Hothotレビュー
東芝「dynabook T954/89L」
~世界初4Kディスプレイ搭載ノート
(2014/4/16 11:00)
東芝は、世界初となる4K液晶ディスプレイを搭載するノートPC「dynabook T954/89L」を発表した。4Kの圧倒的な超高精細表示に加え、出荷前にTechnicolorの標準色でキャリブレーションを行ったり、同社液晶テレビ「レグザ」シリーズに搭載されている超解像技術「レゾリューションプラス」を搭載するなど、映像へのこだわりが随所に感じられる点が大きな特徴となっている。今回、短時間ながらいち早く試作機を試用する機会を得たので、外観や液晶表示品質などを紹介したいと思う。なお、ベンチマークを含めた詳細は、今後製品版相当の評価機を入手次第お届けする予定だ。
発色性能にも優れる超高精細4K液晶パネルを搭載
2013年以降、4K(3,840×2,160ドット)表示に対応する液晶TVが続々登場するとともに、4K撮影に対応するデジタルカメラやビデオムービーも増えてきており、家電業界ではさながら“4K元年”といった様相となっている。そしてPCの世界でも、4K表示対応の比較的安価な液晶ディスプレイが登場するとともに、パナソニックが3,840×2,560ドット表示対応の20型液晶パネルを搭載する法人向けWindowsタブレット「TOUGHPAD 4K UT-MB5」を発売するなど、4Kが徐々に広がり始めている。そして今回、ノートPCにも4K表示対応液晶を搭載する製品が発表となった。
「dynabook T954/89L」(以下、T954/89L)は、15.6型の4K(3,840×2,160ドット)表示対応液晶ディスプレイを搭載する世界初のノートPCだ。液晶パネルには、低消費電力なIGZOを採用。画素密度は282dpiと、iPad RetinaディスプレイモデルやiPad Airに搭載される2,048×1,536ドット表示対応の9.7型液晶(264dpi)よりも高精細。肉眼では画素が全くといっていいほど認識できず、デジカメの写真などを表示しても印刷物としか思えないほどだ。
1度に表示できる情報量の多さも、4Kパネルの魅力。フルHDの4倍の情報量があり、文字サイズを100%に設定した状態では、一般的なホームページを横に3ページ並べて表示してもまだ表示領域が余るほど。複数のアプリを同時に利用する場合でも、それぞれに十分な作業領域を独立して確保可能だ。ただし、文字サイズが100%の状態では、表示される文字がかなり小さくなってしまい、視認性がかなり低下してしまう。デスクトップアイコンの文字サイズは1mmを下回るほどとなる。そのため、通常は文字サイズを拡大して利用するのが基本となる。
高精細なだけでなく発色性能に優れる点も、T954/89Lの液晶パネルの特徴だ。T954/89Lでは出荷前にTechnicolorの標準色に適合するカラーキャリブレーションを施しており、鮮やかかつ自然な発色性能を実現。実際に映像を表示させても、その色合いの鮮やかさに驚かされる。また、カラーマネージメントツール「Chroma Tune for TOSHIBA」をプリインストールし、表示色域を簡単に変更して利用できる。発色性能は、プロ向け広色域液晶ディスプレイに匹敵すると考えて良さそうだ。視野角も十分に広いため、家族で映像を楽しむ場合でも、全員が優れた発色を堪能できるだろう。
レグザの超解像技術を搭載
T954/89Lには、4K液晶の高解像度表示を最大限活用できるように、同社の液晶TV「レグザ」シリーズに搭載されている映像エンジン「CEVO 4K」をPC向けに最適化しチューニングした高画質化技術「超解像技術 レゾリューションプラス」機能が標準で搭載されている。レグザのCEVO 4Kは専用プロセッサによる処理となっているのに対し、T954/89Lのレゾリューションプラス機能はCPUとGPUを駆使したソフトウェア処理によって実現されている。
このレゾリューションプラス機能では、写真や動画などを表示する場合に、高dpi環境に合わせた画質のチューニングを行ない、より高品位な映像表示を可能としている。例えば、「微細テクスチャー復元」機能では、画像の輝度成分に対してテクスチャ解析を行なうことで微細な質感を復元して解像感を高める。また、「輝き復元」、「カラーエンハンスメント」、「シャープネス」、「ダイナミックコントラスト」といった画質補正機能によって、より鮮やで鮮明な映像が表示される。加えて、「アップスケーリング」機能によって、低解像度の映像も解像度が高まったかのような質感で再生できる。
実際に、レゾリューションプラス機能を活用して動画再生を試してみたところ、動画再生時の表示品質が大きく高まることを確認した。特に、発色の鮮やかさは目を見張るものがある。PCと液晶TVで同じ映像を表示させた場合に、液晶TVの方が発色が鮮やかと感じることが多いが、レゾリューションプラスを利用すれば、液晶TVでの発色に近い鮮やかさが再現されていると感じる。アップスケーリングによる解像感の向上についても、潰れてしまうことの多い背景などの細かな模様など、エッジ部分が強調されるといった処理によって比較的クッキリと見えるようになり、解像感が高まったように感じる。さすがにフルHD動画がネイティブ4Kに近い品質に向上するというわけではないが、こちらも十分な効果が得られると感じた。
また、このレゾリューションプラス機能は、「TOSHIBA Blu-ray Player」や「TOSHIBA Media Player by sMedio TrueLink+」などの東芝オリジナルアプリだけでなく、Internet ExplorerやWindows Media Playerでも利用可能となっている。実際に、Internet ExplorerでYouTubeなどのWeb動画を視聴する場合や、手持ちの動画ファイルをWindows Media Playerで再生するといった場合でも、レゾリューションプラス機能による高画質化が確認できた。このように、汎用アプリでもレゾリューションプラス機能が利用可能な点は、非常に大きな魅力と言えそうだ。
基本スペックも充実
T954/89Lは、基本スペックも充実している。CPUは4コア8スレッド処理に対応するCore i7-4700HQを採用。チップセットはIntel HM86 Express、メインメモリはPC3L-12800準拠のDDR3L SDRAMを8GB(4GB×2)を標準搭載する。
外部GPUとしてRadeon R9 M265Xも標準搭載。このGPUはOEM向けの未発表モデルだが、Catalystのハードウェアプロパティを見ると、コアの動作クロックが625MHz、ビデオメモリが1GHzのGDDR5(2,048MB)の「Radeon HD 8800M」シリーズと表示されており、Radeon HD 8830Mのリマークモデルと思われる。これにより、CPU内蔵のHD Graphicsよりも優れた3D描画能力が発揮される。
内蔵ストレージは1TBのSSHDを採用。また、BDXLドライブも標準搭載。通信機能は、IEEE 802.11ac/a/b/g/n準拠の無線LANとBluetooth 4.0を搭載。側面ポートは、USB 3.0×4、HDMI出力、Gigabit Ethernet、ヘッドフォン出力、マイク入力、SDカードスロットが用意される。
液晶は、紹介したように15.6型の4K表示対応IGZO液晶を採用し、10点マルチタッチ対応の静電容量方式タッチパネルも搭載。キーボードはキーピッチ19mm、ストローク約1.5mmで、テンキーも備える。また、キーボードバックライトも内蔵しており、暗い場所でも快適なキー入力が可能。ポインティングデバイスはクリックボタン一体型のタッチパッドを搭載する。
本体サイズは、377.5×244.0×27.9(幅×奥行き×高さ)mm、重量は約2.4kg。15.6型液晶を搭載するノートPCとしては、サイズ、重量ともほぼ標準的。これなら、家庭内モバイルもそれほど苦にならないだろう。なお、バッテリ駆動時間は、JEITAバッテリ動作時間測定法Ver2.0基準で約3.6時間、JEITAバッテリ動作時間測定法Ver1.0基準で約4時間となる。
発売は4月25日を予定しており、価格はオープンプライス、店頭予想価格は23万円前後となる見込み。