~ストレートのキーボード採用。Bluetoothキーボードとしても利用可能 |
キングジムから、テキスト入力に特化した端末「ポメラ」の新モデル「DM100」が発表された。ポメラの代名詞でもあった2つ折りのキーボードを廃し、ストレートタイプのキーボードを採用していることが大きな特徴だ。また、Bluetoothに対応するなど、機能面の強化も著しい。発売前の製品を借用することができたので、レビューをお届けする。
ちなみに筆者は、ポメラの初代モデル「DM10」を発売と同時に購入したものの、キーボードのがたつきにどうしても馴染めず、早期に手放したクチだ。それだけに、今回の進化はなかなか興味深いところ。なお今回使用する機材は発売前のサンプルであり、製品仕様は変更される場合もあるとのことなので、予めご了承いただきたい。
価格は37,800円とされているが、予約受付の段階で3万円前後となっているショップもあるようだ。
●基本仕様まずはざっと従来モデルと仕様を比較してみよう。ポメラシリーズの製品ページの仕様欄は製品ごとに項目名などが異なっている場合もあるが、支障がないと思われる範囲で統一している。また、確認がとれた範囲で製品ページにない情報も一部追加している。
品番 | DM100 | DM10 | DM20 |
メーカー希望小売価格(税込) | 37,800円 | 27,300円 | 34,650円 |
本体メモリ | 128MB(システム領域含む) 最大1,572ファイル保存可能 | 入力可能文字の総数 約48,000文字 | 入力可能文字の総数 約28,000,000文字 |
1ファイルあたりの文字数の上限 | 全角40,000文字 | 全角約8,000文字 | 全角約28,000文字 |
ファイル形式 | TXT、CSV | TXT | TXT |
搭載文字サイズ | 8段階(12/16/20/24/32/40/48/64) | 3段階(24/32/48) | 7段階(12/20/24/32/40/48/64) |
フォルダ作成 | ○(5階層) | - | ○(5階層) |
画面サイズ | 5.7型 | 4型 | 5型 |
画面解像度 | 800×600ドット | 640×480ドット | 640×480ドット |
バックライト | ○ | - | - |
インターフェイス | USB miniB | USB miniB | USB miniB |
メモリーカードスロット | SDHCカード(最大32GB) | microSD(最大2GB) | microSDHCカード (最大16GB) |
Bluetooth | ver 2.1 + EDR | - | - |
QRコード出力 | ○ | - | ○ |
辞書 | 明鏡国語辞典MX ジーニアス英和辞典MX ジーニアス和英辞典MX | - | - |
電源 | 単3形アルカリ乾電池×2本 単3形エネループ×2本 | 単4アルカリ乾電池×2 | 単4形アルカリ乾電池×2 単4形エネループ×2 |
電池寿命 | 単3形アルカリ乾電池 約30時間 単3形エネループ 約25時間 | 約20時間 | 単4形アルカリ乾電池 約20時間 単4形エネループ 約15時間 |
寸法(幅×奥行き×高さmm) | 263×118.5×24.6 | 約 145×100×30(折りたたみ時) 約 250×100(使用時) | 約145×100×33(折りたたみ時) 約250×110(使用時) |
質量(乾電池含まず) | 約399g | 約340g | 約370g |
これを見て分かるのは、今回のDM100が新機能の追加にとどまらず、すみずみまで手が加えられているということだ。DM20は初代モデルであるDM10に比べてフルモデルチェンジと言っていいほどスペック向上および新機能が盛り込まれたが、外観まで大きく変わった今回は、DM10から20への進化がマイナーチェンジに見えてしまうほどの変化だ。
DM20で大幅に拡張されたメモリ容量と1ファイルあたりの文字数上限はさらに拡張され、初代モデルにおける文字数まわりの弱点はほぼ払拭されたとみていい。一方、DM20にはなかった最大ファイル数の制約(1,572ファイルまで)があるため、細かいテキストファイルを大量にメモリカードに保存している場合は注意した方がよさそうだ。筆者などは原稿やアイデアメモ類をすべて「紙copi」でテキストファイルに保管しており、その数は800ファイルほどあるので、使う使わないを問わず大量のテキストを持ち歩いている人からすると、あながちひっかからない問題と言えなくもない。
バッテリ持続時間は30時間。これまで単4電池だったのが単3電池に変更になったことで、従来20時間だったのが1.5倍に伸びている。もっともその分重量に差が付いているので、気をつけたほうがよいだろう(後述)。エネループについても利用できるので、万一の備えに携帯しておくとよさそうだ。
重量は約399gとなっているが、これは電池を含まない値なので、実際にはもう50gほどプラスされる計算になる。仮に450gだとすると、昨今話題のUltrabookと比較して半分~1/3程度、iPadなど10型クラスのタブレットの約2/3、7型クラスのタブレットとはほぼ同等からやや重い程度になる。ちなみに本製品とフォームファクタが似たフルキーボード端末としてネットで話題になっているNECの「LifeTouch NOTE」(NA75W/1Aシリーズ)は約699gで、250g程度の差がある。
興味深い点として、メモリカードがmicroSDからSDスロットに変更になったことが挙げられる。やや時代に逆行するかのような変更だが、ひょっとすると将来的にSD規格の周辺機器、例えばEye-fiなどに対応する余地が残されているのかもしれない。もちろん今のところそれを示唆する動きはなにもないし、ネットワーク機能をもたせるのは製品のコンセプトを考えるとナンセンスに思えるが、なんらかの伏線であることを期待したい。
その他、大きな違いとしては、Bluetooth対応、辞書搭載、そして2つ折りキーボードの廃止に伴う本体サイズの違いが挙げられる。以下、トピック別に見ていこう。
●外観本製品の最大の特色は、従来の2つ折りキーボードが廃止されてストレートタイプになったことだろう。個人的に、従来モデルのキーボードのがたつき、そして閉じた際のゴツさが馴染めなかったので、今回のボディは高評価だ。後述するように膝の上での打鍵も可能になったので、手帳やノートを広げた上で使ったり、クッションの上に乗せて使ったりと、利用シーンは大きく広がったといえる。
ただしその代償として横幅がおよそ2倍になっているため、スーツのポケットに収めたいといった要求がある場合は、本製品は最初から対象外ということになる。良し悪しと言うより、利用目的や好みに左右されやすい部分だろう。
厚みは24.6mm(突起部含まず)とされているが、この突起部というのは1mm強のゴム足の部分を指しているようで、実質的に最厚部との差はほとんどない。DM20と比較すると5mmほど薄くなっている計算になり、手に持った際のゴツさは大幅に緩和されている。また前方に行くに従って薄くなっており、手前部はゴム足を入れても段差が5mmを切っているので、パームレスト部がないにもかかわらず打鍵時に段差をあまり感じないのは好印象だ。
天板はフラットで、モールドはまったくない。質感はややざらざらしており、マットなために指紋が目立たないのだが、摩擦によって跡がつく場合があり、気になるという人もいそうだ。キーボードの周囲やピアノ調の塗装になっているほか、本体裏面は光沢があり、指紋が付きやすい。
●キーボード
2つ折りを廃したことで、ごく一般的なストレートタイプになったキーボードだが、キーピッチは17.0mmで従来と同様。キーボードの配置は従来モデルをほぼ踏襲しているが、これまで右上にあった電源ボタンがヒンジ近くに移動したことで、右上にはDeleteキー、その下にBackSpaceキーが並ぶ仕様になった。個人的にはDeleteキーとBackSpaceキーはこまめに使い分けるので、これらが使いやすい配置になっているのはありがたい。
一方で、配置としてはかなり変則的な、半角/全角/漢字キーが左上Escキーの直下ではなく右側に配置されている点については、本製品でもそのままだ。見た限りでは数字キーを切り詰めつつ右に寄せれば左端にもう1つキーを追加できそうに思うのだが、最上段のキー配置に余裕があることから、設計側としてはそちらに持って行きたくなるのではないだろうか。従来モデルのユーザーはともかく、新規のユーザーにとっては慣れるまで多少時間がかかりそうだ。
キーは水平タイプのアイソレーションキーを採用。キーの端を押してもきちんと垂直に押し込まれるパンタグラフ構造でミスタイプしにくいのは好印象なのだが、打鍵時にスプリングらしきカシャカシャした音が響くのが気になる。今回の貸出機固有の問題である可能性もあるが、内部で部品がきちんとビス留めされていないが故にフレームがビビっているような、そんな種類の音がする。
筆者は隣席とパーティションで区切られた有料のワークスペースで作業をすることが多いのだが、本製品は高速に打鍵するとやや騒々しいため、こうした静かな空間で使うのはややためらわれる。図書館での利用、また会議や発表会で議事録をとる用途でもおそらく同様だろう。
もっとも、隣席と距離のある作業スペースなら問題ないと思われるので、利用環境にマッチするかどうかは店頭のデモ機で確認することをおすすめする。余談だが、今後サードパーティから本製品用のキーボードカバーが発売されることがあれば、静音用途という意味でキラーアイテムになりそうな予感はある。
ところで個人的に優れていると感じたのは、2つ折りからストレートになったことで、膝の上に置いての打鍵が可能になったことだ。こうした軽量端末では、膝の上に置けたとしても安定性が悪く画面が後ろに倒れてしまうことがあるが、本製品ではそれもない。筆者の仕事では、製品やサービスの発表会で机が用意されておらず仕方なく膝の上でノートPCを使うことがよくあるが、そうしたケースで本製品を使う記者やライターが出てきそうだ。
キーボード面。キーはJIS配列で、アイソレーションキーを採用している | キーピッチは17mmと、従来モデルと同じ | 半角/全角/漢字キーは従来モデルと同様、左上Escキーの直下ではなく右側に配置されている |
電源キーがヒンジ横に移動したため、DeleteキーとBackSpaceキーが上下に並ぶ配列になった | キーを押下したところ。キーの端を押しても垂直に沈み込むためミスタイプしにくい |
●画面
画面サイズはDM20の5型から5.7型へとひとまわり大きくなり、640×480ドットだった解像度も800×600ドットになった。その関係か、7段階可変だった文字サイズが1つ増え、8段階になっている。比率は4:3のまま変更はない。
液晶画面は本体の中央に配置されている。ボディサイズに合わせた幅であってほしいという意見もネットでちらほら見かけるが、もし幅が広くてもテキストを書く際は横幅を狭くすると考えられるので、この仕様で正解だと思う。左右2画面分あれば便利と言われればその通りだが、コストを考えると現実的ではないだろうし、本モデルでは新たに上下方向で2画面を同時に表示する「2画面編集モード」をサポートしており、トータルでの機能の整合性はとれているように感じられる。
空きスペースである画面左右には、特殊機能を呼び出すサイドキーが各3つずつ搭載されている。左側がBluetooth、QRコード、カレンダー。右側が辞書3つ(国語、英和、和英)だ。なかでもすばやい呼び出しが求められるBluetoothやQRコードのショートカットがここにあるのは、使い勝手の向上に大きく貢献していると感じる。どうせならカスタマイズ可能なキーが左右にもうあと1つずつ欲しかったというのは、ぜいたくな要望だろうか。
本製品の1つの特徴となっているバックライトだが、輝度の調節はできるが、オフにはできず常時点灯状態となる。液晶そのものがバックライトを必須とするタイプなので、バックライト機能を追加したというよりも、そのようなタイプの液晶パネルであるというニュアンスが正しい。なお、一部のノートPCにみられるような、バックライトと同期してキーボード面が光るギミックはない。
画面左側に、Bluetooth、QRコード、カレンダーのサイドキーを装備 | 画面右側に、辞書3種類を直接呼び出せるサイドキーを装備 |
斜め方向から見たところ。視野角はかなり広い | バックライトは常時点灯方式。明るさの調整は可能 |
●メニュー
メニューについてはWindowsによく似た、画面上部を基点としてドロップダウン式に表示されるスタイルを採用している。基本的には従来モデルを踏襲しているが、新機能が追加されている以外にもかなりの統廃合がある。従来モデルに慣れてしまっているユーザーにとっては戸惑うかもしれないが、機能の棚卸しをしたことで初見での分かりやすさは増している。以下、スクリーンショットで紹介する。
●IMEとキーカスタマイズ
IMEは従来モデルと同じくATOKを搭載しており、入力スタイルはATOKとMS-IMEから切り替えることができる。筆者自身はMS-IME配列が基本であり、ATOKやGoogle日本語入力でもMS-IMEのキーに直して使っているくらいなので、これは歓迎だ。ただし、無変換キーの1回押しでカタカナに変換されるといった細かいカスタマイズはできず、やや不満は残る。
また、キー配置を親指シフトで使用することもできる。筆者自身は親指シフトの利用経験がないためユーザー視点での評価は割愛させていただくが、親指シフト用のキートップシールまで付属するなど、かなり力が入っている。ただし後述のBluetoothキーボードとしての利用時は無効になるので、iPhoneと接続して親指シフトキーボードとして使うことはできない。また試した限りでは、辞書機能の利用時も一時的に通常のJIS配列に戻ってしまうようだ。本機能に魅力を感じて購入するユーザーは少なからずいそうなだけに、機能制限があることは知っておいた方がよさそうだ。
この親指シフト設定のほか、キーのカスタマイズ機能は多彩だ。キーバインド設定でCapsと左Ctrlキーを入れ替えたり、キー割り付け設定で「Insert」、「前候補/変換」、「無変換」、「カタカナ/ひらがな/ローマ字」キーを入れ替えたり、キーロックの設定を行なうこともできるといった具合だ。このあたりはターゲットユーザー層の製品の使い方が反映された結果だといえるだろう。
●辞書データのインポート・エクスポート
DM100では、PC版ATOKのユーザー辞書のインポートが行なえるようになった。従来モデルでできなかった待望の機能だが、ATOKからインポートできるということは、MS-IMEなどのユーザー辞書をATOK経由で本製品にインポートできることを意味する。以下、その具体的な手順になる。
まずPC側で、MS-IMEなど任意のIMEのユーザー辞書をATOKに取り込み、ATOKでユーザー辞書として認識されるようにしておく。場合によってはテキストファイルでMS-IMEに読み込ませたものをATOKで読み込むという、2段重ねになる場合もあるかもしれない。
次にATOKの辞書ユーティリティの「単語・用例の出力」を使って「pcatok.txt」というファイル名でユーザー辞書を出力する。この際「Unicodeで出力する」にチェックが入っていると、あとでうまく取り込めないのでチェックを外しておく。
次いでこのファイルを、DM100本体内の「PcAtok」というフォルダ内にコピーする。SDカード経由ではなくUSBケーブルでPCと接続してコピーするのがミソだ。ちなみにこの手順については取扱説明書に誤記があり訂正のペラが入っているので、説明書の手順(SDカードを利用する手順が記されている)のまま行なうと失敗する。
終わったらDM100からUSBケーブルを外し、DM100のメニューの「単語登録」→「ATOKオプション」で「PC版ATOKユーザー辞書」にチェックを入れる。すると「PC版ATOKユーザ辞書をインポートしますか?」とたずねられるので「はい:Y」を選択。これによりユーザー辞書がインポートされ、利用できるようになる。
やや手順は煩雑ではあるものの、PCのATOKをハブとして各種辞書データのインポートができるようになったのは、さまざまな可能性をもたらしてくれるのは間違いない。MS-IMEのユーザー辞書をそのまま取り込む機能もほしいところだが、まずは一歩前進ということで歓迎したい。このほか、単語については個別の登録も行なえるほか、「atok.dic」というファイル名でのエクスポート、およびインポートが行えるので、従来モデルからの移行も容易だ。
●文字入力関連
テキスト入力の支援機能も強化されている。
1つは縦書きのサポート。縦書きでテキストの入力を行ないたいというユーザーにとっては待望の機能といえる。アルファベットについては半角は横に寝かせて表示、全角は1文字ずつ回転表示される。
1行の文字数と行数を決めて文字入力ができる「フレーム設定」機能も追加された。画面の中央に指定行数と字数でフレームが表示され、その中にテキストを入力していく形になる。コラムなどレイアウトがかっちり決まっている文章の作成に向いた機能だ。
縦書きで表示したところ。英数字の表示にやや癖があるが、全角文字にすればきちんと回転して表示される | フレーム表示設定。1行の文字数、および行数を指定する | 指定された文字数および行数でフレームが作成された。これは15文字×10行を指定した例で、罫線でエリアが表示されている。ここでも縦書きが利用できる |
【動画】起動して40文字ほどの文章を入力したのち、メニューから文字サイズ変更、縦書きへの切り替え、5文字×8行のフレーム設定を行なっている様子。動作はきびきびとしており、ストレスは感じられない |
画面を上下に分割する「2画面編集モード」も新たに追加された。編集中の文書と参照先の文書は自在に入れ替えができるので、一方を参照しながら入力し、切り替えてもう一方に追記する、といったことができる。上下にやや窮屈なのは難だが、これまでできなかっただけに待望の機能といっていいだろう。
また、Excelに似た外見を持つ表形式入力もサポートされた。計算こそできないものの、住所録などのデータベースを作成、参照するといった用途に利用できそうだ。ファイルフォーマットはcsvをサポートしている。
このほか、定型文の作成機能など、文書入力を支援する細かい機能や、文字数カウントなどの機能を搭載している。以下、画面写真で紹介する。
●Bluetooth機能
実は本製品の試用期間のほとんどはユーザ辞書インポート機能、そしてこのBluetooth機能の検証に費やしている。Bluetooth機能については分からないことも未だ多いのだが、現状で分かっている最大公約数的な特徴をまとめておきたい。
対応プロファイルはHIDとFTPで、前者がキーボード機能、後者がファイル転送機能のプロファイルになる。キーボードの対応機種については、メーカーサイトではiPhone/iPadなどiOS系のみ対応としており、Androidは対応機種に入っていない。
まずiPhone/iPadについては、キーボードで「日本語 フルキーボード」を追加することで、問題なく動作する。日本語と英語の切り替えは「無変換+スペースキー」で行なう。メーカーサイトによると対応機種は「iPad 2、iPad、iPhone 4S/4/3GS、iPod touch(第4/3世代)」となっており、筆者はiPhone 4(iOS 5)で検証している。
BluetoothでiPhoneに接続する。デバイスで「DM100」が認識されているのが分かる | キーボードで「日本語 フルキーボード」を追加しておく |
ハードウェアキーボード配置は「U.S.」に設定。ここでJISにするとかな入力になってしまうようだ | 日本語と英語の切り替えは「無変換+スペースキー」で行なえる |
【動画】DM100を起動したのち、画面左側のBluetoothボタンを使ってiPhoneとBluetoothで接続。簡単な文章を入力し、その後電源を切るまでの様子。日本語と英語の切り替えは「無変換+スペースキー」で行なっている |
一方、未サポートのAndroidだが、HIDプロファイルに対応しているAndroid端末であればキーボードが使える可能性が高いが、入力はできるものの日本語と英語の切り替えができなかったり、スペースキーで候補を選択できないなど、実用性に難がある場合も多い。これはIMEに依存する部分も大きい。
筆者環境で問題なく動作した組み合わせは、本体がGALAXY Tab(Android 2.3)で、IMEに「ATOKお試し版」を使った場合。日本語と英語の切り替えはAlt+スペースキーで行なうことができた。ちなみに標準のSamsung日本語キーボードでは日本語もしくは英語だけの入力は行なえるのだが、キーによる日本語と英語の切り替えがうまくいかなかった。
別のAndroid端末では、入力はできるものの日本語と英語の切り替えができなかったり、スペースキーで候補を選択できない場合が多かった。HIDプロファイルに対応しておらず接続できないという根本的な問題は別にして、それ以外はIMEを変えつつ、1つずつ確認していくしかなさそうだ。
一方でファイル転送機能については、FTPプロファイルに対応した端末であれば動作するとされている。今回は細かい検証は行なっていないが、テキストデータを転送する方法の選択肢が増えるのは悪いことではない。ペアリングについても、最初の1回こそ面倒だが、2回目以降はメニューを経由せずに画面左側のサイドキーを使ってすばやく接続できるので、操作性も悪くはない。
なお、Bluetooth接続時のバッテリの減り具合は気になるところだが、今回は試用時間の関係もあって検証できていない。キーボードからの文字入力メインで数時間触った限りでは、みるみる減っていくといったことは特になかったが、通信のない状態に比べると少なからず影響を受けるのは間違いない。本製品でバッテリ寿命に関係してくるのは、このBluetooth機能、それとバックライトの輝度ではないかと思われる。
●電子辞書、QRコード、カレンダー最後に、残りの機能をまとめて見ていこう。
まずは、本製品で初搭載された電子辞書機能。国語/英和/和英のオーソドックスな3コンテンツを搭載し、意味を調べながらのテキスト入力に役立てることができるほか、テキストを範囲選択した状態で起動すると、その単語の意味をすばやく調べることができる。また、本文をコピーして引用できる機能は、市販の電子辞書でも一部の機種しか備えないユニークな機能だ。
市販の電子辞書と異なる点として、複数の辞書を串刺しで検索する一括検索機能がないことが挙げられるが、辞書数が3つしかないことを考えれば実用上の支障はないだろう。ちなみに検索結果から別の辞書へジャンプすることは可能だ。
「明鏡国語辞典MX」「ジーニアス英和辞典MX」「ジーニアス和英辞典MX」の3コンテンツを搭載。これは明鏡国語辞典MX | F3キーを押すとコピーモードになり、本文のコピーが行える | 起動中に辞書の切り替えも可能 |
続いてQRコードによる転送機能。本製品で作成したテキストを、QRコードリーダーがついた端末にすばやく転送できるユニークな機能だ。一度に転送可能な文字数は100/200/300文字のいずれかから選択する。最大で16分割まで可能なので、300文字のQRコードを選んでいれば、4,800字までのテキストデータを転送できる。
このQRコード機能、従来はメニューから呼び出す必要があったが、本製品では画面左側のサイドキーから呼び出せるようになったため、操作がワンステップ少なくて済むようになった。なお、iPhoneで利用する場合は、キングジムがApp Storeで公開している無料のQRコードアプリ「ポメラQRコードリーダー」を用いれば、長文を連続して読み取れるので便利だ。
日々の予定など簡単なメモが入力できるカレンダー機能は、本筋の機能ではないにもかかわらず、画面左側にサイドキーが設けられるなど、かなり力が入っているように感じられる。個人的にはこのカレンダーが作成日からファイルを検索できるファイラーとして使えれば便利ではないかと思うのだが、そうした機能はないようだ。
入力したテキストをQRコードに変換して対応端末で読み取るというユニークな転送方法は本製品でも健在 | iPhoneアプリ「ポメラQRコードリーダー」を使うとスムーズな読み取りが可能 | カレンダー機能。形式は日次、週次、月次と切り替えが可能だ |
ファイル設定。デフォルトファイル名は「タイムスタンプ」にしておくと重複することもなく便利だ | 表示設定。行間に罫線を入れるグリッド表示を初期値にしたい場合はここで設定する |
●まとめ
筆者が今回の新製品の発表を聞いてすぐに感じたのは、ポメラもだいぶコンセプトがぼやけてきたな、ということだった。ポメラの代名詞だった折りたたみ式キーボードが廃止されたほか、ずっと否定的だった通信機能が搭載されるなど、従来とはまるで別物といっていい変化を見るにつけ、あらゆるユーザーの声を取り入れすぎて肥大化し、消えていったさまざまな製品の姿が脳裏をよぎったのは事実だ。
しかし実際に使ってみると、段差のある机上や膝の上でも安定して使えるようになったキーボードのほか、さらに洗練された入力支援機能など、基本機能の部分が目に見えて強化されており、どうやら当初の懸念が的外れだったと感じさせられた。ストレートキーボード採用による筐体の大型化は、使い勝手のプラスが可搬性の低下によるマイナスを上回っていて、当初予想していたよりも気にならないというのが正直なところだ。従来モデルのゴツさが苦手だった筆者個人の感覚の問題も大きいが、いずれにせよ外見だけで判断するのは間違っていて、むしろ内面の進化に目を向けるべきだと感じる。
ネックになるのは価格だろうか。発売前に各ショップが予約を受け付けている段階では3万円前後という価格が多いが、昨今は7型のタブレットが2万円程度で買えたり、10型のタブレットも同等レベルまで価格が下がりつつあったりと、直接の競合ではないにせよ初代ポメラ発売当時と違い、選択肢は豊富に揃っている。また(ラインナップは縮小しているものの)ネットブックという選択肢もあるし、フォームファクタが近い製品としてネットでよく名前が挙がるNECのLifeTouch NOTEなどもある。
もっとも、買って電源を入れればすぐに使えて、電池込みでも500gを切る軽量ボディ、30時間の長時間駆動など、テキストを書く端末として見た場合、競合製品に比べて数多くのメリットを挙げられる強みがある。従来製品と同様、まずは触ってみないと判断しづらい製品であるのは間違いないので、まずは発売を待って店頭でデモ機を触ってみてほしい。
(2011年 11月 15日)
[Text by 山口 真弘]