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IntelのArc G3が切り拓くポータブル機の新次元。MSI「Claw 8 EX AI+」検証

 Intelのハンドヘルドゲーミングデバイス向けプロセッサ「Intel Arc Gシリーズ・プロセッサー」(以下、Arc G)が登場し、ポータブルゲーミングPCの構図が変わろうとしている。

 ポータブルゲーミングPCはこの数年、AMD製APUの独擅場となってきた。Intel製のCPUを搭載する製品も少数あったものの、影が薄い存在であったことは否めない。

 新たに登場したArc Gは、AMDと競争力のある製品なのかどうか。今回、MSI製のポータブルゲーミングPC「Claw 8 EX AI+」をお借りして検証ができた。MSIはこれまでにも2世代にわたってIntel製CPUを搭載したポータブルゲーミングPCを出しており、最も実績のあるメーカーだ。

 今回はあまり検証時間が取れなかったのだが、できる範囲で使用感などもお伝えしていきたい。

Xe3コアを12基搭載した「Intel Arc G3 Extreme」

 Claw 8 EX AI+は、プロセッサに「Intel Arc G3 Extreme」を搭載。Arc Gシリーズにおいては上位の製品で、グラフィックスにXe3コア12基の「Intel Arc B390」を搭載している。バリエーションとしてほかに「Intel Arc G3」があり、Xe3コアが10基の「Intel Arc B370」を搭載する。

 詳しいスペックは下記の通り。

【表1】主な仕様
CPUIntel Arc G3 Extreme(2Pコア+8Eコア+4LPEコア/最大4.7GHz)
GPUIntel Arc B390(内蔵)
NPU46TOPS
メモリ32GB LPDDR5X-8533
SSD1TB(M.2 2280 NVMe/PCIe Gen4x4)
ディスプレイ8型IPSレベル液晶(1,920×1,200ドット/48~120Hz VRR/タッチ対応)
OSWindows 11 Home
汎用ポートThunderbolt 4 2基
無線機能Wi-Fi 7 R2、Bluetooth 6
有線LANなし
電源65W USB Type-C接続ACアダプタ/80Whリチウムポリマーバッテリ
その他6軸IMUバイブレーションモーター、2W×2スピーカー、ヘッドセット端子、microSD Expressカードスロットなど
本体サイズ約296~321×130×25~48mm
重量約785g

 本機でユニークなのは、SSDにM.2 2280のサイズを採用していること。モバイルゲーミングPCのような小型の製品には、M.2 2242や2230といった短いものを採用することが多いが、本機は後から交換しやすいようにするため、より一般的に流通しているM.2 2280を搭載可能にしている。

 ディスプレイは最大120HzでVRR対応の液晶パネルを採用。60fpsを超えるリフレッシュレートで動作できるゲームが多いという前提でのチョイスなのだろう。

 本体サイズは8型だけあって、横幅約320mmとそれなりに大きい。重量は約785gで、MSIの前世代機からは10g減っているものの、モバイルゲーミングPCとしては少々重めだ。

ディスプレイは1,920×1,200ドットで、縦にはみ出したような外見が特徴的

高いグラフィックス性能を発揮

 何はともあれベンチマークテストから試していこう。使用したのは、「PCMark 10 v2.3.2912」、「3DMark v2.32.8874」、「STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール」、「PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creator」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」、「Cinebench 2026」、「CrystalDiskMark 9.0.3」。

 パワー設定は、AIエンジンによる自動調整が標準モードとなっており、PL1は25W、PL2は37Wに設定されている。ただしパフォーマンスや電力設定は動的に調整され、PL1は15~30W、PL2は20~37Wとなる。PL1は基本的には25Wだが、状況に応じて30Wまで引き上げられる、という理解で良さそうだ。

 また手動設定の場合は、最大でPL1は35W、PL2は45Wに設定できる。AIエンジンと手動設定の最大値でそれぞれベンチマークテストを実行した結果は以下の通り。

PCMark 10 v2.3.2912
3DMark v2.32.8874
3DMark v2.32.8874 - CPU Profile
STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール
PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creator(簡易設定6)
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク(高品質)
ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク(最高品質)
Cinebench 2026(10 minutes)

 ポータブルゲーミングPCの性能としては、これまでの製品を凌駕する高い性能を発揮している。特にグラフィックスの性能が高く、ゲーミング環境としてまた一段高いレベルに上がった。

 特に印象的なのは、「STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール」だ。最高画質の「HIGHEST」に設定しても、フレームレートはほぼ60fpsを維持できており、テスト結果はすべてのシーンで満点の100を獲得した。しかも最大電力設定ではなく、AIエンジンを用いる設定でだ。

「STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール」の「HIGHEST」をパーフェクトでクリア

 またゲーム系ベンチマークでは未だに重い部類の「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」では、「やや快適」の評価。字面だけ見ると大したことはないように感じるが、内蔵グラフィックスでこの評価は極めて優秀だ。

「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」でも「やや快適」

 現状の対抗馬となるAMD製APU「Ryzen Z2 Extreme」を搭載した製品群の結果と見比べてみると、「3DMark」では高負荷なテストでの差が大きく、1.5~2倍近くの差が付いているものさえある。「本当に同じテストをやったの?」と言いたくなるくらい大きな差で、スコアを盛ったのかと言われても仕方ないと思う(もちろん実際に検証した結果だ)。

 手動で最大消費電力にした場合、CPU、GPUともにさらにパフォーマンスが伸びる。結果はテストによってまちまちではあるが、AIエンジン設定では余力を残しているのが確認できた。

 ただ最大設定にすると冷却ファンの騒音が格段に大きくなる。AIエンジンは騒音面においてもうまくコントロールしており、パフォーマンスだけでなく環境の面も考慮した快適なゲームプレイには、AIエンジン設定を使用することをおすすめする。AIエンジン使用時は騒音が低いレベルで一定に抑えられている。

 バッテリ持続時間は、ディスプレイの明るさを40%に設定した状態で、ゲーミングで2時間34分という計測値。1時間50分あたりで省電力モードに入っているが、逆にいえばそこまではパフォーマンスを落とさず動き続けたということだ。モバイルゲーミングPCとしては良好な値といえる。

 ストレージはMicron製「2500 NVMe SSD」を搭載していた。232層QLC NANDを採用したモデルで、実測でもリードが約7GB/sと高速だ。ランダムライトも十分な速度が出ており、本機の起動からゲームの起動までストレスなく利用できる。

「CrystalDiskMark 9.0.3」

各種ゲームでも高いフレームレートを確認

 本機のパフォーマンスについて、もう少しゲームで試してみた。パワー設定は標準のAIエンジンを使用した。

 まずは見た目の割に動作が重い「ドラゴンクエストI&II」。本作は最大60fpsの制限があるが、内蔵GPUではなかなか60fpsまで出ないことが多い。

 最高画質設定で試してみると、装飾の多い街中から、バトルシーンまで、ほぼ60fpsを維持していた。プレイ感には何の支障もなく、ポータブル環境でリラックスして遊べる。

「ドラゴンクエストI&II」

 次は根強い人気の「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」。これは見た目通り動作が重めで、なおかつ激しいアクションゲームなので高いフレームレートを維持したい。ポータブルゲーミングPCでは鬼門となるタイトルの1つだ。

 こちらも最高画質に設定してプレイしてみると、バトルシーンでは50fps前後となった。ディスプレイが120fps表示できることを思うと物足りないが、最高画質でこれだけ遊べれば十分だろう。もちろん画質を抑えれば、さらにフレームレートを伸ばせるので、プレイ環境としてはかなり現実的だ。

「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」

 続いては「Diablo IV」。慣れてくると気軽にプレイしたい作品で、ポータブル環境で遊べると嬉しい。画質設定はかなり幅広いが、今回は画質を最高の「ウルトラ」に設定。レイトレーシングは使用していない。

 本作ではXeSSが使用可能で、クオリティモードを僅かにアップスケーリングする「クオリティ」とすると、フレームレートは60fps前後。これでも十分なプレイ環境だが、XeSSのフレーム生成を有効化すると、100fps前後まで向上した。高画質と高いフレームレートを両立できる。

「Diablo IV」

 最後は重いゲームの代表として「モンスターハンターワイルズ」。現在はベンチマークソフトが非公開となっているため、実際のソフトで検証した。画質は最高の「ウルトラ」を選択した上、アップスケーリングでXeSSを使用する。

 この設定で外へ出ると、フレームレートは30fps前後。プレイできなくはないが、もう一声欲しいところだ。画質を「中」まで下げると50fpsくらいまで上がる。さらにフレーム生成で「AMD FSR」を選ぶと、80fpsくらいまで向上できる。何をどう組み合わせ、どこまでフレームレートを上げるかになってくるが、プレイ自体は十分可能なレベルといっていい。

「モンスターハンターワイルズ」

 ポータブルゲーミングPCでのパフォーマンスを見ても、これまでの製品よりもやはり一段レベルが高い。今まではちょっと辛いかなと思っていたタイトルも、本機ならば現実的になってくるものが多そうだ。

Xboxモードを基本に、独自のメニューUIを用意

前面のボタン周りは深めの紫色。だがあまり派手さはない

 実機の感触なども確認しておこう。本体色はヴォイドパープルという深めの紫色。光沢感を抑えた表面で、色味の割にはあまり自己主張しない印象を受ける。

 ボタン配置は純正のXboxコントローラに似せた配置で、方向ボタンとA/B/X/Yボタンに対して、アナログスティックがちょうど斜め方向に配置されている。L/Rボタンも含めてオーソドックスな配置だ。背面には左右に1つずつ追加のボタンが用意されている。方向ボタンは浅いストロークでXboxコントローラに似ているが、クリック感は弱めで静か。

 グリップ部分は表面に微細な凹凸が付けられており、硬質だがグリップしやすく、手汗も気になりにくい。ただグリップの形状が、かなり下の方を握る想定になっており、筆者のように手が小さい人だと下にずれ動きやすい。特にL/Rボタンを使うゲームのときは、どうしても上のほうを持つことになる。なるべく水平に近い角度で持つ方が安定する。

背面は黒一色。グリップの加工が上部にはなされていないのが惜しい

 画面は8型でかなり大きく、手持ちだけでなくスタンドなどに置いて使っても楽しめるサイズだ。発色もよく、残像感もほとんどない。有機ELを搭載した製品と比較されそうだが、これで不満を覚える方は少ないと思われる。光量も強く、暗めの画面が好きな筆者だと、明るさ30%でもまだ明るすぎるくらいだ。

画面は明るく発色も良好

 スピーカーは前面左右に内蔵されており、小さめの音量でもしっかり聞こえる。音量を上げても破綻する感じはなく、スタンドに立てて映像視聴にも使えそうだ。ただし音質は低音が小さくこもり気味で、高音も伸びは良くない。小型の筐体なので仕方ない面はあるが、ゲームの細かい音は聞き取りやすく、まさにゲーム向けのチューニングがなされている。

 上部には電源ボタンがあり、そのすぐ横にはThunderbolt 4端子が2つ並ぶ。どちらの端子でも充電は可能だ。さらに上部にはmicroSD Expressスロット、ヘッドセット端子、音量調整ボタンが並ぶ。下部には端子がなく、上部にあるものですべてだ。

本体上部には端子類やボタン類が並ぶ。奥にある穴は排気口
本体下部は特に何もない。平らなのでスタンドなしで自立しそうにも見えるが、グリップの高さと合わないのでほぼ無理

 ソフトウェアの面では、ベースはXboxモード(Full Screen Experience)で起動するが、起動直後の画面には「MSI Center M」という独自のUIが立ち上がる。各社の配信ストアからダウンロードしたゲームが、シンプルなUIで一元管理される仕組みになっており、Xboxモードよりシンプルにゲームを選んで起動できる。これを起動せず、Xboxモードを起動画面にする設定も用意されている。

「MSI Center M」。同社の従来製品でも採用されてきたUI
Xboxモードは標準搭載となっている

 「MSI Center M」では、「Steam」、「Ubisoft」、「Xbox」、「Epic」、「Battle.net」、「MSI APP Player」というアイコンも用意されており、それぞれ各配信ストアのアプリが起動する仕組み。当該ストアアプリをインストールしていない場合、ダウンロード用Webサイトが表示される。ちなみにここから「Steam」を選ぶと、フルスクリーン操作用のBig Pictureモードで起動する。

各種ストアも呼び出し可能。Xboxモードでも呼び出せるので好みで使い分けるといい

 Xboxモードやデスクトップなど別の画面を開いている状態で、右アナログスティックの上にある「M」ボタンを押すと、「MSI Center M」がすぐ開く。もう1回押すと「MSI Center M」が閉じて前の画面に戻る。

 左側の方向ボタンの上にある四角マークのボタンを押すと、Windows+Gキーを押した時と同じ、Xbox Game Barが開く。ただし本機の場合は、Xbox Game Barに独自のメニューである「MSI Quick Settings」が追加されている。先に紹介したパワー設定や、操作設定、画像や動画撮影など、さまざまな設定やアクションのショートカットが使える。

「MSI Quick Settings」。本機の設定は主にここで行なう
ボタンの割り当てはカスタマイズ可能。スティック感度やバイブレーションの調整などもできる
スピーカーやマイクのAIノイズキャンセリング機能も搭載

Arc Gの性能は確か。ポータブル機の進化が見える

 本機を通じて、Arc Gが持つ高いグラフィックス性能をしっかりと体感できた。これまであったモバイルゲーミングPCよりも高い性能を示しつつも、少ない消費電力で実現できている点は何より魅力的だ。しかもその差が体感としてかなり大きく、同世代の製品でここまで差が付くものなのかと驚く。

 また本機のハードとしての仕上がりも良好だ。特に良いのが冷却周りで、ゲーム中に邪魔になりやすい冷却ファンの騒音を低く抑えるだけでなく、負荷の変化によるファンの回転数の変動もほとんど感じさせない。ビデオカードやノートPCで高性能な冷却システムを手掛けてきた、MSIらしい作り込みだ。

 あとは8型、785gというサイズが希望に合うかどうかだろう。筆者としては、もう少しコンパクトなモデルの方がポータブル機としては嬉しいのだが、そうすると高性能な冷却システムやバッテリ、M.2 2280などを搭載可能なスペースが削られていくので悩ましい。

 確かなことは、8型のモバイルゲーミングPCというカテゴリにおいて、本機は性能レベルを1段上げた製品であるということ。性能と消費電力において、Arc GがAMD製APUを凌駕したというIntelの言い分に間違いはなかった。

 もっとも、使用感は性能だけでは決まらない。ドライバ周りのソフトウェアの成熟度の違いもあれば、ゲームごとのチューニングのかかり具合もある。その辺りはまだAMDに一日の長があるとはいえるし、Intelはさらに向上の余地があるともいえる。両社が競い合うことで、ユーザーの総合的な満足度が上がることを期待したい。

Arc Gの高い性能を、使用感も考慮してうまくパッケージにした製品だ