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モバイラー待望のクラムシェル型UMPC「GPD Pocket」レビュー

GPD Pocket

 中国・深センのデバイス製造メーカーGPDが発売した「GPD Pocket」は、OSにWindowsを採用したクラムシェル型ノートPCとしては久しぶりに10型以下の画面サイズを実現した製品だ。画面サイズは7型で、2007年頃に流行しはじめたUMPC(ウルトラモバイルPC)の再来を彷彿とさせる製品となっている。

 UMPCの再来と述べたが、Windowsを搭載した超小型のWindows PCは、2007年以前も10型以下のモバイルノートが多く存在した日本市場にとってなじみ深いジャンルと言えるだろう。このジャンルの先駆者は言うまでもなく東芝の「Libretto」であり、富士通の「LOOX U」やソニーの「バイオU」、カシオの「カシオペアFIVA」やNECの「mobio NX」といった製品も相次いで投入された。電子機器の小型化を得意とする日本企業が、その技術の粋を世間に“魅せる”ためのショーケースとして活発に開発が行なわれていた分野でもある。

 UMPCの市場は一時盛り上がりを見せるも、2009年をピークに栄えた“ネットブック”によって衰退の一途をたどる。ネットブックはモバイルに現実的な大きさでありながら、UMPCとほぼ同じ性能をほぼ半額以下で購入できたため、市場の需要がそちらに傾き、メーカーがUMPCの開発を行なわなくなってしまった。しかしWindows 7への移行のタイミングで、OS機能面での制限や処理性能の不足から、ついにネットブックも消費者からも見放されてしまい、市場が収束に向かった。

 その後Windowsモバイルで最大の転換期を迎えたのは、Acerが2013年に投入した「Iconia W3」だ。Windows 8.1のタッチ機能を活かし、キーボードを完全に廃したこの製品は、6万円台という低価格ながらフルライセンスのOfficeを搭載し、“低価格Windows PCならタブレット”という新しいジャンルを切り拓いた。2014年に入り、より高性能なBay TrailベースのAtomが登場すると、このジャンルは瞬く間に拡大していった。

 しかしこの頃になると、「Atomで超小型のクラムシェルノートを作ってほしい」という声は、モバイラーの界隈から強く聞かれるようになる。かくいう筆者もそう願ったうちの一人だ。タブレットの形状は、動画を観る、ゲームをプレイするといったエンターテインメント用途に適しているというのは、筆者も大いに賛成するのだが、筆者のように文章を書くような人間にとって、やはりハードウェアキーボードの存在と、クラムシェルであるというスタイルは欠かせない。

 というのも、タブレットのソフトウェアキーボードだと、画面の半分以上がキーボードの表示に奪われるので生産性が著しく低下するし、キーボードがくっついても、ヒンジがないと膝の上で安定して、かつ楽な姿勢で使えないからだ。さらにBluetoothのキーボードは、大人数が集まる公共の場などでは2.4GHz帯の混信で安定して使えない。そういった意味でもクラムシェルの形状は必須だ。「レッツノートRZ6」や「Surface Book」のような製品もあるが、10型以下のUMPCというジャンルではない。

 「今の市場にあるPCだと、あーでもないこーでもない」という“ワガママ”な要望に応えてくれたのが、今回ご紹介するGPD Pocketだ。今回、海外のガジェット製品を取り扱うeコマースサイトGearbestより製品サンプルを提供していただいたので、このサンプルをもとにレビューをお届けしよう。なお、9月4日執筆時点でのGearbestでの価格は60,301円だ。

MacBookっぽい外観と高い質感/組み立て精度を実現

 GPD PocketはそもそもGPDからいきなり発表された製品ではない。GPD Pocketは3月にクラウドファンディングサイトIndiegogoでそのプロジェクトが発表され、発表からわずか数日で目標額を達成、それによって実現された製品なのである。UMPCでかつて栄えた日本からの出資者も多かったため、GPD Pocketは日本国内で内蔵の無線機能を使用できるようにするための技適を纏った状態で出荷されることとなった。

 クラウドファンディング生まれの製品ではあるのだが、GPDは過去にもUMPC「GPD WIN」といった生産実績があり、それ以外にも過去にデバイスを製造したことのあるメーカーだ。つまりハードウェア開発および製造については、ある程度の実績がある。手元に届いたサンプルに関しては、中国製の6万円前後のUMPCとは思えないほどの高い質感と組み立て精度を実現していた。

 デザインは、MacBook Proをギュッと小さくした感じだ。写真から想像するほど薄くないのと、右側面のインターフェイスや排気口などによって若干野暮ったいのが欠点だ。しかし、サラサラした手触りで高い剛性を実現したマグネシウムCNC削り出しの筐体や、ぐらつきのないヒンジ、加工痕がないエッジ処理、そしてガタツキが極めて少ないキーボードなど、十万円以上のモバイルノートとまったく遜色のないレベルにまで仕上がっている。

 筐体の剛性が高いため、液晶面やキーボード面をひねってみてもびくともしない。もちろん落としたりしたら傷がつくとは思うが、カバンに入れて持ち運ぶ分には気にしなくても良いだろう。

 中国の安価な製品というと、組み立てや加工精度があまり高くないという印象があるかもしれないが、その既成概念を捨て去るべき時代が来たと言えるだろう。唯一気になるとすれば、適当に印刷されたシールでWindows 10のプロダクトIDキーがパッケージに貼られている点ぐらいだが、今やWindows 10のライセンスはインターネットを介して管理されているので、大きな問題にならないだろう。

GPD Pocketのパッケージおよび内容物
本体前面。シンプルなデザインで、サイズがわからなければMacBookと見紛うほど
左側面はなにもなくスッキリしている
本体背面。ヒンジ部のみ違う素材でできているようだ
本体右側面にインターフェイスを集約している。左からUSB 3.0 Type-C(DisplayPort出力兼用)、Micro HDMI、3.5mm音声入出力、USB 3.0 Type-A。排気口も見える
技適も刻印されている
本体天板にデザインが一切入っておらずスッキリしている
入手したサンプルの重量は500gジャストだった

ストロークが深いキーボード

 キーボードは英語101配列をベースとしたアイソレーションタイプ。主要のアルファベットキーに関しては16mmのピッチを確保しており、ほぼ問題なくタッチタイピングが可能だ。ストロークに関しては公称値が謳われていないが、感覚としては1mm以上が確保されており、小さな筐体というイメージとは対照的に、意外にも深く感じられる。キータッチも非常にシャープな印象で、ミスタイプすることはほぼないだろう。

 鍵括弧、バックスラッシュ、音引きやイコールといった記号は、数字より上の列に配置されており、この辺りは慣れるまで目視する必要がある。加えて句読点とスラッシュ、右のAlt/Ctrl/セミコロンはアイソレーションではなくひとまとまりになっており、なおかつキーも小さいためやや慎重に押す必要がある。付け加えると、Tabキーは数字の1の右側で、本来そこにあるべき「`」は1の上に配置され、「'」は上カーソルキーの右にあるので、この辺りも通常とは異なる。

 ファンクションキーの列は省かれ、Fnキーと数字キーの組み合わせで入力する点は、スペースの関係上致し方ないところだ。一方で、`の右には音量を調節するためのキー(Fnキーと併用で輝度調節)があり、すぐにアクセスできるのはうれしい。ちなみにFnキーは左Ctrlの外側にあるタイプ。BIOSでの入れ替えもできず、Ctrlが外側にあるキーボードに慣れたユーザーにとっては気がかりかもしれない。

 個人的に気になったのは、本来アルファベットの横の列は、上の列が下の列に対して3分の1から4分の1程度だけずらすべきところ、2分の1ほどずれている点だろうか。FPSゲームなどでW/A/S/Dキーに指を置くと、かなりの窮屈さと不自然さを感じることになる。

 もちろん、この小ささを実現するためにさまざまな制限があるのは理解できるし、一般的な文書入力でミスタイプを誘発するほどの影響は皆無で、事実、このレビューも完全にGPD Pocketで執筆しているのだが、もし“次モデル”があるのならぜひとも改善してほしい点ではある。

 ポインティングデバイスはスティック型で、スペースバーを2つの分割した下半分に配置されている。操作は俊敏でドリフト現象も起きず、おおむね快適に操作できる。左右クリックボタンは小さいが、ほかのキーと同じスイッチが使われており、柔らかいため疲れにくい。欲を言えばタイピング中でもホームポジションから手を動かさずにアクセスできるG/H/Bキーの間の“スイートスポット”に配置してほしかったところだが、さまざまなパーツの関係で実現できなかったのだろう。

 本機はタッチパネルを搭載しているため、“スティック型のポインティングデバイスは時代遅れだ”という人でも問題なく操作できる。キーボードにしろポインティングデバイスにしろ、GPD Pocketは今のところできる限りの最適解を提示したという認識で間違いないだろう。

GPD Pocketのキーボード。ファンクションキーはFnキーと数字キーの同時押しで動作。また、最上段は一部記号と音量(Fnキー併用で液晶輝度)調節キーとなっている変則的な配列。一方、スティックポインタはスペースバーの下にある
主要キーに関してのキーピッチは約16mm確保されており、ほぼ問題なくタッチタイプ可能
一部記号キーのピッチは変則的である
東芝のLibretto 60のキーピッチは13mmであり、それと比較すれば余裕があり打ちやすい
キーボードの打ちやすさに定評のあるVAIO Type Pは16.5mmのキーピッチで、GPD Pocketよりやや広い
キーピッチより、Qから始まる列とAから始まる列が半キーほどずれているのが気になるかもしれない

タブレット向けの高精細液晶を採用

 GPD Pocketに採用されている液晶は1,920×1,200ドット(WUXGA)を実現した7型のIPSパネル。色合いはよく発色も鮮やかだ。画素密度は323.45dpiに達する。このためWindowsの推奨DPIは200%とされ、デフォルトとして設定されていた。個人的には、この解像度だとせっかくの高解像度による情報量がスポイルされてしまうため、ややのめりこむ姿勢になるかもしれないが、150%あたりが妥当だと感じた。

 タッチに対応しており、表面はCorning Gorilla Glass 3が採用されている。映り込みは抑えられているほうで、気になるシーンは少ない。液晶の明るさについては最低輝度にしてもなお明るく、平均的な照明がついた室内では普通に読める。最大輝度はかなり明るめで、屋外でも問題なく視認可能だ。部屋を暗くすれば最低輝度でもまぶしいぐらいかもしれないが、寝っ転がって使うようなシーンをあまり想定していない本製品の性格を考えれば問題はないだろう。

 この液晶はおそらくおもに縦方向で使うタブレット向けに設計されたものであり、本製品が横の液晶として使用しているため、Intelのビデオドライバ上から270度回転された状態で設定されている。つまり、ソフトウェアによって画面回転がなされているわけで、一部ソフトウェアではこの回転をサポートしない可能性がある。筆者が試したところ、「ファイナルファンタジーXIオフィシャルベンチマーク3」は縦表示となってしまい、一部表示が画面外になり切れてしまった。Windows上のソフトに加え、本機を設定するBIOSも縦で表示されてしまうため、若干操作がしにくい。まあこの辺りはコスト削減で致し方ないところだ。

 小さい筐体であるにもかかわらず、液晶を約160度開くことができる点も特徴の1つ。タッチパネルを搭載するクラムシェルノートは、液晶側がどうしても重くなってしまうため、あまり後ろに開かない製品が多いなか、160度開けるのは評価したいところ。ただ、110度以上開くと液晶の底部でキーボードをチルトアップさせるのだが、支えるエッジにゴム足などがついていないため、本体に傷がついてしまう可能性はある。この辺りはDIYでカバーしたいところだ。

 スピーカーに関しては意外にも大きな音が鳴る印象で悪くはない。音にこだわるのであれば3.5mmステレオミニジャックに外部スピーカーを接続すれば良いだろう。3.5㎜ステレオミニジャックの出力に関しては、若干ドンシャリ気味に鳴っている印象で、なおかつ低いインピーダンスのヘッドフォンとの組み合わせでは若干ホワイトノイズが気になる。インピーダンスが高いヘッドフォンと組み合わせたほうが良いかもしれない。

 本体底面には吸気口があり、その口のすぐ上にあるファンで取り入れた空気を使ってCPUを冷却する。長時間高負荷をかけていると、本体右側面が暖かくなるが、手で触れないほど熱いというわけでもなく、不快と感じるほどではないため許容範囲内。ファンの騒音についてもよく抑えられており、静かな環境でもさほど気にならないだろう。

 むしろ気になったの充電を行なっているときで、電源オン時でも電源オフ時でもそれなりの熱を発生する。このため、標準のBIOSでは電源オフ時の充電でもファンが回るようになっていた。後述するが、最新のBIOSをあてるとこの充電時のファン回転は止まるようになる。

液晶は1,920×1,200ドット。このサイズのWindowsデバイスとしてはトップクラスで美しい
視野角が広く、斜めから見ても色の変化が少ない
液晶はこの角度以上に開くと液晶底部がスタンドとなる
最大で写真の角度まで開く。実用十分だ
本体底面もつくりはシンプル。唯一左下にファンの吸気口が見える
ヒンジ部にも隠された吸気口がある

右側に集中させたインターフェイス

 本体のインターフェイスは右側面に集中しており、USB 3.0 Type-A、USB 3.0 Type-C、Micro HDMI出力、そして3.5mmステレオミニジャックの4つを備えている。最近のモバイルノートは薄型化のために、Type-AのUSBポートを省くことが多いのだが、本製品はそれを備えている点は評価したい。USBマウスやUSBメモリとの接続に困ることがないのはやはり素晴らしい。ただ、microSDカードスロットがなく、ストレージ容量拡張ができないのが残念ではある。

 充電はType-Cポートを通して行なう。付属のUSBアダプタの出力側はType-Cで、付属の充電用ケーブルも両側がType-C。ケーブルの向きを完全に気にしなくて済むのは素晴らしい。Type-CはUSB 3.0の転送のほか、BIOS上からAlt ModeによるDisplayPortの映像出力もサポートしており、内蔵のパネルおよびMicro HDMI出力と合わせて最大で3画面の環境を構築できる。

 本機の電源ボタンはキーボード右上に備え付けられている。ほかのキーと硬さが違うため誤押下しにくいが、筆者は近くにあるバックスペースキーは強い力で押し気味になるので、試用中文字を消そうとしたらスリープに入ったことが何回か発生した。ちなみにこの電源ボタンの右上には白LED、左上にはオレンジLEDがあり、白は電源状態、オレンジは充電状態を示している。この白LEDは、スリープ中やディスプレイがオフのときなどに光り、電源オフの状態ではなく、中断中であることを示してくれる。

 付属のACアダプタは小型で携帯性に優れている。出力は5V/3Aまたは9V/2.67A、12V/2Aの3種類で、USB PDに準拠し、機器の要求にあわせて電力供給を行なえる。本体背面には、5V/3A入力の記述があるが、どうやら12V/2Aでの充電もできるようだ。充電時間はおおむね2時間程度見たほうがよいだろう。

付属のACアダプタは小型で、持ち運びも苦にならない
USB PDに対応し5V/3Aまたは9V/2.67A、12V/2Aの供給が可能

クラムシェルとしては珍しくモダンスタンバイ対応

 製品特徴としてとくに謳われてはいないのだが、本機はクラムシェル型ノートPCとしては珍しくWindows 10のモダンスタンバイに対応している。つまり、スリープ時のCPUはS0ix状態だ。よって、Windows 10のユニバーサルアプリおよびWindows 8ベースのモダンアプリについては、スリープ時でも常時ネットに接続させておくことができる。

 もちろん、Windows 10の電源設定で、対応アプリがWi-Fiを使うかどうかの設定はできるのだが、デフォルトではWi-Fiが常時オンに設定されていた。つまり、バッテリ駆動時でスリープにしておいても、標準のメールアプリが常時サーバーからのメールを受信するわけだ。これは利便性とバッテリの駆動時間とトレードオフの関係になるので、気になるのであればバッテリ駆動時はWi-Fiをオフにする設定にしたほうが良い。

 また、本機は標準でハイバネーション領域がないため、休止状態にすることができず、高速起動にも対応していない。極力電池を節約したいのであれば、完全シャットダウンの運用をするか、8GB分のストレージと引き換えにpowercfgコマンドでハイバネーション領域を作成し、休止状態(および電源オフからの高速起動)の運用を視野に入れておきたい。

 気になるバッテリ駆動時間だが、輝度が30%の状態でPCMark 8のHome Acceralatedテストを実施してみたところ、約4時間10分駆動可能と算出された。PCMark 8は比較的高負荷が続くテストなので、一般的な使い方だと5~6時間程度は駆動可能ではないだろうか。1日の連続使用は無理だが、外出先でちょっと出して作業する程度なら十分だ。

本機はモダンスタンバイ対応機。標準設定ではスリープ時でもWi-Fi接続を維持する
電源オプションからバッテリ動作時のスリープ時のWi-Fiをオフにできる

Windows 10モバイルノートとしては十分な性能

 本体が小さいこともあって、性能が気になる人も多いことだろう。そこでベンチマークを実施してみた。ちなみにGPD Pocketが届いた当初は初期のBIOSが入っていたのだが、このBIOSではメモリクロックが1,066MHzに設定されており、本機のフルスペックであるはずの1,600MHzに届かない。このため特にGPUを中心としたテストで不利になることが予想される。

 ところが7月29日付けで、本機用のUbuntuベータ版とともに公開された最新のBIOSでは、設定項目が増えており、DDR-1600に設定することができるようになった。そこで今回はこのBIOSを当ててからテストを実施するようにした。ただし、このBIOSで本機をDDR3-1600に設定しても、標準レイテンシは12-15-20-34-1Tとかなり緩い。今後BIOSのアップデートで改善することに期待したい。

 今回時間の都合上、ベンチマークをPCMark 10と8、そしてファイナルファンタジーXIオフィシャルベンチマーク3に絞った。ちなみにFFXIベンチ3は、そのままだと画面が90度回転してしまいスコアが見られないので、外部ディスプレイに出力してテストした。比較対象として、SoCにワンランク上のCeleron N3450を搭載した「Chuwi Hi13」の結果を加えてある。

 CPUに関して、本機に搭載されるAtom x7のほうはベースクロックが1.6GHz、Burstクロックが2.56GHzとなっている。一方Hi13のCeleronはそれぞれ1.1GHz、2.2GHzとなっており、Atom x7のほうが高い性能を示しそうだ。GPUに関しても、実行ユニットはAtom x7が16基あるのに対し、Celeronは12基となっている。クロックは前者が600MHzで、後者が700MHzとちょっと高い。しかもHi13のメモリはシングルチャネル動作だ。

【表】ベンチマーク結果
GPD PocketChuwi Hi13
CPUAtom x7-Z8750Celeron N3450
メモリ8GB4GB
ストレージ128GB eMMC64GB eMMC
OSWindows 10Windows 10
PCMark 10 Score12131312
Essentials34473391
App Start-up Score29293125
Video Conferencing Score43563724
Web Browsing Score32113352
Productivity16221914
Spreadsheets Score14071970
Writing Score18721861
Digital Content Creation868946
Photo Editing Score1037954
Rendering and Visualization Score524694
Video Editing Score12071281
PCMark8
Home accelerated17681485
Web Browsing-JunglePin0.550s0.585s
Web Browsing-Amazonia0.194s0.216s
Writing9.22s12.5s
Advanced Photo Editing part 10.57s0.743s
Video Chat v2/Video Chat playback 1 v230fps30fps
Video Chat v2/Video Chat encoding v2149.3ms194.7ms
Casual Gaming12.9fps10.7fps
Creative Accelerated19431955
Web Browsing-JunglePin0.563s0.586s
Web Browsing-Amazonia0.197s0.190s
Video Group Chat playback 130fps30fps
Video Group Chat playback 230fps30fps
Video Group Chat playback 330fps30fps
Video Group Chat encoding v2214.7ms216ms
Advanced Photo Editing part 10.635s0.746s
Advanced Photo Editing part 242.2s47.9s
Video Editing 4k part 134.4s22.1s
Video Editing 4k part 238.8s38.1s
Mainstream Gaming part 13.2fps3.3fps
Mainstream Gaming part 21.5fps1.9fps
Video To Go part 112.5s11.3s
Video To Go part 217.6s16.4s
Music To Go33.88s30.76s
ファイナルファンタジーXIオフィシャルベンチマーク3
Low4594(参考値)5026
High3385(参考値)3246

 実際のスコアは、このスペック差をほぼ反映したHi13と拮抗する結果となった。PCMark 10ではHi13のほうが有利だが、これはHi13のほうがストレージが高速なためだ。CPUやGPUの性能が問われるようなテストでは、Atom x7-Z8750の性能が十分に活かされていることがわかる。

 ちなみに本機はメモリが8GBもあり、予備領域も百数十MBしか取られてないため、複数のアプリケーションを同時に立ち上げて使う用途においては、ビデオメモリが600MB確保され実質3.4GBしか使えないHi13と比較して快適に動作すると思われる。これは、基本的にアプリを1つずつ立ち上げてその処理速度を計測するPCMarkではスコアに反映されない点だ。

ベンチマーク中、CPUのパワーは十分引き出されていることがわかる
モバイル機としては高性能と言ってもすべてのシーンにおいて快適なわけではない。たとえばWindows Updateを実施すると、このようにTiWorker.exeがCPUリソースの25%ほど長時間消費し続けてしまうこともある

軽いゲームなら問題なく動作

 ちなみに、GPDはもともと「GamePad Digital」の略であり、同社の最初のWindows搭載製品は、ゲームパッドを搭載しモバイル環境でのWindows対応ゲームプレイを実現する「GPD WIN」であった。GPD PocketはGPD WINより高いスペックを誇っているのだが、ゲームプレイはどうだろうか。

 4K修行僧が推す「ストリートファイターV」をまず試してみたのだが、通常の起動では非常にもっさり動作し、まったくゲームにならない。軽量モードでも実行してみたが、解像度を落としても40fps前後で、スピード感を追求する格闘ゲームとはほど遠かった。これは実用的ではない。

 色々試行錯誤をしたが、そこそこ動くタイトルを挙げると、2013年にリリースされた3DアクションRPGの「Dungeon Siege III」や新「Tomb Raider」なら、解像度を1,366×768ドット以下に落とした上で、グラフィックスの品質設定を低にするなど、欲張らなければそこそこ動作したので、それ以前のタイトルは、設定次第では快適に動作させられそうだ。

 ただ本機でゲームをプレイするにあたって気になったのは、やはり先に挙げたキーボードの配列。W/A/S/Dがとにかく窮屈だ。モバイル環境でのWindowsゲームプレイを優先にするのであれば、素直にGPD WINを購入したほうが幸せになれるだろう。

ストリートファイターVは画質を低にしても遅く、プレイに耐えない
トゥームレイダーの低画質設定なら意外にもそこそこ動く

高い完成度を誇るUMPC

 東芝の「Libretto 20」から始まった超小型Windowsモバイル機の潮流だが、2000年前後のCrusoe搭載機以降、ずっと性能面で大きくビハインドを負っていた。それはUMPCの頂点を極めたと言っても良い名機の「VAIO type P」であってもそうだ。GPD Pocketとてメインストリームの性能を持っていないのだが、かつての時代の製品と比べて性能面で我慢しなければならないシーンはかなり少なくなったのではないだろうか。

 その一方で、GPD Pocketはそれまでの製品にはない金属の高い質感や、美しく高解像度なディスプレイ、トレンドのタッチパネル、そしてそこそこのタイピング性を確保したキーボードなど、特筆すべき点も多い。これまで誰も最新技術で作ろうとしなかったUMPCの市場に一石を投じる製品であることに疑いの余地はない。

 本記事を読まれている読者は、UMPCに目がない熱心なモバイラーだと思うが、もしまだ購入の決断をしていないのであれば、黙って買おう。ましてや、GPD PocketはかつてのUMPCのような10万円以上する高いオモチャではなく、わずか6万円で手に入る実用的なマシンなのだから、なおさらだ。

1996年の東芝Libretto誕生から21年でUMPCはここまで進化したことを示すマイルストーンである