Hothotレビュー
パナソニック「Let'snote MX3 CF-MX3JEKJR」
~2-in-1の光学ドライブレス軽量モデル
(2014/5/8 14:00)
パナソニックは、モバイルノート「Let'snote」シリーズの2014年夏モデルを発表した。各モデルともCPUを強化するなどのパワーアップを実現しているが、12.5型液晶搭載のコンバーチブルモデル「Let'snote MX3」シリーズでは、新たに光学ドライブレスのモデルが追加された。今回はその「Let'snote MX3 CF-MX3JEKJR」を取り上げる。価格はオープンプライス、実売価格は195,000円前後(税別)を予定している。
光学ドライブを省いてさらなる軽量化を実現
「Let'snote MX3 CF-MX3JEKJR」(以下、MX3JEKJR)は、外観デザインや基本的な仕様は、従来のLet'snote MX3シリーズとほぼ同等だ。液晶部分が360度開閉し、クラムシェルノートとしてもピュアタブレットとしても利用できる2-in-1スタイルもそのまま継承している。そういった中で従来モデルからの最も大きな変更点となるのは、左前方に内蔵されている光学式ドライブが省かれているという部分だ。
もともとMX3シリーズは、Let'snote AXシリーズ同等の2-in-1スタイルを実現しつつ、液晶画面を大型化して画面の視認性を高めるとともに、光学式ドライブ内蔵モデルの需要が依然高いビジネスシーンへの対応を強化するために登場した。ただ、光学式ドライブが不要というユーザーも少なからず存在しており、個人向けラインナップから終息したクラムシェルのLet'snote NXシリーズの代替という見方もできる。また、Let'snote AXシリーズの利便性の高さに魅力を感じつつも、11.6型液晶の小ささから導入を見送っていたユーザーもいたはずだ。そういったユーザーを取り込むために、光学式ドライブを省いたMX3JEKJRを投入したと考えていいだろう。
光学式ドライブを省くことで、機能面は簡略化されたものの、さらなる軽量化が実現されている。従来モデルの重量は公称約1,198gだったのに対し、MX3JEKJRでは約1,118gと80gほど軽くなった。MX3に搭載されている光学式ドライブは徹底的に軽量化を突き詰めていたこともあり、光学ドライブレスになったことによる軽量化はわずかで、実際に手に持って比べても大きな違いは感じられないかもしれない。それでも、とことんまで軽さを追求するという意味では重要な進化と言える。なお、実測での重量は1,117.5gと、ほぼ公称値と同じだった。
本体サイズは、301.4×210×21mm(幅×奥行き×高さ)と従来モデルと同じで、本体デザインにも変更はない。天板に発泡素材をカーボンで挟み込む世界初の構造を備えるカーボン素材を採用したり、天板ボンネット構造の最適化やカーボンを混ぜたマグネシウム合金のキーボード面ケースなどの堅牢性を高める特徴はそのまま受け継がれており、76cm(底面方向、動作時)および30cm(6面、12辺、8角の合計26方向、非動作時)の落下試験や、100kgf加圧振動試験をパスする優れた堅牢性も従来モデル同様となっている。
12.5型フルHD液晶はそのまま継承
液晶は、従来モデルと同じ1,920×1,080ドット表示対応の12.5型液晶を採用している。パネルの種類はIPS方式となっており、視野角の広さは申し分ない。13.3型のフルHD液晶よりはドットピッチが細かいため、デスクトップのアイコンの文字などは等倍表示時にやや小さくなるが、それでもAXシリーズの11.6型フルHD液晶よりは見やすい。
液晶表面には、従来モデル同様に非光沢の保護フィルムが貼られているため、発色の鮮やかさは光沢液晶にやや劣ると感じるが、それでも以前のLet'snoteシリーズの液晶に比べると圧倒的に発色は鮮やかで、デジタルカメラの写真や動画を表示した場合でも、表示品質に不満は感じない。この非光沢保護フィルムのおかげで外光の映り込みも少なく、ビジネスシーンで多い文字入力作業も快適にこなせる。
先に紹介したように、液晶パネル部分は従来モデル同様360度開閉する構造を採用。一般的なノートPC同等のクラムシェルノートスタイルや、液晶を360度開いたピュアタブレットスタイル、液晶を180度以上開いてキーボード面を下にして利用するスタンドスタイルなど、さまざまな形状で活用できる。液晶部分の開閉はスムーズで、ぐらつきもほとんどない。また、液晶を180度以上開くとキーボードとタッチパッドの動作がオフとなり誤動作を防ぐように配慮されている点も従来同様だ。
タッチパネルも従来モデルと同じで、10点マルチタッチ対応の静電容量方式タッチパネルを採用。ペン先が約2mmと細いタッチペンも同様に標準で付属しており、細かな操作に対応可能。タッチペンを本体左側面に収納できる点も変わりはない。
キーボードやタッチパッドも変更なし
キーボードおよびタッチパッドの仕様も従来モデルから変更はない。
キーボードは、キーピッチが横約19mm、縦約15.2mmの横長のキートップ形状を備えるものとなっている。キートップの左上と右下の角がなだらかなカーブとなっている、リーフ型キーも従来同様。タッチはLet'snoteシリーズらしくやや軽めだが、ストロークが約2mmと深く、しっかりとしたクリック感もあり、打鍵感は悪くない。ただ、縦ピッチの狭さはやや違和感を感じる。また、半角/全角キーとカーソルキーの位置も少々気になる。
タッチパッドも、従来モデル同様長方形のものを採用。タッチパッドの面積は十分に広く、独立したクリックボタンも用意され、操作性は申し分ない。左右クリックボタンの間に配置されたHOLDボタンによって、タッチパッドとキーボードの動作を任意にオフにできる点も従来同様だ。
搭載CPUは従来モデルから強化
基本スペックは、光学式ドライブが省かれているという点を除いて、Core i5搭載の従来モデルから大きな違いはないが、CPUが強化されている。従来モデルはCore i5-4200U(1.6GHz、Turbo Boost時2.6GHz)を搭載していたが、MX3JEKJRではCore i5-4310U(2GHz、Turbo Boost時3GHz)へと強化された。これにより、従来モデルからの性能向上が期待できる。
それ以外の仕様は、従来モデルとほぼ同じだ。メインメモリは標準で4GBとなり、内蔵ストレージは128GBのSSDを採用。無線機能は、IEEE 802.11ac/a/b/g/n準拠の無線LANと、Bluetooth 4.0を標準搭載。モバイルWiMAX機能も引き続き搭載している。センサー類は、照度センサー、電子コンパス、ジャイロセンサー、加速度センサーを搭載する。
本体側面のポート類も従来モデル同様。ヘッドフォンジャック、マイクジャック、USB 3.0×2ポート、HDMI出力、Gigabit Ethernet、アナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)、電源コネクタを右側面に配置している。各ポートは全て標準サイズとなる点も同様だ。加えて、右側面には内蔵無線機能のオン/オフスイッチ、本体前面にはSDカードスロットとボリュームボタン、画面回転のオン/オフボタン、電源スイッチを配置。SDカードスロットは従来モデル同様にUHS-IIに対応している。
性能は従来モデルのCore i7-4500U搭載モデルに肉薄
では、ベンチマークテストの結果を紹介していこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 8 v2.0.204」、「PCMark 7 v1.4.0」、「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark Professional Edition v1.1.0」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」、カプコンの「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】」の6種類。比較用として、Core i7-4500U搭載の従来モデル、Let'snote MX3 CF-MX3TEABRの結果も加えてある。
Let'snote MX3 CF-MX3JEKJR | Let'snote MX3 CF-MX3TEABR | |
---|---|---|
CPU | Core i5-4310U (2.00/3.00GHz) | Core i7-4500U (1.80/3.00GHz) |
ビデオチップ | Inte HD Graphics 4400 | Inte HD Graphics 4400 |
メモリ | PC3L-12800 DDR3L SDRAM 4GB | PC3L-12800 DDR3L SDRAM 8GB |
ストレージ | 128GB SSD | 256GB SSD |
OS | Windows 8.1 Update | Windows 8.1 Pro |
PCMark 8 v2.0.204 | ||
Home Accelarated 3.0 | 2551 | 2547 |
Creative accelarated 3.0 | 2825 | 2750 |
Work 2.0 | 3641 | 3226 |
Storage | 4906 | 4936 |
PCMark 7 v1.4.0 | ||
PCMark score | 4906 | 5114 |
Lightweight score | 3276 | 3478 |
Productivity score | 2565 | 2650 |
Entertainment score | 3677 | 3726 |
Creativity score | 8955 | 9456 |
Computation score | 16642 | 16406 |
System storage score | 5133 | 5323 |
Raw system storage score | 5177 | 5699 |
PCMark05 Build 1.2.0 | ||
PCMark Score | N/A | N/A |
CPU Score | 9370 | 9429 |
Memory Score | 8325 | 8315 |
Graphics Score | 3295 | 3509 |
HDD Score | 41136 | 38139 |
3DMark Professional Edition v1.2.250 | ||
Ice Storm | 42548 | 44198 |
Graphics Score | 47613 | 49434 |
Physics Score | 31006 | 32245 |
Cloud Gate | 4399 | 4590 |
Graphics Score | 5454 | 5684 |
Physics Score | 2624 | 2744 |
Fire Strike | 557 | 606 |
Graphics Score | 580 | 654 |
Physics Score | 3584 | 3931 |
3DMark06 Build 1.2.0 1901 | ||
3DMark Score | 5303 | 5472 |
SM2.0 Score | 1872 | 1893 |
HDR/SM3.0 Score | 2081 | 2221 |
CPU Score | 3627 | 3436 |
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】 | ||
1,280×720ドット | 2519 | 2813 |
結果を見ると、Core i7-4500Uと上位のCPUを搭載する従来モデルに匹敵するスコアが記録されていることが分かる。3D描画能力など、全体的にはさすがに敵わないものの、PCMark8のスコアは従来モデルを凌駕する部分もあり、Core i5-4310Uの処理能力の高さがうかがえる。これだけのパフォーマンスがあれば、Let'snoteシリーズがメインターゲットとするビジネス用途で不満を感じることはまずないだろう。
ところで、MX3JEKJRのSDカードスロットはUHS-II対応のため、UHS-II対応SDカードを取り付けた場合のデータ転送速度をCrystalDiskMark 3.0.3bを利用して計測してみた。利用したSDカードは、サンディスクの「エクストリームプロSDHC/SDXC UHS-IIカード」の32GBモデルだ。結果は、シーケンシャルリードが174.5MB/Sec、シーケンシャルライトが119.5MB/Secと、カード本来の速度は引き出せていないものの、UHS-I対応SDカードよりも圧倒的に高速なデータ転送速度が確認された。これだけの速度なら、デジタルカメラなどのデータを高速に転送できるのはもちろん、内蔵ストレージを増強する用途としても十分に活用できそうだ。
次にバッテリ駆動時間だ。MX3JEKJRの公称のバッテリ駆動時間は、JEITAバッテリ動作時間測定法Ver1.0基準で約15時間、JEITAバッテリ動作時間測定法Ver2.0基準で約10時間とされている。それに対し、Windowsの省電力設定を「省電力」に設定し、バックライト輝度を40%、無線機能は無線LANのみを有効にした状態で、BBenchでキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約8時間45分の駆動時間を計測した。JEITA 2.0基準の公称値よりもやや短いが、それでも実利用で9時間弱の駆動時間があれば、1日の外出でも残量を気にする場面はほぼないはずだ。
なお、着脱式バッテリと内蔵バッテリの2バッテリ構成で、本体をシャットダウンすることなくバッテリ交換が可能な特徴もそのまま受け継がれている。より長時間のバッテリ駆動が必要なら、オプションのバッテリを用意すればいいだろう。
利便性重視のビジネスモバイル2-in-1としておすすめ
MX3JEKJRは、光学式ドライブを外したことでMX3の魅力が失われているのでは、と感じるかもしれない。ただ、実際に使ってみると光学ドライブがなくなったからといって使い勝手は全く損なわれておらず、魅力は維持されている。また、CPUの強化により性能が高まっている点や、80gほどではあるが従来より軽くなったこと、実測で9時間弱のバッテリ駆動時間を実現している点など、モバイル性も向上。しかも、実売予想価格が税別195,000円前後と、MX3シリーズの中で最も安価に購入できる。用途にもよるが、光学式ドライブが必要となる場面が少ないなら、光学ドライブレスのMX3JEKJRは価格の面も合わせて十分に魅力のある存在となるだろう。
競合となるUltrabookには、同等以上のスペックでより安価な製品も存在する。ただ、ビジネスシーンで必要となる優れた堅牢性や長時間バッテリ駆動など、Let'snoteシリーズならではの特徴を考えると、利便性重視のビジネスモバイルとして広くお勧めできる製品と言える。