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PCマニアの魂をくすぐるUMPCが6年ぶりの進化!「GPD MicroPC 2」性能も操作性も“本物”だった
2025年8月12日 06:00
深センGPD Technology(以下GPD)が2019年に発売した「GPD MicroPC」は、ITプロフェッショナルやネットワークエンジニアをターゲットとしたUMPC(Ultra Mobile PC)だ。ズボンやジャケットのポケットに収まるほどのコンパクトな筐体に、より大きなノートPCでも備わっていないようなGigabit Ethernetやシリアルポートといったインターフェイスを詰め込んだこの異色な製品は大きな話題を呼んだ。
その登場から約6年の時を経て、待望の後継機「GPD MicroPC 2」がついに姿を現わした。初代のコンセプトを色濃く受け継ぎながら、その心臓部は現代の要求に応えるべくほぼ完全に刷新。大幅に向上したパフォーマンスと、ブラッシュアップされた操作性は、再び多くのマニアの心を掴む製品になるに違いない。
国内発売を9月に前に、GPDから一足早くサンプルが到着した。本記事ではこの注目の新モデルの実力をレビューしていこう。なお、ラインナップはメモリに16GB、ストレージに512GBのM.2 SSDを搭載した1機種のみ。国内での予約価格は8万5,000円、通常価格は8万8,000円だ。
UMPC再燃の2016年から市場を牽引するGPDが放つエンジニア向けUMPCの“答え”
日本において超小型ノートPCのエポックメイカーは東芝が1996年に発売した「Libretto 20」だ。VHSビデオテープサイズの小型筐体でWindowsを本格駆動させることができた。それ以降も日本市場で多数の小型軽量ノートが登場したが、「UMPC」という名前が登場して世界的にも定着したのは、2006年にIntelが構想を明らかにし、2007年に正式に発表した「Intel Ultra Mobile Platform 2007」以降だ。
ただしその後UMPCは“比較的”小型で安価なネットブックに取って代わられ、さらにそのネットブックが徐々にタブレットへと移行していく中で、キーボードを備えたUMPCはいったん完全に消滅してしまったといっていい。
その復活の立役者がGPDだ。同社は2016年に「GPD WIN」で携帯ゲーミングUMPC市場を切り開き、2017年に投入した「GPD Pocket」で再びUMPCの可能性を世に示してきた。そして2019年に登場した初代「GPD MicroPC」は、豊富なインターフェイスを備え、工場における機器制御用途やインフラエンジニアの現場作業ツールとして、ほかに類を見ない独自の地位を確立した。
GPD MicroPCの登場から6年。過去に同じUMPCを手掛けながらも「今後は7型前後のUMPCを作るのは難しい」と語るメーカーが登場する中、UMPCを取り巻く環境は大きく変化したと言っていい。特にCPU性能の進歩は目覚ましいものがある。その進化を一身に受け満を持して登場したのが「GPD MicroPC 2」だ。初代の堅牢性や携帯性、豊富なインターフェイスという“キモ”の部分を踏襲しながら、CPUなどは現代のパーツで一新。GPDが現代のエンジニアに示した新たなUMPCの“答え”だ。
| 機種 | GPD MicroPC 2 | 初代 GPD MicroPC |
|---|---|---|
| CPU | Intel N250 | Celeron N4120 |
| 内蔵GPU | Intel UHD Graphics | Intel UHD Graphics 600 |
| メモリ | 16GB LPDDR5 | 6GB LPDDR4 |
| ストレージ | 512GB M.2 NVMe SSD | 128GB M.2 SATA SSD |
| ディスプレイ | 7型(1,920×1,080ドット)タッチ対応 | 6型(1,280×720ドット)タッチ非対応 |
| OS | Windows 11 Pro | Windows 10 Pro |
| 有線LAN | 2.5Gigabit Ethernet | Gigabit Ethernet |
| 無線LAN | Wi-Fi 6(Intel AX201) | Wi-Fi 5(Intel Dual Band wireless-AC 3165) |
| Bluetooth | 5.2 | 4.2 |
| USB | USB 3.2 Gen 2 Type-C 2基(USB PD/DisplayPort Alt Mode対応)、USB 3.2 Gen 2 2基 | USB 3.2 Gen 1 Type-C(USB給電兼用)、USB 3.2 Gen 1 2基 |
| その他インターフェイス | HDMI 2.1出力、microSDカードスロット、音声入出力、指紋センサー | HDMI 2.0出力、microSDカードスロット、シリアルポート、音声入出力 |
| バッテリ | 27.5Whリチウムポリマー | 3,100mAh×2リチウムポリマー、6〜8時間駆動 |
| 本体サイズ | 約171.2×110.8×23.5mm | 153×113×23.5mm |
| 重量 | 500g | 440g |
堅牢な筐体、快適性を追求したキーボードと信頼性の高い冷却設計
まずは筐体について見ていこう。本機の筐体は初代同様、LG化学製のABS合成樹脂「LG-DOW 121H」が採用されている。この素材は高い耐衝撃性に加え、耐熱性や難燃性にも優れている。現場でラフに扱っても、不意の落下や衝撃から内部をしっかり保護してくれる安心感がある。この堅牢性こそGPD MicroPCシリーズのアイデンティティであり、ほかのUMPCと一線を画す大きな特徴だ。
実際の表面はつるつるしているが、指紋が付きにくく、グリップ感も良好。金属製ファスナーが内ポケットに採用されているカバンのメイン室の中で、財布やほかのスマートフォンと一緒に無造作に放り込んで、1週間ほどの旅行に連れて持ち歩いたが、傷一つ付かなかったのはさすがだ。デザインよりも実用性を最優先した設計思想がここに見て取れる。
キーボードは、一見すると同社のほぼ同じフットプリントのゲーミングUMPC「GPD WIN Mini」のそれに似ているが、思想は全く異なる。GPD WIN Miniの方はゲームで使うユーザーIDやパスワード、あるいはチャット程度の入力、ゲーム内のショートカット操作などを前提としたもの。
一方GPD MicroPC 2の方はテキスト入力を最優先した、よりストイックな配列を採用。エンジニアによるコマンド入力や長文レポートの作成といった用途も配慮しているのだろう。キートップは指先にフィットしやすい台形に成形され、面積も広く確保されている。軽い力でスコスコと入力できるため、実際に長文の入力でも疲れにくかった。この軽快な打鍵感は、高速タイピングにもつながり、現場での作業効率を大きく向上させてくれる。キーボードバックライトも備えており、暗所での操作も可能だ。
最近、ChatGPTやGemini、Claudeなどが登場したことで、PCやスマートフォンで長文、または長いソースコードやコマンドを入力する機会は減っていると感じているユーザーも少なくないはず。ただ、生成AIから満足いく答えを得るためのプロンプト指示は意外と長文になりがちだし、1回のプロンプトで満足行く結果が得られない場合、次々とプロンプトを入力して答えを引き出すこともある。そういった際にもGPD MicroPC 2のキーボードは有用だろう。
キー配列はファンクションキーこそ省略されているものの、記号などの配置に無理がなく、歪な部分は少ない。初代は数字キーが2列になっていたので扱いにくかった部分もあったが、GPD MicroPC 2では一般的なノートPCと併用したり、移行したりしてもすぐに慣れるだろう。
ファンクションキーはFnと数字キーの同時押しとなっているが、GPD Pocket 3や4のように、F1がFn+Esc、F2がFn+1、F3がFn+2……というように対応する数字が1個左にズレた配置ではないので、頭を捻ることなく使えるのがいい(というかGPD Pocket 3/4シリーズもそうしてほしかった)。一方、輝度調節や音量調節ボタンが独立しているのは、結構ありがたいシーンも多いと思われる。
なお、キーピッチは公称値で約12mm、実測で11.5mm強と、絶対的な数値で狭いため、長時間のタッチタイピングは厳しく、机に置いて5本指でタッチタイピングすることはできない。しかし、両手で本体を左右から掴んで親指で入力する「親指打ち」や、卓上に置いた際の「人差し指1本打法」は意外にも馴染みやすい。移動中の電車内など、限られたスペースでの操作性を高めた設計と言える。
キーボードの奥には右にタッチパッド、左にクリックボタンが配置されている。この絶妙な位置取りにより、本体を両手でグリップしたまま、親指で自然にポインタ操作が可能で、立ったままの作業でも快適に操作できた。ただ、キーボードと近接しているため、タイピング中に誤動作することが多いのはややマイナスだ。
ボタンは物理的に3つ用意されており、左右クリックに加え、中央にはスクロール用のボタンも備える。小型ながらマルチタッチによるジェスチャー操作にもしっかり対応しており、タッチパッドの操作性は上々だ。
また、このサイズの筐体でパフォーマンスを維持するための冷却設計も抜かりない。アクティブ冷却ファンを搭載し、高負荷時でもCPUの性能を安定して引き出すことができる。ちなみに初代モデルにはファンをオフにする物理スイッチがあり、状況に応じて静音性を高めることができたが、本機ではそのスイッチは省略された。標準状態ではファンの回転数は比較的高いため、若干甲高いノイズが耳につくことがある。これは、TDP 15Wという高いパフォーマンスを最大限に引き出すためのセッティングだろう。
その代わり、本機ではBIOSでCPUのTDPを6/8/10/12/15Wから自由に選択できるが、6Wと8Wを選択した場合ではファンの駆動モードを「Silent」に設定できるようになっている。実際にSilentに指定したところ、静かな深夜でもファンの音が気にならないぐらいに低速になった。
7型フルHD液晶と2in1機構で操作性が向上、インターフェイスも現代的に
ディスプレイは、初代の6型HD(1,280×720ドット)から、7型のフルHD(1,920×1,080ドット)液晶へと大型化/高精細化した。これにより、一般的なデスクトップ利用はもとより、サーバーなどをリモートで制御する際でもコンソール画面で表示できる行数が増え、一度に多くの情報を確認できるようになったメリットは大きい。輝度500cd/平方m、保護ガラスにCorning Gorilla Glass 6を備えており、屋外での視認性、耐久性も万全だ。
さらに本機は、T字型ヒンジを採用したことにより、液晶が180度回転してタブレットになる2in1機構を備えている。初代MicroPCは、かつての名機である富士通の「LOOX U50WN」を彷彿とさせるフォルムでありながら、2in1ではなかった点が個人的にとてもとても惜しいと感じるポイントであった。
しかし本機ではその点が解消され、液晶を回転させることで完全なタブレットとしても利用可能になった。この進化は、往年のLOOX U50WNファンにとっても喜ばしい点だろう。ただし、液晶の回転方向はLOOX U50WNが時計回りだったのに対し、本機は反時計回りなのでその点は注意が必要だ。
この反時計回りのヒンジ設計は、同社の「GPD Pocket 3」や「GPD Pocket 4」とも共通しており、GPD製品としての設計思想の統一感が感じられる。この変形機構と、新たに対応したタッチ操作の相性は抜群で、マウスがない環境でも指先で直感的に操作できるし、コンテンツのブラウジングを中心とする場合も非常に有用だ。この点は、従来と比較して操作性が大きく向上したと言える。
インターフェイスも本機の真骨頂だ。USB 3.2 Gen 2 Type-Cを2基、Type-Aを2基、HDMI 2.1、そしてネットワーク現場で重宝する2.5Gigabit Ethernetの有線LANポートまで標準搭載する。またセキュリティ面では、電源ボタン一体型の指紋センサーが追加され、素早いログインが可能になった。センサーは小さいため反応はまずまずといったところで、実用上問題ないレベルだ。一方、初代にあったシリアルポートは省かれたが、これは現代のニーズに合わせたためだろうか(どうしても必要ならUSB→シリアルポート変換アダプタを使えばよい)。
本体の左手前にストラップホールが装備されている点もGPDならでは。ハンドストラップはもちろん、ネックストラップを通せば首からぶら下げて持ち運ぶことも可能だ。しかし、約500gという重量は首から下げるには若干重く感じられ、ストラップ1点での保持は強度の面で少し心配が残る。どちらかといえば落下防止の補助的な役割と考えるのが良さそうだ。欲を言えば、一眼レフカメラやハイエンドコンパクトデジタルカメラのように両吊りできる仕様だとさらに嬉しかった。
一方で、Webカメラが搭載されていない点は、オンライン会議が主流となった現代ではデメリットと感じるユーザーもいるかもしれない。たとえ現場エンジニアの作業でもカメラがあると何かと嬉しいシーンも多いはずだ。まあ、これだけの機能を詰め込みながら、本体サイズは約171.2×110.8×23.5mm、重量は約500gに抑えられているのだから十分だ。これ以上の贅沢は言えない。
初代を圧倒。飛躍的な性能向上をベンチマークで見る
いろいろ使い勝手を述べたが、実はGPD MicroPC 2の最大の進化点は、そのパフォーマンスにある。初代のCeleron N4120に対し、本機はIntel N250プロセッサを搭載。メモリは6GB LPDDR4から16GB LPDDR5へ、ストレージもSATA接続の128GB SSDから高速なPCIe 3.0 x4接続の512GB SSDへと、あらゆる面でスペックが向上している。公式によれば、CPUは3倍、GPUは5倍になっているとのことだ。
そこで今回、「PCMark 10」「3DMark」「Cinebench R23」「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」を用いてベンチマークを行なった。
今回は初代モデルをお借りできなかったため、過去記事からPCMark 10や3DMarkのFireStrikeのベンチマーク数値を引用する形で掲載するが、総合性能で2倍以上、3D性能で5倍以上の性能向上が確認できた。従来モデルは“プロ向け”ながらも性能面で心許なく“おもちゃ感”があるのは否めなかったが、本製品はかなり実用的な性能を備えるようになった。
今回はテストに間に合わなかったが、CPUに8コアのCore i3-N300を搭載した上位モデルも用意されている。こちらはもう少し高いマルチコア性能を発揮できるだろう。
なおバッテリ駆動時間については、TDP 15W設定で輝度を40%に設定して、PCMark 10のModern Officeを計測したところ、約6時間49分駆動した。本機は大きさの制約もあって、ホランい長時間駆動は難しいはずだが、この程度駆動すれば出先での作業には十分余裕を持てるだろう。USB PDで給電できるので、電源に困ることはないはずだ。
唯一無二の存在感を放つ、現代によみがえった“最強の現場ツール”
筆者としては当初、自社製品との競合が気になった。たとえば5月末にリリースされた「GPD Pocket 3 Pro」はCore i3とは言え9万8,000円だったので、GPD MicroPC 2の上位モデル(Core i3-N300搭載)との差はわずか3,000円で、Thunderbolt 4やペン対応が得られる計算だ。また、Ryzen 7 8840Uを搭載した「GPD Pocket 4」は14万6,700円なので、あと5、6万円積めばメインストリーム相当の快適さが得られると思うと、割高感は否めない。
しかし500gという首からぶら下げられるほどの軽快さ、両手でグリップして立ちながら操作できる使い勝手は、まさに背に腹は代えられないという言葉の通りだ。GPD MicroPC 2は、初代が築き上げた「エンジニアのためのUMPC」というコンセプトを、現代の技術で昇華させた快作だといえる。飛躍的に向上した性能、実用性を突き詰めたキーボード、そして妥協のないインターフェイス。そのすべてが、エンジニアをターゲットに深く刺さるように設計されている。
決して万人受けする製品ではないかもしれない。しかし、その尖ったコンセプトと完成度の高さは、ほかに替えがたい唯一無二の価値を持つ。エンジニア、プログラマー、そして筆者のように新しいガジェットを愛するすべての人々にとって、GPD MicroPC 2は最強の相棒となりそうだ。








































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