Hothotレビュー

ASUS「TransAiO P1801」

~Windows PCとAndroidタブレットを合体させたマルチOSマシン

「TransAiO P1801」
発売中

価格:オープンプライス

 ASUSから登場した「TransAiO P1801」は、よくある液晶一体型PCに見えるが、実は、Windows PCとAndroidタブレットを合体させたマルチOSマシンだ。ボタン1つで、Windows 8とAndroid 4.1を切り替えられるほか、液晶部分を取り外してAndroidタブレットとしても、Windows 8タブレットとしても使うこともできるなど、非常にユニークなマシンだ。今回は、TransAiO P1801(以下、TransAiO)を試用することができたので、早速レビューしていきたい。

高いスペックを誇る1台3役のマルチOSマシン

 TransAiOは、Windows PCとAndoridタブレットを合体させた製品であり、用途や状況に応じて、さまざまな使い方ができることが魅力だ。まず、ハードウェアスペックから見ていこう。PCステーション部とタブレット部には、それぞれCPUやメモリなどが搭載されており、単独で利用可能な設計である。PCステーション部の背面には、HDMI端子が用意されているが、これは入力端子ではなく出力端子であり、PCの画面をHDMI対応TVやディスプレイなどに出力することも可能だ。

 Windows PCとしての機能は、PCステーション部に内蔵されており、そのスペックは十分高い。CPUとしてCore i7-3770(3.4GHz)を搭載し、メモリ容量は8GB、HDD容量は2TBである。また、GPUとしてNVIDIA GeForce GT 730Mを搭載しており、この種の一体型PCとしては描画性能も高い。光学ドライブとしては、スロットインタイプのDVDスーパーマルチドライブが搭載されている。ワイヤレス機能は、IEEE 802.11b/g/n準拠の無線LANとBluetooth 4.0をサポートする。

 タブレット部は上に持ち上げるだけで、取り外しが可能。タブレット部には、CPUとしてクアッドコアのTegra 3(1.7GHz)が搭載されており、メインメモリは2GB、ストレージとして32GBのeMMCを搭載する。液晶サイズは18.4型で、解像度は1,920×1,080ドットのフルHDである。液晶は、視野角が広く、斜めから見ても色の変化が少ないIPS方式のパネルを採用し、10点マルチタッチに対応。また、前面に100万画素Webカメラを備え、ステレオスピーカーやマイクも内蔵している。タブレット部のワイヤレス機能は、IEEE 802.11b/g/n準拠の無線LANとBluetooth 3.0+EDRとなっており、Bluetoothへの対応がPCステーション部とは異なることには若干の注意が必要だ。

 インターフェイスも、PCステーション部とタブレット部のそれぞれに設けられており、利用中のOSによって、使用できるインターフェイスが異なる。PCステーション部には、USB 3.0×4とUSB 2.0(ワイヤレスレシーバ用)、HDMI出力、Gigabit Ethernet、ヘッドフォン、マイク、SDカードスロットが用意されている。タブレット部には、Mini USB 2.0とヘッドフォン出力/マイク入力、microSDカードスロットが用意されている。

 タブレット部にはバッテリも内蔵されており、連続動画再生時で約5時間の駆動が可能とされている。タブレット部の重量は約2.4kgであり、一般的なA4ノートPCに近い重量だ。サイズも466×294×18mm(幅×奥行き×高さ)と大きいので、液晶サイズが7~10型程度のAndroidタブレットのように常に携帯するのには向かないが、背面にはハンドルが用意されており、片手でも持ち運びやすい。また、角度を変更できるスタンドも用意されており、タブレット部だけを立てかけて使うことも可能だ。タブレット部には、GPSや加速度センサも搭載されている。

 OSは、PCステーション部がWindows 8 64bit、タブレット部がAndroid 4.1となっている。

TransAiOのタブレット部をPCステーションに合体させて使っているところ。液晶一体型Windows 8マシンとして利用可能だ
TransAiOのPCステーション部。中に、Core i7や8GBメモリ、GeForce GT 730Mなど、PCとして必要なパーツが全て入っている。右下にはPC部分の電源スイッチが用意されている
PCステーション部の背面。右側にポート類が用意されている
PCステーション部背面のポート類のアップ。背面には、Gigabit EthernetとHDMI出力が用意されている
PCステーション部を上から見たところ。中央にタブレット部と接続するコネクタが見える
PCステーション部の左側面には、SDカードスロット、USB 3.0×4、マイク入力、ヘッドフォン出力が用意されている
PCステーション部左側面のアップ
PCステーション部の右側面には、スロットインタイプのDVDスーパーマルチドライブとUSB 2.0(ワイヤレスレシーバ装着用)が用意されている
PCステーション部右側面のUSB 2.0のアップ
タブレット部の左側面。こちら側には特にポート類は用意されていない
タブレット部の右側面。電源ボタンやボリューム調整ボタン、Windows 8/Android切り替えボタン、Mini USB 2.0、microSDカードスロット、マイク入力/ヘッドフォン出力が用意されている
タブレット部右側面のアップ
タブレット部には角度を変更できるスタンドも付いており、立てかけて使うことも可能だ
タブレット部の背面にはハンドルが用意されており、片手で持ち運べる

Android 4.1でも利用可能なワイヤレスキーボード/マウスが付属

 キーボードとマウスは無線方式のワイヤレスタイプであり、付属のワイヤレスレシーバをUSB 2.0ポートに装着して利用する。レシーバはコンパクトで、はみ出し部分も小さいため、気にならない。このキーボードとマウスは、タブレットとPCステーションを合体させたPCモード専用であり、PCステーションからタブレット部を取り外して利用するPadモードでは利用できない。ただし、PCモードなら、OSがWindows 8でも、Android 4.1でもキーボードとマウスの利用は可能であり、キーボードにはWindowsキーのほかに、Androidキー(メニュー/ホーム/戻る)が用意されている。

 PCステーション部、タブレット部ともにACアダプタ経由で電力が供給されるが、PCステーションにタブレットを装着している場合は、PCステーション側から電力が供給されるので、タブレット部にACアダプタを接続する必要はない。PCステーション部用のACアダプタは、出力が180Wと大きく、サイズもやや大きいが、タブレット用のACアダプタはコンパクトで軽い。

ワイヤレスキーボード/マウス用のレシーバが付属する
無線方式のワイヤレスキーボードが付属する。なお、付属のキーボードやマウスは、タブレット部を取り外したPadモードでは利用できない
無線方式のワイヤレスマウスが付属する。中央のスクロールボタンはホイールではなく、シーソータイプになっている
PCステーション用ACアダプタ。出力が180Wと大きいので、ACアダプタもかなり大きい
PCステーション用ACアダプタの裏面。入力は100~240Vのワールドワイド仕様である
タブレット用のACアダプタは出力が小さいため、よりコンパクトである

3種類のモードを使い分けられる

 それでは、実際の使用感や各モードを紹介したい。TransAiOは、「PCモード」、「Padモード」、「リモートデスクトップモード」の3種類のモードを利用できる。

 PCモードは、タブレット部とPCステーション部を合体させた状態であり、OSとしてWindows 8またはAndroid 4.1を選択できる。Windows 8とAndroid 4.1との切り替えは、タブレット部右側面にある青いボタンを押すことで行なう。切り替えの様子は、下の動画を見ていただければわかるように、かなり高速である。タブレット部の着脱はスムーズにでき、PCステーションのスタンド部もしっかりしている。

 Padモードとは、タブレット部を取り外してAndroidタブレットとして使う方法であり、PCステーションから外すと、画面の表示はAndroidにさっと切り替わる。

 最後のリモートデスクトップモードは、無線LAN経由でPCステーションからの出力(つまり、Windows 8の画面)をタブレットの液晶で表示させ、Windows 8の操作を行なうことができるモードだ。なお、リモートデスクトップモードを使うには、PCステーション部とタブレット部を同じ無線LANアクセスポイントに接続する必要がある(つまり、外出先などでは利用できない)。

タブレット部分を切り離して利用するPadモードでは、Android 4.1タブレットとして利用できる
もちろん、PCステーションに合体させた状態でも、Androidタブレットとして使うことが可能だ
【動画】右側面の青いWindows 8/Android切り替えボタンを押すことで、Windows 8とAndroid 4.1を自由に切り替えられる
【動画】タブレット部を取り外すと、Padモードになるが、Splashtop Remote for AiOを利用したリモートデスクトップモードとしても利用できる。Padモードからリモートデスクトップモードに切り替えているところ

液晶が大きいので、コミックの表示にも最適

 アプリは、Android 4.1用の手書き入力対応ノートアプリ「SuperNote」やリモートデスクトップ機能を利用するためのSplashtop、Office文書の閲覧/編集が可能な「Polaris Office」のほか、PCモード時にOSを切り替えるためのツールもプリインストールされている。

 使ってみて感じたが、18.4型という大画面液晶は、コミックなどの表示時にも威力を発揮する。電子書籍リーダアプリを使う場合も、文字が大きくなり見やすい。

 単体GPUを搭載するなど、基本スペックが高いので、PCモードでのWindows 8も快適に動作する。もちろん、PadモードでのAndorid 4.1の動作も快適だ。リモートデスクトップモードでは、PCモードに比べると多少反応が遅く感じられることもあるが、ストレスを感じるほどではない。

手書き入力対応のノートアプリ「SuperNote」もプリインストールされている
電子書籍リーダとしても、画面が大きいので見やすい
液晶が18.4型と大きいので、見開きでコミックを読むのも快適だ
【動画】Padモードでの画面ローテーションの様子
【動画】SuperNoteでの手書きメモの様子
【動画】プリインストールされている「BookLive! for ASUS」を利用して、電子書籍を読んでいるところ

屋外でも液晶の視認性は十分

 TransAiOは、主に家の中で使うPC/タブレットとして設計された製品であるが、試しにタブレット部を外に持ち出してみた。

 スタジアムでサッカーを観戦する機会があり、そのお供にTransAiOのタブレット部を持って行ったところ、直射日光があたるスタジアムでも、液晶の輝度を上げて、見やすい角度に調整すれば十分な視認性を実現していた。

 もちろんこの場合は、リモートデスクトップモードでの利用はできず、Android 4.1が動作するPadモードでの利用になるが、ポータブルWi-Fiルーターを一緒に持ち運べば、どこからでもメールチェックやWebブラウズなどが可能だ。電車の中などで使うにはサイズが大きいので無理があるが、車で移動するのなら、大きさや重さはあまり気にならないだろう。

スタジアムでのサッカー観戦のお供にTransAiOを持って行った。直射日光下ではやや見にくくなるが、輝度を上げれば十分見える
タブレットとしてはかなり大きいが、両手で支えれば大丈夫だ
5歳の息子は、サッカー観戦に飽きてしまい、ゲームで遊びだした。この持ち方だとちょっと恐い
スタジアムからTwitterに書き込みしているところ

Windows/Androidともに高いパフォーマンスを実現

 参考のために、PCモード(Windows 8)とPadモード(Android 4.1)のそれぞれの環境で、ベンチマークテストを行なってみた。Windows 8でのベンチマークテストには、「PCMark05」、「PCMark Vantage」、「PCMark 7 v1.4.0」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark 2.2」を、Android 4.1でのベンチマークテストには、「AnTutu Benchmark v3.3」、「Quadrant Professional Edition」、「3DMark」を用いた。Windows 8でのベンチ結果については、比較用としてソニー「VAIO Fit 15」のスコアも掲載した。

 結果は下の表の通りで、デスクトップ用のCore i7を搭載するTransAiOは、同じCore i7でもモバイル向けの超低電圧版を搭載するVAIO Fit 15に比べて、PCMark05のCPU Scoreの値はかなり高くなっている。また、単体GPUを搭載しているため、3DMarkのスコアは2倍近い。ただし、TransAiOはストレージがHDDなので、ハイブリッドHDDを搭載したVAIO Fit 15に比べて、ストレージ性能は低くなっている。

 Andorid 4.1上でのベンチマーク結果も、最新のAndroidタブレットと比べてもひけをとらない。PCモードでのWindows 8、PadモードでのAndroid 4.1ともに、パフォーマンスについては満足できる。

Windows 8のベンチマーク結果
 TransAiO P1801VAIO Fit 15
CPUCore i7-3770(3.4GHz)Core i7-3537U(2GHz)
ビデオチップGeForce GT 730MIntel HD Graphics 4000
PCMark05
PCMarksN/AN/A
CPU Score140479453
Memory Score117218082
Graphics ScoreN/A2777
HDD Score88449939
PCMark Vantage 64bit
PCMark Score113239038
Memories Score71655666
TV and Movie ScoreFailedFailed
Gaming Score103398348
Music Score858512051
Communications Score1558512300
Productivity Score78917223
HDD Score442411431
PCMark Vantage 32bit
PCMark Score101908809
Memories Score70505029
TV and Movie ScoreFailedFailed
Gaming Score92527121
Music Score801210609
Communications Score1413910611
Productivity Score70756915
HDD Score440710711
PCMark 7 v1.4.0
PCMark score37083971
Lightweight score25732276
Productivity score20311785
Entertainment score34672910
Creativity score71097614
Computation score1190615773
System storage score21823251
Raw system storage score6701192
3DMark03
1024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks)2906213486
CPU Score計測不可1980
3DMark
Ice Storm6369237436
Cloud Gate81204184
Fire Strike1143587
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
HIGH66874565
LOW計測不可6760
ストリーム出力テスト for 地デジ
DP99.73100
HP100100
SP/LP99.97100
LLP99.97100
DP(CPU負荷)412
HP(CPU負荷)14
SP/LP(CPU負荷)13
LLP(CPU負荷)01
CrystalDiskMark 2.2
シーケンシャルリード171.4MB/s146.0MB/s
シーケンシャルライト167.9MB/s87.86MB/s
512Kランダムリード62.95MB/s114.6MB/s
512Kランダムライト52.86MB/s78.06MB/s
4Kランダムリード0.951MB/s11.22MB/s
4Kランダムライト0.894MB/s19.64MB/s
Androidのベンチマーク結果
AnTuTu Benchmark v3.3
Total12562
RAM2294
CPU Integer3463
CPU Float2852
2D Graphics816
3D Graphics2236
Databese IO555
SD Card Write150
SD Card Read196
Quadrant Professional Edition
Total3895
CPU12214
Mem3032
I/O1726
2D165
3D2336
3DMark
Ice Storm score(Normal)4300
Ice Storm score(Extreme)2418

Windows 8もAndroid 4.1も両方使いたいという人にお勧め

 本製品は、Windows PCとAndroidタブレットという2つのシステムを合体させたマルチOSマシンだ。例えば、自宅で仕事の文書を作成する場合はキーボードが使えるPCモードで、動画共有サイトや自分で撮影した写真などのコンテンツを楽しむには、部屋の好きな場所に気軽に移動できるPadモードで使うことができる。

 Windows 8とAndroid 4.1のそれぞれの長所を併せ持つTransAiOは、Windows 8とAndroid 4.1の両方を使いたいという人に特にお勧めしたい製品だ。実勢価格は15万円前後であり、タッチパネル対応フルHD液晶搭載一体型PCと、高解像度液晶を搭載したAndroidタブレットを別々に購入するよりも、格段にお買い得だ。

(石井 英男)