic CEO ダリオ・アモデイ氏、右はBox CEO アーロン・レビィ氏(2024年のBox Worksで撮影)
Anthropic COO ダニエラ・アモデイ氏(2025年CESのパナソニック基調講演で撮影)

 Anthropicは、CEOのダリオ・アモデイ氏、COOのダニエラ・アモデイ氏などの元OpenAIのメンバーなどを中心に設立されたAIモデル開発企業で、2021年の設立当初からOpenAIの対抗企業として注目を集めてきた。OpenAIのGPTに対抗するのがClaudeで、現在はさまざまなAIモデルへと派生している。OpenAIのGPT、GoogleのGeminiと合わせて開発競争なども激しくなっており、AI業界で今最も注目されている企業といっても過言ではない。

 今回MicrosoftはClaudeを、Microsoft 365 CopilotのチャットボットのAIモデルとして選択できるようにする。これまでMicrosoft 365 Copilotでは、OpenAIのGPTだけが選択可能だったが、今後はユーザーがClaudeをAIモデルとして選択できるようになる。また、OpenAIの次世代AIモデルも本日より選択することが可能になる。

 さらに、MicrosoftがWave 3と呼んでいる新機能を搭載したMicrosoft 365 Copilotでは、Word、Excel、PowerPoint、Outlookなど主要アプリケーションにエージェント型の新機能が搭載されるほか、Anthropicのエージェント型AI(Agentic AI)である「Claude Cowork」の機能が統合された「Copilot Cowork」が実装される。

 Claude CoworkはユーザーがPC上で行なっているような作業を、AIが代替してやってくれる機能で、作業内容に適したシェルスクリプトやPythonスクリプトを随時生成しながら、PC内のファイルの操作や分析、メール確認や返信、資料作成など幅広い作業を可能にする。

 Copilot Coworkは、そうしたClaude CoworkのMicrosoft 365 Copilot版となる。現時点では研究開発のプレビューとなるが、今後Microsoft 365 Copilotの機能として提供されていく計画だ。

 また、「Microsoft 365 Enterprise 7 Frontier Suite(Microsoft 365 E7)」というMicrosoft 365 Enterpriseの新しいサブスクリプションを提供開始する。これはMicrosoft 365 E5、Agent 365、Microsoft 365 Copilotなどをセットにしたプランで、月額99ドル/ユーザーで提供される。現行のMicrosoft 365 E5が月額57ドル/ユーザー、Microsoft 365 Copilotが月額30ドル/ユーザーで、今回一般提供開始が明らかにされたAgent 365は月額15ドル/ユーザーになるので、それぞれ単体で申し込むよりは3ドルほど安価な価格設定になっている。